電気自動車(EV)のシェア上位と注目メーカーは?業績と株価推移も【2022年7月】

2021年度の世界の電気自動車販売台数は前年比2倍となり、特に欧州や中国で急増しています。

電気自動車といえば米国のテスラが代表的なメーカーですが、中国のBYDやSGMW(上汽通用五菱汽車)などの存在感も大きくなっています。そこで今回は、電気自動車(EV)の世界シェア上位と注目メーカーの業績について解説します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※2022年7月15日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。

目次

  1. EV販売台数ランキング(2021年度)
  2. 各国のEV政策
    2-1.中国のEV政策
    2-2.欧州のEV政策
    2-3.米国のEV政策
    2-4.日本のEV政策
  3. EVの販売台数とモデル
  4. 注目のEVメーカー
    4-1.テスラ(TSLA)
    4-2.BYD(1211 HK)
    4-3.フォルクスワーゲン(VW)
    4-4.三菱自動車工業(7211)
    4-5.トヨタ(7203)
  5. まとめ

1 EV販売台数ランキング(2021年度)

電気自動車の世界シェア1位は米国のテスラですが、2021年度には中国メーカー大手2社(BYD、SGMW)で世界電気自動車販売の55.5%を占めるほどに中国メーカーの躍進が目立っています。また、フォルクスワーゲンやBMWなど欧州勢も販売台数を伸ばしています。

日本メーカーではトヨタの16位が最高でした。トヨタは、ガソリン車等を含めた世界販売台数が約1,050万台で世界一ですが、電気自動車の販売台数は11.6万台とシェアは1.1%にすぎません。電気自動車市場では日本メーカーの存在感が薄いと言えそうです。

2021年 電気自動車年間販売台数

順位 メーカー 販売台数(万台) 前年比(%)
1 テスラ 93.6 87.4
2 BYD 59.3 231
3 上海通用五菱汽車 45.6 167
4 フォルクスワーゲン 31.9 45.1
5 BMW 27.6 68.8
6 メルセデス 22.8 56.4
16 トヨタ 11.6 108.5

参照:CleanTechnica “World Plugin Vehicle Sales – Top Brands (January-December 2021)

2 各国のEV政策

中国や欧州で電気自動車の販売台数が伸びている理由には、各国政府の支援策や地球温暖化阻止への取り組みが挙げられます。各国での政策について紹介します。

2-1 中国のEV政策

中国は、2030年までのCO2排出量をピークアウトさせ、2060年までにカーボンニュートラル実現を目標に掲げています。そのため、電気自動車購入時に1回の充電での走行距離を基準とした補助金を支給しています。

なお、補助金は2022年に失効する予定ですが、制度の延長について協議されています。

2-2 欧州のEV政策

電気自動車の普及に向けて、英国、ドイツ、フランス各国では、以下のような政策を取っています。

英国

ガソリン車とディーゼル車の新車販売禁止を2030年までに禁止すると発表しています。すでにロンドン中心部では、ガソリン車とディーゼル車の乗り入れ規制が実施されています。英国政府は、車両価格3万ポンド以下の電気自動車に最高1,500ポンドの補助金を出しています。

ドイツ

2030年までにガソリン車とディーゼル車の新車販売を禁止する予定です。ドイツ政府は、車両価格4万ユーロ以下の場合に限り、企業による補助金2,250ユーロとは別に4,500ユーロの補助金を出し電動化を進めています。

フランス

2040年までに、ガソリン車とディーゼル車の新車販売禁止が予定されています。フランス政府は、車両価格4.5万ユーロ以内の場合に6,000ユーロ、4.5~6万ユーロの場合に2,000ユーロの補助金を出し、電動化を推し進めています。

2-3 米国のEV政策

温暖化対策は州により異なります。ガソリン車の新規販売は、ワシントン州が2035年、カリフォルニア州が2040年に禁止される予定です。

米連邦政府による電気自動車の購入支援として、電気自動車購入者に対し、最大7,500ドルの税額控除を実施しています。

2-4 日本のEV政策

日本は、2035年までに新車販売において電動車100%を実現するという方針です。

EV新車購入の補助金上限金額は、電気自動車(軽を除く)が65万円、軽電気自動車が45万円、プラグインハイブリッドが45万円、燃料電池自動車が230万円です。これをベースに、ある一定の条件を満たす車両の場合、10~20万円上限額が上積みされます。

また、全国の自治体などの補助金が別途設定されており、電動化が進んでいます。

3 EVの販売台数とモデル

ここでは、電気自動車の人気モデルを見ていきます。2021年の年間販売台数をみると、1位と3位はテスラ、2位と4位には中国メーカーの車種が入っています(参照:CleanTechnica “World EV Sales — Tesla Model 3 Wins 4th Consecutive Best Seller Title In Record Year”)。

欧米メーカーが高価格であるのに対し、中国メーカーは低価格車種が中心となっています。特に、販売台数2位の宏光ミニEVの価格は約58万円とテスラの10分の1と安価で、1充電走行距離が120kmと短いため長距離ドライブには適していませんが、日常使いには十分と言えそうです。

2021年 EV年間販売台数

項目 メーカー 車種 販売台数 最低価格(万円) 走行距離(Km)
1 TSLA Model 3 500,713 596.4 565
2 上海通用五菱汽車 宏光MINI EV 424,138 58 120
3 TSLA Model Y 410,517 653.8 507
4 フォルクスワーゲン ID.4 121,631 680 571
5 BYD Qin Plus PHEV 111,553 260 430

4 注目のEVメーカー

以下では、主なEV事業者の概況を解説します。

4-1 テスラ(TSLA)

電気自動車メーカーとして売上高世界一で、株式時価総額は約100兆円とトヨタ自動車(約35兆円)の2.9倍です。

2021年度の売上高は538億ドル。予想売上高は、2022年が約824億ドル、2023年が約1,164億ドルと成長過程にあることや、営業利益率が25%とトヨタやフォルクスワーゲン(両社とも19%)と比較し優位性がある点で強みのある企業と言えます。一方、予想PERが約60倍と、株価は割高な水準と言えそうです。

4-2 BYD(1211 HK)

BYDは1995年に電池メーカーとして創業し、2003年に自動車産業に参入しました。ハイブリッド車や電気自動車を開発し、中国の新エネルギー車市場で2020年にトップとなりました。

2021年度の売上高は約4兆1,500億円(前年比38%増)、純利益は約580億円で、9年連続で中国国内EV販売台数1位の企業です。自家用車ばかりでなく、EVバスを海外に輸出しており、日本のEVバス市場でのシェアは70%に上ります。また、トヨタの電気自動車開発・製造のパートナーとしても有名な企業です。

株価は、成長期待が高い銘柄のため、予想PERは98倍と割高な水準です。

4-3 フォルクスワーゲン(VW)

同社の2021年の販売台数は、前年比4.5%減少し888万台でした。バッテリー式電気自動
車分野の世界的な販売台数が45.3万台と2倍に躍進。ヨーロッパでのシェアが25%と欧州電気自動車シェア1位となりました。欧州市場では自動車の電動化が進んでいるため、この分野での成長が期待されます。

株価水準は、予想PERが5.5倍、配当利回りが4.0%、PBR(純資産倍率)が0.60倍で、株価に割安感があります。

4-4 三菱自動車工業(7211)

三菱自動車が日産自動車と共同開発で電気軽自動車を開発しました。車種名は三菱自動車が三菱eKクロスEV、日産がサクラです。

現在、電気自動車購入時には国と自治体から補助金(合計で100万円程度)が支給されるため、電気自動車の受注が伸びています。

日本では地方ほど自動車保有率が高い傾向にあり、軽四輪車の世帯当たり普及台数(全国軽自動車協会連合会、2020年12月末)をみると、長野、鳥取、佐賀、島根、山形、福井の5県で1台以上所有しています。そのため電気自動車の販売は地方を中心に拡大する可能性が高いと言えそうです。

電気自動車は、ガソリン車より燃料(電気)代が安く、エンジンオイル交換などが必要ないため維持費が安いというメリットがあります。地方では自家用車は生活必需品のため、最近の原油高を背景としたガソリン高も、地方での電気自動車普及を後押しすると見込まれます。

軽自動車業界のゲームチェンジャーとなりうる電気自動車の販売を株式市場は織り込んでおり、三菱自動車の株価は既に上昇しています。しかしながら、同社の株価水準は予想PERが8.6倍(2022年7月15日)と、株価に割高感はありません。

4-5 トヨタ(7203)

電気自動車市場で出遅れ感があるトヨタですが、レクサスブランドを2035年までにEV100%にすることを目指すと発表しました。2030年までに30車種のEVを展開し、バッテリーEVのグローバル販売台数で、年間350万台(全車種における年間販売台数の33%程度)を目指し、開発投資額はバッテリー関連で2兆円に上る予定です。

電気化がレクサスブランドから他のトヨタブランドに波及する可能性もあり、今後は電気自動車のシェア拡大が期待できそうです。

株価水準は、予想PERが11倍、配当利回り2.4%、PBR1.1倍と割安感があります。

まとめ

電気自動車と言えばテスラの独擅場でしたが、中国メーカー等の躍進により電気自動車市場の景色が変わってきました。

世界が2050年のカーボンニュートラルに向け、ガソリンやディーゼルから電気や燃料電池へと自動車動力源の移行が始まっています。やがて、街を走る自動車すべてが電気自動車や燃料電池車となることでしょう。

出遅れ感のある日本の電気自動車化ですが、三菱や日産が電気軽自動車を販売したことに加え、補助金制度の充実もあり、地方から自動車の電気化が拡がりそうです。

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藤井 理

藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。