借地権付きマンションを売却する方法は?手順や不動産会社選びの注意点も

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借地権付きマンションは所有権マンションよりも売りにくく、売却時には注意して進めないと価格が大きく落ちる可能性のある物件です。

借地権付きマンションの売却を検討しているものの、どのような手順で進めれば良いのか悩み、お困りの方も少なくないのではないでしょうか。

この記事では、借地権付きマンションを売却する方法について、売却手順や不動産会社選びの注意点を含め解説していきます。

筆者はマンションディベロッパーでの経験があり、実際に借地権付きマンションの売却を3物件担当しました。筆者の実体験に基づいた記事になっているため、ぜひ参考にしてください。

目次

  1. 借地権付きマンションは種類によって売りにくさが変わる
  2. 借地権付きマンションと所有権マンションの売却時の違い
    2-1.所有権の有無によって買主の印象が変わる
    2-2.住宅ローンの融資審査が厳しくなる
    2-3.地代や解体準備金などのランニングコストがある
    2-4.地主の許可が必要になることもある
  3. 借地権付きマンションを売却する手順
    3-1.査定依頼~媒介契約
    3-2.売却活動
    3-3.申込み~引渡し
  4. 不動産会社選びの注意点
    4-1.経験豊富な不動産会社を選ぶ
    4-2.不動産査定価格の根拠をヒアリングする
  5. まとめ

1.借地権付きマンションは種類によって売りにくさが変わる

借地権の種類は、大きく分けて旧法借地権・新法借地権の2種類あります。大まかに、定期借地権マンションであれば「新法」に該当し、それ以外は「旧法」に該当するケースが多いと言えます。

二つのうち、旧法借地権は借地権の中では比較的売りやすいマンションです。一方、定期借地権(新法)は居住期間が限られているため、所有権マンションや旧法借地権マンションよりも売りにくくなります。

まずは、自分のマンションが旧法なのか新法(定期借地権)なのか確認しましょう。なお、次章以降で「借地権付き」と表記した場合は、旧法・新法の両方を指します。

2.借地権付きマンションと所有権マンションの売却時の違い

次に、借地権付きマンションと所有権マンションを売却するとき、具体的にどのような点が違うのか解説します。主な違いとしては以下のような項目です。

比較項目 所有権 旧法借地権 定期借地権
買主の印象
住宅ローン
ランニングコスト 管理費・修繕維持積立金 地代や解体準備金などの費用 地代や解体準備金などの費用
地主の許可 ◎不要 ×必要 ○基本不要

買主の印象や住宅ローンの審査が厳しくなることから、借地権付きマンションは所有権マンションよりも価格が安くなる傾向にあります。

エリアや物件によって異なるため一概には言えないものの、旧法借地権は所有権の1%~5%前後ダウンし、定期借地権は20%ほどダウンするケースもあります。

借地権付きマンションの価格が下がる理由を含め、各項目について解説します。

2-1.所有権の有無によって買主の印象が変わる

借地権付きマンションは土地が自分の所有物とならないことから、所有権マンションと比較して買主の印象が悪くなる傾向にあります。

しかし、旧法借地権は、定期借地権ほど印象が悪くならないこともあります。旧法借地権は、居住者が「期間を更新したい」と申し出れば、基本的に契約更新される仕組みのためです。

定期借地権と異なり契約更新が可能であるため、居住者は借地権のデメリットを大きく感じず、悪い印象を持たないケースも少なくありません。

一方、定期借地権は残存期間が終了すれば必ず退去しなければいけません。定期借地権マンションは新築時50年に設定しているマンションが多く、たとえば築12年で売れば残存期間は38年となります。

2-2.住宅ローンの融資審査が厳しくなる

買主が住宅ローンでの購入を検討していた場合、所有権マンションと比較して借地権付きマンションは住宅ローンを組みにくくなります。借地権付きマンションは土地の所有権が含まれておらず、金融機関の担保評価が低くなるからです。

定期借地権の場合は残存期間が決まっているため、更に担保評価が落ち住宅ローン審査に通りにくくなります。

つまり「買いたくても住宅ローンの審査に通らないため買えない」ことが考えられる点も、借地権付きマンションが売りにくい理由の一つと言えます。

2-3.地代や解体準備金などのランニングコストがある

所有権マンションの主なランニングコストは管理費・修繕維持積立金となりますが、借地権付きマンションのランニングコストには地主へ支払う地代がかかります。その他、定期借地権の場合は解体準備金を支払うマンションもあります。

ランニングコストはマンションによって異なるため、事前に自分のマンションのランニングコストを確認しておきましょう。たとえば「地代も解体準備金も前払い方式(ランニングコストなし)」を採用している定期借地権マンションもあります。

2-4.地主の許可が必要になることもある

定期借地権マンションでは多くの場合で地主の許可は不要です。ただし、定期借地権マンションの売却時は、地主に「通知」が必要な場合があるため、購入時の重要事項説明書で確認しておきましょう。

一方、旧法借地権は地主の許可が必要な上に「譲渡承諾料」が発生する可能性があります。こちらも重要事項説明書で確認が必要です。

このように、借地権付きマンションは所有権マンションよりもデメリットが多くなる関係で、売却価格は下がります。また、旧法借地権と定期借地権の違いについてもどちらの契約となっているのか確認をしておきましょう。

3.借地権付きマンションを売却する手順

借地権付きマンションを売却する手順は、基本的に所有権マンションと変わりません。具体的には以下の手順になります。

  1. 査定依頼
  2. 媒介契約の締結
  3. 売却活動
  4. 申込みおよび契約
  5. 引渡し

それぞれ解説します。

3-1.査定依頼~媒介契約

まずは不動産会社へ査定依頼して、マンションの査定価格を算出してもらいましょう。査定価格とは、マンション売出時の目安となる価格です。

不動産査定は1社だけではなく、複数社へ依頼して査定価格や査定の根拠を比較することが重要です。複数の不動産会社へ同時に査定依頼が出来る不動産一括査定サイトなどを活用し、複数の不動産会社へアプローチしてみましょう。

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不動産会社による査定価格を確認して売却(仲介)を依頼したい不動産会社を決めたら、マンションの売却を正式に依頼するために不動産会社と媒介契約を締結します。

3-2.売却活動

媒介契約を結んだ後に売却活動が開始されます。売却活動では不動産会社が主導して主に以下のような活動を行います。

  • 広告活動による集客
  • 内見(物件見学)のアポ調整
  • 内見者の案内や交渉

内見は売主が在宅中に行うことが多いため、内見者の予定になるべく合わせるようにしましょう。実際の物件案内や交渉などは、営業担当者に任せることも可能です。

3-3.申込み~引渡し

検討者との価格交渉や引渡し日の調整ができたら、申込み・契約の手続きに移行します。手続きは営業担当者が主導し、売主は必要書類をまとめたり、買主からの質問に不動産会社を通して回答するなどの作業があります。

売買契約を結んだ後は、抵当権抹消登記などの手続きがあるため営業担当者の指示に従いましょう。売買契約から概ね1~1.5か月後に引渡しを行い、マンションの売却は完了となります。

4.不動産会社選びの注意点

次に、借地権付きマンションを売却するときの「不動産会社選びの注意点」を解説します。以下が主な注意点です。

  • 経験豊富な不動産会社を選ぶ
  • 査定価格の根拠をヒアリングする

こちらも詳しく見て行きましょう。

4-1.経験豊富な不動産会社を選ぶ

1つ目の注意点は、経験豊富な不動産会社を選ぶことです。上述したように、借地権付きマンションは所有権マンションと異なる点が多く、売却時は借地権に関するノウハウが必要となるためです。

借地権付きマンションは中古市場に出回る機会が少なく、不動産会社の仲介担当者の中でも借地権付きマンションに詳しい人は多くありません。担当者によっては借地権付きマンションの仕組みを理解していない方もいるでしょう。

そのような担当者だと購入検討者に対して借地権の説明を上手くできず、商談が成立しないケースも考えられます。そのため、過去の実績を確認し、経験豊富な不動産会社を選ぶことは重要と言えます。

4-2.不動産査定価格の根拠をヒアリングする

2つ目の注意点は、不動産の査定価格の根拠をヒアリングすることです。前項ともつながりますが、査定価格の根拠をヒアリングすることで、借地権に対する知見を測ることができます。

査定結果が返ってきたときに「今まで借地権付きマンションを売却した経験はありますか?」「どのような物件で、売却期間はどれくらいかかりましたか?」とヒアリングしてみましょう。過去に類似の売却経験があり、事例に基づいた査定価格であれば信頼性は増します。

ただし、「借地権付きマンションの売却経験があること」は、不動産会社を選ぶ上での必須条件ではなく、参考にできる要素の一つとしてとらえておきましょう。前述したように、借地権付き物件は中古市場にも少なく、経験がない不動産会社も多く含まれるためです。

過去の実績がない場合にはその他の査定根拠について確認し、なぜその価格になったのかを確認しましょう。

まとめ

所有権マンションと借地権付きマンションは異なる点が多いため、売却価格に差が出ることがあります。また、借地権付きマンションも旧法借地権と定期借地権で異なるため、それぞれの違いを理解しておきましょう。

旧法借地権でも定期借地権でも、信頼できる不動産会社を見つけられるかどうかは重要なポイントです。そのためには、複数社へ査定依頼して査定価格の根拠をヒアリングし、より良い不動産会社へ売却依頼ができるように進めていきましょう。

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中村 昌弘

都内の大学を卒業後にマンションディベローパーに就職。マンションディベロッパーでは、新築マンションの販売や中古不動産の仲介業務に従事する。 2016年に独立して、不動産関係の記事を中心としたライター業務としても活動。自身のマンションを売却した経験もあるため、プロの視点・一般消費者の視点と、両方の視点を持った記事が執筆できる点が強み。