不動産分野にITを導入する動きが加速しており、ついに賃貸仲介の分野では、平成29年10月1日からIT重説(賃貸取引に係るITを活用した重要事項説明)が解禁されました。
この記事では、IT重説の概要や、IT重説が不動産投資にどう関わってくる可能性があるのかなどについて解説をしていきたいと思います。
- IT重説とは
- IT重説の想定利用者
- IT重説の不動産投資への影響
- 不動産売買取引でもIT重説は解禁されるか
IT重説とは
IT重説とは、宅建業法第35条に基づき宅地建物取引士が行う重要事項説明を、テレビ会議等のITを活用して行うものを指します。パソコンやテレビ等の端末を利用して、対面と同様に説明・質疑応答が行える双方向性のある環境が必要となります。
IT重説の解禁により、賃貸契約を締結する際にSkypeなどを使用して重要事項説明を受けることができるようになるため、店舗に直接訪問しなくても契約手続きが進められるということになります。
IT重説の想定利用者
IT重説の利用者として想定されるのは、主に次のような方となります。
- 現在地方に住んでいて、都内の大学に子どもが入学予定の方
- 現在地方に住んでいて、都内に転勤する予定がある方
- 現在海外に住んでいて、日本に移住する予定がある方
- 平日に休みを取ることが難しい方や日程調整が難しい方
現在地方に住んでいるが、都内の大学に子どもが入学予定の方
子どもが都内の大学に入学予定で、実家が地方に住んでいるといったケースでは、契約者である親が重要事項説明を受ける必要がありますが、重要事項説明のためだけに都内に行くというのは時間もお金もかかってしまい大変ですので、IT重説を利用することにより実家にいながら説明を受けることができるようになります。
現在地方に住んでいて、都内に転勤する予定がある方
転勤が予定されている方も、IT重説の利用対象者となることが想定されます。転勤時には、引っ越しの準備や各種手続き、仕事の引き継ぎなどで、なかなかまとまった時間が取れないことが多いため、重要事項説明をSkypeなどで受けることができるというのは非常にメリットを感じるポイントとなるでしょう。
現在海外に住んでいて、日本に移住する予定がある方
海外に住んでいる方は、地方に住んでいる方以上に移動に時間とお金がかかってしまいますので、IT重説を利用することが想定される主要な層の一つとなります。
平日に休みを取ることが難しい方や日程調整が難しい方
物理的に遠いという以外にも、平日にまとまった時間を取ることができない職業の方や、非常に多忙な方、介護や育児などで長時間家を離れることができない方など、何らかの事情で日程調整が難しい方もIT重説の想定利用者となります。
IT重説の不動産投資への影響
IT重説の解禁は、不動産投資のなかでは賃貸管理(賃貸付け)に影響してくるものと考えられます。特に、学生向けのアパートや大学付近のマンション、多忙な職業の方の入居が多いエリアや物件などでは、IT重説に対応可能な物件かどうかが物件選びの際の差別化の一つになってくると考えられます。
賃貸仲介ポータルのSUUMOでは、すでにIT重説が対応可能な物件かどうかが検索の際に選択可能となっており、関東では2017年11月7日時点で全262,415件中 16,972件(6.47%)がIT重説に対応可能な物件として登録され始めています。
関東の「IT重説」対応可能な物件情報一覧|SUUMO(スーモ)賃貸
IT重説が対応可能な賃貸管理会社に依頼をすることで、地方在住の転勤予定者や学生の親、多忙な職業の方などを新たに取り込みやすくなるため、不動産投資の収益機会が広がることになります。
逆に、現在IT重説が対応ができない賃貸管理会社に依頼をしている場合は、今後の入居状況やIT重説対応可能物件の広がり具合を見ながら、乗り換えの検討をしてみることをおすすめします。
不動産売買取引でもIT重説は解禁されるか
現在、IT重説は賃貸取引に限定されていますが、不動産売買の領域にも拡張される可能性があります。もし売買取引の分野にもIT重説が導入されることになれば、地方在住者や海外在住者、平日多忙な方などの不動産投資への新規参入が期待されますので、国内の不動産投資の市場活性化につながると考えられます。
現状の動きとしては、すでに平成29年8月1日から平成30年7月末までの期間で、テレビ会議システムやテレビ電話(スカイプ等)を用いた法人間売買取引の社会実験が行われており、導入に特に問題なしと判断されれば、早ければ来年に売買取引にもIT重説が導入されると考えられます。個人を含む売買取引については、「賃貸取引の本格運用の実施状況、法人間売買取引の社会実験の結果を踏まえて、社会実験又は本格運用を行うことを検証検討会において検討する。」とされており、今後のIT重説の動向が注目されます。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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