札幌市(北海道)でアパート経営を始めるメリット・デメリットは?人口・地価推移のデータも検証

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地方都市でのアパート経営を検討する際に、候補地の一つとして挙げられるのが北海道の中心都市である札幌市ではないでしょうか。

そこで今回のコラムでは、札幌市内でのアパート経営に不可欠な人口や地価の推移などのデータを検証します。また、その検証から見える札幌市でアパート経営を行う際のメリットとデメリットも解説していきます。

目次

  1. 札幌市のアパート経営に関する基本情報
    1-1.札幌市の人口の推移
    1-2.札幌市の地価の推移
  2. 札幌市でアパート経営を行う際のメリット
    2-1.人口の転入超過が続いている
    2-2.地震リスクが低い
    2-3.不動産投資の表面利回りが高い
  3. 札幌市でアパート経営を行う際のデメリット
    3-1.降雪・積雪・寒さ対策が必要になる
    3-2.礼金や更新料による収入が見込めない
  4. まとめ

1 札幌市のアパート経営に関する基本情報

この項目では、札幌市でアパート経営を行う際に覚えておきたい、人口推移と地価推移のデータについて紹介していきます。それぞれ詳しく見て行きましょう。

1-1 札幌市の人口の推移

アパート経営で重要なのが、長期的な賃貸需要が見込めるかどうかです。全国に20ある政令指定都市のうち、4番目に人口が多い札幌市ではどのように人口が推移しているのか、総数を表にしました。

集計日 人口総数
1998年12月1日 1,803,546人
2003年12月1日 1,862,436人
2008年12月1日 1,900,815人
2013年12月1日 1,938,331人
2018年12月1日 1,966,997人
2019年12月1日 1,970,826人
2020年12月1日 1,973,245人
2021年12月1日 1,972,586人

※参照:札幌市「推計人口」より抜粋。

2021年の人口総数は2020年に対して微減となっていますが、人口が減少したのは1945年以来のことで長く人口増加が続いていました。新型コロナウィルスの影響によりリモートワークが推奨され、自然減が社会動態の増加数を上回ったことなどが要因と推測されます。

なお、このような短期的な人口減少は札幌市以外にもみられ、例年人口増加傾向にあった東京23区や大阪市など都市部も同様の推移となっています。今後、リモートワークが定着していくことで、都市部の人口動態にどのよいうな影響を与えるのか、注視していきたいポイントです。

1-2 札幌市の地価の推移

次にアパート経営をするために必要な土地の価格推移を見ていきます。下記の表は、各年7月1日の住宅地平均価格をまとめたものです。

集計日 住宅地の平均価格(円/㎡)
2008年7月1日 67,300
2013年7月1日 58,500
2018年7月1日 67,600
2019年7月1日 72,900
2020年7月1日 78,800
2021年7月1日 82,500

※出典:札幌市「地価情報(地価公示・地価調査)」より抜粋

単年での増減はありますが、長期的な視点で見ると2008年から2021年までの13年間で約1.23倍となっています。

札幌市には10区がありますが、区ごとによって地価が大きく異なるため、注意する必要があります。2021年7月1日の各区の住宅地平均価格と変動率は下記のようになっています。

住宅地の平均価格(円/㎡) 平均変動率(%)
中央区 178,300 4.0
北区 70,200 5.2
東区 81,100 4.5
白石区 85,100 5.8
厚別区 81,200 5.6
豊平区 82,800 4.5
清田区 46,300 2.2
南区 37,000 △0.1
西区 71,600 1.9
手稲区 41,200 1.0

※出典:札幌市「地価情報(地価公示・地価調査)」より抜粋

最も高い中央区は178,300円/㎡ですが、南区では37,000円/㎡となっており、約5倍の差があります。前年からの変動率にも差があり、格差が広がっています。

札幌市でアパート経営をするには、このような地域ごとの特徴も見極めてエリアを選択する必要があります。これらのデータを踏まえて、札幌市でアパート経営を行う際のメリットとデメリットを次から見てみましょう。

2 札幌市でアパート経営を行う際のメリット

人口が減少傾向に移った札幌市ですが、社会増加が続いているなどアパート経営を行う際のメリットがあります。この項目では3つを紹介します。

2-1 人口の転入超過が続いている

2021年12月1日の人口は1,972,586人で、2022年1月1日の人口は1,972,381人となっています。つまり、直近の1カ月で約200人減少した計算になります。

ただし、人口の変動には死亡数と出生数による「自然動態」と、転入数と転出数による「社会動態」の二つの側面があります。札幌市の人口動態を見ると、2021年中の自然動態と社会動態は下記のようになっています。

人口増加数 自然増加数 社会増加数
△907人 △9,835人 8,928人

※参照:札幌市「人口動態」より抜粋。

札幌市は北海道内の各市町村から人口が集まる傾向があり、社会動態が増加し続けている要因の一つです。自然減が続いているため北海道の人口総数は減少していますが、社会動態だけで見ると下記のようになっています。

集計年 社会増加数 転入件数 転出件数 そのほか
2017年中 9,720人 68,340人 58,531人 △89人
2018年中 9,074人 67,571人 58,225人 △242人
2019年中 10,757人 69,235人 58,119人 △359人
2020年中 10,107人 63,859人 53,520人 △232人
2021年中 8,928人 62,213人 52,913人 △372人

※参照:札幌市「人口動態」より抜粋。

転入件数が転出件数に比べて、毎年9,000件前後多いのが札幌市の特徴の一つです。それだけ札幌市に転居する人がいるということで、人口減少傾向にある日本国内において、賃貸需要を見込みやすいエリアであると言えるでしょう。

2-2 地震リスクが低い

地震調査研究推進本部事務局(文部科学省研究開発局地震・防災研究課)が発表している「全国地震動予測地図」2020年版」によると、札幌市で30年以内に震度6弱の地震が発生する確率は0.2%となっています。その他、全国の主要都市の「今後30年以内に震度6弱以上の激しい揺れに襲われる確率」は下記のようになっています。

住所 確率
札幌市(中央区北三条)  0.2%
仙台市(青葉区国分町)  7.6%
東京新宿区(都庁)  47.2%
横浜市(中区桜木町)  38.1%
千葉市(中央区千葉港) 62.3%
名古屋市(中区三の丸) 45.8%
京都市(中京区上本能寺前町) 14.8%
大阪市(北区中之島)  30.1%
神戸市(中央区加納町)  46.4%
広島市(中区国泰寺町)  24.2%
松山市(三番町)  45.7%
福岡市(中央区天神)  6.2%

※出典:地震調査研究推進本部事務局「全国地震動予測地図2020年版」より抜粋。

国内の主要都市の中では大きな地震が起きる可能性が低く、アパート経営のリスクの一つとなる地震リスクが低いのが札幌市の特徴です。ただし、地震がいつどのような規模で起きるのかは分かりません。備えが必要ないというわけではないことも覚えておきましょう。

2-3 不動産投資の表面利回りが高い

札幌市における不動産投資の大きな特徴として、表面利回りの高さが挙げられます。表面利回りとは、表面利回りとは、年間の家賃収入を物件価格で割り戻して算出した利回りのことを指します。

不動産情報サイトの健美家では「健美家レポートの不動産投資ニュース」で、政令指定都市の表面利回りランキングを発表しています。

順位 区分マンション 一棟アパート 一棟マンション
1位 仙台市 11.29% 札幌市 10.35% 札幌市 8.70%
2位 札幌市 11.75% 神戸市 10.27% 千葉市 8.65%
3位 千葉市 10.40% 仙台市 9.45% 神戸市 8.36%
4位 広島市 9.38% 京都市 9.42% 大阪市 8.35%
5位 神戸市 9.01% 大阪市 9.07% 名古屋市 8.12%
6位 さいたま市 8.25% 千葉市 8.79% さいたま市 7.76%
7位 横浜市 8.17% さいたま市 8.74% 仙台市 7.72%
8位 名古屋市 8.04% 横浜市 8.24% 横浜市 7.48%
9位 川崎市 7.63% 川崎市 7.51% 川崎市 7.24%
10位 福岡市 7.41% 名古屋市 7.36% 京都市 7.13%
11位 京都市 7.35% 福岡市 7.36% 広島市 6.88%
12位 大阪市 6.52% 広島市 6.70% 福岡市 6.75%

※出典:健美家健美家レポートの不動産投資ニュース「2021年上半期政令指定都市住宅系収益不動産『高利回りランキング』」より抜粋。

札幌市は「区分マンション」「一棟アパート」「一棟マンション」のそれぞれで1位か2位に位置していることから、不動産投資全体で表面利回りが高いことがわかります。

ただし、表面利回りは投資物件の収益性を図る指標として重要ではありますが、表面利回りには物件購入時の諸経費や管理費、固定資産税などの経費が含まれていません。特に、雪への対処が必要となる札幌市の不動産投資では、ランニングコストが他府県よりも高くなる傾向にあります。最終的な投資判断は経費を加味した実質利回りで検討することも大切です。

3 札幌市でアパート経営を行う際のデメリット

この項目では札幌市でアパート経営を行う際のデメリットについて見ていきましょう。

3-1 降雪・積雪・寒さ対策が必要になる

札幌市のホームページ「わたしたちのくらしと雪」によると、札幌の降雪量を平均すると1991年から2020年の30年平均値で4m79cmとなります。

2020年11月から2021年4月までの積雪量が分かる「令和2年度積雪深観測値」によると、期間中最も積雪量が多かったのが3月3日の南区の135センチです。西区でも3月4日に107㎝に達しています。こうした状況から札幌市でアパートを経営するには、降雪・積雪・寒さ対策が欠かせません。主な対策法は下記になります。

  • 敷地内あるいは前面道路にロードヒーティングを設ける
  • 前面道路に除雪車が入る土地を選ぶ(幅員8m以上は市の除雪が入るなどルールがある)
  • 雪や風が建物内に入らないように玄関フードを設ける
  • 落雪を防止するために屋根に雪止めフェンスを設ける
  • 劣化が進むため外階段・外廊下は採用しない
  • 室内の熱が逃げていかないように二重サッシ・二層窓を採用する
  • 断熱材の増強や工法などで断熱性能を向上させる

これらの対策のために初期費用がかかるのに加え、ロードヒーティングを設置する場合は冬季間の光熱費も高額になりやすいので注意が必要です。

札幌市では雪対策や冬の暮らしについて「冬の暮らし・除雪」で説明していますので、こちらも参考にされてみると良いでしょう。

3-2 礼金や更新料による収入が見込めない

賃貸契約を結ぶ際にかかる初期費用には地域による特色や商習慣・慣例があります。例えば、首都圏や京阪圏、東海圏などの国内主要都市圏では主流となっている礼金の習慣が、札幌市内ではあまり見られていません。また2年ごとなどの契約期間が終了する際、契約を更新するために支払う更新料も設定しないことがほとんどです。

札幌市で礼金や更新料を設定した場合は、似た条件を提示している競合物件に流れることが考えられます。礼金や更新料による収入が見込めない可能性も念頭において、シミュレーションを行いましょう。

まとめ

札幌市でアパート経営をする際のメリットとデメリットを見てきました。表面利回りが高いなど、アパート経営のメリットがある一方、冬に備える対策が必要になるなどコスト面でのデメリットもあります。

また、今回ご紹介したデータはあくまでも全体傾向の指標であり、実際のアパートを個別にみて行くと、市場傾向とは異なる特徴を持った物件も少なくありません。「札幌市は賃貸需要が見込みやすい」「アパートの表面利回りが高い」などのように単純にとらえず、個別の事情を踏まえた投資判断が大切です。

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倉岡 明広

経済学部経済学科卒業後、出版社や編集プロダクション勤務などを経てフリーライターとして独立。雑誌や新聞、インターネットを中心に記事を執筆しています。初心者が抱く不動産投資の疑問や質問を解決できるよう丁寧な記事を執筆していきます。