不動産を売却する際は、売買をサポートしてくれる不動産仲介会社に依頼をしますが、売却物件の種類や査定価格に応じて依頼先を見定めることが重要です。この記事では、不動産会社選びを間違えて相場より安く売却することがないように、不動産仲介会社の正しい選び方を解説していきます。
一括査定の利用、不動産会社の得意分野、会社の規模、信頼度、営業担当者の質、媒介契約のタイプなどが選定ポイントになりますので、一つずつ確認していきましょう。
目次
- 不動産仲介会社とは
1-1.不動産仲介会社が必要な理由 - 物件売却で不動産仲介会社を選ぶ際の6つのポイント
2-1.一括査定の利用
2-2.仲介会社の得意分野
2-3.大手の仲介会社か地元の小さな不動産屋か
2-4.免許番号・行政処分歴の有無の確認
2-5.信頼できる営業担当者か
2-6.媒介契約の種類 - まとめ
1 不動産仲介会社とは
不動産取引における仲介(媒介)業務とは、不動産の売買や賃貸借について、買主(借主)と売主(貸主)の間に入り、売買契約や賃貸借契約を結ぶ行為です。その業務を担当するのが不動産仲介会社で、宅地建物取引業者とも呼ばれます。仲介会社の主な仕事は以下の3つに分かれます。
①正式な依頼を受けるまでの相談業務 | 不動産の売買や賃貸を希望する依頼者からの相談に対応する業務 |
②売買の取次業務 | 正式な依頼後の不動産の売買や賃貸の取引相手を見つけ出すまでの業務 |
③契約、決済、引渡業務 | 取引相手を見つけ出した後の売買契約や賃貸借契約の締結、決済、引渡等を行う業務 |
このように不動産仲介会社は、物件の売買等に関する依頼者からの相談を受けて、その依頼者の希望に沿って取引相手を探し、売買等の契約から引き渡しまでの一連の業務を担っています。
1-1 不動産仲介会社が必要になる理由
不動産の売買等を適切に行うためには、不動産関連の法律や契約事項などの専門知識が必要となるため、専門家である不動産仲介会社が存在します。
例えば不動産取引では、土地や建物などに関する公法や私法上の規制、権利関係、隣接者間の調整(相隣関係)、取引条件等を正確に把握することが求められ、不動産取引に精通していない者が行った場合は、後々トラブルに発展する可能性が高くなります。
不動産取引に関する問題や損害などを防ぎスムーズな取引を進めて行くには、不動産関連の知識や取引に精通した不動産仲介会社が大きな役割を担っています。
2 物件売却で不動産仲介会社を選ぶ際の6つのポイント
不動産売却では仲介会社によって売却額が大きく異なることもあるため、以下のポイントを参考に、実績豊富で信頼できる会社を選ぶことが大切です。
2-1 一括査定サービスの利用
不動産の一括査定サービスとは、サイトに売却対象の不動産情報を入力するだけで複数の不動産会社から見込みとなる売却価格の提示が受けられるサービスを指します。
サイトに登録している仲介会社の中から数社ほどが抽出され、利用者はその提示される査定価格や売却計画などの情報を比較し、自分の希望に最も適した不動産会社を選ぶことができます。
主な一括査定サイト
すまいValue | 不動産仲介業を営む大手6社によって共同運営されており、最大6社の不動産大手仲介会社に無料で一括査定が依頼できる |
LIFULL HOME’Sの不動産売却査定サービス | 東証プライム上場の株式会社LIFULLが運営、利用ユーザー数476万人(2018年7月時点)、全国1700社以上の不動産投資会社に一括で査定依頼が出せる。個人情報を入力しなくても利用できる「匿名査定」のサービスも。 |
HOME4U | NTTデータグループが提供する国内最大級の不動産査定サイト。2001年にサービスを開始してからこれまでに35万件の査定依頼があり、年間700万人が利用。全国1300社の優良企業から最大6社まで査定依頼を出すことができる |
ただし、一括査定は実際に物件を見て判断したわけではない「机上査定」となるため、最終的には「訪問査定」の結果を見てから、正式に仲介を依頼するかどうかの判断をすることになります。
一括査定のメリット
一括査定をすれば売却価格の相場が掴めたり、仲介会社を短時間で比較検討できたりします。なお、サイトに登録してある会社の特徴から、広範囲の顧客に訴求できる大手の仲介会社や、特定の地域・物件等に強い仲介会社を選べる査定サイトで依頼してみると良いでしょう。
一括査定のデメリット
査定依頼を出すと複数の会社から営業電話や営業メールを受け取ることになるため、負担に感じる方もいるでしょう。
また、査定結果は登録している会社からのものに限られるため、対象物件のタイプと適するものがない場合もあります。その際は、複数の査定サイトに依頼を出してみると良いでしょう。
2-2 仲介会社の得意分野
不動産仲介会社には各々得意・不得意とする物件が異なることがあるため、その点を踏まえた選定も必要です。
例えば、物件のタイプで分けた場合、戸建・マンション、オフィスビル・商業施設、工場・倉庫などを専門にしているタイプや、収益物件や事業用物件を得意としているタイプなどがあります。ほかにはマンション等の開発・建設販売などを主に行う分譲会社、中古物件の買取再販をメインとする買取会社などもあります。
売却を得意とする地域についても、全国展開している大手不動産会社や特定の地域に根差した不動産屋では異なります。
このように特定の地域の細かな住居ニーズなどを踏まえた売込みができる会社、全国から顧客を集められる会社、戸建・マンションの販売に強い会社、新築よりも中古物件の販売が得意な会社が存在するため、自分の不動産の売却に適さない会社を選ぶと満足のいく結果が得にくくなります。
仲介会社は、どのような物件や地域での取り扱いが得意で実績が豊富なのかを確認することが重要です。
2-3 大手の仲介会社か地元の小さな不動産屋か
全国展開しているような大手の仲介会社か、地元の不動産屋かという規模の違いによる特徴も考慮して選定すると良いでしょう。一般的に大手と中小には、以下のような特徴の違いが見られます。
大手仲介会社 | ・資本の大きさを武器に全国の主要都市などに店舗を構えて広範囲な営業展開が可能で、全国から取引相手を探しやすい |
・CMなどの広告にも積極的で集客力が高い | |
・営業担当者に対するノルマがあるため、会社の利益優先の営業になるケースもある | |
・営業担当者の平均的な能力は高いが、担当顧客数が多い場合などでは顧客フォローが希薄になることもある | |
・自分の不動産の近くに店舗がなく、地域の細かい情報が入りにくい | |
中小仲介会社(地元の不動産屋) | ・地域に密着した会社が多く、地域特有の顧客ニーズ・入居ニーズなどの情報を把握し、それを反映した販売計画が期待できる |
・大手ほど顧客数が多くないことから丁寧なサービスが受けられるケースもある | |
・大手ほど営業担当者への教育が行き届いていないケースがあり、担当者により販売計画の内容に差が生じやすい | |
・ピンポイントで買主を見つけることもあるが、大手ほど多くの購入希望者にリーチするのは難しい |
仲介会社の得意分野や実績を調べるには、会社ホームページの取り扱い実績などが参考になるほか、不動産会社を訪問し、販売・広告などの計画内容や営業担当者の宅地建物取引士資格の有無、販売への熱意などを確かめると良いでしょう。
2-4 免許番号・行政処分歴の有無の確認
詐欺まがいの取引を行う会社や自社の利益のみを優先する会社などを選定しないためには、不動産仲介会社の免許番号や行政処分歴の有無などを確認することも重要です。
不動産売買の仲介業務では宅地建物取引業の免許が必要となるため、その免許番号を確認しておきます。免許番号の確認は、免許を交付した行政庁の宅地建物取引会社名簿を閲覧(無料)することで簡単に済みます。
また、会社の行政処分歴は宅地建物取引会社名簿に記載されているため、閲覧すれば会社の実績も一緒に確認できます。
会社情報は、国土交通省の「建設会社・宅建会社等企業情報検索システム」で、商号等を入力すると検索できるようになっています。国土交通大臣が免許をした会社情報と都道府県知事が免許をした会社情報が閲覧可能です。
ただし、上記の免許番号や行政処分歴の有無の確認だけで信頼できるかどうかを判断するのは難しいため、業界の評判やインターネット上の口コミ評価なども参考にすると良いでしょう。
2-5 信頼できる営業担当者か
営業担当者の知識・経験とともに売却に向けた熱意・意欲も重要です。
不動産売却に向けた販売計画を作成するのは仲介会社の営業担当者となるため、会社の売却実績が豊富でも営業担当者の取り組み方次第で、結果が左右されることもあります。
不動産を高く・早く売却するために適切な時期を選んだり、周辺市場をより細かく分析したり、またそれらを反映した適切な販売計画を策定する必要があります。知識と経験が十分にある営業担当者が意欲的に売却活動に取り組めば、依頼者の希望に近い売却が期待できます。
しかし中には、自社の利益を優先し、早く売却して仲介手数料を確保するために値下げを提案してくるケースもあります。そのため営業担当者には媒介契約をする前にどのような販売計画を立て、どのように実行していく予定なのかを確認しておく必要があります。
例えば、以下のようなポイントはチェックすることが大切です。
- メールのやり取り、連絡のレスポンスは遅くないか
- 依頼者の希望を確認して最適な時期に売却する姿勢があるか
- 市場分析を適切に行って売出価格を提案しているか
- レインズ(不動産情報交換システム)に登録されているか
- チラシ配布、ネット上での告知・PRなどの広告量は十分か
- 現地見学会や内覧についての有効なアイデアや適切な助言があるか
- その他質問や悩みなどに親身に対応してくれるか
このように前向きな取り組みが期待できる営業担当者のいる仲介会社を検討すると良いでしょう。
2-6 媒介契約の種類
不動産会社に売買仲介を依頼する際には媒介契約を結ぶことになりますが、契約の種類により仲介内容のサービスが大きく異なるため、慎重に比較検討する必要があります。媒介契約の種類には、以下の3種類があります。
- 専属専任媒介契約
- 専任媒介契約
- 一般媒介契約
専属専任媒介契約
専属専任媒介は仲介会社を1社のみに設定する契約の形態で、依頼した会社以外と契約することはできません。また、売主側で売却先を見つけ出した場合でもその仲介会社を通じた取引となります。このように専属専任媒介は仲介業務での拘束力が強いため、会社での意欲的な販売活動が期待できるというメリットがあります。
専任媒介契約
専任媒介も専属専任媒介契約と内容的に近い拘束力の強い媒介契約になります。しかし、依頼者自らが売り先を見つけ出した場合仲介会社を通さなくてもよいという点で、専属専任媒介と異なります。
一般媒介契約
一般媒介は複数の仲介会社と同時に媒介契約を結ぶことが可能なタイプで、自分で見つけ出した売り先に関してはその仲介会社を通さなくても構いません。複数の会社と媒介契約を結べば自分の不動産の売出情報を幅広くアピールできますが、仲介会社にとっては自社で売却できるとは限らないため、積極的に販売活動をしてくれない場合もあります。
実際、どの媒介契約を結ぶのかを決められない場合は、一般媒介と専任媒介の契約を組み合わせた後で判断するという方法もあります。例えば、最初に複数の仲介会社と一般媒介で契約して売却できなければ、契約の期限後(一般的に3カ月間)、その中から最も販売活動の優れた会社と専任媒介契約を結んでも問題ありません。
購入に関する問い合わせ数や内覧希望者数などの売出しに関する反響などを判断材料として、仲介会社を選ぶと良いでしょう。
3 まとめ
不動産売却時に依頼する仲介会社は、査定価格の高さだけで選ぶのではなく、売却実績や仲介会社が得意とする分野、営業担当者の熱意、評判・口コミなどを参考にすると、満足できる売却活動が実現しやすくなります。不動産売却を検討している方は、この記事を参考にして不動産仲介会社を適切に検討してみてください。
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