テレビや新聞、インターネットなどのメディアで「SDGs」や「ESG」などの言葉を目にする機会が増えてきています。また、企業のサイトやIRのレポートなどでも、環境や社会への取り組みなどが以前よりもクローズアップされることが多くなってきています。
これは、環境や社会の問題が遠くの未来に対処すれば良いというものではなく、今この瞬間に取り組むべきものとして考えられ始めていることによるものです。たとえば、地球温暖化の問題は進み続けていて、このままの状態で行くと2030年~2050年には1.5℃上昇すると予測されています(IPCC「1.5°C特別報告書」)。 気温が上昇することにより、災害や洪水のリスクが増え、私たちだけでなく、地球上の生物も絶滅する危機が高まります。
そのため地球環境について考えることは、これからの私たちの人生を考える上でも、世の中の経済活動を支える投資という行動を考える上でも欠かせない重要なことだと言えます。今回は、地球環境も含めた持続可能性の観点から投資に取り組むことを考えてみたいと思います。
目次
- 「SDGs」はなぜ注目されている?
1-1.SDGsとは
1-2.合言葉は「サステナブル」、世界中を巻き込むSDGs - SDGsと投資にはどういう関係があるのか
2-1.サステナブルをキーワードにして取り組む社会的課題 - SDGsの課題がビジネスと投資のチャンスに繋がる
3-1.今、企業に求められているESGとESG投資とは?
3-2.ESG投資が、社会課題の解決の後押しをする - まとめ
1.「SDGs」はなぜ注目されている?
ビジネス用語の中でも注目のキーワードになったSDGs。時々、テレビの解説者の方や都内のビジネスマンの方の中にも、SDGsのバッジをつけている人を見かけます。カラフルな丸い輪の形をしたバッジ、SDGsのバッジだと気づかなくても目にしていることはあるかもしれません。
しかし、なぜこんなにSDGsについて盛り上がっているのでしょうか。まずはSDGsとは何か、ということから見ていきましょう。
1-1.SGDsとは
SDGsとは 「Sustainable Development Goals」の略で、「持続的な開発目標」を意味します。2015年の国連のサミットで採択されたもので、このSDGsのベースとなったのが、2001年のミレニアム開発目標(Millennium Development Goals: MDGs)です。
MDGsは、貧困や教育、環境問題などの8つの目標を掲げ、2015年までの目標として行われました。このMDGsで一定の成果をあげることが出来たとして、その目標を引継ぎ、さらに環境・格差拡大の対応も追加されたのがSDGsです。
SDGsには17の目標と169のターゲットのゴールが定められました。SDGsは目標を立てるだけでなく、ターゲットを決めて2030年までのGoalを目指す取り組みなのです。1つのゴールではないので、SDG”s”と複数形になっているのです。
1-2.合言葉は「サステナブル」、世界中を巻き込むSDGs
SDGsの最終目標は、「誰一人取り残さない、持続可能で多様性と包摂性のある社会の実現を目指す」としているため、全ての国による行動、社会・経済・環境への取り組みは不可欠であり、統合的に取り組む必要があります。
そのため、国連から各国々に対し、その目標への取り組みと進捗状況や達成度合いの提出が求められています。日本でも政府から自治体、そして日本経済を支えている企業もSDGsに取り組む必要性が生じています。
ビジネスの世界では今、SDGsをまったく考えずに経営の戦略や方針を立てることは難しくなってきています。そのため、「SDGs」が経営上の重要トピックの一つとなり、SDGsのバッジをつけているビジネスマンなども多く見られるようになっているのです。
2.SDGsと投資にはどういう関係があるのか
SDGsの取り組みは、投資の世界でも変化を起こしています。持続可能な社会に向けた取り組みとリターンを追求する投資の世界は一見すると対極にあるようにも見えます。しかし現在、企業はSDGsの目標を達成するため、自社のビジネスモデル設計に地球環境へのリスクや人権問題などの観点を考える必要性が出てきました。
SDGsが注目される以前も、一部の企業はCSR(企業の社会的責任)を果たそうと活動を行っていましたが、投資家は企業のCSR部門や活動をコストセンターと見る向きも多く、投資のリターンと直結していないと考える傾向がありました。
しかし、現在は投資家も「企業がSDGsの目標を取り入れているか」「SDGsにどう取り組んでいるか」によって、投資をするかどうかの判断をする必要性が高まってきています。
なぜなら、自分が投資している企業が社会や環境に悪影響を及ぼしている場合に、将来的にブランドイメージが低下することによる業績悪化リスク、優秀な人材が採用できなくなるリスク、大手の機関投資家や金融機関が資金を引き上げる(=ダイベストメント)リスクなどがあるためです。
2−1. サステナブルをキーワードにして取り組む社会的課題
地球温暖化などの問題を解決していくにあたって、脱炭素社会のために水素などの利用を活発にしたり、エネルギーや製品をただ消費し続けるのではなく、より低コストに循環ができる仕組みが必要になったりします。
そういった仕組みを作り出す技術も、SDGsの後押しによってこれからどんどん開発が進んでいくでしょう。地球温暖化の問題を考えると、こうした取り組みは早急に進めて行く必要もあります。
そして企業は、何より自分たちの事業をサステナブル(持続可能)にしていくことを考える必要性が出てきます。今、企業が生き残るために求められていることは、環境負荷を考えずに大量生産などを行うことではなく、数十年後も持続できる循環型のサービス・製品や社会から支持される組織・経営を実現することです。
商品を開発するときにも、企画・計画段階から「サステナブル」の視点で考えるようにしなければ、長い目で見ると生き残ることが難しくなっていくでしょう。少し大げさかもしれませんが、SDGsを視野に入れていかないと、企業の存続自体が難しくなってくる時代が到来しつつあるのです。
3.SDGsの課題がビジネスと投資のチャンスに繋がる
SDGsの観点により、企業によっては事業を見直す必要性も出てきているかもしれません。しかし一方で、SDGsについて考えることをきっかけに、持続可能な経営を真剣に目指すようになったり、より良い社会の実現に繋がる新しいビジネスチャンスも増えてきていたりするのも事実でしょう。
そして、そのチャンスを掴めるのは、企業だけでなく投資をする側も同様だと言えます。サステナブルな企業活動は、投資家にとっては長期的にリターンを得られることに繋がります。地球環境や全ての人が持続可能な社会で生きていける仕組みを行っている企業に投資することは、自分にとっても未来にとっても良いことになるのではないでしょうか。
3−1.今、企業に求められているESGとESG投資とは?
SDGsは様々な取り組みの「ゴール」にあたるものですが、企業活動の「プロセス」に着目をしているのが「ESG」という概念です。ESGというのは、環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)の頭文字を表しています。
ESGを意識して日々の企業活動を行っていくことで企業のサステナビリティが向上し、将来的にSDGsの目標達成の実現にも貢献をすることができます。また、SDGsを2030年までにすべて達成するには数百兆円という膨大な資金が足りないと言われていますが、その資金調達手段の一つとして期待されているのが「ESG投資」です。
ESG投資を推進することは、将来の私たちの生活を持続可能にすることにもつながります。このESG投資やサステナブル投資は、グローバルではすでに投資の主流だと言われており、日本でも今後主流になっていくと考えられます。
3−2.ESG投資が、社会課題の解決の後押しをする
最近ではESGに取り組んでいる企業に投資する投資信託やETF、債券など、様々な金融商品が登場しており、ESG投資を後押ししています。
また、比較的新しい投資手段であるクラウドファンディングにおいても、プロジェクトごとに投資の目的がはっきりと提示されているので、投資によりどういう社会的なインパクトがあるのかといったこともわかるようになっています。
たとえば、社会的インパクト投資を手掛ける「クラウドクレジット」は、第一生命や伊藤忠商事が株主として入っている会社で、資本金などの規模も大きく、大きな成長が期待されている会社です。発展途上国の資金需要が旺盛な中小事業者に対して、ソーシャルレンディング(貸付型クラウドファンディング)の仕組みを使い、日本の余剰資金をそれらの国々に供給(マイクロファイナンス)することにより高利回りの実現を目指しているサービスです。
クラウドクレジットでの投資を通じて、現地の人々の事業活動促進、雇用の創出、マイクロファイナンス事業者や再生可能エネルギー事業者等への融資を行うことができ、発展途上国の人々の生活水準向上に貢献することが可能です。社会的なリターンと経済的なリターンの両立を目指すサービスとなっています。
投資額は1万円から、7ヶ月から投資が可能で、少額で社会的インパクトを創出できる投資が始められるため、まずは小さい金額で試してみたいという初心者の方にも向いています。また、外貨建ての案件や10%を超える高利回り案件にも投資することが可能です。
クラウドクレジット
企業だけではなく投資家サイドでも、どのようなゴールに向けて投資をするのかを考えていく時代になってきたと言えるでしょう。
3−3.日本政府は「脱炭素」「サーキュラー・エコノミー」を推進
ESGを推進する動きは日本全体で強くなっています。2020年10月26日、菅総理が就任後初の所信表明演説において「2050年温室効果ガス排出量ゼロ」を表明しました。これにより、パリ協定の1.5度努力目標が視野に入る長期目標に踏み込んだことになります。この所信表明は、日本国内のESG投資の重要性を改めて認識させる契機となりました。
また、2021年1月19日には、環境省と経済産業省が「サーキュラー・エコノミーに係るサステナブル・ファイナンス促進のための開示・対話ガイダンス」を取りまとめ、公表しています。これは、政府が策定する世界初のサーキュラー・エコノミーに特化した開示・対話ガイダンスで、サーキュラー・エコノミーやプラスチック資源循環に資する取り組みを進める日本企業が、国内外の投資家や金融機関(「投資家等)から適正に評価を受け、投融資を呼び込むポイントを、事例を交え解説しています。
このように、政府がESG投資に対して積極的な姿勢を示していることから、企業や投資家もESG投資に目を向ける機会が増え、ESG投資には追い風となっている背景があります。
【関連サイト】サーキュラーエコノミー推進プラットフォーム「Circular Economy Hub」
まとめ
「MOTTAINAI(もったいない)」という日本語が世界の言葉になるなど、日本は昔から物を大事に扱う国でもありました。この持続可能な社会への取り組みは、日本にとっては得意分野になるのではないでしょうか。
こうしたSDGsに配慮した取り組みは、個人レベルだと意識しなければ継続は難しいかもしれませんが、投資をするという視点から見てみると、対象選定が厳しくなるのではないでしょうか。
投資する際の視点として、これからは企業の成長性、業績だけでなく、持続可能性が担保できているかを考える時代になってきています。今後はSDGsやESGの目線無しには、投資で長期的に利益を獲得していくことも難しくなってくるでしょう。
企業もSDGsやESGの取り組みをしていかないことには、長期的な存続が難しくなってきています。そのため、SDGsやESGの取り組みは世界中でスタンダードになりつつあります。私たちも投資する企業を選ぶ場合は、今までよりもう一歩踏み込んで調べる必要がありそうです。
河合志保
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