東京・大阪は日本でも有数の経済規模を持つ都市圏で、しばしば、アパート経営においても主要な選択肢の一つとなる地域です。共に人口規模が大きいため、堅実なアパート経営を目指しやすいのが特徴といえるでしょう。
東京と大阪を比較した場合、相対的には東京の方が空室率・利回りなどが低く、大阪の方が低い価格で投資できる可能性があります。今回は東京と大阪でのアパート経営について比較してまとめました。
目次
- 東京・大阪の空室率の推移
- 東京・大阪の成約賃料の推移
- 首都圏・関西の不動産価格・利回りの推移
- 東京・大阪でアパート経営を行うメリットとデメリット
4-1.東京でアパート経営を行うメリット
4-2.東京でアパート経営を行うデメリット、注意点
4-3.大阪でアパート経営を行うメリット
4-4.大阪でアパート経営を行うデメリット、注意点 - 東京・大阪でのアパート経営に適した不動産会社
5-1.シノケンプロデュース
5-2.アイケンジャパン - まとめ
1 東京・大阪の空室率の推移
株式会社タスの調査レポートによると、東京と大阪の空室率は次の通りです。
2009年12月末の数値を100として指数化
出所:株式会社タス「賃貸住宅市場レポート」より筆者が集計。なお、公表済の最新値は2024年2月時点で、それ以前は各年12月・6月の値を集計
東京・大阪は、いずれも日本全体で見れば空室率が低く、安定した入居需要が期待できる地域です。東京と大阪を比べた場合、実は空室率だけで見れば大阪の方が過去は低い傾向にありました。しかし、足元は大阪の空室率が上昇傾向にあり、東京に追いつきつつあります。
2 東京・大阪の成約賃料の推移
全国賃貸管理ビジネス協会「全国家賃動向」では、毎月都道府県別の賃料水準を公表しています。2024年5月は、総平均賃料が東京都で79,463円で前年同月比+10.0%、大阪府は61,830円で同+1.7%でした。
単位:円、出所:全国賃貸管理ビジネス協会「全国家賃動向」より筆者が集計。なお、公表済の最新値は2024年5月時点で、それ以前は各年12月・6月の値を集計
賃料水準の絶対値は東京都の方が高くなっています。また賃料の上昇傾向を見ても、東京のアパートの方が高い家賃設定を行いやすいということが言えるでしょう。
なお、不動産投資としての収益性については、賃料水準に加えて次に紹介する不動産価格や利回りを見て判断する必要があります。賃料水準が高くても、不動産価格が高ければ収益性が高いとはいえないからです。
3 首都圏・関西の不動産価格・利回りの推移
東京・大阪の不動産価格と利回りの推移は次のとおりです。
首都圏・関西の不動産価格の推移
単位:万円、出典:不動産投資と収益物件の情報サイト健美家(けんびや)「収益物件 市場動向年間レポート2023年」
首都圏・関西の利回りの推移
出典:不動産投資と収益物件の情報サイト健美家(けんびや)「収益物件 市場動向年間レポート2023年」
首都圏は不動産価格が相対的に高く、8,475万円と2023年時点では日本各地の中で唯一平均価格が8,000万円を超えています。利回りは相対的に低く、同時点で7.58%です。
関西も不動産価格は高めではあるものの、首都圏には及ばず6,552万円です。その分利回りは8.81%と、首都圏と比較して利回りが高くなっています。
なお、首都圏・関西ともに賃料上昇と不動産価格の高騰を背景に、利回りの低下が進んでいます。これらのデータは過去の傾向であるため、投資判断を行う際の一つの参考として活用していきましょう。
4 東京・大阪でアパート経営を行うメリットとデメリット
東京・大阪を比較した時の、それぞれのアパート経営のメリットとデメリットをまとめました。どちらでアパート経営を進めるか決めるうえでの参考にしてください。
4-1 東京でアパート経営を行うメリット
東京でのアパート経営のメリットは次のような点にあります。
- 人口増加が継続する見込み
- 若年層や外国人による賃貸需要が期待できる
- 路線網が発達していて立地の選択肢が豊富
少子高齢化の日本にありながら、東京都はいまだに人口増加が継続している地域です。人口の増加は不動産の購入・賃貸需要双方にプラスに働きます。さらに、東京は単身者向けアパートのメインターゲットの一つとなる若年層の流入が多いのも特徴です。安定したアパートの賃貸需要が期待できます。
さらに、首都圏は鉄道が多く張り巡らされていて、多くのエリアから簡単に都心部へアクセス可能です。アパートの立地選びにおいて、最寄駅の距離や利便性は重要な判断材料の一つです。東京は利便性の高い駅が多いため、物件選びの選択肢が豊富で、相対的に失敗しにくいと期待されます。
全体として東京でのアパート経営では、相対的に賃貸需要を見込みやすく、堅実な経営を実現しやすいと考えられます。
4-2 東京でアパート経営を行うデメリット、注意点
東京でアパート経営を行う場合、次の点には留意しましょう。
- 地価が高く初期費用が増大しがち
- 利回りが相対的に低い
- 競合物件が多く高品質な物件が求められる可能性
東京は不動産市況が相対的に良好な分、不動産価格が高い傾向にあるのが特徴です。取得価格が高いと、必要な初期費用が増大する可能性があります。また、ローンの借入額も大きくなるため、自身の属性などによる購入可能物件の制約が大きくなるでしょう。
東京は、過去の実績に基づくと利回りが低い傾向にあります。東京のアパートは賃料も相対的に高いのですが、価格の高さの影響の方が大きく、利回りが低下しがちです。
利回りの低さは、アパート経営のリスクが低いことの裏返しなので、一概にデメリットとは限りません。しかし、高収益を追求した投資を考えている方にとっては留意すべきポイントといえます。
東京都内は都市が発達している分、アパートやマンションが密集していて、競合物件が多くなりがちです。立地・賃料などで差がつきにくく、物件の設備やデザインなどで差別化を図るケースが多いです。
周囲に高品質な物件が多ければ、競争で劣後しないよう、自身の物件も設備にこだわる必要があります。また、経年劣化の影響を抑えるべく、こまめなメンテナンス・修繕も必要です。
4-3 大阪でアパート経営を行うメリット
大阪でのアパート経営のメリットは次のような点です。
- 相対的に価格が安い
- 利回りが高め
- 大規模開発が当面続く期待
東京と比べると、大阪は不動産価格が相対的に安いのがメリットです。大阪も日本有数の大都市ですが、日本一の人口規模を擁する東京と比べると都市の規模は小さくなります。その分地価や賃料ともに安いのが特徴です。
大阪のアパートは、同規模であれば東京よりも安い価格で取得できる可能性があります。価格が安ければ、自己資金も抑えて投資が可能です。借入も少なく済むため「東京のアパートは買えないが大阪なら買える」という方も少なくないでしょう。
利回りは、東京より高止まりする傾向にあります。「収益性を一定程度追求したいが、人口動態の不透明な地方は不安」という方にとって、大阪はバランスの良い投資地域の一つと考えられます。
たとえば、大阪梅田北口地区の再開発に代表されるように、大阪では万博前後目掛けて大規模な再開発がいくつも進んでいます。中長期的にみると、リニアが大阪まで延伸されるタイミングまでは開発需要が継続するでしょう。
都市が新しく生まれ変わることで経済発展が続けば、アパート経営においては追い風要因となります。
4-4 大阪でアパート経営を行うデメリット、注意点
大阪でのアパート経営におけるデメリットは以下の通りです。
- 人口動態に大阪府でも格差がある
- 空室率の緩やかな増加
- 相対的にリスクが高い
大阪は府全体で見れば人口減少が始まっています。2020年から2050年の人口減少率は17.8%と見込まれていて、全国平均の17%とほぼ変わりません。同レポートにおいては東京は2020年と2050年の人口がほぼ同程度の見通しです。(出所:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和 5(2023)年推計)」)
大阪府内や市内で地域差が出る点に留意が必要です。たとえば大阪市の区内でみると西区、中央区、北区、福島区、天王寺区、浪速区は、2050年にかけて2020年より人口が増える見通しとなっています。
対して西成区、大正区では30%超人口が減少する見込みに。さらに、大阪市の隣の堺市などではすでに人口減少が始まっています。(出所:国立社会保障・人口問題研究所「『日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)』」よりダウンロード可能なエクセルデータを基に記載)
空室率が緩やかに上昇している点も留意すべき材料です。空室率の上昇が続くようであれば、収益性の低下や賃料・不動産価格の下落につながるリスクがあります。
空室率や人口動態、地域格差などの要素を勘案すると、大阪でのアパート経営は東京よりやや高くなる可能性があります。二つの地域の利回りの差には、このリスクの差が反映されていると考えることもできます。
大阪でアパート経営を始める際には、リスクが東京と比べて相対的に高い可能性を踏まえて、慎重に物件を選びましょう。
5 東京・大阪でのアパート経営に適した不動産会社
シノケンプロデュース、アイケンジャパンは、いずれも全国各地で豊富な投資用アパート販売実績がある不動産会社です。どちらの地域でアパート経営にチャレンジするとしても、堅実な経営をサポートしてくれます。
5-1 シノケンプロデュース
シノケンプロデュースは、土地の選定から企画、設計、施工、引き渡し後の賃貸管理まで一貫したサービスを提供するアパート建築会社です。一般投資家向け賃貸住宅経営のパイオニアとしても知られており、アパート供給棟数は自社施工で7,000棟を超えています。「賃貸住宅に強い建築会社ランキング」(全国賃貸住宅新聞)の「年間アパート開発棟数部門」では、9年連続No.1の実績があります。
グループ会社のシノケンファシリティーズの管理戸数は47,000戸以上(2023年12月末時点)、入居率98.56% (2023年年間平均入居率)となっています。このような入居率の高さは、5,000店舗以上(2024年5月時点)の仲介業者と提携し、良好な関係を築いていることも要因の一つです。
シノケンプロデュースは、元々は福岡の企業ですが、現在は東京都港区に本社を構えています。また、大阪市にもオフィスを展開しており、各都市ごとのアパート経営の特徴に精通している会社です。
東京・大阪にて高品質なアパートを販売
シノケンプロデュースは、東京・大阪ともに販売実績が豊富な不動産会社です。同社では原則として自社で用地を確保して、そのまま自社開発・販売までワンストップで対応します。
東京・大阪とも、都心部では魅力的な空き地がなかなか出てきません。個人で魅力的な用地を取得するのは容易ではありませんが、シノケンプロデュースは地域の不動産会社と連携して、いち早く土地情報を得られます。
好立地を厳選して、収益性の見込める場所でアパート開発を手掛けています。
また、シノケンは高品質なアパートの開発・販売を追求しています。シノケングループの基幹ブランドは「ハーモニーテラス」は、デザイナーが一棟ごとにオリジナルのデザインをほどこしています。ヨーロッパの高級列車のイメージをもとにした、ワンランク上の居住性が特徴です。
機能面では2019年以降全物件にIoTを導入していて、照明や室内の様々な設備をスマートフォンで操作できます。小規模物件でも積極的にオートロックを設置するなど、セキュリティ性にもこだわっています。
リレーションを持つ金融機関が多く融資もスムーズに
シノケンプロデュースは、すでに7,000棟以上のアパート販売実績があります。30年超にわたる不動産販売の実績から、金融機関の開拓も進んでいます。
東京・大阪で一棟アパートを購入すると物件価格が相応に高くなり、ローン借入金額の規模も大きくなりがちです。大きな金額の融資を引き受けてくれる金融機関を見つけなければなりません。
シノケンプロデュースは、上記の通り多くの金融機関とリレーションがあり、独自の提携ローンを利用できる場合もあります。初心者にとってネックとなりがちな融資の準備をスムーズに進められるでしょう。
5-2 アイケンジャパン
アイケンジャパンは、「堅実なアパート経営」をモットーに「グランティック」「レガリスト」などのアパートブランドを全国で展開する不動産会社です。2023年12月末時点で、アパート開発棟数1257棟の実績があります。
賃貸管理の実績として9,136戸(2023年12月時点)の管理を行っており、入居率99.3%(2023年年間実績)となっています。オーナーの負担が大きく、効果が一時的なフリーレントや家賃の値下げを行わずに高い入居率を維持しているのも特徴です。
2017年3月以降に完成したすべての物件で劣化対策等級が最高レベルの等級3の評価を第三者機関より獲得しています。2世代から3世代にわたって引き継ぐことが可能です。
アイケンジャパンは東京・大阪の双方に拠点を構えています。双方の地域でのアパート経営を気軽に相談することが可能です。
駅から徒歩15分以内の好立地物件が多い
アイケンジャパンでは、自社でアパート開発するための用地を自分で取得しています。用地取得では、原則として駅から徒歩15分以内の土地から取得する方針です。そのなかから、利便性や資産価値などの観点から魅力的な土地を厳選して、アパート開発をしています。
アイケンジャパンでは、建物のデザインや機能性の両立を追求してアパート開発を進めています。女性でも安心して入居できるよう、セキュリティ性にもこだわっているのが特徴です。オートロック完備、防犯カメラを設置し、屋内階段の構造を基本としています。
多数の金融機関と強固なリレーションを築く
アイケンジャパンは、高品質な物件の販売と高稼働率を実現してきた実績があるため、多数の金融機関と強固なリレーションを築いています。
アイケンジャパンもまた、アパート経営初心者が利用しやすいアパート会社のひとつといえるでしょう。金融機関探しや融資交渉なども、提携している金融機関を活用すれば手間なく進められることが期待できます。特に福岡でアパート経営を手がけるときには、複数の金融機関と融資に関する相談が可能です。
6 まとめ
東京と大阪は共に日本有数の大都市圏ですが、二つの地域を比べると特性がやや異なります。
初期費用は高めでも、堅実なアパート経営を目指すなら東京を選ぶのが一つの考え方です。収益性や利回りの高さも重視するなら、大阪を選択するのも一案です。実際に購入可能な物件を見ながら検討する方法もあります。
そのときは、東京・大阪両方の物件を扱う不動産会社を利用するのがよいでしょう。今回紹介したシノケンプロデュースやアイケンジャパンのように各地でアパート販売を行っている不動産会社に相談するのも、ひとつの方法です。
伊藤 圭佑
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