経済成長が続くカンボジアはコンドミニアムの価格上昇が続くなど不動産市場が好調です。2018年7月に総選挙で圧勝したフン・セン首相はさらなる投資を呼び込もうと、カンボジアを「アジアの工場」とする目標を掲げています。
今回はカンボジアのコンドミニアムを購入する際のポイントや注意点、リスクなどをご紹介していきます。
目次
- カンボジアの不動産状況
1-1.カンボジアの不動産の特徴
1-2.カンボジアのコンドミニアムの特徴
1-3.カンボジアのコンドミニアム購入方法 - カンボジアでのコンドミニアム購入ポイント
2-1.米ドルで購入できる利点とは
2-2.税金(コスト)の把握が大切
2-3.確実にキャピタルゲインを得るには - カンボジアのコンドミニアム購入におけるリスク・注意点
3-1.外資主導のカンボジア不動産市場
3-2.消費者ローンを利用するカンボジア人の急増 - カンボジアのコンドミニアム購入における失敗事例
4-1.物件が完成しないケース
4-2.購入時よりも安く売却せざるを得ないケース
1 カンボジアの不動産状況
アジア開発銀行によれば、カンボジアの2018年国内総生産(GDP)成長率は7.0%、2019年も同率を維持するなど強い経済成長が予測されています。平均年齢は24.4歳と若く(日本45.9歳)、若い労働力は2070年まで増加する見込みです。
東南アジア全体の経済成長が減速する中、カンボジアは外国人観光客の増加と外国直接投資を背景に、今後も強い成長を続けると見られています(2018年4月「アジア経済見通し2018」より)。
1-1 カンボジアの不動産の特徴
カンボジアは株式市場がさほど機能していないため、現地の投資家は不動産市場に投資をしています。これがカンボジアの不動産相場を支える主要因となっています。
カンボジアでのコンドミニアム供給量は増加傾向にあり、2017年時点での国内合計は前年比107%となる8,600ユニットです。特に中国人による占有率の増加が顕著です(Southeast Asia Globe紙より)。
また現地紙ブノンペンポストは、2018年に完成する13,000ユニットのコンドミニアムが新たな投資需要を誘発し、賃貸需要も拡大させると見ています。
背景には中国人富裕層の爆買い?
首都プノンペンでもコンドミニアムの建設ブームに沸き、多くは中国人の投資家をターゲットにしています。以前は企業インフラに向いていたチャイナマネーが、不動産市場に流入したのが主な理由です。不動産バブル崩壊が懸念される中国では、富裕層や投資家を中心に現金を保有することに危機感を持ち、カンボジアなど東南アジアの高級コンドミニアムの購入に急いでいます。
このような状況の中、シンガポールの不動産管理グループLHNグループがプノンペンに12月完成するアパートメントを108戸、1250万ドルで購入しました。クメールタイムズ紙によれば、物件はスプリングCJWデベロップメント社からの買収であり、カンボジア市場への参入における第一歩であるとしています。シンガポールの大手不動産会社進出は、カンボジア不動産相場の期待感の高さをあらわしていると言えます。
1-2 カンボジアのコンドミニアムの特徴
カンボジアのコンドミニアムの歴史は浅く、建設が増えたのは2015年以降です。プノンペン以外でコンドミニアムの需要が多いのは、駐在員の多い「BKK(バンケンコン)1」で、㎡単価の平均は2,000米ドルとなります。
このほか外国人観光客に人気でコンドミニアムの建設が増えている「ロシアンマーケット」も㎡単価が1,000ドルと安いこともあって注目されています。
人口の激増が予想される首都プノンペン
一方で注目が集めているのがプノンペンでの物件です。プノンペンの人口は2000年の114万9000人から2010年には151万人に増加し、2020年には197万9000人になると予測されています。
賃貸需要に関しては世界中の駐在員が集まることで家賃設定も割高となるなど、高い水準を維持しています。プノンペンの物件はキャピタルゲイン、インカムゲインともに期待できます。
2016年第3四半期のプノンペンにおけるコンドミニアム価格は前年比7.44%上昇、㎡単位の価格は平均3,190米ドルとなっています(Global Property Guideより)。人気リゾート地であるシアヌークビルのコンドミニアムには投資マネーの流入が続き、外国人の購入が増加しています。
カンボジアのコンドミニアム開発を行うデベロッパーは、現地の大手企業の他に台湾や中国、シンガポールの大手企業がありますが、日系企業では不動産開発を手掛ける株式会社クリード及び株式会社シティインデックスが共同でプノンペン初となる総戸数900戸、14階建て高級コンドミニアムの1号・2号棟を完成させました。
このほか株式会社ウラタが大型ショッピングモールを併設する複合コンドミニアム開発(2021年6月グランドオープン予定)などを手掛けています。
1-3 カンボジアのコンドミニアム購入方法
外国人がカンボジアのコンドミニアムを購入する際の規制を確認しましょう。
まず外国人が購入できるのはコンドミニアムの2階以上部分のみとなり、1階や地下部分は購入できません。また「外国人所有者の割合が建物全体の70%まで」とされているため、検討時に物件の外国人保有率を販売会社に尋ねておく必要があります。
カンボジアで住宅ローンは利用できる?
現地でコンドミニアム購入のための住宅ローンを組むことは可能ですが、カンボジア最大の商業銀行であるアクレダ銀行の住宅ローンの金利は年率18%と高いことで有名です。その点、日本政策金融公庫は、事業目的のカンボジア不動産購入における金利が固定で2.5%と、利用しやすいのがメリットです。
なお、支払い条件を返済中に変更する場合(例えば利払いの方法や返済期間)、残金に対して3%の罰金が課せられるため注意が必要です。
一般的に政府系金融機関や現地銀行での融資審査は厳しくなりますが、中には住宅開発業者が住宅ローンを供与するケースがあります。融資審査も銀行などと比べると甘く、頭金も不要で最長30年の分割支払いが可能です。利用する際は自身の支払い能力をきちんと見極めることが大切です。
プレビルド物件は建設中止の可能性も
キャピタルゲイン狙いでプレビルドのコンドミニアムを購入する場合、建設計画が途中で頓挫するリスクに注意しなければなりません。カンボジアのコンドミニアムも販売によって得たお金を建設資金に充てているため、販売不振となれば資金ショートに陥る可能性があります。
プレビルド物件は早期に購入したほうが安く購入できますが、リスクを回避するために完売が近い物件を狙うのも一つの手段でしょう。
2 カンボジアでのコンドミニアム購入ポイント
カンボジアでは米ドルが流通しており、コンドミニアム購入も米ドルで行えます。海外不動産の購入においては、現地通貨の為替変動にも注意が必要ですが、カンボジアの場合には、比較的安定している米ドルで購入できる利点があります。
2-1 米ドルで購入できる利点とは
カンボジアの不動産に対する投資マネーの流入は好調のため、これからの相場上昇も期待できるでしょう。基本的には一般的な海外不動産投資と同様に新築コンドミニアムを転売目的で購入するスタイルになります。
米ドルは利上げが続くことと経済が堅調に推移していることから、対円でも上昇しています。つまり売却時において購入時よりも米ドル高となれば、為替差益を享受できることになります。
ただし、今後の金融市場の流れによっては日本の金融政策も低金利解除に変更する可能性があり、中期的には米ドルに対して円高に振れる可能性もあります。そこでコンドミニアムの出口戦略としても短中期での転売を狙う戦略がポイントになります。
2-2 税金(コスト)の把握が大切
カンボジアコンドミニアムの出口戦略を立てるためには、コストの把握が重要です。カンボジアのコンドミニアムを購入する際には、資産取得税が売買価格の4%発生します。
なお、売却時のキャピタルゲイン税は個人に対しては課税されていません。不動産収入税も同様に法人にのみ課税しています。日本での確定申告では、カンボジアのコンドミニアムによる収入に対して課税されるため、申告が必要です。
2-3 確実にキャピタルゲインを得るには
前述した通り、カンボジア不動産投資による収益確保の方法は、転売によるキャピタルゲインです。5%を超える賃貸利回りも魅力的ですが、売却時の戦略を第一に考えたほうが良いでしょう。
なお物件売却では需要の正しい見極めが成否を分けます。
例えばプノンペンの中心地で建設中のオリンピアシティは商業施設やホテル、スーパーマーケットなどを併設する複合大型施設ですが、90%近く販売した中で50%はカンボジア人が購入しています。
高級コンドミニアムの転売といえば、同じ外国人相手というイメージが強いですが、中級程度のコンドミニアムであれば現地のカンボジア人も転売相手となります。
例えばプノンペン中心部にある大型コンドミニアム「オリンピアシティ」ですでに完成し転売に出されている部屋は、48.3㎡のStudio Room(ワンループのようなタイプ)で79,000米ドルとなります。
現地のカンボジア人にも転売できるような手頃な価格の、コンパクトな広さの部屋を購入すると、賃料を安く設定でき、さらに収益も得やすくなるため出口戦略を立てやすくなります。
3 カンボジアのコンドミニアム購入におけるリスク・注意点
経済成長が続くカンボジアでは、住宅ローンも利用できますが、前述したとおり金利も高くなっています。現地銀行での借り入れ金利は10%を超えるものもあり、長期保有となれば収益を生み出すのは難しくなります。
3-1 外資主導のカンボジア不動産市場
そこで転売目的で新築コンドミニアムで購入する際は、「現在の好調な不動産市場がいつまで続くか」について注視する必要があります。カンボジアの不動産市場は外資頼りです。投資マネーの流入が減速すれば不動産価格の上昇はマイナスに転じる可能性もあります
また住宅ローンを提供するデベロッパーは購入者の返済滞納により資金繰りが悪化するリスクがあります。滞納問題が他の物件開発に影響を与える可能性もあるため、ローンを貸し出しているデベロッパーのコンドミニアムを購入する際は慎重な検討が求められるでしょう。
3-2 消費者ローンを利用するカンボジア人の急増
カンボジアでは投資資金が不動産に向かいやすいという背景もあり、消費者金融を利用して不動産を購入する人も増えています。
懸念されるのは、消費者ローン利用者の急増による債務の増加です。多重債務の危険性もあり、2018年6月時点での消費者ローンの借入残高は51億6000万米ドルとなっています。仮に個人支払いが滞るデフォルトが発生すれば、不動産相場にも影響を与える可能性があります。投げ売り物件が増えれば不動産相場全体を押し下げることになります。
4 カンボジアのコンドミニアム購入における失敗例
カンボジアにおける不動産投資で失敗するパターンは次のようなケースがあります。
4-1 物件が完成しないケース
カンボジアで2005年、韓国系デベロッパーにより建設途中だったコンドミニアムが08年に発生した世界金融危機の煽りを受けて販売が低調になり、運転資金の確保ができず建設中止になったケースがあります。
物件の引き渡しもなく、すでに支払ったお金も建設費用に投じているため戻りません。カンボジアでは世界中からデベロッパーが開発に乗り出していますが、財務状態をできる限り確認する必要があります。
4-2 購入時よりも安く売却せざるを得ないケース
デベロッパーの強気な価格設定によるコンドミニアムをプレビルドで購入したものの、完成後の売却価格が購入時よりも低くなってしまったというケースもあります。
プノンペンの不動産価格の上昇は実質的にデベロッパーの値付け価格の高騰に牽引されています。しかし大規模物件は完成時に完売しないケースもあり、デベロッパーが自ら売却することがあります。
同時期に購入者が転売のために売り出すわけですが、デベロッパーが売り急ぐあまり価格を大幅に引き下げるため、購入者も売り出し価格を下げざるを得ないという事態になります。
このほか海外不動産では投資詐欺で大きな被害となるケースが後を絶ちません。このような被害に遭わないためには信頼できる投資会社の選定が欠かせないでしょう。
4-3 世界的な経済ショックや戦争などで大きく円高に振れるケース
カンボジア都心部での投資には主に米ドルが使用されているものの、リスク回避などで米ドルが円高に振れる可能性もあります。
せっかく不動産で利益が出ても為替が円高方向に大きく動いてしまうと損が出かねないため、仮に円高になったとしても、為替が円安に戻るまでドルで長期保有できるように余裕資金で運用すると良いでしょう。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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