マンション投資は本当に「老後の年金代わり」になるのか?

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マンション投資は毎月長期的な家賃収入が得られるため、老後の生活資金を確保する手段として検討されています。しかし、物件選びや収支計画に失敗すると、年金の不足分を確保するどころか老後に大きな負債を抱えることになりかねません。

そこで今回は老後の生活を安定させるマンション投資の方法や、実例を用いた収支シミュレーション、マンション投資で失敗しないためのポイントについて説明します。

目次

  1. 年金と老後の生活費
    1. 退職後にもらえる年金はいくら?
    2. 老後に必要な生活費
  2. マンション投資を年金代わりにするには
    1. 年金不足分を補填できるマンション投資の条件
    2. マンション投資で年金の不足分を補填する3つのポイント
  3. マンション投資で失敗しないための2つのポイント
    1. マンション投資について勉強する
    2. 良い物件を見極める

1 年金と老後の生活費

そもそも一般的なサラリーマンが定年退職後も余裕を持って老後生活を送るためにはいくら必要になるのでしょうか。

まずは退職後に受け取る年金額と生活費の支出額を示し、年金だけで生活がまかなえるかどうかを確認していきましょう。

1-1 退職後にもらえる年金はいくら?

厚生労働省労働局「平成28年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、厚生年金保険(第1号)受給者の平均年金月額は、14万8000円です(平成28年度末現在)。

仮に夫婦が共働きで定年まで会社勤務を継続していれば、世帯当たり約30万円の支給が受けられることになります。

また妻が専業主婦である会社員世帯では、妻は第3号被保険者となり夫の退職後は約5万5000円の国民年金が支給されることになります。その場合の年金額は、14万8000円+5万5000円=20.3万円です。

年金制度への加入状況は各世帯で異なりますが、総務省の家計調査報告(平成29年度速報)によると高齢夫婦無職世帯(*)の社会保障給付額は19万1880円となっています。
(*)夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯

社会保障給付額の大半は年金給付と考えられるため、約19万円が年金受給額と想定され、この金額で生活が賄えるかを考えてみましょう。

1-2 老後に必要な生活費

年金受給額はその世帯の年金制度への加入状況で異なりますが、その範囲内で生活支出が収まり、一定レベルの生活ができるかどうかが重要になります。

総務省による「家計調査報告」の2人以上世帯の消費支出額は、年齢別に以下のようになります。

  • 60~69歳世帯の消費支出:290,084円
  • 70歳以上世帯の消費支出:234,628円
  • 前出の高齢夫婦無職世帯の消費支出:263,717円

高齢夫婦無職世帯の年金受給額は約19万円、消費支出は約26万円なので約7万円不足していることになります。一般的にその不足分は、貯金や退職金等の取り崩し、再雇用、パートやアルバイトによる収入で補填する方法が考えられます。

現在は働き方改革や一億総活躍社会の政府方針により、高齢者の再雇用やアルバイトの高齢者採用が積極的に進められています。

しかし、高齢者からは「定年退職後は働きたくない」「趣味や夫婦の時間を大切にしたい」「アルバイトは体力的に厳しい」といった声も多く聞かれます。

不足分を補うためにアルバイトやパートをしても生活が潤うわけではないため、生活費を稼ぐために仕事を続けているという高齢者は少なくないのです。

そこで検討したいのが不労所得として安定した収入が得られるマンション経営やアパート経営です。

2 マンション投資を年金代わりにするには

マンション投資にはもちろんリスクもありますが、上手に経営すれば年金の不足分を補うことは可能です。ここでは不足する毎月の生活費約7万円をどのように確保するのかを確認していきましょう。

2-1 年金不足分を補填できるマンション投資の条件

マンション投資では、以下の条件を満たせば成功したということができます。

(毎年の運用による収支額×運用年数)+保有物件の売却額>投資額

投資額を毎月の家賃収入と物件の売却益が上回ることが成否を分けるポイントです。

そして、この条件を満たすとともに、年金受給開始の年以降に7万円×12ヶ月×20年=1,680万円(65歳退職後20年間と想定)を得られる投資なのかどうかの見極めが重要になります。

2-2 マンション投資で年金の不足分を補填する3つのポイント

まず、マンション投資の収支と支出の内訳は次のようになります。

マンション投資の収入

  • 毎月の家賃

マンション投資の支出

  • ローンの返済・利息
  • 各種税金
  • 維持管理費
  • 修繕積立金
  • 保険料

手元に残るお金は、収入から支出を差し引いた金額になります。

収入-支出+減価償却費×税率

この数字が毎月7万円以上確保できるかどうかを検討します。

マンション投資の場合、部屋単位で投資する区分(所有)投資と、1棟単位で投資する1棟投資に分かれます。物件により異なりますが、前者では1000万円以上、後者では1億円以上といった資金が必要です。

どちらにするかは個人の状況で異なりますが、区分投資(ワンルーム投資)は購入資金が比較的少なく、会社員でも始めやすい投資と言われています。

一方、一棟マンション投資の場合、リターンも多く魅力的ですが、通常の会社員が1億円近い金額を用意するのは難しく、また区分投資以上に知識や経験が必要になるため慎重な検討が求められます。

ポイント① 収支の良いマンションで毎月7万を得る

一般の会社員が取り組みやすい区分所有のマンション投資を例に、年金不足分の7万円を確保する方法を考えてみましょう。

東京都内の築残ワンルームマンションの物件を例に説明します。

都内の築残マンション(東京都内、築4年、駅徒歩分1以内)
購入費用 4050万円
購入諸経費 243万円
自己資金 1,290万円
返済期間 35年
金利 1.5%(ローン返済額年約111万円)
年間家賃収入 191万円(稼働率97%)
年間経費
(管理費、修繕積立金や固定資産税等)
28.7万円
(年間家賃収入の15%)

上記の条件で投資した場合、年間収支(手取り)は45万円で月ベースでは3.75万円となり、年金だけでは不足する7万円に届きませんが、この投資方法を以下のように応用すると不足分を補うことも可能です。

たとえば、この投資を退職から20年前に開始した場合、20年後には45万円×20年=900万円貯まります。言い方を換えれば毎月使用できる3.75万円が20年分用意できることになります。つまり、貯めた900万円から毎月3.75万円を取り崩すことが20年間でき、それに継続運用して得られる月3.75万円を加えると月7.5万円になります。

このように運用すれば、投資後21年目からは毎月7.5万円が確保できます。さらに投資後36年目(退職後16年目)からはローンの返済が完了し、年間収支は156万円で月ベースでは13万円になります。

将来において大幅な家賃の下落がなければ、上記の投資方法で年金不足分を補填することは十分に可能ということができます。

ポイント② ローンを繰上返済して毎月7万を得る

また、収支がよくない物件でも同じように繰上返済することで不足分を補うことも可能です。

東京都内の中古ワンルームマンションの物件を例に説明します。

都内の中古マンション(東京都内、築18年、駅徒歩分1以内)
購入費用 1850万円
購入諸経費 130万円
自己資金 500万円
返済期間 29年
金利 1.5%(ローン返済額年約63万円)
年間家賃収入 103.5万円(稼働率97%)
年間経費
(管理費、修繕積立金や固定資産税等)
15.5万円

上記の物件で運用した場合、年間収支(手取り)は21.5万円で、月ベースでは約1.8万円となり、年金だけでは不足する7万円には届きません。

しかし、年金支給が始まる年の10年前に上記物件Aに投資をすると、年金受給開始時点でのローン残高は約1,040万円です。これを退職金等の自己資金を使って返済すれば、毎年の返済金額63万円は不要となり年間収支は大幅に改善されます。

家賃の下落も想定されますが、築15年以上のマンションの場合は大きな下落は比較的少ないので仮に5%の下落を想定すると収入は年間約98万円です。経費等は約16万円なので、年間手取収支は82万円、月ベースでは6.8万円となります。つまり、投資後11年目から年金不足分の7万円がほぼ補填できる計算です。

ポイント③ 繰上返済後から一定期間でマンションを売却する

年金不足分を補填できる時期から10年間は投資を継続して、投資開始後21年目で売却するという方法を検討します。RC(鉄筋鉄骨)構造のマンションで保全状況が良ければ以降も十分に使用できる物件であり、投資の出口戦略として考えておくことも重要です。

物件の状況にもよりますが、東京都の場合、前出の築18年の中古マンションの20年後、すなわち築38年の流通物件の下落率は約15.5%となっているため、1,850万円×0.845=1,563万円の売却が期待できます。

東京都・大阪府・愛知県の築年別中古マンション坪単価(2011年流通物件)(三井住友トラスト不動産 「不動産マーケット情報の中古マンション 築年別の価格と経年変化」より)

投資開始後10年目から20年までに得られる年間手取収支は86万円なので、この間の収支は860万円です。一括返済した1,040万円を考慮すると投資開始後21年目では約180万円の投資資金の回収不足となるため、180万円を売却額の1,563万円から控除します。

すると1,563万円-180万円=1,383万円が21年目以降の実質的な儲けとなります。(なお、ここでは売却時の仲介手数料や諸費用、減価償却に伴う譲渡税などについては考慮していません)

まとめると、投資開始11年目からの10年間は毎月6.8万円が確保でき、開始後21年目で売却すると1,383万円の売却益が確保できることになります。

3 マンション投資で失敗しないための2つのポイント

マンション投資は取り組み方次第では失敗することもあります。ここではマンション投資で失敗しないための注意点を紹介します。

3-1 マンション投資について勉強する

上記のとおり、マンション投資で年金の不足分を補うためには収支の良い物件や収支バランスをよく考えて適切に行う必要があります。そのためにはマンション投資についてよく勉強し、さまざまな知識を得ることが大切です。

マンション投資で失敗するケースの一つが、不動産会社の営業担当者の話を鵜呑みにして、自分や第3者のチェックがないまま投資を進めるというパターンです。

不動産会社は投資家に物件を勧めることには熱心ですが、投資に関する細かなリスクを丁寧に説明しなかったり、物件の適切な運用方法を教えなかったりすることもあります。

つまり、物件が販売できれば、それで投資家が儲かろうが失敗しようが関知しないといった会社も中にはあるわけです。

もちろん、ごく一部の話ですが、そうした不親切な業者の話に惑わされないようにするためにもマンション投資について自らよく勉強し、必要な知識を得て自分なりに投資の提案を評価できるようにする必要があるでしょう。

たとえば、不動産投資を効率的に学ぶことができる手段としては、日本ファイナンシャルアカデミー株式会社が運営する「不動産投資スクール」などがあります。物件選び、収支計算、融資、節税、管理、空室対策、リフォームなど、不動産投資家になるために必要なスキルをゼロからすべて学ぶことが可能で、受講生は累計で8,000名(2018年3月現在)を超えています。

日本ファイナンシャルアカデミー株式会社・不動産投資スクール

どのような授業が行われるのかを実際に体験することが出来る、無料の体験学習会(東京・大阪)もありますので、ご興味のある方は参加されてみると良いでしょう。

3-2 良い物件を見極める

マンション投資では物件選びが成否を左右するといっても過言ではありません。特に年間収支が悪い物件や物件価格の下落率が大きい物件は選ばないようにしましょう。

年間収支の悪い物件を選ばない

年間の手取収支は「年間家賃収入-年間経費等」で求めることができますが、立地条件が悪くなれば家賃が減ったり、地震で建物を修繕すれば経費が増えたりします。つまり、減収となるさまざまなリスクが存在し、その内容によって物件の価値が決まります。

家賃については、家賃自体の下落、空室・滞納による減収リスクがあり、物件の立地(駅近、人が多い等)や建物の魅力(人気の設備やデザイン等)によってリスクの程度が変わります。

経費には毎月の維持管理費や修繕積立金、固定資産税等の税金などがあり、物件によっては予想外の多額の費用になることもあります。維持管理費や修繕積立金の値上げにより大幅な経費増となるケースも考えられます。

都心の物件の場合、固定資産税や都市計画税が高額になることもあり、収支計画ではこれを踏まえて計画しないと収支の見込みが大幅に狂う可能性もあります。

購入を検討する物件のさまざまなリスク要因を吟味して、減収や経費増につながる可能性が高い物件を選ばないことが重要です。

物件価格が大幅に下落する物件を選ばない

マンション投資では物件の売却が必要になるケースもあるため、物件価格が大幅に下落する可能性の高い物件は避ける必要があります。

なお、物件価格は一般的に以下のような市場変化で上下します。

  • マンションのタイプ(ワンルーム、ファミリータイプなど)
  • 立地
  • 建物自体の魅力
  • 周辺環境
  • 人口動態の変化
  • 景気

そのため、「立地が良くない」「臭いや騒音を発する工場が多い」「風俗関係の施設が増えている」「人口が減少している」といった傾向のある地域の物件は、価格が下がる可能性が高いといえます。

また、物件の築年数を考慮した選定も重要です。市況によって物件価格は値上がりするケースもありますが、建物は経年劣化するため一般的にその価値は徐々に下落します。

築年数だけでみると新築から5年ほどの期間は特に下落率が大きく10~30%下落することもあります。一方、築18年頃からの下落率は緩やかで東京都などはその後20年間で約15.5%の下落となっています。ただ、築年数が経ってくると修繕費もかさんでくるようになりますので、その点は注意が必要です。

ほかにも物件相場は、東京オリンピックのようなイベントの開催、都心の再開発、人気の大型商業施設や大企業の進出などにより上昇しやすいですが、イベントの終了や企業の撤退などで下落します。

こうした築年数による価格変動や不動産市場の動向を踏まえて、物件価格の下落率が低い物件を選ぶことが大切です。

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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム

HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チームは、不動産投資や金融知識が豊富なメンバーが不動産投資の基礎知識からローン融資のポイント、他の投資手法との客観的な比較などを初心者向けにわかりやすく解説しています。/未来がもっと楽しみになる金融メディア「HEDGE GUIDE」