日本企業の進出が進むカンボジアは、2011年以降、7%という高い経済成長率を維持しており、総人口では2080年まで増加が見込まれることから、不動産投資先として近年注目を集めています。カンボジアの物件は価格の安さも魅力のひとつですが、実はドルで購入できる点も大きなメリットとなります。
そこで今回は最新のカンボジア不動産投資事情と、ドル建てによる不動産購入のメリットや注意点などをご紹介します。
- カンボジア不動産投資の概要
- カンボジアの政治・経済事情
- カンボジアの不動産投資事情
- カンボジア不動産投資とドル
- カンボジア不動産投資でドルが使える理由
- カンボジア不動産投資でドルを使用するメリット
- カンボジア不動産購入の注意点
- 今後のカンボジア不動産投資
1 カンボジア不動産投資の概要
海外で不動産投資する場合、その国の政治・経済の状況と不動産市場の動向を把握することがとても大切です。まずは、カンボジアの政治的・経済的な国内事情から見ていきましょう。
1-1 カンボジアの政治・経済事情
カンボジアは1970年から約20年間に渡り内戦が続いていました。特に75年〜79年のポル・ポト政権時代には多くのカンボジア人が犠牲になったことで極端に国力が低下し、農業以外の産業はほぼ壊滅状態となりました。91年のパリ和平協定で内戦は終結し、93年に国連カンボジア暫定統治機構の監視のもと選挙が実施され、新憲法の下で新たな政権が発足しました。
以降、年次ベースでの経済成長率はマイナスに転落することなく、平均7%という高い経済成長率を維持しています。
カンボジアの経済成長力が高い理由の一つに平均年齢が若いことが挙げられます。2016年時点で、日本45.9歳に対して、カンボジアは24.4歳となります(PopulationPyramid.netより)。若い労働力は2070年まで増え続けると推測されていて、日本企業はその労働生産力を見込んで積極的にカンボジアへ進出、2016年時点でのカンボジアへの投資額は約930億円と前年の14倍を記録しました(NNA ASIAより)。
1-2 カンボジアの不動産投資事情
高級住宅街が続々と誕生する首都プノンペンは、不動産開発ブームによりコンドミニアムの建設ラッシュとなっています。地価は平均で前年同期比+6.6%を記録し(CBREリサーチ、2017年第4四半期データより)、マレーシアなど周辺国の海外投資家がコンドミニアムをさかんに買い上げた結果、コンドミニアム価格の上昇に拍車がかかりました。
開発が進むブノンペン
プノンペンポスト紙によれば、今年中にはコンドミニアム1万3000ユニットが市場に追加投入される予定で、地元の賃貸市場はさらに拡大すると見られています。またオフィスリースの需要も好調で、国際的なショッピングモールが2018年に2棟オープンする予定です。
現在、プノンペンの高級コンドミニアムのほとんどは外国人が購入しています。カンボジア人の1人あたりGDPは、1140ドルとASEAN内では最低レベルですが、現在の成長力を加味すれば、カンボジア人も投資目的で賃貸収入が見込める住宅用ユニットを購入するようになるだろうと考えられます
ただし、このほかの多くの中古コンドミニアムは、品質的には決して満足度が高いとは言えず、カンボジア駐在の日本人や外国人は居住中の物件に不満を持つ人もいます。逆に言えば、外国人を満足させることができる高品質な新築コンドミニアムを建築・購入することで、そのような賃貸需要も取り込めると言えます。
高利回りが魅力
プノンペンの一等地では、1000万円台からコンドミニアムを購入することが可能です。外国人駐在員や富裕層が多いエリアは賃貸相場も高く、高利回りが期待できます。カンボジア不動産の売買サポートを手がけるビヨンドボーダーズによれば、高級賃貸住宅の年間利回りは8%となります。
カンボジアの狙い目エリア
不動産投資で狙い目のエリアとして、プノンペン国際空港周辺が挙げられます。プノンペン国際空港はプノンペン都市部から車で1時間ほどの距離ですが、日系企業が集まる経済特区からも近いエリアです。プノンペン中心部の半額ほどで物件を購入することも可能です。なお、経済特区とは、カンボジア経済発展のために法的・行政的に特例が設けられた地域のことで、特区開発業者、特区内投資家または外国人従業員に対して、特区における全ての投資収益や特区内で受領する給与を国外の銀行へ送金できるなどの優遇措置が図られています。
またプノンペンのダイアモンドアイランドと呼ばれるコーピッチ地区も、コンドミニアム建設で注目されています。今年6月、台湾の投資家が40階建てのビルを1億ドル(約109億円)で建設すると発表しました。また、南部シアヌークビル州ではスカイ・マウンテン・ビュー・インベストメントが約1億900万米ドル(約115億円)で商業ビルの着工を開始したと発表するなど、積極的な投資が続いています(NNA ASIAより)。
2 カンボジア不動産投資とドル
カンボジアにはリエル(KHR)という独自通貨があります。しかしリエルは、1970年に始まった内戦で廃止された旧通貨の代わりに1980年に新たに導入されたもので、当時は国民からの信頼を得られていませんでした。
2-1 カンボジア不動産投資でドルが使える理由
そこで国連によって持ち込まれた米ドルが広く使われるようになりました。カンボジア政府としては自国通貨を流通させたいようですが、海外からの企業誘致には世界の基準通貨である米ドルを使ってもらった方が都合が良いという事情もあります。
このような背景から投資用不動産もドルで購入できますし、売却後もドルで決済されます。家賃収入もドル建てで保有し、銀行に預ける、投資家の自国に持ち出す、なども自由です。なおカンボジアの銀行に預けておけば、高い金利で運用することも可能です。このように、ドル建てで不動産投資が行える点がカンボジア不動産の大きな魅力となっています。
2-2 カンボジア不動産投資でドルを使用するメリット
東南アジア諸国で不動産を購入する場合、通常は日本円を現地通貨に換金して支払いをします。その後の運用では現地通貨で現金を受け取り、税金の納付などを行って最終的に売却したら手元に現地通貨が残ります。
為替差損が発生するリスク
しかし、現地通貨を日本円に換金して日本に送金するさい、購入時と売却時の為替に注意が必要です。仮に購入時よりも売却時の通貨為替レートが下落すれば、日本円に換金する際には為替差損が発生するからです。
経済成長と高い金利で上昇する新興国通貨は、下落するリスクを抱えています。実際、2018年のアジア新興国通貨は米ドルに対して下落を始めています。インドネシアやインド、フィリピンなどは年初から5月にかけて3%ほど下落しています。
ドル高の背景もありますが、すでに金利の高いこれらの国では、さらなる利上げも難しくなっています。外国からの投資資金流入に依存し、そのドルを売ることによって市場介入せざるを得ない状況といえます。
安心、安全の米ドル建て
一方、米ドルで不動産を決済できれば、そのような急激な為替変動リスクを回避することができます。円ドルは新興国に比べると大きな変動がありません。もちろん米ドルに対して円高となれば、同じドルを保有していても日本円に換金する際には目減りしますが、逆に円安となれば、保有していたドルを日本円に換金することで為替差益を得られます。
例えば、2013年にプレビルド物件を購入した人は、当時の為替レート1ドル=97円台で契約したことになります。仮に全額をドルで支払ったとして、2015年に物件が完成したとすれば、その当時の為替レートは1ドル=120円台なので、23%の為替差益が発生することになります。購入時と同じ価格で売却したとしても、すでに23%の利益を得られていた計算です。
もし今後、日銀がゼロ金利を解除すれば、ドルに対して円高が進行する可能性もあります。円高に動けば、購入するドル建ての金額が変わらなくても支払う日本円は少なくてすみます。つまり、カンボジアの不動産を安く購入できるチャンスと捉えることもできます。
プレビルド物件は支払いを段階的に行うので、円高が進行する中でその都度円を米ドルに換金すれば、少ない円で米ドルに換金することもできます。
また米ドルは現地の銀行に預けることも可能です。定期金利も日本に比べるとかなり高いので、高利回りで運用することもできます。たとえば、プノンペン商業銀行の定期金利は、1年定期で6%となります。またカナディア銀行は1年定期で4.75%です。得られた家賃収入をこのような利回りで定期預金しておくこともできます。
1-3 カンボジア不動産購入の注意点
2010年から非居住者の外国人でもコンドミニアムに限り保有が可能になりました。区分所有が認められる条件は次のようになります。
- 2階建て以上の物件
- 外国人所有者が全占有部床面積の70%未満
- 管理組合と組合規定が設定されている
- 区分所有可能な物件
たとえば新築コンドミニアムを建設する場合、外国人に販売する戸数をあらかじめ制限する必要があります。物件選びの際には外国人に区分所有権が設定されているか確認することが大切です。
またコンドミニアムを賃貸で貸し出す場合、家具や家電を用意しておく必要があります。物件によってはエアコンやキッチンが備わっていない場合もあるため、事前の確認が必要です。なお、カンボジアでは「修繕積立金」がまだ一般的でないため、修繕積立金をとっていたり管理組合を作って物件管理に力を入れようとしている物件かどうか、事前にチェックする必要もあります。
土地は購入できない
カンボジアの地価は上昇しているものの、土地の購入ができないため、その恩恵を外国人投資家が享受することは難しいでしょう。
またコンドミニアムの価格上昇を主導しているのは外資の開発デベロッパーであるため、投資マネーの流入が減速すれば価格上昇がストップする可能性もあることにも注意が必要です。
金利が高い
前述したように定期預金の金利は5%ほどと資産運用には魅力的ですが、コンドミニアム購入のための不動産ローンは10%を超えるなど高いため注意が必要です。
クメール・タイムズ紙の記事(2018年1月31日付け)によれば、たとえばアクレダ銀行の住宅ローンの金利は年率18%、30万ドルまで融資可能ですが住宅価格の70%以内と記されています。一方、日本政策金融公庫は、事業目的のカンボジア不動産購入における金利は固定で2.5%としています。
なお購入代金の支払い方法については、完成前に購入するプレビルドの場合、売主のデベロッパーに段階的に支払うのが一般的です。完成まで2年かかるとすると、6~7回程度に分けて支払いスケジュールが組まれることになります。
不動産投資でコンドミニアムを購入するさいには、品質面で安心できるデベロッパーが手掛けるものを検討するとよいでしょう。日系の上場デベロッパーが建設するコンドミニアムなど、安心できる業者を選択しましょう。
3 今後のカンボジア不動産投資
カンボジアは米国や欧州に向けた裁縫製品の輸出を主力として経済成長を続けています。しかも中国やタイでの人件費上昇により、多くの日系企業が生産拠点としてカンボジアに進出しています。このような背景の中、カンボジアの首都プノンペンではすでに不動産価格は高騰しコンドミニアム供給量も需要を上回るおそれがあります。
その一方で、中国マネーが大量に流入しているエリアがあります。カンボジアのリゾート地でもある南部のシアヌークビルは、経済特区としてカンボジア最大エリアです。中国系の高層マンションやホテルの建設が盛んに行われており、大規模なインフラ開発などで多額の投資マネーも流入しています。
シアヌークビルは観光客の増加や企業誘致による新たな駐在員による賃貸需要など、不動産投資の対象としてはまだまだ魅力あるエリアと言えます。コンドミニアムの賃貸需要増加も見込めますし、まだまだ不動産相場の上昇余力はあると考えられます。
また、プノンペンからトレンサップ川を挟んで対岸にある「チュロイ チャンバー」では、カンボジア最大の商業銀行が16億ドルを投じる大規模都市再開発プロジェクトが進行しています。街のこれからの発展が望めるこのエリアも、投資対象として魅力的な場所と言えます。
このようにカンボジアではこれからの開発により資産価値上昇が期待できるエリアが多く残されていると言えます。カンボジアで実際に購入できる物件やカンボジア不動産の最新情報については、前述のビヨンドボーダーズで定期的に無料セミナーを開催していますので、情報収集の手段として活用されてみると良いでしょう。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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