大阪でアパート経営を始めるメリット・デメリットは?人口・地価推移のデータも検証

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全国の政令指定都市のうち2番目に人口が多い大阪市は、西日本の中心都市です。2025年に予定されている大阪万博の開催や大阪駅北側の再開発計画「うめきた」など、都市の発展に向けた事業計画も多く見られ、話題性の強いエリアとなっています。

しかし、アパート経営を検討するのであれば、実際の人口・地価推移などのデータをもとに検証することも重要なポイントとなってきます。そこで今回のコラムでは、人口や地価の推移も検証して大阪市で行うアパート経営のメリットとデメリットを解説していきます。

目次

  1. 大阪市のアパート経営に関する基本情報
    1-1.大阪市の人口の推移
    1-2.大阪市の地価の推移
  2. 大阪市でアパート経営を行う際のメリット
    2-1.借家率が高い
    2-2.人口減の中でも20代では転入超過の傾向
  3. 大阪市でアパート経営を行う際のデメリット
    3-1.社会動態の減少(転出超過)に注意する
    3-2.土地価格が下落・停滞傾向にある
    3-3.アパートローンを利用できる金融機関が限定される可能性がある
  4. まとめ

1 大阪市のアパート経営に関する基本情報

この項目では、大阪市でアパート経営を行う際に覚えておきたい、人口推移と地価推移のデータについて紹介していきます。それぞれ詳しく見て行きましょう。

1-1 大阪市の人口の推移

リモート出勤などの影響で都市部では人口減少が起きていますが、西日本の大都市である大阪市も例外ではありません。

下記の表は、大阪市の人口の推移を表したものです。

集計日 人口総数
2003年10月1日 2,619,955人
2008年10月1日 2,650,670人
2013年10月1日 2,678,663人
2018年10月1日 2,725,006人
2019年10月1日 2,740,202人
2020年10月1日 2,752,412人
2021年10月1日 2,750,835人
2022年10月1日 2,756,807人

※参照:大阪市「大阪市の推計人口(毎月1日現在)・人口異動」より抜粋

2021年10月1日時点で、前年同日よりも約2,000人の減少が見られましたが、2022年10月1日時点では約6,000人増加しており、前年分の減少分を超えて人口増加していることが分かります。これは、ワクチンの普及を背景に新型コロナウイルスの感染拡大の影響が限定的になってきていることが背景にあると言えるでしょう。

1-2 大阪市の地価の推移

次にアパート経営をするために必要な土地の価格推移を見ていきます。下記の表は、毎年1月1日の大阪市内の住宅地の平均価格をまとめたものです。

集計日 平均地価
2013年1月1日 227,200円
2018年1月1日 238,900円
2019年1月1日 241,800円
2020年1月1日 247,000円
2021年1月1日 247,000円
2022年1月1日 249,300円

※出典:国土交通省「地価公示

また、「令和3年地価公示結果について(大阪市)」で地価の変動率を見ると、2021年の住宅地の平均価格は0.2%ですが、商業地の平均価格はマイナス2.0%と前年度の2.6%から大きく下落しました。

2021年における全国の地価下落率トップ10のうち8地点が大阪市内で、1位から6位までを占めています。そのため、大阪市における全用途の対前年平均変動率もマイナス0.8%となっていました。

なお、大阪市を中心とした広範囲で見ると、2021年の対前年平均変動率は三大都市圏では唯一住宅地も商業地もどちらもマイナスとなっていましたが、2022年の調査ではプラスに転じています。ただし、東京圏、名古屋圏と比較してやや変動幅が小さいという点にも注意しておくと良いでしょう。

都市圏 対前年平均変動率(住宅地) 対前年平均変動率(商業地)
大阪圏 0.4% 1.5%
東京圏 1.2% 2.0%
名古屋圏 1.8% 2.3%

※出典:大阪市「令和4年都道府県地価調査結果について」より抜粋

こうした状況を踏まえて、大阪市でアパート経営を行う際のメリットとデメリットを次の項目から見ていきましょう。

2 大阪市でアパート経営を行う際のメリット

大阪市での不動産投資を語る上で外せないのが借家率の高さです。賃貸住宅への入居が多く、賃貸需要が高い状態が続いています。

2-1 借家率が高い

大阪市は全国的に持ち家率が低く、借家率の方が上回っている状態が続いています。借家率の高さは、アパート経営においてプラスに評価できるポイントの一つと言えます。

下記の表は「平成30年住宅・土地統計調査結果(確報)〈大阪市〉」から抜粋した大阪市の持ち家戸数と借家戸数の比較です。

調査年 持ち家数 構成比 借家戸数 構成比
1998年 419,370戸 38.0% 658,400戸 59.7%
2008年 514,050戸 40.7% 676,400戸 53.6%
2018年 558,800戸 40.5% 751,400戸 54.5%

※出典:大阪市「平成30年住宅・土地統計調査結果(確報)〈大阪市〉」より抜粋

持ち家の数は増えているものの構成比は40%前後が続いています。また全国の持ち家率は61.2%となっており、20ポイント以上も下回っているのが特徴です。

調査結果では、借家の戸数のうち公営住宅などの公営借家は減少していますが、民営借家は前回の調査よりも6.1%増加していることも報告されています。ただし、貸家率の高さは賃貸物件が多いということとなり、住宅供給の多いエリアでは競争も予想される点に注意しましょう。

2-2 人口減の中でも20代では転入超過の傾向

大阪市の転出入の傾向として2018年の年齢階層別転入超過数を見てみると、20歳〜29歳では19,753人が転入超過になっています。少子高齢化が社会問題となっている日本において、生産年齢人口(15歳以上65歳未満の人口)に直結する若年層の人口が増加傾向にある点は、長期期間の投資となるアパート経営においてメリットと言えるポイントでしょう。

ただし、30歳〜39歳では転出超過数が882人となっていることが「大阪市人口ビジョン」(策定2016年3月、更新2020年3月)で報告されています。これは「仕事都合」などで大阪市に転入する若年層が多い反面、結婚して子どもができると大阪市外に転出する人が増える、ということが要因の一つと指摘されています。

しかし、こうした事態を改善するために、大阪市では子育てに対する支援を強化しています。例えば中学生には、習い事の支払いに使えるように毎月1万円まで塾代を助成しています。また「児童いきいき放課後事業」を展開しており、平日の放課後や土曜日に児童が無料で参加できる活動プログラムを提供しています。そのほか休日保育や夜間保育などの休園日にも、未就学児を預けられる制度もあります。

このように子育て世代に対する制度が充実していくことで、大阪市内ではファミリー層向けの賃貸物件の需要増を期待できる可能性があります。東京や大阪などの都市圏では単身者向けのワンルームマンション投資が注目されることも少なくありませんが、今後の人口動態にも注目して、物件の間取りを検討する視点も重要なポイントと言えるでしょう。

3 大阪市でアパート経営を行う際のデメリット、注意点

一方、この項目では大阪市でアパート経営を行う際にデメリットとなり得ることを紹介していきます。

3-1 社会動態の減少(転出超過)に注意する

人口変動には死亡と出生の差による自然動態と、転出と転入の差による社会動態の二つの側面がありますが、2021年の大阪市では自然動態も社会動態もマイナスとなっていました。

大阪市の人口推移:2021年6月~2021年12月

集計年月(変動月) 自然動態 社会動態 増減人口
2021年6月(5月中) ▲1407人 188人 ▲1,219人
2021年7月(6月中) ▲986人 171人 ▲815人
2021年8月(7月中) ▲510人 305人 ▲205人
2021年9月(8月中) ▲867人 ▲408人 ▲1,275人
2021年10月(9月中) ▲849人 ▲745人 ▲1,594人
2021年11月(10月中) ▲822人 181人 ▲1,275人
2021年12月(11月中) ▲1003人 ▲352人 ▲1,355人

※参照:大阪市「大阪市の推計人口(毎月1日現在)・人口異動」より抜粋

2021年9月以降の4ヶ月のうち3ヶ月で社会減となっており、そのため人口の減少幅が大きくなっていることが分かります。

なお、2022年に入ると社会増の傾向に転じています。これは新型コロナウイルスの感染拡大の影響が少なくなったことにより、都市部への転入が回復してきていることに関連していると考えられます。

大阪市の人口推移:2022年6月~2022年12月

集計年月(変動月) 自然動態 社会動態 増減人口
2022年6月1日 -1209 1405 196
2022年6月2日 -994 2773 1779
2022年6月3日 -975 2932 1957
2022年6月4日 -1514 1156 -358
2022年6月5日 -1147 1427 280
2022年6月6日 -1102 2112 1010
2022年6月7日 -1209 1405 196

空室が増えると経営面で将来の見通しが立ちづらくなり、想定していた利益をあげられない可能性があります。そのため、この社会動態の増減がどのように推移していくのかも適切に判断する必要があります。

3-2 土地価格が下落・停滞傾向にある

前述したように、大阪市内の土地価格は2021年に一度下落し、2022年は徐々に回復傾向にあります。

なお、大阪市内の土地価格の上昇は、JR大阪駅北側の再開発計画「うめきた」などの影響があったものと見られ、再開発計画が終了した段階で価格が落ち着くのは想定通りという見方もあります。

今後は大阪万博開催や「うめきた」完成、「なにわ筋線」新設などによって大阪市内では経済発展が見込まれていますが、それらが賃貸需要にどう影響するのか適切に見極めることが重要です。

3-3.アパートローンを利用できる金融機関が限定される可能性がある

アパート経営の資金調達では金融機関のアパートローンを利用される方が多いでしょう。アパートローンの融資条件には、金融機関によってエリアが決まっているという点に注意が必要です。

大阪に在住している方であれば、居住地と投資先のアパートのエリアが同一のため様々な金融機関の選択肢は多いと考えられますが、仮に遠方から大阪のアパートを所有しようと考えた場合、エリア外ということで融資を受けられない可能性もあります。

アパート経営では、金融機関から提示される融資条件(融資年数・金利)が非常に重要な要素にもなってきます。融資付けが得意なアパート経営の不動産投資会社へ相談するなどして、資金調達の方法についても確認しておくと良いでしょう。

例えば、新築アパートの企画・販売、土地活用コンサルティングを行う「アイケンジャパン」では、福岡銀行、西日本シティ銀行、福岡中央銀行、オリックス銀行などが主要取引銀行となっています。エリアに強い地方銀行も含む様々な金融機関で融資の検討が可能です。

融資を受けられる条件として年収1000万円以上を基準とする金融機関もある中、アイケンジャパンでは年収400万未満でもアパート経営を開始できたケースがあります。資金調達に苦戦されている方、不安のある方は相談を検討されてみるのも良いでしょう。

まとめ

大阪市では人口減少さらに地価下落が起きており、不動産投資を始めるには判断に困る点もあります。将来的にどのように推移していくのか読みづらい状況ですが、経済やビジネス、レジャー、生活などの都市機能も高く、20代の人口は増加傾向にある点はプラスに評価できるポイントとなります。

また、本記事では大阪市の人口・地価推移のデータを参照して考察していますが、実際にアパート経営を行うエリア選びでは、より詳細なデータを検証して投資判断を行うことが重要です。人口・地価推移に加えて、周辺家賃相場なども確認しておくと良いでしょう。今後もこのような大阪市に関する情報を適切に判断して、アパート経営に役立てていきましょう。

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倉岡 明広

経済学部経済学科卒業後、出版社や編集プロダクション勤務などを経てフリーライターとして独立。雑誌や新聞、インターネットを中心に記事を執筆しています。初心者が抱く不動産投資の疑問や質問を解決できるよう丁寧な記事を執筆していきます。