「思ったより高く売れなかった」「最後に値引きされてしまった」など思うように不動産が売却できず、後悔する方は少なくありません。不動産を少しでも高く売却するためには、売買仲介する不動産会社の力に頼るだけではなく、売主自身も物件の価値を高める努力をすることが大切になります。
今回は不動産を高く売るためにやっておくべき事前の準備、売買仲介業者に依頼する方法、値引き対策などのポイントをまとめましたので、少しでも高く売りたいという方はぜひ参考にしてください。
目次
- 不動産を高く売るための事前の準備対策
1-1.自分で売却物件の価格相場を調べる
1-2.高く売れる時期に合わせて予定を立てる - 売買仲介業者に高く売ってもらうための対策
2-1.土地を売りやすい状態にしておく
2-2.複数の不動産業者から査定を受ける
2-3.信頼できる不動産会社を選ぶ - 買主に物件を高く買ってもらうための対策
3-1.建物の修繕工事を済ませておく
3-2.不動産売買の必要書類・図面を揃えておく
3-3.内覧対策をする
3-4.値引き対策をする - まとめ
1 不動産を高く売るための事前の準備対策
不動産の売却を検討するときは、不動産会社に査定を依頼する前に行うべき準備があります。それぞれ見ていきましょう。
1-1 自分で売却物件の価格相場を調べる
まずは物件周辺の不動産相場を調べ、似たような不動産がいくらで取引されているかを知りましょう。不動産会社に査定を出す前に相場を把握しておくことで、業者と対等の視点で売却活動を進めることができるようになるからです。なお不動産相場については、次の項目について最低限調べておくと良いでしょう。
地価公示価格 | 国土交通省が毎年公表する土地価格で、土地取引の基準となる価格。国土交通省標準地・基準地検索システムの国土交通省地価公示・都道府県地価調査で閲覧ができる |
土地実勢価格 | 全国の土地取引価格で、国土交通省土地総合情報システムで閲覧ができる |
近隣類似物件の販売価格 | ネットや新聞折込みのチラシ、不動産業者の店頭広告などから調べることが可能。売却予定物件の近隣に条件が似ている(立地・規模・間取り・築年数など)販売物件がなければ、同じ鉄道沿線にエリアを広げて探しても良い |
1-2 高く売れる時期に合わせて予定を立てる
土地や住宅など不動産を高く売るには、物件価格(相場)が上昇している時期に売るのが最も効果的です。たとえば次のような方法で売却スケジュールを立てましょう。
- 経済・社会情勢や不動産市況を踏まえ、大まかな時期を決定
- 1年のうち不動産が高く売れる時期に合わせて、細かいスケジュールを決定
大まかな売却時期を決める
不動産市況が好調で、住宅ローン金利が安い時期に売れば、元々相場自体が高い上に、十分な資金を調達できる買い手が自然に集まってきます。
逆に、経済不況で不動産市況も低調な時期では、売却実績豊富な業者に依頼しても高く売るのは難しくなります。特別に急ぐ事情がなければ、不動産市況を観察しながら不動産が高く売れる好況時を見極めることが重要です。
不動産の市況を判断するには、地価公示価格の推移を調べたり、不動産会社がインターネット上で公開しているマンションやオフィス、商業ビルの販売価格・賃料推移を調べたりと様々な方法があります。ニュースや株価なども不動産市況を掴むのに役立ちます。
売却時期の見極めは簡単というわけではありませんが、たとえば2018年のように不動産市況が好調で住宅ローンも借りやすい時期は、売り時のひとつと言えます。
経済・社会情勢を睨みつつ、大まかな売却時期を決めるようにしましょう。
細かいスケジュールを立てる
次は、さらに細かく売却スケジュールを立てていきます。たとえば人の移動が集中する春に合わせて売るのも効果的な方法のひとつです。例年、入学・卒業・就職・転勤・退職などのシーズンに間に合わせるべく、2~3月にかけて住宅の購入や賃借がピークを迎えます。
不動産を高く売るには、このような時期に合わせて売却できるように、前年から売却活動を始めておくのが良いでしょう。
2 売買仲介業者に高く売ってもらうための対策
土地や建物を不動産会社に高く売ってもらうために、売主がやっておくべき対策を見ていきます。
2-1 土地を売りやすい状態にしておく
土地を高く売るには、買い手がつきやすい土地にしておくことが重要です。ここで言う買い手がつきやすい土地とは、「適切な広さの更地」を指します。
適切な広さ
適切な広さとは、「狭過ぎず、広過ぎない」ということです。面積が狭すぎると住宅を建てるにも困難さが伴い、逆に広すぎると1世帯では持て余すうえ価格も高くなるため、買い手がなかなか見つかりません。
そこで、もし可能であれば、狭小地などは隣地を買い増しして合筆(複数の土地を一つにまとめて登記しなおすこと)を行い、手頃な広さにしておくことで売却時に売りやすくなります。逆に、面積が広すぎる場合には、全体を一括して売ろうとするのではなく、住宅用として適当な面積に分割して売却することも検討しましょう。
ただし、土地を分割して売る際は、土地の分筆(土地を分割して登記しなおすこと)が必要になったり、建築基準法など関係法令の条件を満たす必要があります。これは合筆も同様ですので、隣地の購入や土地の分割を行う前に、必ず土地家屋調査士などのプロに相談しましょう。
更地
更地とは建築物や工作物が建っていない土地のことです。住宅だけでなく、物置やカーポート、外構などもすべて取り払います。買った人が、住宅用地をはじめ自由な用途に使えるため、買い手がつきやすくなります。
たとえば建物や工作物が残存した状態で売ると、購入後に買主が撤去することになります。取り壊し・撤去費用は住宅ローンの融資対象にならないため、買主が自分で工面しなければならなくなるわけです。そのため古屋などが建ったままの土地は更地に比べて買い手が付きにくく、高く売るのが難しくなります。
一方、古い実家を相続してその土地を売るような場合、売却前に老朽化した実家を取り壊して更地にすると、買主が撤去費用を支払わずに済むため高値で売れることが期待できます。
2-2 複数の不動産業者から査定を受ける
査定は不動産売却において最も重要な手続きのひとつです。売却予定の不動産にどの程度の価値があるかを専門業者に見てもらうことができます。このほか複数業者に依頼するべき理由は次の通りです。
- 査定額は業者によってバラつきがあり、1社のみの査定では適切な売却価格を計れない
- 仲介契約の獲得のため故意に高い査定額を提示する業者もいる
- 複数業者に査定依頼する旨を業者に伝えることで、業者が努力する
複数業者といっても、あまりに多すぎては対応が難しくなるため、最高でも5社前後に査定してもらうと良いでしょう。査定を受けるときは、不動産業者に個別に依頼しても良いですが、一括査定サイトを利用すると便利です。『すまいValue』のような不動産一括査定サイトでは、不動産の所在地や規模・築年数など、基本的な項目を入力すれば、複数業者の査定を受けることができます。
ただし、一括査定は業者が物件を見ないで行う机上査定となるため、後で現物を見てもらう実査定(訪問査定)を受けるようにしてください。この場合、一括査定を出してきた業者を比較し、信頼できる業者=実査定を依頼する業者(複数)を決定します。
複数業者の査定を受けるメリットは次の通りです。
- 低い査定額から高い査定額まで相場に近い価格が把握できる
- 査定結果やその時の対応が仲介業者選びの判断基準になる
2-3 信頼できる不動産会社を選ぶ
不動産売却を成功させるには、売却実績が豊富で信頼できる担当者のいる業者を選ぶことが重要です。優良な不動産業者を選ぶための判断基準を「物件の査定額」「情報力」「実績・専門性」「担当者の資質」に分けて示します。
物件の査定額
- 売主の売却希望価格に近い
- 近隣類似物件の売却相場に近い
- 不自然に高くない
- 査定額の根拠を明確に説明できる
査定額が不自然に高い業者は、売買仲介契約の獲得のため、実際に物件が売れるかどうかを度外視して、高額な提示額で釣ろうとしている可能性があります。そのような業者に仲介を依頼すると、後で高過ぎて売れないことを理由に、すぐに値下げを提案してくる場合があります。こうなると、不必要に売却期間が長期化する可能性があるため、くれぐれも注意しましょう。
情報力
- 売却不動産の近隣エリアに精通している
- 近隣の売却物件情報や相場価格などに詳しい
不動産の売却においては、仲介を依頼する業者がどれだけ情報を持っているかが重要になります。情報を持っている業者ほど、実際の成約事例から適正な価格を提示してくれる可能性が高くなるほか、既存顧客から見込み客を発掘したり、上手な広告の出し方も分かっていたりするからです。
実績・専門性
- 不動産売却の実績を豊富に持っている
- 不動産売却が得意分野である
- 対象物件のジャンル(戸建・収益マンション・商業マンションなど)が得意分野である
賃貸部門専門の業者ではなく、売却が得意な業者であることが必要です。また戸建ての売却では戸建て売却が得意な業者、マンションではマンション売却が得意な業者とそれぞれ存在するため、得意分野を把握した上で売却を依頼することが重要です。
担当者の資質
- 売主の立場になって熱心に営業活動をしてくれる
- 照会に対する回答、依頼への返事などの連絡が迅速である
また、物件の売却活動を実際に行ってくれるのは、基本的にはあなたと接している担当者になります。そのため、話をする中で担当者の熱意や知識、考え方、態度や返答スピードなどを評価していくことも大切です。
3 買主に物件を高く買ってもらうための対策
購入希望者が現れたとき、不動産を少しでも高く買ってもらうための対策を見ていきましょう。
3-1 建物の修繕工事を済ませておく
売却物件の破損箇所は、値引きや後のトラブルを避けるため引き渡す前にきちんと修繕しておくことが大切です。
マンションを売却する際は、例えば以下のような修繕が必要な箇所を洗い出し、専門の業者を手配しましょう。内装面で手を抜くと買主の住宅に対する印象自体も悪くなり、購入意欲が無くなることもあります。
- フローリングや壁の目立つ傷
- エアコンや給湯器などの設備
- 床のきしみ、傾き、畳の痛み
- ドアやサッシの建て付け
戸建てを売却する場合、室内の補修はマンションの場合と同様に行いますが、屋外の修繕が問題となります。屋根や外壁は風雨にさらされるため、傷みや塗装のはがれが生じている可能性があります。例えば以下の部分について、傷みや塗膜の劣化の程度により修繕するかどうかを判断することになります。
- 屋根の劣化、破損
- 外壁の塗装剥がれ、ひび、破損
- 外構の崩れ、傾き
多少の傷みや劣化では手直しや塗装の必要はありませんが、酷い場合は手を入れざるを得ないでしょう。さらに、庭木などがある場合も注意が必要です。家全体の印象が悪くならないよう、繁り過ぎた枝を切るなど最低限の手入れをしておきましょう。
このようにリフォームとまではいきませんが、壊れた部分や悪印象を与えかねない箇所を適切に修理しておく必要があります。こまめに管理がされているという印象を購入希望者に与えることが、少しでも不動産を高く売るためのコツです。
3-2 不動産売買の必要書類・図面を揃えておく
不動産を売却する際に必要になる書類は、「不動産業者に売却依頼する段階で必要なもの」と、その後の「買主と売買契約を締結する際に必要なもの」に大きく分けられます。代表的な書類には、「登記済権利書」「固定資産税納税通知書」「印鑑証明書」「住民票」などがあります。
これらの書類は必ず用意しなければならないものですが、そのほか「不動産を高く売るためにあったほうがよい」という書類もあります。
用意しなければならない書類
不動産会社に依頼する際に必要な書類 | 登記簿謄本(登記事項証明書) | 不動産会社に物件の概要や権利関係を把握してもらう |
固定資産税納税通知書 | 固定資産税納税額を把握してもらい、登録免許税額などを算出してもらう | |
買主と売買契約を締結する際に必要な書類 | 登記済権利書・登記識別情報 | 売主が物件の所有者であることを証明する書類 |
身分証明書 | 運転免許証・パスポートなど売主本人であることを証明できる書類 | |
実印・印鑑証明書 | 売買契約の締結に必要となる | |
振込先銀行口座 | 売却代金を振り込んでもらう口座情報 | |
住民票 | 物件の所在地と売主の住所が異なる場合に必要 | |
ローン残高証明書 | 住宅ローンを借りている場合、残債の有無を確認してもらうために必要 |
あった方がよい書類
売買契約書・重要事項説明書 | 売却する不動産を購入したときの契約書類。不動産の概要や特記事項・注意事項などの条件を確認できる |
土地測量図・境界確認書 | 土地・戸建て売却の場合。土地面積や境界を確認できる |
建築確認済書・検査済書 | 建築物が建築基準に適合していることが確認できる |
建築設計図面 | 後で増改築やリフォームを行う場合に参考となる |
設備仕様書・設備説明書 | キッチン・バス・トイレ・給湯器・エアコンなどの仕様書・説明書 |
マンション管理規約 | マンション管理の内容やルールなどを確認できる |
このような書類・図面が必要なときに揃えてあれば、不動産業者はスムーズに物件の細部まで把握でき、買い手も後々の管理がしやすくなります。
3-3 内覧対策をする
内覧対策も不動産を高く売るために必要な要素です。内覧時に与える印象で不動産を高く売却できるかが決まることもあります。内覧を成功させるためのポイントは、次の通りです。
破損箇所は直しておく | 床の目立つ傷や壁の穴など修繕が必要な箇所は、事前に直しておく |
荷物を片付ける | 不要な荷物は処分するなど、できるだけ整理しておく。室内はきれいに整理整頓して空間を広く見せられるようにする |
掃除をする | 掃除機をかけ、汚れた箇所は拭き掃除もしておく。庭がある場合は草刈りや木の剪定なども行う |
水回りを重点的にきれいにする | キッチン・バス・トイレ・洗面所などの水回りは、内覧時に重点的に見られやすいため、洗剤・カビ取り・サビ取り・水垢取りなどで磨き上げてきれいにしておく |
室内の匂いを消しておく | 本人にはわかりづらい生活臭は、外部から入ってきた買主は敏感に感じ取るため、内覧前に消臭剤を噴霧しておく |
質問に答えられるよう準備しておく | 買主からの質問に答えられるよう、事前に回答集を準備しておく(都心や最寄り駅までの交通機関・所要時間、近隣の買物場所・医療機関・学校・役所・銀行・駐車場料金相場、住宅の修繕履歴・塗装履歴、付帯設備の使用年数・交換時期など) |
3-4 値引き対策する
中古住宅の売却では、当初の販売価格から値引き交渉をされるケースが多く見られます。売主は「少しでも高く売りたい」というのが本音ですが、買主からの値引き提案を全く受け付けなければ、相手の印象や機嫌を損ねてしまうこともあります。しかし当初予定していた販売価格から大きく値引きすれば売主の負担となるため、それも回避しなければなりません。
そこで買主が値引きを求めてくる前に、次のような値引き対策を行っておくことが大切です。
不動産に値引き要素がある場合
購入後に買主が負担することになる不要物の撤去費用など、売却不動産に値引き要素が残っている場合、値引き交渉の材料として利用されることがあります。そのため、ポイント8で解説した内覧対策に加えて、例えば以下の値引き要素となりうる箇所を事前に確認し、あらかじめ対策しておくことが必要です。
- 隣地に工作物や樹木などが越境していないか
- 増改築した場合、登記や図面に反映されているか
- 増改築した場合、建ぺい率・容積率など法令に反していないか
- 土地に擁壁がある場合、崩落の心配はないか
書類や法令、土地に関する欠陥は自分だけだと気付きにくく、また訪問査定時に不動産会社が見落としてしまう可能性もゼロではありません。そのため、土地家屋調査士などのプロに住宅診断を行ってもらうのが良いでしょう。
不動産に値引き要素がない場合
物件に特段の値引き要素がない場合、あらかじめ値引き分を上乗せした不動産の販売価格を設定しておき、交渉内容によりその範囲内で値引きを行う方法などが挙げられます。ただし、不動産の当初販売価格が上乗せ分だけ高くなるため、そのぶん売れにくくなるといったデメリットもあります。
4 まとめ
不動産を少しでも高く売るためにやっておくべき9つのポイントとして、「事前準備」「仲介業者対策」「買主対策」に分けて見てきました。
不動産を売却する方には様々な事情があり、紹介した対策のすべてを行うのは難しいと思いますが、売主自身も最大限努力することで満足のいく不動産売却の実現が可能となります。この記事を参考にぜひチャレンジしてみてください。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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