2021年はワクチン接種の進展に注目、ESG投資は日本株式市場にも。シュローダー市場見通し

資産運用大手のシュローダーは1月8日、2021年の日本株式の市場見通しを公表した。日本株式運用総責任者の前田建氏は①マクロ経済環境と企業業績についてはコロナ後の回復期待が高い中、市場動向を占う上で新型コロナウイルスの感染状況やワクチン接種の進展などが注目される②20年後半の株価上昇を受けて市場全体としてバリュエーションは割安感がある水準とは言えないが、市場の期待通り、あるいは期待を上回るペースで企業業績の回復が進めば、市場の上昇余地がある③20年は市場の二極化傾向が加速し、グロース株とバリュー株のバリュエーション格差は歴史的に極端な高水準にまで到達。景気回復、業績改善に伴い、本格的な格差縮小に転じる――と想定。そのうえで、21年は「コーポレートガバナンスコードの改訂があり、また東証の市場再編を控えてガバナンス改善がさらに進展すると期待され、その優勝劣敗が株価リターンを左右する」と見る。

20年の日本株式市場は新型コロナウイルスの感染拡大が懸念された2月、3月に大きく下落したのち、世界的に財政政策と金融政策の拡張による流動性供給とアフターコロナの回復期待が高まってリスクオンの市場環境となり、4月からの20年度では12月までに30%もの上昇を記録(TOPIX配当込み)。結果、TOPIXの市場PER(株価収益率、12か月予想)は18倍まで拡大した。「市場では割高感から高値警戒感が強まるというよりは業績回復が進展することが想定されて、足元で感染拡大が懸念する中でも市場は底堅さを維持している。ワクチン次第ではあるが、21年度の企業業績の回復が確認され、さらに次年度への利益成長が見えてくれば、市場の上昇余地が出てくる」と前田氏は述べている。

リスク要因としては、新型コロナウイルスの収束が後ずれする可能性に加えて、足元で進行する円高による企業業績への影響、バイデン米新政権による経済政策の動向や米中衝突の可能性、また国内でも10月までには総選挙を控える菅政権の政治的安定性が揺らぐケースなどを挙げた。

20年の日本株式市場で顕著だったのが二極化相場のさらなる加速だ。大型株優位、グロース優位の相場動向は18年、19年と続いていたことから20年はその反転が予想されていたが、新型コロナウイルスによる影響がそのタイミングを遅らせたと言える。突発的な要因により景気と企業業績が急停止をして、不透明感が強まる中では利益成長力が確かなグロース株が選好され、また業績回復期待が高まる中でも安心感からグロース株がバリュエーションを無視して買われる傾向が続いた。これについて、前田氏は「景気回復、業績改善に伴い、本格的な格差縮小に転じる」と想定した。

日本株式市場特有のプラス要素としてこの数年、シュローダーはガバナンス改善とそれに伴う株主リターンの向上を挙げてきた。日本企業の動き、経営陣の対応は「全体的に必ずしも満足のいくスピード感ではない」(同社)が、ガバナンスの改善、株主還元方針の強化や明確化、さらには親子上場の解消、政策保有株の売却など、個別には市場に評価されるケースも多くなってきている。

21年はコーポレートガバナンスコードの改訂が予定されており、そこでは社外取締役を3分の1以上にするなど、より強固にガバナンス体制の強化が求められると見込む。さらに親子上場や政策保有株の問題にも踏み込むことが期待されている。加えて、東証の市場構造改革を受けた市場区分の変更が本格的に動き出す見込みで、東証上場市場はプライム、スタンダード、グロースと分けられ、プライム市場には更なるガバナンス強化に向け、厳しい基準が設定されると見られている。新しい市場区分への移行は22年4月が予定されており、それに向けて上場企業の取り組みが21年に本格化することが期待される。

レポートは最後にESG投資と脱炭素化、DXの展開を話題に取り上げている。ESG投資の世界的な拡大は日本株式市場においても大きな流れとなっている一方、「ESGをテーマ的に扱って、株価がファンダメンタルズを無視して過度に押し上げられるケースなどには注意が必要」と前田氏は指摘。そのうえで「ESGをブームではない視点で、企業価値を映すレンズの一つとして見れば、長期投資を志向するアクティブ運用としてその有用性は高い」との意見だ。

さらに、「企業経営においてもSDGsを踏まえた企業価値向上、利益成長の戦略が打ち出されるなど、気候変動や不祥事などのリスク回避だけでなく成長力を後押しする視点としても、ESGが重要になっていく。企業の情報開示や新たなESG分析のデータ蓄積、手法やツールの開発などが進んでいる中、企業リサーチの強化、アクティブ運用の高度化につなげていくことが運用会社には求められている」との認識を示した。

ほか、政府が進める脱炭素化、DX(デジタルトランスフォーメーション)は「企業にとっては経営環境の構造的な変化につながる動き。特に脱炭素化、気候変動問題はESG投資において重要な視点の一つで、この数年、日本株を敬遠してきた海外投資家にとっては、ガバナンス改善に次いで、日本株式市場に対する見方を好転させるきっかけになるとも期待される」と継続して注目していく姿勢だ。

【関連サイト】シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社

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HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム

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