アパート経営で外国人の入居希望者にはどう対応すればいい?事前の注意点やガイドラインも

※ このページには広告・PRが含まれています

アパートを経営する上で悩むオーナーも多いのが、外国人入居者の受け入れについてどのような対応するべきかというポイントです。

特に空室が目立つアパートのオーナーは入居者を確保するために受け入れたいところですが、文化の違いやコミュニケーションの観点から、どのような入居審査を行えばよいのか悩む方も多いでしょう。

そこで今回のコラムでは、経営するアパートに外国人入居者を受け入れる際の注意点や事前の準備などについて解説していきます。

目次

  1. アパート経営で外国人入局者を受け入れるメリット
    1-1.新しいターゲット層の賃貸需要が見込める
    1-2.低予算でも入居者を確保できる
  2. アパート経営で外国人入居者を受け入れる際の注意点
    2-1.騒音トラブルの事例
    2-2.ゴミ捨てトラブルの事例
    2-3.同居や又貸しトラブルの事例
    2-4.家賃未払いトラブルの事例
    2-5.生活習慣上のトラブルの事例
  3. アパート経営で外国人の入居審査前に事前に準備しておきたいこと
    3-1.外国人向けの賃貸住宅のガイドラインを確認する
    3-2.審査時に在留資格やパスポートなども確認する
    3-3.外国人貸借人専用の契約書を用意する
    3-4.外国人の入居者をサポートする企業を活用する
  4. まとめ

1 アパート経営で外国人入局者を受け入れるメリット

まずは外国人入居者を受け入れるメリットについて見てみましょう。

1-1 新しいターゲット層の賃貸需要が見込める

法務省出入国在留管理庁が発表した報道資料「令和2年6月末現在における在留外国人数について」によると2020年6月末の在留外国人数は288万5904人となっています。これは日本の人口の約2%に当たります。

ただし積極的に外国人を受け入れる賃貸住宅は多くありません。公益財団法人人権教育啓発推進センターが2017年6月に発表した「外国人住民調査報告書」では、日本で家を探したことがある外国人に調査した結果、「外国人であることを理由に入居を断られた」のが39.3%、「日本人の保証人がいないことを理由に入居を断られた」が41.2%となっています。

そのため外国人を受け入れている賃貸住宅は、仲介店からの紹介が増えたり、入居している外国人の口コミなどで新たな入居者を獲得することができる可能性があるのです。

1-2 低予算でも入居者を確保できる

日本人の入居者を狙う際には競合時のことも考えて、設備を充実させるなどの空室対策が必要になりますが、外国人入居者の場合、設備の重要性が低いことが国土交通省の「外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン」で指摘されています。ガイドラインでは、下記のように記載されています。

外国人が日本に住むときに設備等にグレードの高いものを求めるケースはあまり多くはありません。3点ユニットの部屋でも、部屋に清潔感があれば入居する外国人は多くいます。

※引用:国土交通省「外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン

設備の充実は入居率の改善効果が期待できますが、追加の予算を必要とします。低予算で入居者の確保をしていきたい場合には、外国人の受け入れを検討されてみるのも良いでしょう。

2 アパート経営で外国人入居者を受け入れる際の注意点

外国人入居者を受け入れる際の注意点として、どのようなトラブルが発生する可能性があるのか、把握しましょう。

2-1 騒音トラブルの事例

外国人入居者の方が部屋に友人を招いて大勢で歌を歌ったり、ダンスを踊ったりといった事例があります。日本人の中にも仲間が部屋に集まってお酒を飲みながら騒ぐ入居者の方もいるため、外国人特有のトラブルと一概には言い切れませんが、文化の違い等から騒音に対する意識も異なるケースがあります。

2-2 ゴミ捨てトラブルの事例

共同生活をするのにはいくつかのルールを守る必要がありますが、なかでもトラブルになりやすいのがゴミ出しのルールです。地域が違うとゴミに対するルールが異なるのは日本国内でも同じです。しかし、ゴミの分別ルールが日本とは大きく異なる国もあるため、事前の注意が必要なポイントです。

2-3 同居や又貸しトラブルの事例

外国人の方は日本人よりも国内で住居が借りにくいため、仲間の家に寝泊まりすることもあります。それが1日や2日であればいいのですが、月単位になることもあります。賃貸借契約の内容にもよりますが、一人暮らしの賃貸契約で事前承諾なく同居人を増やすことは契約違反になります。

また同居人が増えるのではなく、又貸しをするケースもあります。こうしたケースでは入居者の属性が分かりにくく、他の入居者への悪影響も考えられます。

2-4 家賃未払いトラブルの事例

外国人入居者向けの保証会社を利用できるのであれば未払いトラブルは防ぐことができますが、収入源が不確実な場合もあり、家賃を滞納されるケースもあります。

中には無断で退去する例もあり、未納分の家賃を請求できずに泣き寝入りをするオーナーの報告もあります。

2-5 生活習慣上のトラブルの事例

生活習慣の違いで多いのが、室内で靴を履いたまま生活している国があることです。そのため靴を履いたままアパート内で生活をし、退去時の立ち合いの際に部屋内が極端に汚れていたという例もあります。

また退去時に不要な家電やゴミなどがそのまま放置されていた事例もあります。

3 アパート経営で外国人の入居審査前に事前に準備しておきたいこと

外国人入居者の方を迎え入れるにあたり、トラブルを少なくするために事前に対策を取ることができます。今回は3つ紹介します。

3-1 外国人向けの賃貸住宅のガイドラインを確認する

国土交通省では外国人が民間賃貸住宅に入居する際に円滑に進められるように、賃貸人、仲介業者、管理会社のための実務マニュアルとして「外国人の民間賃貸住宅入居円滑化ガイドライン」を作成しています。

この中には、外国人の方を入居者として迎え入れるために、下記のような情報が紹介されています。

  • 滞在資格の確認の仕方
  • 在留カードの見方
  • 債務保証の考え方
  • 初期費用や入居時および退去時にかかる費用の説明の仕方
  • 原状回復の説明の仕方
  • 物件を下見する際の注意点、など

これらを確認して、オーナーとして対応できるかどうか検討してみましょう。

3-2 審査時に在留資格やパスポートなども確認する

審査基準はオーナーによって異なりますが、通常の入居者審査項目に加えて、外国人の方の入居者を迎える場合には下記の点についても確認をしましょう。

  1. 在留資格の内容の確認
  2. パスポートの確認
  3. 日本語能力のレベル確認
  4. 勤務先の確認
  5. 連帯保証人の有無(保証会社の審査に通るかどうか)
  6. 銀行口座またはクレジットカードの有無(家賃の支払い方法の確認および信頼性の確認)

貸借人に求めるのは、外国人であれ日本人であれ、家賃を適切に支払い、ルールを守ってくださる方です。これらの条件が守られるかどうか確認しましょう。

3-3 外国人貸借人専用の契約書を用意する

契約書とは合意内容を書面化したもので、トラブルがあったときにはこの契約に基づいて判断されることになります。賃貸借契約書は貸借人が外国人であっても、適切に交わすようにしましょう。

諾成契約と言って、賃貸借契約は口頭の約束でも成立します。しかし、保証に関する契約は書面での合意をもって成立することになっています。相手の国の言語に合わせた契約書を用意するなど、工夫をしてみましょう。

3-4 外国人入居者をサポートする企業を活用する

外国人入居者の方によるトラブルの発生は、契約時の確認不足や日常的なコミュニケーション不足によることも多いものです。そこで外国人に特化した不動産サービスを提供している企業を活用するのもいいでしょう。

こうした会社を活用することで、外国人入居者とのコミュニケーションを取ることができ、トラブルの発生を未然に防ぐことができる可能性があります。中には外国人向けの住宅情報サイトを多言語でリリースしている企業もあり、入居者の獲得にも活用できます。

まとめ

住居に対する考え方、生活習慣、マナーなどの違いで外国人入居者の方のトラブルは懸念されやすいポイントです。日本人の入居者でもトラブルは起きますが、賃貸契約やマナーについて、どのようにコミュニケーションを行っていけばよいかが課題になることもあるでしょう。

しかし、外国人入居者を受け入れることにはメリットもあり、住居を探して困っている外国人の方の助けとなる可能性もあります。今回紹介した事前準備などを検討した上で、受け入れるかどうか判断されてみると良いでしょう。

The following two tabs change content below.

倉岡 明広

経済学部経済学科卒業後、出版社や編集プロダクション勤務などを経てフリーライターとして独立。雑誌や新聞、インターネットを中心に記事を執筆しています。初心者が抱く不動産投資の疑問や質問を解決できるよう丁寧な記事を執筆していきます。