自分で年金を作る「個人型確定拠出年金(iDeCo)」とは?どんなメリットがある?

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老後の資産に関する報道などを見て、「自分も資産運用をしたほうが良いのかな?」と思っている方は多いはず。ただ、iDeCoやつみたてNISAなどを実際に始めてみようと思い立っても、いざ大量の資料を目の前にすると「やっぱり難しそう」「面倒だな…」となかなか始められていない人もいるのではないでしょうか。

とっかかりは少々面倒でも、税制上や将来の資産形成に有利な面が多々ある制度を見逃すなんてもったいありません。少しでも有利な方法があれば、活用したいところです。

この記事では個人型確定拠出年金のメリットや選び方をご紹介しますので、申込を後回しにしている人も、まだよく知らないという人も、ぜひ参考にしてみてください。

目次

  1. 個人型確定拠出年金は「自分年金」
  2. 個人型確定拠出年金(iDeCo)はどんなメリットがあるの?
    2-1.掛け金の全部が所得税・住民税の控除対象になる
    2-2.運用益が非課税になる
    2-3.満期後の受け取り方が選べて、各種控除もある
  3. 実際に始めるには何が必要?
  4. 個人型確定拠出年金(iDeCo)の選び方 始める前の注意点
    4-1.商品の充実性
    4-2.手数料
  5. まとめ

1.個人型確定拠出年金(iDeCo)は自分の年金

年金の種類には、20歳以上の人が全員加入する国民年金と、会社員・公務員の人が入っている厚生年金があります。会社員の人は、国民年金と厚生年金の両方がもらえますが、自営業の方などは国民年金だけの受給になるため、自分で任意の国民年金基金に加入し、国民年金に上乗せをして年金を増やすことができるようになっています。

ただ、昨今の年金事情を鑑みると、それだけでは老後資金の確保が難しくなり、また企業年金なども一部の大企業でしか利用できないため、こうした状況を補完する形で確定拠出年金が登場します。

よく確定拠出年金は「3階立ての3階部分」と言われていますが、これは会社員の方を例にすると「国民年金(1階)+厚生年金(2階)+確定拠出年金(3階)」と積み立てることとなるため、そう呼ばれています。

個人型確定拠出年金(iDeCo)は、以前は加入者の制限がありましたが、2017年1月からは基本的に自営業者(第1号被保険者)、会社員(第2号被保険者)、専業主婦(第3号被保険者)といったすべての方が利用できるようになっています。

掛け金の上限は、加入資格によってそれぞれ異なっています。例えば、第1号被保険者である自営業の人などは、月額最高6.8万円まで拠出することができます(ただし、国民年金基金または、国民年金付加保険料との合算枠)。

第2号被保険者である会社員は、勤務先の企業が企業年金を持っているなどの場合によって、上限が月額1.2万円~2.3万円までと異なります。また専業主婦などの第3号被保険者は、月額2.3万円が上限です。

拠出額は基本的に最低5,000円からとなり、それ以上は1,000円単位で拠出額を決められます。自分で拠出額を決め、運用する金融商品を選び、60歳まで運用していくという制度が、個人型確定拠出年金です。つまり、今までは「支払うだけの年金」のみだったのが、自分の将来の為に「自分でお金を出して運用し年金をつくる」という新たな仕組みが生まれたと言えます。

ちなみに、「iDeCo」の愛称は2017年1月の対象者拡大時に作られたもので、個人型確定拠出年金の英語表記(individual-type Defined Contribution pension plan)から構成されています。「i」には「私」という意味があり、「自分で運用する年金」への想いが込められているようです。※iDeCoホームページ「よくあるご質問「iDeCoとはどのような制度ですか」」より一部抜粋

2.個人型確定拠出年金(iDeCo)はどんなメリットがあるの?

iDeCoの大きなメリットとしては、税制優遇制度があります。運用時に受けるメリットと受給時に受けるメリットがあり、全部で3つのポイントがあります。

2-1.掛け金の全部が所得税・住民税の控除対象になる

iDeCoでは、毎月拠出している掛金の全額が毎年の所得税・住民税の所得控除の対象になります。例えば、毎月10,000円の拠出をしている場合、年間で12万円になります。課税所得金額が330万円超695万円以下の場合、所得税率は20%のため、10,000円×12ヶ月×20%=24,000円の所得税が軽減されます。

2-2.運用益が非課税になる

運用が上手くいき運用益が出た場合、通常はその利益に対して課税されますが、iDeCoではそれが非課税になるというメリットがあります。

例えば、30歳で月々10,000円を掛けていくと、拠出額の合計は年間12万円×30年間=360万円になります。仮に運用利回りを年3%にすると評価額は5,801,402円となり、掛け金との差額(運用益)は2,201,402円になります。iDeCoではその金額に課税されず、全額を受け取れることになります。

2-3.満期後の受け取り方が選べて、各種控除もある

上記2つは運用時に受けられるメリットですが、年金の受給時にもメリットがあります。受け取り方法を年金としての受給か、一時金としての受給か選択ができ、年金として受け取る場合は「公的年金控除」、一時金の場合は「退職控除」の対象となります。

3.実際に始めるには何が必要?

iDeCoを始めるには、まず金融機関を選ぶことが必要です。金融機関には、銀行、信託銀行、証券会社など様々あります。2019年7月時点で約160社も取り扱い金融機関があるので、どこが取り扱っているかはiDeCoのホームページなどで一覧を確認することが必要です。

また、加入資格によって掛金の上限額が異なります。自分がどの加入資格に該当するのかは、iDeCoのホームページや金融機関のホームぺージでも確認できます。これらを踏まえた上で、選んだ金融機関の指示に従って申込の手続きを行うことになります。

4.個人型確定拠出年金(iDeCo)の選び方

個人型確定拠出年金(iDeCo)を始めるには、まず金融機関を選ぶ必要がありますが、その際には注意が必要です。選び方のポイントとしては、以下の2つがあります。

4-1.商品の充実性

iDeCoでは、自分で運用する商品を決めないといけません。利用する金融機関によって商品の数も種類も様々です。商品をたくさん選択できる方が、ポートフォリオを組みやすいので良いでしょう。

iDeCoに加入する前に、各金融機関のサイト上でどんな商品を扱っているのかを確認できるので、それを見ながら検討することが大切です。金融機関ごとの特徴としては、ネット証券会社などでは投資信託が殆どですが、銀行や信託銀行などは預金や保険などの商品の取り扱いもしています。

4-2.手数料

iDeCoは、タダでは運用できません。毎月口座管理手数料などがかかってきます。手数料の発生は毎月のことで、長い運用期間にもなるので、いくら税制のメリットがあるとはいえ手数料の違いは後々の運用に響いてきます。

iDeCoの取り扱い金融機関は160社もあるため、手数料の少ないところや手数料(信託報酬など)の安い商品を数多く取り扱う金融機関などを探して始めることが必要です。

5.iDeCoを始める前に注意したいこと

上で手数料について少し触れましたが、金融機関に対してかかる手数料の他にも、別途かかる手数料があります。

  • 加入・移管時手数料(初回1回のみ):2,777円、最初にiDeCoを始める時や、転職などで移管した場合にかかる手数料になります。
  • 加入者手数料(掛金納付の都度):103円、掛け金の都度かかってくる手数料です。
  • 信託報酬:ファンド商品の運用に対して発生する手数料です。ファンドごとに信託報酬は異なるため、なるべく安いものを選ぶと良いでしょう。

iDeCoでは「ポータブル制度」があるので、転職しても運用を継続することができるようになっています。ただし、その際には書類手続きおよび移管時手数料の負担が必要となる点には注意が必要です。

またiDeCoでは運用益が出ることもあれば運用損も出ることがあります。その場合は自分が将来受け取る年金が少なくなるということになります(あくまでその時点の評価額で考えた場合)。

iDeCoは税制面で優遇がありますが、月々かかってくる手数料もあります。さらに60歳までは原則として運用を継続する必要があり、途中で解約・受給などはできないため、無理なく拠出・運用を続けることを前提とする必要があります。途中で掛け金の変更はできるので、ライフプランに合わせてそのつど変更も必要になり得ます。

まとめ

iDeCoは、将来の年金の受給に不安がある人にとって良い制度になりますが、金融機関の選定から商品の選定、書類の提出まで、始めるまでの道のりがなかなか大変です。また、自分で運用をしなければならないため、任せっきり、放りっぱなしにすると大きな損失も伴いかねません。

しかし、2017年1月に資格の拡大をしてから利用者は徐々に伸び始めており、2019年3月末時点で個人型確定拠出年金の加入者は120万人を超えています。老後のお金への不安が高まる中で、それだけ多くの人が関心をもっているということでしょうか。

投資の基本としては、「長期・分散・積立投資」が挙げられます。リスクを抑え、長い目で資産を増やしていくためには大切な考え方です。個人型拠出年金は、分散投資をベースに長い期間運用を行うもので、かつ税制上のメリットも大きいので、将来の年金としての資産形成に大きな効果を発揮してくれるでしょう。

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河合志保

証券会社での勤務経験を活かし、金融商品、投資、経済関連などのライティングをしています。 日々変化する金融の世界は、Fintechでさらに加速し、ますます面白くなっていきそうです。 そんな金融の世界にもっと興味を持ってもらえるよう、わかりやすく、ためになる記事を発信していきます!