立地、間取り、築年数…失敗しない中古マンション投資のポイント

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マンション投資を検討するさいに、「利回り」「立地」「築年数」など判断すべき要素が多くあります。どれを優先すればよいかについて悩んでいる方も多いでしょう。ここでは、中古マンション購入後の賃貸経営や将来の売却を大きく左右する「立地」「間取り」「築年数」「利回り」の4項目を取り上げ、失敗しない見極め方について解説します。

  • 1 「立地」で注目するポイントと見極め方
  •  1-1 人口増減の2極化が進む
  •  1-2 主要駅への「交通の便」に注目
  • 2 「間取り」で注目するポイントと見極め方
  •  2-1 「間取り」は、社会的なニーズを見てきめよう
  •  2-2 賃貸は単身者向けが狙い目? ワンルームは売却で不利に
  • 3 「築年数」で注目するポイントと見極め方
  •  3-1 「築年数」で20年を過ぎたものが狙い目?
  •  3-2 新耐震適合は必須条件
  •  3-3 大規模改修に注意
  • 4 「利回り」で注目するポイントと見極め方
  •  4-1 「利回り」は、「実質利回り」で算出する
  •  4-2 甘い利回り計算は、破綻を招く
  • 5 まとめ

1.「立地」で注目するポイントと見極め方

「立地」は、物件購入後にいかに後悔しても、自力で改善することができない重要な要素です。それだけに将来人口の増減を考慮した立地選定が重要となってきます。

1-1.人口増減の2極化が進む

日本は人口減少社会に突入していますが、賃貸住宅は供給過剰といわれています。総務省統計局が公表している住民基本台帳人口移動報告の平成29年結果から、都道府県別の転入超過数を見ると、転入超過となっているのは、東京都、千葉県、埼玉県、神奈川県、福岡県、愛知県、大阪府の7都府県しかありません。特に東京への転入超過は22年連続で、他の県を大きく引き離しています。

また東京都では都人口の将来予測を行っていますが、それによると区部では2030年(平成42年)頃まで人口が増え続けるのに対し、多摩・島しょ部では2020年(平成32年)頃に頭打ちとなるとされています。さらに区部の中でも、千代田区、中央区、港区は、2040年(平成52年)頃まで人口が増加すると予測されています。

このように人口減少社会の日本では、今後人口が増えつづける少数エリアと、逆に減りつづける多数エリアの2極化が、より鮮明になってくると考えられます。
人口減少エリアでの賃貸住宅経営は、例外的な地域か特殊な事情でもない限り、厳しい状況に置かれる可能性があることを覚悟する必要があります。

1-2.主要駅への「交通の便」に注目

これらのデータなどを参考に、投資用物件の立地を考える場合、首都圏や地方の大都市などが候補に入ると思われます。
その中で最も有利なのが、東京23区の山手線内側とされていますが、一方で不動産価格が高いという難点があります。

予算が許す範囲内で妥協点を見出すとすれば、職場や学校への通勤・通学に便利なエリア、具体的には、「山手線の主要ターミナル駅に出る便がよく、かつ、最寄り駅にもできるだけ近い私鉄沿線などのエリア」が第1候補に挙げられます。

後述しますが、単身マンションに着目するのであれば、静かな環境や子どもの学校などの条件よりも、「通勤・通学の便」が優先されると考えられるからです。

2.「間取り」で注目するポイントと見極め方

投資用マンションを購入する場合に「ワンルームにするか」「ファミリータイプにするか」で悩む人は多いと思われます。ここでは、間取りの見極め方について説明します。

2-1.「間取り」は、社会的なニーズを見て決める

東京都は家族類型別世帯数の推移を公表していますが、将来予測も行っています。それによると、「単独世帯」は2035年(平成47年)頃まで、「夫婦のみの世帯」は2045年(平成57年)頃まで増加がつづくと予測されています。
一方、「夫婦と子供からなる世帯」は2015年(平成27年)がピークで、以降は減少に向かうと予測されています。

東京都の家族類型別世帯数の推移(単位:万世帯)

東京都の家族類型別世帯数の推移(注)2015年までは国勢調査(総務省)等により作成(2020年以降は、東京都政策企画局による推計)

このことから、将来の賃貸需要は、「単独世帯」および「夫婦のみの世帯」が中心になると予想ができます。したがって、ターゲットとして考えられるのは、ファミリー向けの3LDKタイプなどではなく、「ワンルームから2LDK」程度の物件が候補に挙がります。
またそのなかでも、「夫婦のみの世帯」よりも、数が多い「単独世帯」にターゲットを絞っていくことが、特に有利になると考えられます。

通常、単身者用として頭に浮かぶものはワンルームですが、もう少し幅広く、1LDK程度までは候補に加えても良いでしょう。一定の所得がある単身者は、狭いワンルームではなく、ゆとりのある間取りを希望する傾向があるからです。

一方、他のタイプの物件と比較して、ワンルームのデメリットとして考えられるのが、次の項目の「売却益が出にくい」です。

2-2.賃貸は単身者向けが狙い目。しかし、売却益が出にくい面も

ここで失敗事例を紹介しましょう。

「Aさんは、投資用に築3年のいわゆる築浅ワンルームマンションを購入しました。その後、入居者がすぐ決まり順調な賃貸経営を行ってきましたが、10年後にある事情から売却することになりました。ところが、どの業者にも自分が想定していた価格では見積もってもらえず、Aさんはローン残高を下回る安い価格で売却せざるを得ませんでした。」

こうなった原因は、ワンルームマンションの資産価値にあると考えられます。

ファミリータイプのマンションですと、環境に配慮して比較的ゆったりとした敷地を設けているケースが多いですが、利便性を追求するワンルームマンションは、敷地が狭く縦に細長い形態が多くみられます。

このようなマンションの場合、敷地面積に応じて土地の価値は小さいのですが、これをさらに区分所有者の数で割っていくと、1人当たりの土地の価値はほとんどなくなり、ほぼ建物価値だけとなってしまいます。そして築年数を経過していくと、土地の価値は下がりませんが、建物価値はどんどん下がっていきます。

このように、ほとんど建物価値しかないワンルームは、土地付きの物件やファミリータイプなどに比べると資産価値の下落スピードが速く、その資産価値が下がってしまうため、売却時に想定する価格で売ることができない可能性があります。さらに、事例では築3年という築浅の物件を購入したため、値下がり率の大きい初期の数年間にかかってしまい、資産価値が一層落ち込んだと考えられます。

以上の例からも、単身者向けのワンルームマンションは、賃貸経営においてはメリットがありますが、「資産価値の下落が速い傾向にある」ということを念頭に入れる必要があります。

3.「築年数」で注目するポイントと見極め方

マンションは新築直後の数年間で大きく下落するといわれています。マンション投資では、築年数にもよりますが、中古物件のほうが割安で購入でき、その結果、新築と比べて利回りが有利なケースが多いといえます。

3-1.「築年数」で20年を過ぎたものが狙い目?

財団法人東日本不動産流通機構から公表されている「中古マンション成約状況」から、築年数区分ごとの下落率が算出できます。

築年数区分 1㎡当り成約価格
築0~5年 4739万円
築6~10年 4160万円
築11~15年 3686万円
築16~20年 2768万円
築21~25年 1729万円
築26~30年 1758万円
築31年〜 1572万円

(2015年1~12月における中古マンションの成約状況)

築20年を境目に下落幅が鈍化していることに注目です。築20年を経た物件は、その後の価格が大きく値下がりするリスクが小さいと考えられることから、そこを狙うと言うのも一つの方法です。特に購入時に空室の物件を購入し、将来満室の状態で売却すれば、ほとんど値下がりがない状態で売ることができる可能性もあります。

3-2.新耐震適合は必須条件

ただし、築20年以上の物件を購入するさいは、「建物が新耐震基準に基づき建築されているかどうか」に注意しましょう。

昭和56年に建築基準法で新耐震基準が導入され、震度6強から7程度の地震においても、人命保護のため即座に建物が倒壊しないことが目標とされました。この新耐震基準に基づき建築されていることが、最低限クリアしなければならない条件と考えられます。

3-3.大規模改修に注意

また中古マンションでは、15~16年の周期で大規模改修を行っていますが、その修繕履歴に注意を払う必要があります。できれば、直近で大規模改修を実施済みの物件がよいと考えられますが、改修時期を迎えているか、計画段階の物件もあります。このような場合、管理組合に積み立ててある修繕積立金だけでは資金が不足し、各所有者から一時金を徴収するケースがあるので注意が必要です。

4.「利回り」で注目するポイントと見極め方

物件選定の条件項目として、利回りは外すことができません。
利回りは、物件購入価格に対する年間家賃収入の割合を示す「表面利回り」がよく使われますが、物件の現状をより客観的に表す「実質利回り」を使用し、判断していくことが重要です。

4-1.「利回り」は、「実質利回り」で算出する

利回りは、空室率や維持管理経費、物件購入にかかる諸経費を加味した実質利回りで算出し、検討を加えることが重要です。実質利回りは以下の計算式で求めることができます。

実質利回り={1年間の満室家賃収入×(1-空室率)-1年間の維持管理経費}÷(不動産の購入価格+不動産の購入にかかる諸経費)×100

4-2.甘い利回り計算は、破綻を招く

ここで失敗事例を紹介しましょう。

「Bさんは、投資用中古マンションの購入にあたり、実質利回りを使い慎重に検討したつもりでした。空室の状態だったため、家賃収入は想定値を使い、空室率は1割程度の空室を想定して10%と設定しました。一年間の維持管理経費は、固定資産税、管理費、修繕積立金などは調べた数値を設定しましたが、その他の修繕費用は特に設けませんでした。算出した実質利回りの数値が満足のいくものであったため、Aさんは物件を購入し賃貸経営をスタートさせましたが、予想に反して借り手がつかず、募集家賃を値下げする事態となってしまいました。

半年以上経過してやっと入居者が決まり、家賃が入ってくるようになりましたが、しばらく経つと給湯器の故障やキッチン排水管の水漏れが発生し、交換・修繕を行いました。
さらに、入居者が2年間も経たないうちに退去し、そのさいにリフォーム代もかかってしまいました。

結局、当初想定した家賃収入は大きく下回り、逆に維持管理経費が膨らみ、ローンの返済と合算すると、1年目は巨額の赤字、2年目は改善したものの自分が想定していた収益額には遠い状態です。」

事例では、家賃収入、空室率、年間の維持管理経費は、前の所有者から聞いた状況などを参考に自分で設定しました。しかし、利回りは、計算基礎の設定具合で大きく変動する可能性があります。Bさんの場合、当初行った利回りの計算が甘かった可能性があります。算出数値に現実性・客観性を持たせるためには、長期にわたる空室状態や設備機器の突発的な故障・修繕などは、あらかじめ一定割合を加味しておく必要があります。

5.まとめ

中古マンション投資は、割安感や比較的利回りが期待できることなどから、人気がある投資ジャンルだといえます。しかし、投資物件を購入するためには多額の資金を要しますし、購入後の賃貸経営や将来の売却は楽観できるものではありません。ターゲットの選別や物件選定のさいは、客観的な目で十分に検討を行うことが大切です。そのような努力をおろそかにしないことが、豊かな投資生活につながるものと考えます。

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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム

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