国際分散投資のメリット・デメリットは?始め方と主なサービスも

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IMF(国際通貨基金)の「世界経済見通し(2022年4月)」によると、2023年の世界経済成長見通しは前年比3.6%です。国別に経済成長率をみると、新興国が先進国を上回っています。

株価は経済成長との関連性が高いため、将来的には新興諸国の株価上昇期待が高いと言えそうです。新興国に資金を投資すると経済成長を享受でき、将来的に高いリターンも望めるでしょう。

しかし、新興国は地政学リスクや政治・経済リスクが高いため、集中投資を避け世界各国に分散投資し、リスクを低減することも考える必要があります。そこで今回は、国際分散投資のメリット・デメリットや始め方について解説します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※2022年7月16日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。

目次

  1. 国際分散投資とは
    1-1.複数の国に投資
    1-2.複数の金融資産に投資
  2. 国際分散投資のメリット
    2-1.リスク低減
    2-2.世界経済の成長を享受
  3. 国際分散投資のデメリット
    3-1.短期間に大きなリターンが得られない
    3-2.資産管理が面倒
  4. 国際分散投資の始め方と主なサービス
    4-1.自身でポートフォリオを構築する
    4-2.ファンドラップ(ラップ口座)を利用する
    4-3.ロボアドバイザーを利用する利用する
    4-4.
    つみたてNISAを活用する
  5. 国際分散型投資信託の銘柄例
  6. まとめ

1 国際分散投資とは

国際分散投資とは、投資対象を一国の株式や債券だけではなく、複数の国や地域、通貨などを組み合わせ、様々な金融資産に分散して投資する方法です。

1-1 複数の国に投資

国際分散投資は、一国だけではなく、様々な国の様々な金融商品に投資します。日本や米国、ドイツなどの先進国を中心に、インドや中国など新興諸国にも投資することで、世界の経済成長を享受できる可能性が高まります。

1-2 複数の金融資産に投資

運用対象の金融資産には、主に株式、債券、REIT(不動産投資信託)が挙げられます。これらの資産に分散させることで、リスク低減効果を期待できる可能性が高まります。

株式、債券、REITは、それぞれ異なった性質を持っています。株式の上昇率は理論上は無限大ですが、企業が倒産してしまうと価値がなくなります。一方、債券は株価のように2倍、3倍に成長する可能性はありませんが、償還時には国や企業が破綻しない限り、元本を下回るリスクはありません。

REITは、その投資先の属性により異なります。ホテルREITは収益が景気に左右されやすい一方、オフィスREITや住宅REITの分配金は毎月の家賃が発生しているため、比べると比較的安定しています。

それぞれの資産の特性を生かすことで、リスクを抑えた効率的な運用ができます。

2 国際分散投資のメリット

ここでは国際分散投資のメリットについてみていきましょう。

2-1 リスク低減

極端な例ですが、ロシアの資産価値はウクライナ侵攻後、急落しました。もし、ロシア1国に投資していた場合には資産の大半を失ったことになります。

複数の国に投資することでリスクを軽減することができ、手堅く収益が得られる可能性が高まります。

2-2 世界経済の成長を享受

世界経済は今後も成長傾向にあります。特に、新興国の成長率が先進国を上回る傾向が強く、新興国を含めた複数の国に投資することで、リスクを回避しながら世界経済の成長を享受できる可能性が高まります。

3 国際分散投資のデメリット

国際分散投資にはデメリットもあります。ここではデメリットを見ていきましょう。

3-1 短期間に大きなリターンが得られない

個別株の中には短期的に株価が2倍、3倍に上昇する銘柄も散見されます。しかし、分散投資の場合には、短い期間で高い収益を得る可能性は低くなる傾向があります。

国際分散投資では、各国の株式、債券、REITなどに小分けに投資するため、1つの株価が暴騰してもポートフォリオ全体に与える影響が小さくなってしまうからです。

3-2 資産管理が面倒

国際分散投資は複数の国や金融資産に投資するため、銘柄数が多くなり資産管理が複雑になります。銘柄入れ替えのタイミングを計ることや定期的な資産配分の見直しも必要となります。

4 国際分散投資の始め方と主なサービス

国際分散投資を始めるには、自身で個別銘柄を選定し投資する方法や、ファンドラップやロボアドバイザーを利用する方法、投資信託に投資する方法などが挙げられます。

4-1 自身でポートフォリオを構築する

自身で国際分散投資を始めるには、資金量と分析力が必要となります。分散投資しても、あまりに銘柄数が少ない場合、個々の銘柄の動きがポートフォリオ全体に与える影響が大きくなってしまうためです。

本格的な分散投資を行う場合には、銘柄間の相関係数も資産配分を行う上で必須となるため、数学の知識も必要です。

4-2 ファンドラップ(ラップ口座)を利用する

国際分散投資を始めるにあたり、ファンドラップを利用する方法もあります。ファンドラップとは、投資家と証券会社が投資一任契約を結び、運用を証券会社に任せるサービスです。SBI証券や楽天証券では最低投資金額1万円から始められます。

楽天証券の楽ラップは、16問の質問に答えることで、9つの運用コースの中から最適なコースが選択され、その運用方針にそった運用が自動的に行われます。

ラップサービスの運営・管理費用は固定報酬型と成功報酬併用型から選択でき、固定報酬型が0.715%、成功報酬併用型が0.605%+運用益の5.5%です。信託報酬は0.33%で、積立は1万円以上、1円単位から可能です。

SBIラップは、AIが40種類以上のマーケットデータを分析し、8種類(米国株、先進国株、新興国株、米国債、ハイイールド債、新興国債、不動産、金)の対象ETFへの資産配分を決め、投資するファンドです。

運用費用は0.66%の手数料と信託報酬の2種類です。信託報酬は相場状況により変動しますが、SBI証券によると、平均値として0.295%とサイト上に公開されています。従って、平均手数料は0.955%です。なお、月間の平均運用資産額に応じて最大0.2%のポイントが貯まるため、実質的な手数料は最大0.2%低くなります。

4-3 ロボアドバイザーを利用する

ラップサービスと似たものにロボアドバイザーがあります。投資一任型と呼ばれるものを活用すると、AIが最適なポートフォリオを提案し、それをもとに運営会社に資産運用を一任できます。

代表的なサービスであるWealthNavi(ウェルスナビ)やTHEO+docomoでは、世界各国を対象にしたETFに積立投資を行うため、国際分散投資が簡単にできます。

手数料は預かり資産の年率1%程度が目安になります。

4-4 つみたてNISAを活用する

国際分散投資は、世界経済の成長とともに資産成長が期待されるため、長期運用に有効な投資方法です。投資信託では、バランス型の投資信託が該当します。*つみたてNISAを使えば、分配金や売却益が非課税となるので、つみたてNISAの対象銘柄に投資すると良いでしょう。ネット証券では100円から積立が可能なため、無理なく始めることができます。

*つみたてNISAは積立金額年間40万円を上限とし、保有している間に得た分配金と、売却益が20年間にわたり非課税となる制度です。

5 国際分散型投資信託の銘柄例

つみたてNISA対象のバランス型は43銘柄、その中から国際分散投信信託の例として以下の6銘柄を取り上げました。

なお、投資対象資産の数が増えるほど分散効果が期待できるため、元本割れのリスクが小さくなる一方、大きな成長期待は期待できない傾向があります。特に、株式比率が重要で、運用比率が高いほどその傾向が顕著となります。

例えば、TOPIXに連動するeMAXIS Slimの騰落率は過去3年で28.34%ですが、1年ではマイナス0.22%です。一方、8資産均等型の騰落率は3年が7.46%、1年が1.1%と、いずれもプラスで分散効果が功を奏しています。

下記表にみられる資産の対象は、4資産均等型が国内外の株式と債券の4資産です。8資産均等型の運用対象は、株式と債券を国内、先進国、新興国の3つに分け(計6資産)、それに国内REITと先進国REITです。

銘柄 信託報酬(%) 価格(円) 騰落率
1年(%) 3年(%)
ニッセイ・インデックスバランスファンド(4資産均等型) 0.154 14,206 1.73 7.73
eMAXIS Slim バランス(8資産均等型) 0.154 13,398 1.1 7.46
三井住友TAM-世界経済インデックスファンド 0.55 28,468 1.69 8.44
大和-iFree 8資産バランス 0.242 14,530 2.04 6.96
たわらノーロード バランス(8資産均等型) 0.154 13,181 -0.24 7.21
ブラックロック・つみたて・グローバルバランスファンド 0.6378 11,313 2.26 16.39

まとめ

国際分散投資は、世界経済の成長とともに資産成長を目指せる運用方法です。

株式投資は変動が大きいため、株式市場の調整局面では資産を毀損してしまうリスクがあります。一方、国際分散投資では、複数の異なった資産に分散投資するため、株式市場の調整局面において下値リスクは小さく抑えられ、将来的に堅実な成長が期待できる可能性があります。

国際分散投資には、自身でファンドを構築する方法、ファンドラップやロボアドバイザー、バランス型の投資信託に投資する方法等があります。ファンドラップは楽天証券やSBI証券では1万円から始められ積立も可能です。投資信託はつみたてNISA制度が使える銘柄を選ぶと良いでしょう。

自身のリスク許容度が小さい場合は、複数資産に投資している投資信託、許容度が大きい場合にはファンドラップやロボアドバイザーに挑戦してみるのも面白いかもしれません。

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藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。