不動産を売却しようと考えた際、不動産業者に何社か査定依頼を出してみると、それぞれの会社から違う価格が上がってくることがあります。そのため、「どの会社に仲介を依頼すればよいのだろうか」と悩む方も少なくありません。
そこで今回は、不動産の売却を考えている方に向けて、不動産業者の査定価格に差が生じる理由と、仲介業者を選ぶポイントについてご説明していきたいと思います。
- 不動産売却のキホン
- 不動産売却の流れ
- 不動産の売却査定は複数者に依頼
- 不動産仲介業者を慎重に選ぶべき理由
- 不動産の査定額はどうやって決まる?
- 不動産の査定価格の決め方
- 業者ごとに不動産の査定価格が異なる理由
- 不動産の査定価格が実際の売却額と異なる理由
- 不動産の仲介業者を選ぶポイント
- 不動産の仲介契約は3種類
- 要注意な不動産業者の特徴
- 不動産の仲介業者選びのポイント
- まとめ
1 不動産売却のキホン
査定額のポイントを解説する前に、まずは不動産売却の流れを確認し、その重要なポイントを把握しましょう。
1-1 不動産売却の流れ
不動産売却の流れをまとめると次のようになります。
- 不動産の売却相場を調べ、売却希望額を決める
- 不動産会社の査定を受ける
- 不動産会社に仲介を依頼する
- 販売価格を決定する
- 募集を開始、下見・価格交渉などにも対応する
- 売買契約を締結する
- 決済後、物件の引き渡しを行う
不動産の売却では、不動産会社の査定をいきなり受けるのではなく、まずは近隣の類似物件の販売価格を調べ、ある程度の相場感覚を身につけておくことが大切です。
相場調査では、ネット上の売り出し物件や不動産業者の店頭に掲示された広告などが参考になります。また、②の査定から③の仲介業者選びは、売却の流れの中で特に重要なポイントになります。詳細は「2 査定額はどうやって決まる?」「3 仲介業者を選ぶポイント」で後述します。
1-2 不動産の売却査定は複数者に依頼
業者の売却査定は、その査定価格が販売価格決定の根拠となり、資金計画に大きな影響を与えるため非常に重要なものです。
そこで、周辺の販売価格相場を調査したあとは不動産会社の査定を受けます。査定は1社だけではなく、複数の業者に依頼することがポイントです。
ネット上には複数業者の査定をまとめて受けることができる「一括査定サービス」を提供しているウェブサイトがあり、たとえば東証プライム上場の株式会社LIFULLが運営しており、利用ユーザー数420万人、全国1600社以上の不動産投資会社に一括で査定依頼が出せる「LIFULL HOME’Sの不動産売却査定サービス」などがあります。簡単な項目を入力するだけで利用できるので、積極的に活用されることをおすすめします。
ただし、「一括査定」は物件データのみを使用した「表面的な査定」になるため、正確な査定価格を算出するには、物件を直接見てもらう「実査定」(訪問査定)を受ける必要があります。「一括査定」で出された各業者の査定価格を比較して業者を選び、「実査定」を依頼することになります。
1-3 不動産仲介業者を慎重に選ぶべき理由
不動産仲介業者には、物件の査定から、買い手の募集、現地下見や価格交渉の仲介までほとんどの活動を任せることになります。
そのため、売り手の立場になって取り組んでくれる業者に依頼する必要があります。この業者選びが、不動産売却の成否を決めるといっても過言ではありません。
2 不動産の査定額はどうやって決まる?
次に査定額の決まり方、業者ごとに査定価格が違う理由について見ていきましょう。
2-1 不動産の査定価格の決め方
査定を行う業者は、様々な情報を参考に査定価格を決定します。中でも「近隣類似物件の売却相場」が最も大きな要素となります。不動産業者は、自社の販売実績も含めて広範囲な物件の売却情報を収集しています。その中から査定依頼の物件の近隣で条件の似た物件の売却価格を参考にします。
次に参考となるのが「土地の公示価格」や「道路の路線価」です。双方とも国が定めているもので、市場価格とは異なりますが、査定価格決定の参考として使います。
このほか依頼された物件が持つ「固有の条件」に以下のようなものが査定価格に影響します。
- 立地エリア
- 築年数
- 外観
- 間取り
- 設備
- 周辺環境
業者はこれらの判断材料をもとに総合的に検討し、売り手側の意向を加味して売却可能と考えられる査定価格を提示します。
2-2 不動産業者ごとに査定価格が異なる理由
一括査定を利用すると、業者によって査定価格に差があります。中には、相場より明らかに高い価格を出してくる業者や、低い価格を提示する業者もあります。なぜこのような違いが生じるのでしょうか。
業者によっては、少しでも高く売ろうとする売り手側の意向を最大限汲み、仲介契約の獲得を優先して査定価格を高めに出すことがあります。なかには、その査定額では売れないことがわかっていながら売却段階での値下げを前提に、相場より高い査定価格を提示する業者もあります。
こういった業者に対しては、「査定価格を算出した根拠」について質問し、納得できる説明を受けることが必要です。査定価格の根拠について明確に説明ができない業者は、あまり信頼ができるとはいえないでしょう。
2-3 不動産の査定価格が実際の売却額と異なる理由
物件の売却段階になったとき、一般的に、実際の売却額は査定価格を下回ります。なぜ査定価格どおりの値段で売れないのでしょうか。
前述したとおり、査定価格は、売り手の意向に沿えるよう売却可能の範囲内で上限の高値をつけて提示するパターンが多くなります。一方、実際の売却活動では、買い手側の「少しでも安く買いたい」との意向があるため、高めの査定価格を押し通すことは困難です。
実際の売却額は値引き交渉を経て、売り手と買い手の両者が妥結した価格になります。このような理由から、多くの場合、実際の売却額は査定価格より低くなります。
ただ、売主が「値引きされては困る」という場合、査定価格を参考に販売価格を決定する際に、値引き交渉があることを前提に値引き分の一定額を上乗せしておく方法が考えられます。
中古物件の売却では、値引き交渉を経て販売価格から一定額が値引きされ売却に至る例が多く、買い手の値引き要求は当初から予想しておく必要があります。
売主側の事情として、物件の売却資金を住み換え新居の購入資金や、ローン完済の必要資金に充てることがあるため、値引き額に許容限度があります。
そこで、許容限度を超えた買い手側の値引き要求には、こちら側の事情を説明し、値引きの許容限度額を買い手にはっきりと伝えることが、交渉をスムーズに進めるコツのひとつです。
3 不動産の仲介業者を選ぶポイント
仲介業者には物件の査定から、買い手の募集、現地下見や価格交渉の仲介まで、ほとんどの活動を任せることになります。ここでは、信頼できる業者の見分け方やポイントについてご紹介します。
3-1 不動産の仲介契約は3種類
不動産業者と結ぶ仲介契約には3種類の形態があります。それぞれの概要とメリット・デメリットは次のとおりです。
仲介契約の形態とメリット・デメリット
契約形態 | 一般媒介契約 | 専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 |
---|---|---|---|
複数業者との契約 | 可能 | 不可能 | 不可能 |
売主が買主を見つける | 可能 | 可能 | 不可能 |
レインズへの登録 | 任意 | 7日以内に登録 | 5日以内に登録 |
売主に対する活動状況報告 | 任意 | 2週間に1回以上 | 毎週報告 |
契約期間 | 無制限 | 3か月 | 3か月 |
メリット | ・物件を広く周知できる ・複数業者と契約できるため、お互いに売却活動を競わせることができる |
・自社だけで契約を受けているため、売却活動に力を入れてくれる ・必ずレインズに登録してくれる ・売主が、売却活動の状況についての報告を受けることができる |
|
デメリット | ・専任契約でないため、売却活動に力を入れない可能性がある ・レインズへの登録義務がない |
・1社との契約のため、物件の周知範囲が限られてしまう ・自社の顧客(物件探しの客)を優先しようとして、他社経由の照会や申し込みを断ってしまう可能性がある |
(注)レインズ:不動産業者間のネットワークである不動産情報システム
一般媒介契約、専任媒介契約、専属専任媒介契約のそれぞれにメリットとデメリットがあり、一概にどれがよいとはいえませんが、売却はここだけに任せたいというときは専任媒介契約や専属専任媒介契約、広範囲で募集をかけて買主を探したいときは一般媒介契約と使い分けることも可能です。契約形態は、売主の売却活動に対する考え方で最適なものを選ぶのが良いでしょう。
3-2 要注意な不動産業者の特徴
仲介業者は、査定価格や査定時における対応状況などを実際に見た上で、総合的に判断して選ぶことになります。しかし、査定を依頼した業者の中には、顧客の利益より自社の利益を優先しようとするものも含まれている可能性があります。
そのような業者を判別するポイントは、以下のとおりです。
① 不動産査定価格が他社と比べて著しく高く、根拠を明確に説明できない業者
このような業者は、仲介契約を獲る目的で高い査定価格を出してきており、売却活動開始後に「価格を下げないと売れない」と言い始める可能性があります。また、査定価格が不自然に高くなくても、査定価格の根拠を明確に説明できない業者も避けた方がよいでしょう。
② 不動産査定価格が依頼人の売却希望価格とかけ離れている業者
依頼人(売主)は、買い換え新居の資金やローンの返済資金が必要な場合など様々な事情を抱えて売却を決意しています。売却希望額に最低許容限度を設定しているケースもあります。そのため、許容限度額を超えて安い査定価格しか提示しない業者と契約しても満足できる売却は見込めないでしょう。
③ 不動産の売却実績が乏しい業者
不動産会社には得意な分野とそうでない分野があります。売却より賃貸部門が専門な業者に、売却の仲介を依頼してもよい結果は得られません。戸建ての売却が専門という業者にマンションの売却を依頼するのも同様です。
売却部門に力を入れているかどうかは、最近の売却実績を提出してもらえば見当がつきます。
④ 不動産の査定価格は適正でも、査定時の対応がよくない業者
売却活動は、広範囲にわたる営業活動を任せるため、査定時に「説明がわかりにくい」「連絡しても返事などの対応が遅い」「営業員にやる気が感じられない」など信頼できる要素に欠ける業者は、選ばない方が無難といえます。
3-3 不動産の仲介業者選びのポイント
自分に合った信頼できる業者を選んで依頼することが最も重要なポイントです。そのような仲介業者にはどのような特徴があるのでしょうか。以下に、その特徴をあげてみます。
- 不動産の査定価格が不自然でなく、依頼人(売主)の売却希望価格に近い。また、その査定価格の根拠を明確に説明できる
- 不動産の売却部門に力を入れており、売却実績が豊富
- 売却物件周辺の土地に詳しい
- 売却物件の長所や価値を認めて評価してくれる
- 営業員が熱心で、依頼人の立場で親身に活動してくれそうだと確信が持てる
特に、④の「売却物件の長所や価値を認め評価してくれる」業者は、実際の営業活動で、買い手に物件を上手に売り込んでくれる可能性が高いと考えられます。このほか、豊富な販売実績や売却地域に詳しいことも重要ですが、信頼できるかどうかは営業員の接客態度によることもあります。真摯に対応してくれる業者はやはり印象も良く、「売却を任せたい」と自然に思えるからです。
4 まとめ
不動産売却は、まず「売却の流れを理解」し、近隣物件の販売価格を調べ「相場感覚を身につける」ことから始まります。そして、「売却査定」を受け、「仲介業者選び」に移っていくこととなります。
この「売却査定」と「仲介業者選び」は、不動産売却の流れの中で非常に重要なステップであると同時に、初めての方は悩むことも多いでしょう。
しかし査定価格の適切な見方やよい業者の見極め方を身につけておけば、将来の不動産売却の場面で強い味方になります。不動産売却を計画されている方は、これを契機として売却活動を安全かつ有利に進めてみてください。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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