計画的な都市づくりのために作られる道路を都市計画道路と言います。所有する土地が都市計画道路の予定地になると、やがて自治体に収用されることになります。
都市計画道路の予定地は買主側の用途が限られてしまうため、通常よりも難しい不動産売却となります。
そこで今回のコラムでは、所有する土地が都市計画道路予定地になった場合の売却方法を解説していきます。また、査定を依頼する不動産会社の選び方も合わせて紹介します。
目次
- 都市計画道路とは?
- 都市計画道路の進捗状況は2段階
2-1.「計画決定」段階
2-2.「事業決定」段階 - 都市計画道路予定地を売却するための方法
3-1.都市計画道路予定地を購入するメリットを伝える
3-2.不動産会社に買い取ってもらう - 都市計画道路予定地の売却を不動産会社に依頼する際の選択ポイント
4-1.都市計画道路予定地の売却を行ったことがある
4-2.行政とのやり取りにも慣れている
4-3.買取も行っている - まとめ
1 都市計画道路とは?
自治体が都市計画法に基づいて市町村内で整備する施設を都市計画施設と言います。その都市計画施設は主に次の4つが挙げられます。
- 都市計画道路
- 都市計画公園
- 都市計画河川
- 都市高速鉄道
このうち都市計画道路は、各市町村内の道路利用状況を改善することなどを目的に作られます。通常は、住民の利便性を向上させるために、幅員20~30メートル程度の幹線道路になります。
都市計画道路の整備を進める上で、道路となることが決まった土地を都市計画道路予定地と言います。ただし同じ都市計画道路予定地でも「計画決定」と「事業決定」という2つの段階があり、その段階によって売却の可否が異なります。
2 都市計画道路の進捗状況は2段階
都市計画道路には段階によって予定地を売却できる場合と、売却できない場合があります。そこで都市計画道路の段階について紹介し、売却の可否についても解説していきます。
2-1 「計画決定」段階
「計画決定」段階は、都市計画道路を作る計画が決定したという進捗状況です。ただし事業をいつから行うかをはじめ、具体的にどのように行うかも決定していません。主に下記の内容で、調査を行っている状況です。
- 計画道路の名称・番号
- 計画幅員(路線全体の幅員・調査不動産の最寄幅員)
- 計画決定年月日
- 建築制限の確認と特例許可
- 事業決定の予定
計画が行われることが決まっていますが、実際に工事が始まるまでに数十年かかったケースや、そのまま放置されてしまっているような事例もあります。ただし、公的に計画が遂行されることが決まっているため、以下の条件を除いて、建築物を建てるには都道府県知事の許可が必要になります。
- 木造2階建て以下(地階がない)の建築物の改築・移転
- 非常災害のための応急措置
- 都市計画事業の施行、またはそれに準ずるものとして行うもの
この「計画決定」の段階では土地の売却はできますが、予定される売買金額や買主について都道府県知事に届出をする必要があります。これに対して、都道府県知事は「都市計画法第57条(土地の先買い等)」に基づいてその土地を優先的に先買いすることもできます。
2-2 「事業決定」段階
「計画決定」の段階で計画をどのように行うか決定した後に、事業として進めることが決定されます。この段階を「事業決定」と言います。計画決定に基づいて調査し、下記のように工事期間や計画などの具体的な内容が決定された状況です。
- 計画道路の名称・番号
- 計画幅員(路線全体の幅員・調査不動産の最寄幅員)
- 事業決定年月日
- 建築許可の確認
- 事業完了予定時期
- 具体的な進捗状況(測量・買収・工事などについて)
こうして事業決定された段階では、都市計画道路予定地はやがて分筆されて自治体に収用されてしまいます。そのため売却することができません。
なお、都市計画施設の事業決定には地権者との合意が必要なため、損失を受けないように事業者が補償する仕組みになっています。
3 都市計画道路予定地を売却するための方法
前述したように、都市計画道路予定地になった土地を売却するには、事業決定される前の計画決定の段階で行う必要があります。
しかし計画決定の段階でも建物を建設するには制限が設けられるため、買主にとっては購入しづらい物件でもあります。そのため下記のような方法を考えてみましょう。
3-1 都市計画道路予定地を購入するメリットを伝える
都市計画道路予定地には買主にとってメリットもありますが、そのことを知らないケースがあります。そのため積極的にメリットを伝えるようにしましょう。
具体的には次のようなメリットがあります。
不動産取得税・固定資産税等の軽減措置がある
都市計画道路予定地には一定の補正率が適用される軽減措置があるため、不動産取得税、固定資産税、都市計画税などの税金が通常の宅地と比べて安くなる可能性があります。
※出典:国税庁「財産評価>(都市計画道路予定地の区域内にある宅地の評価)」
地価が上昇する可能性がある
幹線道路が完成すれば接道条件がよくなり、周辺に商業施設などが建設されることも考えられ、地価が上昇する可能性があります。ただしこの場合、都市計画道路予定地の部分は収用されてしまうので、都市計画道路予定地に含まれない広い土地である必要があります。
改築・移転は可能である
建物を建築するには制限がありますが、木造2階建ての住宅を改築・移転するなどであれば問題ありません。
3-2 不動産会社に買い取ってもらう
不動産会社では不動産の買取を行っているケースもあります。一般客が買主となる仲介と違って、買取は不動産会社に購入してもらう方法です。
不動産買取では、仲介では時間のかかる特殊な物件でもスムーズに売却ができる可能性があります。ただし、仲介時の売却価格よりも価格が3割程度安くなってしまう点に注意しましょう。
下記の表は、仲介と買取の違いをまとめたものです。参考にしてください。
買主 | 売却価格 | 売却活動の期間 | |
---|---|---|---|
仲介 | 個人もしくは法人 | 不動産市場の相場価格で売り出す | 買主を探すところから始めるため、予測しづらい |
買取 | 不動産会社 | 不動産会社が買取価格を決める(相場より2~3割程度安くなる) | 買取する不動産会社が決まるとスムーズに進められる |
4 都市計画道路予定地の売却を不動産会社に依頼する際の選択ポイント
実際に都市計画道路予定地の売却を決めた場合、不動産会社に売却活動を行ってもらいます。この時に一社だけでなく複数社の査定を受け、複数の不動産会社の査定価格や査定の根拠を比較し、適した会社へ依頼をかけることが重要となってきます。
ここでは査定価格以外に、都市計画道路予定地の売却をしてもらう不動産会社を選ぶポイントを3つ紹介します。
4-1 都市計画道路予定地の売却を行ったことがある
都市計画道路予定地を売却するには、建築に制限があることなどを買主に説明する必要があります。できるだけ、都市計画施設などについての知識や実際に売買を行った実績がある不動産会社に依頼することも検討しておきましょう。
4-2 行政とのやり取りにも慣れている
都道府県知事への届出など、都市計画道路予定地を売却するには行政機関への書類提出も通常の不動産売買に比べて多くなります。行政とのやり取りにも慣れている不動産会社かどうかも判断のポイントとすると良いでしょう。
4-3 買取も行っている
仲介での売却が難しい場合は、ある程度の期間で見切りをつけて不動産会社に買取をしてもらう流れを想定しておきましょう。その場合、仲介をしてもらった同じ不動産会社に買い取ってもらったほうが、スムーズにいきます。
なお、複数の不動産会社に査定依頼をする際に役立つのが、不動産一括査定サイトです。一度の入力で複数の不動産会社から査定をしてもらえる仕組みになっています。
下記の表は、悪徳業者の排除を積極的に行い、仲介と買取の両方に対応した不動産一括査定サイトです。物件情報を登録する際は、都市計画道路予定地であることも備考欄に記入しておきましょう。
主な不動産一括査定サイト
サイト名 | 運営会社 | 特徴 |
---|---|---|
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まとめ
都市計画道路が作られると住んでいる市町村がより機能的になり、周辺地域はさらに発展する可能性があります。しかし所有する土地が都市計画道路の予定地になると、売却したほうがいいのかどうか悩む人もいるのではないでしょうか。
今回紹介したように、都市計画道路予定地は「計画決定」の段階では売却できますが、建物の建築には制限が設けられるため購入者が限られてしまいます。都市計画道路予定地を所有するメリットを伝えるなど、工夫をしながら売却活動を行うようにしてください。
倉岡 明広
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