アパート経営の適正賃料と物件の競争優位性はどう測る?競合物件調査とデータに基づく賃料設定・空室対策

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アパート経営を成功させる鍵は、適切な賃料設定にあります。賃料が高すぎれば入居者が決まらず、低すぎれば収益が悪化する…このジレンマに悩むオーナー様は少なくありません。本記事では、データに基づいた適正賃料の算出方法から、競合物件に差をつける空室対策までを網羅的に解説します。堅実なアパート経営を実行するうえで、ぜひ参考にしてください。

目次

  1. アパートの適正賃料の決定要因
    1-1.エリア
    1-2.最寄り駅と駅からの距離
    1-3.間取り・広さ
    1-4.物件の構造
    1-5.築年数
    1-6.その他の評価ポイント
  2. 賃料相場の調査方法
    2-1.不動産会社のレポートを確認する
    2-2.ポータルサイトをチェックする
    2-3.不動産会社で実際の物件をチェックする
  3. アパートの稼働率を維持する空室対策
    3-1.好立地で利便性の高い物件で経営を行う
    3-2.適正な賃料設定を維持する
    3-3.メンテナンス・修繕を適切に行う
    3-4.ニーズを捉えた設備・間取りを取り入れる
    3-5.入居者募集に強い管理会社と契約する
    3-6.サブリースを活用する
  4. 適正賃料での堅実なアパート経営をサポートしてくれる不動産会社
  5. まとめ

1 アパートの適正賃料の決定要因

アパートの賃料相場は、次のような要素をもとに決定づけられます。

  • エリア
  • 最寄り駅と駅からの距離
  • 間取り・広さ
  • 物件の構造
  • 築年数
  • その他の評価ポイント

それぞれのポイントについて詳しく見ていきましょう。

1-1 エリア

日本全国のどの都市圏・地域を選ぶかによって、賃料水準は変わってきます。基本的に大規模な都市圏の賃貸住宅は、家賃水準が高くなりがちです。

主要都市部のワンルームの賃料相場


SUUMO「全国の家賃相場・賃料相場情報」を基に筆者集計・作成

たとえば、東京23区内にあるアパートやマンションは、突出して賃料水準が高くなりがちです。名古屋や大阪は東京に次ぐ人口規模を抱える大都市ですが、ワンルームの賃料相場はほかの大都市圏と大きく変わりません。札幌市は200万人近い人口を抱える大都市ですが、賃料水準では仙台や鹿児島など、より規模の小さいエリアよりも賃料が低い状況となっています。

こちらはあくまで2025年4月時点の賃料相場です、今後の人口動態や都市の発展状況や物価変動など、さまざまな要因で賃料相場は変化する点に留意しましょう。

1-2 最寄り駅と駅からの距離

最寄り駅や駅からの距離によって、賃料相場は変化します。大都市の場合、その都市のターミナル駅までの所要時間と最寄り駅からの距離が、重要な賃料相場の決定要因の一つとなります。たとえば、東京駅に接続する中央線快速の主要な停車駅の賃料相場は次のとおりです。

中央線快速の主要停車駅の賃料相場


SUUMO「全国の家賃相場・賃料相場情報」を基に筆者集計・作成

中央線は、東京駅・新宿駅という日本有数のターミナル駅に停車します。両駅より西側の駅では、都心部から離れるほど賃料相場が下がっていくのが特徴です。また、始発電車が多かったり、特急など優等電車が止まる駅は、相場が高止まりするケースもみられます。

都市部では、最寄り駅までの所要時間も重要です。基本的には駅まで近い物件ほど賃料に上昇圧力がかかります。遠くて利便性に難があれば、最寄駅自体の相場が高くとも、賃料が下がりやすくなります。

1-3 間取り・広さ

間取りや専有面積も、賃料相場に影響を与えます。他の条件が同じであれば、広い部屋の方が賃料は高くなります。特に部屋数は、居住環境に大きく影響を及ぼすため、たとえば次のように相場水準に明確に差が出ます。

東京都世田谷区明大前駅の間取り別賃料相場


SUUMO「全国の家賃相場・賃料相場情報」を基に筆者集計・作成。なお、徒歩5-10分圏内、築0-5年の物件より集計

間取りは、賃料相場を決めるだけでなく、ターゲット設定においても重要なポイントとなります。大学生や社会人の一人暮らしを狙うなら、ワンルーム~1LDKあたりの間取りが適していますが、ファミリーを狙うなら3LDK前後の間取りが適切です。

たとえば、一人暮らしの需要を狙うとして、周りが1LDKの物件ばかりだった場合、ワンルームで需要を募るためには、周辺の単身向けアパートより賃料を安く設定する必要があります。堅実なアパート経営を実現させるためには、その地域に合った間取りにすることが重要です。

1-4 物件の構造

物件の構造も、賃料水準に影響を与える場合があります。基本的に、RC造の物件は木造の物件より賃料が高くなりがちです。

実際には建物それぞれの性能によるため一概には言えないのですが、基本的にはRC造りの建物の方が、耐久性や耐火性に優れているとの印象を持たれがちです。また、遮音性の面でも木造より優位であると考えられるため、他の条件が同じであれば、RC造りの方が高い賃料でも入居者が集まる傾向にあります。

1-5 築年数

築年数と賃料水準は反比例の関係性にあります。特に新築~築10年前後までは築年数の経過とともに早いペースで賃料が下落する傾向にあります。

その後は築年数の経過による賃料低下のペースは緩やかになりますが、築年数が経過するほど賃料が落ちる傾向は変わりません。

1-6 その他の評価ポイント

ここまであげた要因のほかにも、以下のようなさまざまな要素が複雑に絡み合って、アパートの賃料は決まります。

  • バス・トイレ別、ウォシュレットやオートバスなど水回り設備の品質
  • 宅配ボックスやIoT、エレベーターなどの利便性の高い設備の有無
  • 防犯カメラ・オートロック・強化ガラスなどの防犯対策
  • ハザードマップを踏まえた災害リスクの高さ
  • 太陽光発電パネルの有無

物件の立地や建物内外のさまざまな特徴によって、適正賃料は決まってきます。最寄り駅や間取りといった表面的な情報だけで、賃料の割安・割高を判断しないように注意しましょう。

2 賃料相場の調査方法

賃料相場の調査方法としては、大きく分けて次の3つが存在します。

  • 不動産会社のレポートを確認する
  • ポータルサイトをチェックする
  • 不動産会社で実際の物件をチェックする

それぞれの調査方法を紹介していきます。

2-1 不動産会社のレポートを確認する

複数の不動産会社やポータルサイトが、定期的に賃料に関するレポートを出しています。たとえば、健美家では「健美家レポート」を定期的に発行していて、そのなかで全国の賃貸住宅の賃料相場を地域別に公開しています。また、アットホームでは「全国主要都市の「賃貸マンション・アパート」募集家賃動向」というレポートを月次で公開しています。

こうしたレポートは、公平な視点で全国各地の賃料相場や、過去と比べたときの変動率を簡単に確認できる点で便利です。一方で、多くのレポートは「関東」「首都圏」といったように大きな単位でのエリア分けでしか賃料相場を確認できません。

実際には、一つのエリアの中でも利便性の高い地域と低い地域で大きく賃料が異なります。詳細な物件選別や、適正賃料の設定のためには、さらに細かく情報収集を行う必要があるため、この後紹介する方法も組み合わせていきましょう。

2-2 ポータルサイトをチェックする

ポータルサイトをチェックして、募集賃料を確認するのも有効な手段です。このときには投資用不動産のポータルサイトと、賃貸住宅を借りるためのポータルサイトの双方をみていくとよいでしょう。

投資用不動産のポータルサイトの中には、賃料に関する詳細な集計情報が掲載されている場合があります。たとえばLIFULL HOME’s「見える賃貸経営」では、関東およびそれ以西については各市町村単位・間取り単位で賃料相場を確認できます。

もちろん、シンプルに賃貸のポータルサイトを見てみるのも有効です。SUUMOのような賃貸ポータルサイトは、駅や間取り、築年数など細かな条件を指定して、いま市場に出ている賃貸の部屋の募集賃料を確認できます。データベース化されていないのが難点ではありますが、価格の降順・昇順にするなどして、適正な賃料水準を掴みましょう。

2-3 不動産会社で実際の物件をチェックする

具体的な賃料相場を確認するなら、不動産に関する豊富な情報が集まる不動産会社にヒアリングするのが有効です。不動産仲介を行う管理会社なら、アパートを所有する地域において、実際に募集している賃料の情報を良く知っているでしょう。

ただし、有力な情報を引き出せるかどうかは、不動産会社のスタンスや不動産会社との関係性によります。不動産会社が扱う物件はそのアパートだけではないので、自分だけに有利な情報を提供するとは限らないからです。管理会社とは長期にわたり連携していく必要があるため、威圧的な態度で無理に情報を聞き出すことのないように留意しましょう。

3 アパートの稼働率を維持する空室対策

アパートの稼働率を維持するための空室対策としては、次のようなものがあります。

  1. 好立地で利便性の高い物件で経営を行う
  2. 適正な賃料設定を維持する
  3. メンテナンス・修繕を適切に行う
  4. ニーズを捉えた設備・間取りを取り入れる
  5. 入居者募集に強い管理会社と契約する
  6. サブリースを活用する

それぞれの対策について、詳しく紹介します。

3-1 好立地で利便性の高い物件で経営を行う

都市部の好立地な物件を選択するのが、空室を減らす有効な対策のひとつです。単身用アパートの入居者は、通勤・通学を念頭においたときの利便性を特に重視して物件を選びます。利便性の高い駅からほど近い物件は、それだけで入居希望者が付きやすく、安定した稼働率が期待できます。

稼働率の安定性を重視するなら、物件選びのときにはターミナル駅まで一本で行けて、徒歩10分圏内の物件を目安に選ぶとよいでしょう。

3-2 適正な賃料設定を維持する

入居者を早期に獲得するためには、適正な賃料設定が重要なポイントのひとつです。入居者にとって賃料は、暮らしを始めた後の固定費となるため、少額の違いでもこだわる方が少なくありません。

1,000円割高なだけでも、入居者獲得に大きく支障が出るリスクがあります。だからといって安くしすぎると、今度はアパート経営が悪化します。この記事で紹介した、賃料に影響を与える要素を理解したうえで、市場調査をしっかりと行い、適正な賃料設定を心がけましょう。

3-3 メンテナンス・修繕を適切に行う

こまめなメンテナンスや修繕が、稼働率の維持に重要です。アパートの経年劣化を完全に避けるのは難しく、基本的に建物の魅力や価値は徐々に下がっていきます。

ただし、小さな破損・汚損を早めに修繕し、消耗品をこまめに更新していけば、物件の劣化を遅らせられます。そのうえで築年数を踏まえた適切な賃料を設定すれば、長期にわたり安定した稼働率を維持することが可能です。

3-4 ニーズを捉えた設備・間取りを取り入れる

アパートの設備や間取りを、入居者のニーズに合わせることも大切です。まずは、購入時点で入居者ニーズに合った物件を選ぶことが重要です。アパートに求められる設備のレベルは、時代とともに変化します。以前は高級物件にあるイメージであったオートロックや宅配ボックスも、時代と共に多くのアパートに設置されるようになりました。

さらに時代をさかのぼれば、昔は風呂・トイレ別、ウォシュレットもアパートとしては高グレードとみなされた時代もあったほどです。間取りについてもトレンドがあります。以前は単身=ワンルームが多かったですが、近年は大都市圏でも1LDKも多く見られます。

また、ファミリー向け物件では、コロナ禍以降ワークスペースを確保する物件が増えています。コロナ禍を経て働き方のスタイルが多様化し、一時的なリモートワークに対応できる物件を求める入居者が増えていることが背景にあります。少なくとも、購入時点で競合物件と設備・間取り面で見劣りしないようにすることが大切です。

経年と共にトレンドが変わり、自身の物件が見劣りし始める可能性があります。大規模修繕やリノベーションの際には、あらためてアパートに求められる設備を調査して、物件をアップデートすべきか検討しましょう。

新設備の導入や間取りの変更は、大きなコストを伴います。コストを払って競争力を高めるか、賃料を割安にして現状のまま入居者を募るか、慎重な判断が求められます。

3-5 入居者募集に強い管理会社と契約する

入居者獲得につよい管理会社を利用するのも、重要なポイントです。入居者を早期に見つけられるかどうかは、管理会社の能力にも大きく依存します。仲介会社とのリレーションが強い、ポータルサイトなどWeb上で入居希望者の目に留まる広告掲載ができるなど、入居者集めに強みをもつ会社を利用するのが得策です。

また、もし入居者がみつからないときに、放置したり、安易に賃料の引き下げに走ったりせず、空室に対する具体的な対策・戦略を提案してくれる管理会社が信頼できます。あまりに入居者の獲得が進まない場合には、管理会社の変更も視野に入れるとよいでしょう。

3-6 サブリースを活用する

少し考え方を変えて、そもそも空室の影響を受けないスキームを利用するのも一つの方法です。サブリース契約を締結すれば、オーナーは管理会社に物件を一括借り上げしてもらうこととなり、実際の空室率に関係なく安定した収入を獲得できます。空室に対する対策は基本的には必要なくなります。

ただし、サブリース手数料は一般的な管理委託料より高く、オーナーに支払われる保証賃料は、市場家賃の80%~90%程度に設定されるのが一般的です。空室リスクを回避するためのコストと割り切れるか、慎重な判断が求められます。

空室リスクを無視できることに対する対価と考えれば、追加の管理コストや割安な賃料は、ある程度は合理的です。リスクを取って収益最大化を狙うか、サブリースで当面の収入を確保するか、オーナーとして慎重に判断しましょう。

4 適正賃料での堅実なアパート経営をサポートしてくれる不動産会社

4-1 シノケンプロデュース

シノケンの不動産投資セミナー
シノケンプロデュースは、土地の選定から企画、設計、施工、引き渡し後の賃貸管理まで一貫したサービスを提供するアパート建築会社です。一般投資家向け賃貸住宅経営のパイオニアとしても知られており、アパート供給棟数は自社施工で7,000棟を超えています。「賃貸住宅に強い建築会社ランキング」(全国賃貸住宅新聞)の「年間アパート開発棟数部門」では、9年連続No.1の実績があります。

グループ会社のシノケンファシリティーズの管理戸数は50,000戸以上(2024年12月末時点)、入居率98.75% (2024年年間平均/自社企画開発物件)となっています。このような入居率の高さは、5,000店舗以上(2024年5月時点)の仲介業者と提携し、良好な関係を築いていることも要因の一つです。

多数の金融機関と提携

シノケングループは、1990年の創業以来30年以上にわたり金融機関との取引実績を築いており、新築アパート経営において日本で初めて独占提携ローンを提供したことでも知られています。オーナーの属性によっては、金利1%台、RC物件と同程度の35年の返済期間などでの紹介実績もあります。

デザイン性と機能性ともに優れたハーモニーテラス

シノケングループのアパートの基幹ブランドは「ハーモニーテラス」といい、デザイナーが一棟ごとに、オリジナルのデザインをほどこしています。洗練された外観はもちろんのこと、快適に暮らせる工夫を土地や立地の事情に合わせて積極的に取り入れています。

シノケングループでは、セキュリティや設備についてもこだわっているのが特徴です。小規模な物件でもオートロック式の物件が多くみられます。また、2019年以降の開発物件では全戸でIoTを導入しています。スマホでの施錠や照明ON/OFF、空調設定などが可能です。

4-2 アイケンジャパン

株式会社アイケンジャパンアイケンジャパンは、「堅実なアパート経営」をモットーに「グランティック」「レガリスト」などのアパートブランドを全国で展開する不動産会社です。2023年12月末時点で、アパート開発棟数1257棟の実績があります。

賃貸管理の実績として9,136戸(2023年12月時点)の管理を行っており、入居率99.3%(2023年年間実績)となっています。オーナーの負担が大きく、効果が一時的なフリーレントや家賃の値下げを行わずに高い入居率を維持しているのも特徴です。

2017年3月以降に完成したすべての物件で劣化対策等級が最高レベルの等級3の評価を第三者機関より獲得しています。2世代から3世代にわたって引き継ぐことが可能です。

融機関との提携が強み

アイケンジャパンも、これまでの物件販売や不動産会社としての経営実績に定評があります。とくに地元福岡の金融機関と強固なリレーションを築いています。

  • 福岡銀行
  • 西日本シティ銀行
  • みずほ銀行
  • 福岡中央銀行
  • オリックス銀行
  • 七十七銀行
  • 十八親和銀行

金融機関探しや融資交渉なども、提携している金融機関を活用すれば手間なく進められることが期待できます。特に福岡でアパート経営を手がけるときには、複数の金融機関と融資に関する相談が可能です。

社会人の女性をターゲットとしている

アイケンジャパンは「社会人の女性」をメインターゲットとしてデザインや機能性、立地などにこだわって物件開発を行っているのが特徴です。駅から徒歩15分以内の利便性の高い土地を取得してアパートを建設し、オートロック完備・防犯カメラの設置や屋内共用階段など、安心して暮らせる設備・構造をとりいれています。

さらに、全戸角部屋を基本とすることにより防音性の向上を実現させているのも特徴です。プライバシーが守られる物件であるため入居需要を獲得しやすく、家賃の下落を抑える効果も期待できます。

5 まとめ

アパートの賃料は、さまざまな要素が複雑に絡み合って決まります。エリアや間取りを基準とした相場はあるものの、個別の物件の特性も踏まえて定まるものです。市場レポートやポータルサイト、不動産会社からの情報収集を通じて、適切な賃料を見極めましょう。

また、賃料を適切に設定するだけでは、空室リスクを完全には避けられません。利便性の高い物件でアパート経営を始めて、さらにニーズに合った間取りや設備を整えることが大切です。管理会社の入居者獲得スキルやアドバイスも稼働率を高める重要な要素なので、うまく進まないときには管理会社の変更も検討しましょう。

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伊藤 圭佑

資産運用会社に勤める金融ライター。証券アナリスト保有。 新卒から一貫して証券業界・運用業界に身を置き、自身も個人投資家としてさまざまな証券投資を継続。キャリアにおける専門性と個人投資家としての経験を生かし、経済環境の変化を踏まえた投資手法、投資に関する諸制度の紹介などの記事・コラムを多数執筆。