初めて投資をした株式が損失を抱えてしまった場合、「選んだ株が間違っていたかもしれない」と思う人、「投資しなければよかった」と後悔する人、「この先どうしたらいいのか」と悩む人は多くいます。私が証券会社で勤務していた時に、こういったことに悩むお客様からこの先どうしたらよいのかと聞かれたこともあります。
残念ながらはっきりとした答えというものはありません。しかし、下がっている株の企業が、その要因を引き起こしている場合もあれば、ただ株のトレンドで乱高下しているという場合もあります。
そんな時、損失(含み損)を抱えている人には、いくつかの行動パターンがあります。金融商品に投資する以上、損失のリスクはつきものですが、損失の要因や損失を抱えてしまった人が取る行動から、私たちが学ぶ事は多いと思います。
この記事では、私が過去にお客様対応をした中で見られたパターンを取り上げてみたいと思います。
目次
- 投資して損失を抱えてしまった人が取る行動とは
1-1.とりあえず、すぐに売ってしまう人
1-2.どうしたら良いかわからず、売却して取引をやめてしまう人
1-3.売ってしまうことは悪いことではないけれど - 株価が下がる要因とリスク
2-1.株価が下がる要因(内部環境)
2-1.株価が下がる要因(外部環境)
2-2.それぞれの要因によって対処しないといけない - 投資のベテランは、こんな場合どんな対処をするのか
3-1.投資を続けている人は、どのような行動を取っているのか - まとめ
1.投資して損失を抱えてしまった人が取る行動とは
株価が暴落する、損失を抱える、この先どうなるのか。特に初めて投資をした場合には、このように不安になる人が多いと思います。そういった状況で人が取る行動は様々ですが、多くの人は、心理的不安から売ってしまった方が良いのか、このまま持っていた方が良いのかを悩みがちです。
1-1.損をしたら、すぐに売ってしまう人
投資した株式が自分の思ったように動いてくれず、含み損(まだ売却していないために未確定な損失のこと)になっていると怖くなってすぐに株を売る人は多くいます。
損をしているというのは心理的に良いものではありません。さらに株価は動くので、この先まだ下がるのかなという恐怖もあります。特に、暴落した時には株価が戻るというイメージが掴みにくいため、その心理的不安を一掃するために売却する人も増えます。
1-2.どうしたら良いかわからず、売却して取引をやめてしまう人
損失を抱えてしまったが、どうしたら良いのかがわからない。心理的不安もあるので、出来ればもう考えたくない。忘れるために株を売却して、「もうこんな思いはしたくないから、投資はやらない」と言う人もいます。投資が嫌なイメージとして残ったままやめてしまう残念なパターンです。
1-3.売ってしまうことは悪いことではないけれど
損失を広げないために、時には含み損の株を売却することも必要です。しかし、株価が下がるには要因というのがあり、その要因によっては一時的に株価が下がっているだけという場合もあります。
そういった値下がりの要因がわかれば、「株価が一時的に下がっていたとしても、また回復する場合もある。いま損してまで売却するのは、どうなのかな?」と検討する余裕が出来ます。この判断ができるようになってくれば、不安も少なくなってきます。
2.株価が下がる要因とリスク
株式は、基本的にその会社が上場廃止にならない限り保有する事ができます。しかし購入した時期によって株価は変わるため株価が下がった場合に含み損を抱えやすい状況かどうかも変わります。つまり、買うタイミングも重要なのです。
一般的に、株価が下がる要因は内部環境と外部環境に分かれます。
2-1.株価が下がる要因(内部環境による場合)
株価が下がる要因の中で内部環境によるものでは、例えば、その企業の業績が悪かった、受注が減ったなどによって、企業の勢いや成長性が見られなくなったと判断されるなどで、嫌気売りが出たりします。決算発表時にこういったニュースが出て、今後の成長があまり見込まれないと売られる場合もあります。
それ以外でも突然出たネガティブニュースによって失望売りが出たときなど、場合によっては大きく株価が下がる場合があります。しかし、ネガティブニュースが出た場合は、そのネガティブな状況に対して、企業がどういう対応をするかということを確認しておいた方が良いでしょう。なぜなら、一時的な状況であれば株価の回復が期待でき、一時的に売られ過ぎても株価が戻る可能性があるからです。
また、気をつけておかないといけないことの一つに、最近多く行われる合併や買収、吸収、株式交換などのコーポレートアクション(M&A)があります。上場廃止になる場合もあるからです。株式公開買い付け(TOB)などでは投資家から株式を買い取ってくれる手続きがありますが、それ以外の場合で、会社から上場廃止の時期が発表された場合は、早めに対応しタイミングを見て売却をする必要性が出てきます。
2-2.株価が下がる要因(外部環境による場合)
一方で、外部環境により株価の下がる要因には、国の外交関係の悪化や、経済状況による株価の値下がりなどが挙げられます。例えば、リーマンショックの時は、企業の業績に関わりなくほぼ全ての銘柄が大きく下げました。
また為替の動向で関連する輸出企業の株価が下がったり、地政学リスクの観点などから国際情勢の先行きが不透明になり、大きく下げたりする時もあります。
他にも担保や証拠金を元にした信用取引が多く行われている場合、一定以上の値動きにより一気にポジションが清算され、それがまた値動きに影響を与えることもあります。結果としてより激しい値動きになる時もあれば、元の水準に戻る動きをする時もあります。
さらにモメンタム株の影響などもあります。モメンタムとは、動きとか跳ねるといった意味で、モメンタム株は「動きがいい株」のことを指して呼ばれます。時々、他の株式を売却してそのモメンタム株に動きが集まる場合があり、そうなるとなぜか個別企業の株価が下がっている、ということも起こります。
3.投資のベテランは、こんな場合どんな対処方法を取っているのか
投資には、元本割れのリスクがあります。しかし、それでも投資を続ける事が大切なのだと、株式投資などを何十年と続けているベテランを見て思った事があります。そして、何十年も株式投資を続けて着実に資産形成をされている方に共通していると感じるのは、大きなリスクを取らないという点です。
何十年も投資を続けていても、ある程度の資産を形成されていても、思うようにいかない場合はあります。そういった状況に陥っても、ベテランは株式を売るタイミングとホールドするタイミングをしっかり見極めているのです。損切りを行うこともありますが、損益通算などの税制などをうまく活用するなどで、損失をできる限り少なくされています。
また配当なども次の株式の購入代金に回したり、ある程度含み益が出た株は売却し、またその資金を次の購入資金に充当したり、といったことをされています。独自の投資ルールに基づき、利益が出たらそれを再投資に回している方が多いのです。
3-1.投資を続けている人は、どのような行動を取っているのか
投資を長期間続けて資産運用を行っている方は、「無理をしていない」ということが前提にあります。少しずつ適切なタイミングを見て購入し、運用をし続けています。焦らずにじっくりと続けることで資産を増やしていき、やがて運用する金額が大きくなるのだなということを感じます。
反対に、例えば退職金を使って投資をする人や、相続で引き継いた資産などで一度に大きなお金を得たような人の中には、一気に億万長者になることを目標にして、大きな取引をしたり、リスクの高い取引をしたがる人もいます。
そういった人は、含み損を抱えると深く考えないまますぐに売却して別の商品に乗り換えたりしています。また、自分の取引を過信するので、人のアドバイスは聞きたがらない傾向もあります。そういう方の多くは資産を食いつぶして、ほとんど資産がなくなって取引をやめざるを得ない状況になります。
雑誌やネットなどに掲載されている一獲千金を得た方というのは嘘ではなく、実際にいらっしゃいますが、なかなか再現するには難しいでしょう。特に、一獲千金を目指して、損を出しては投げ売って資産を無くすばかりで、資産形成にはならないことを強く感じます。
まとめ
今から資産形成を考える方には、この先30〜40年といった長い運用期間があるでしょう。私が対応したお客様には年配の方が多く、中には戦前から投資を初めていた人もいらっしゃいました。
今は株取引の形も方法も昔とは随分変わりましたが、投資にかかわる人間の本質や心理などは変わってはいません。先人の知恵と経験をうまく活用して資産形成を目指していきたいですね。
河合志保
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