大阪は、日本の三大都市圏のひとつで、東京に次ぐ規模をもつ大都市です。少子高齢化に伴う人口減少が想定される日本においては、大阪のような大都市圏でアパート経営を行うことで低リスクの運用が期待できます。
一方で、地域によってはすでに人口減少が始まっている点などには留意しましょう。今回の記事では、大阪でアパート経営を始めるメリットやリスクを、人口・地価などのデータと共に紹介します。
目次
- 大阪の地価推移・人口推移データ
1-1.三大都市圏の公示地価推移の比較
1-2.三大都市圏と全国の人口推移(千人) - 大阪でのアパート経営のメリット
2-1.物件価格は上昇傾向
2-2.都心部は人口流入が続く
2-3.東京対比では利回りが高止まり
2-4.再開発による価値向上も期待 - 大阪でアパート経営を始めるリスクと対策
3-1.人口減少が懸念される地域もある
3-2.地域により独自の条例がある
3-3.利用できる金融機関が限られる - 大阪のアパート経営の実績が豊富な不動産会社
4-1.シノケンプロデュース
4-2.アイケンジャパン - まとめ
1 大阪の地価推移・人口推移データ
大阪でアパート経営を始めるうえで、地価推移と人口推移のデータを確認しておきます。まずは、三大都市圏の公示地価の推移、続いて、人口の推移をみてみましょう。
1-1.三大都市圏の公示地価推移の比較
出所:国土交通省「地価・不動産鑑定(時系列データ)」
平成25年(2013年)から見ると、どの地域も順調に伸びているものの、やはり東京圏の上昇が顕著な状況です。また、大阪は地価の水準で見れば二番手ですが、2013年~2024年(令和6年)にかけての上昇率は東京・名古屋よりも低い水準となっています。
公示地価の伸び率(2013年~2024年)
国土交通省「地価・不動産鑑定(時系列データ)」をもとに、筆者作成
2013年から2024年の上昇率で見ると、東京が30.3%、名古屋が23.3%であるのに対して、大阪圏は+11.0%に留まっています。したがって名古屋と大阪の地価の格差は緩やかに縮小傾向です。
1-2.三大都市圏と全国の人口推移(千人)
出所:統計局「人口推計・長期時系列データ」、「人口推計・2023年10月」
大阪府は三大都市圏の中では最も早く人口減少フェーズに突入しています。上記の5年刻みのデータでは、2010年の886.5万人がピークです。
東京都・愛知県・大阪府の中で、2000年時点より人口が減っているのは大阪府だけとなっています。
2000年対比の2023年10月時点の人口増減率
出所:統計局「人口推計・長期時系列データ」、「人口推計・2023年10月」
都市の規模自体が大きいことから、過度に警戒する必要はありませんが、大阪でアパート経営を検討する際には、人口動態に注意して立地を選ぶのがより一層大切です。
2 大阪でのアパート経営のメリット
大阪でのアパート経営では、次のようなポイントが魅力となります。
- 物件価格は上昇傾向
- 都心部は人口流入が続く
- 東京対比では利回りが高止まり
- 再開発による価値向上も期待
2-1 物件価格は上昇傾向
大阪は、物件価格の上昇が続いています。とくに、2020年のコロナ禍以降に力強い上昇がみられます。
三大都市圏の物件価格
出所:健美家「収益物件 市場動向年間レポート 2023年」
もともとはアパートの平均価格は関西よりも東海地域の方が高かったのですが、近年急速に価格が上昇した結果、2023年時点では関西圏の方が平均価格が高くなっています。
関西の力強い価格上昇傾向は10年以上にわたり続いています。2013年~2023年の各地の価格上昇率をみると、関西は首都圏以上の上昇率をみせています。
三大都市圏の物件価格の上昇率(2013年~2023年)
出所:健美家「収益物件 市場動向年間レポート 2023年」
今後も同様のトレンドが続くとの前提に立つ場合には、大阪でアパート経営を行うと、不動産価格の上昇の恩恵を受けられるチャンスが相対的に大きいと考えられます。
2-2 都心部は人口流入が続く
大阪は、主に大阪市の都心部を中心に人口流入が続いています。以下は2010年~2020年の大阪の市町村(政令市は区ごと)の人口増加率です。
2010年~2020年の大阪府内の人口増加率上位10自治体
出所:e-Stat「 社会・人口統計体系 データ表示 (市区町村データ)総人口」
大阪府内の中央区や西区・北区および南側の中心地である天王寺区などはいずれも近年人口が大幅に増加しています。人口増加が進む地域は、賃貸需要も旺盛であると期待されるため、堅実なアパート経営に適した地域といえるでしょう。
2-3 東京対比では利回りが高止まり
過去10年ほどは不動産価格の上昇が続いていたため、大都市圏はいずれも利回りが低下傾向です。
三大都市圏の利回りの推移
出所:健美家「収益物件 市場動向年間レポート 2023年」
しかしながら、大阪は一貫して首都圏と比べると平均的に高い利回りを維持しています。2023年時点では首都圏が7.58%に対して8.81%と、およそ1.2%高い利回りとなっています。
利回りが高い地域で運用すれば、高い投資収益を追求可能です。首都圏では収益面でニーズを満たさないという方は、大阪でのアパート経営を検討するのも一案です。
2-4 再開発による価値向上も期待
大阪は、都心部を中心に各地で再開発が進められています。大阪駅では、北側の「うめきた」エリアにおいて、緑を積極的に取り入れた街の開発が進んでいます。
中之島エリアでは「未来医療国際拠点・中之島クロス」が開業して産学・医療の連携の拠点となると期待されています。このエリアではタワーマンションの建設も続いていて、大阪都心部の人口増加を支えているのも特徴です。
環状線の東部では、森ノ宮地域で大阪公立大学の新キャンパスを拠点とした開発が進んでいます。また、大阪城の南側では難波宮跡公園周辺にて再開発が進められ、複数のホテルが開業予定です。
今後数年でみても再開発が進められている大阪ですが、やがて名古屋からのリニア延伸がより具体化してくれば、将来はリニア開業をターゲットとした開発が進められると期待されます。長期にわたり再開発による街の価値向上が期待できるのが、大阪の特徴であり魅力のひとつです。
3 大阪でアパート経営を始めるリスクと対策
大阪でのアパート経営では、次のようなリスクに注意を払いましょう。
- 人口減少が懸念される地域もある
- 地域により独自の条例がある
- 利用できる金融機関が限られる
それぞれのポイントについて詳しく説明していきます。
3-1 人口減少が懸念される地域もある
大阪都市圏だからといって、すべてのエリアで発展が期待できるとは限りません。国立社会保障・人口問題研究所の試算によると、大阪都市圏でも今後大幅な人口減少が懸念される市区町村もあります。
2020年~2050年の人口減少率見通し(市区町村別・減少率の高い上位15自治体)
出所:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口(令和5(2023)年推計)」
都心部から離れた市だけでなく、大阪市内でも大正区や西成区などで30%以上の減少が懸念されています。人口の大幅な減少は、賃貸需要の低下を招くため、アパート経営には逆風要因となります。大阪府のなかでも、相対的に人口減少に耐久力をもつ地域を選びましょう。
3-2 地域により独自の条例がある
大阪府内でも、大阪市を始めいくつかの自治体ではアパートや集合住宅に関して独自の条例を制定しているケースがあります。
自治体 | 条例 |
---|---|
大阪市 | 1戸あたり18㎡以上を確保する ワンルームで30戸以上なら管理人室を設置 駐車場の設置 など |
豊中市 | 1戸あたり20㎡以上を確保する 常駐可能な管理人室の設置が必要 駐車場の設置など |
大東市 | 駐車場・駐輪場の設置 |
出所:大阪市「大阪市ワンルーム形式集合建築物に関する指導要綱に基づく事前協議」、豊中市「ワンルームマンションの計画について 」、大東市「大東市開発指導要綱について」
新築をこれから所有する場合、これらの条例に対応するために追加的なコストがかかるリスクがあります。中古物件では目先の設備投資は不要な場合もありますが、条例に準拠した新築や築浅物件対比で競争力が見落として、入居者の獲得や売却に支障が出るリスクがあるでしょう。
立地選びにおいては、条例への対応による影響やコストも整理したうえで、長期的な収益とのバランスが期待できるエリア選定を行うことが重要となります。
3-3 利用できる金融機関が限られる
不動産投資ローンの融資を受ける際、申込者と不動産の住所によってローン借り入れが可能な金融機関が異なってきます。これは金融機関が不動産の担保評価のために現地調査を行うことなどを目的として、金融機関ごとに融資可能なエリアのルールが定められているのです。
大阪の場合、地元の地銀や一部の信金などがローン契約先としての候補となり、東京と比較すると金融機関の選択肢は限られます。地銀・信金のなかには大阪や関西在住者との取引を優先する場合も考えられるため、大阪以外に居住している方からの投資ハードルが高いケースもあります。
その点では、大阪の物件で融資を受けられる金融機関と強固なリレーションを持つ不動産会社に相談するのも、スムーズにアパート経営を始める一つの方法となるでしょう。
4 大阪のアパート経営の実績が豊富な不動産会社
大阪でアパート経営を検討する際は、大阪のエリア事情に詳しく、実績が豊富な不動産会社にヒアリングや相談をしておくと良いでしょう。特に新築アパート経営を行うのであれば、運用期間が数十年となることもあります。実際に運用を開始する際には、物件開発・物件管理の両面から、将来のアパート経営のパートナーとして慎重に選択していくことが大切です。
ここでは大阪でのアパート経営の実績が豊富な不動産会社として、シノケンプロデュース、アイケンジャパンの2社をご紹介します。
4-1 シノケンプロデュース
シノケンプロデュースは、土地の選定から企画、設計、施工、引き渡し後の賃貸管理まで一貫したサービスを提供するアパート建築会社です。一般投資家向け賃貸住宅経営のパイオニアとしても知られており、アパート供給棟数は自社施工で7,000棟を超えています。「賃貸住宅に強い建築会社ランキング」(全国賃貸住宅新聞)の「年間アパート開発棟数部門」では、9年連続No.1の実績があります。
グループ会社のシノケンファシリティーズの管理戸数は47,000戸以上(2023年12月末時点)、入居率98.56% (2023年年間平均入居率)となっています。このような入居率の高さは、5,000店舗以上(2024年5月時点)の仲介業者と提携し、良好な関係を築いていることも要因の一つです。
優良物件を自社開発・自社管理
シノケンプロデュースは、優良な土地を自社で買い付けてアパート建設を行います。大阪のような都市部となると、都心部には空き地が限られているため、個人が優良な土地を購入するのは容易ではありません。
また、地元の不動産仲介会社と強固なリレーションを築くなどして、魅力的な土地の情報をいち早く仕入れて確保します。そのため、土地なしからでも魅力的な土地でアパート経営を始められるのです。
さらに、グッドデザイン賞を受賞した実績もある、シノケンの旗艦アパートブランドの「ハーモニーテラス」はデザインと機能性を兼ね備えたコンセプトで競争力のある物件となっています。オートロックやIoT設備の積極的な導入などにより優れた住居環境を提供しているのが特徴です。
住み良いアパートは入居需要を集めやすく、結果的に資産価値の維持にも寄与します。
30年超にわたるアパート販売の確かな実績から、多くの金融機関と強固な関係を築いています。個人が自ら金融機関開拓をすると、地方物件であることにより選択肢が限られるケースも少なくありません。シノケンプロデュースのような実績ある企業に相談すれば、借入の準備もスムーズに進むでしょう。
4-2 アイケンジャパン
アイケンジャパンは、「堅実なアパート経営」をモットーに「グランティック」「レガリスト」などのアパートブランドを全国で展開する不動産会社です。2023年12月末時点で、アパート開発棟数1257棟の実績があります。
賃貸管理の実績として9,136戸(2023年12月時点)の管理を行っており、入居率99.3%(2023年年間実績)となっています。オーナーの負担が大きく、効果が一時的なフリーレントや家賃の値下げを行わずに高い入居率を維持しているのも特徴です。
2017年3月以降に完成したすべての物件で劣化対策等級が最高レベルの等級3の評価を第三者機関より獲得しています。2世代から3世代にわたって引き継ぐことが可能です。
駅から徒歩15分以内の好立地物件が多い
アイケンジャパンでは、自社でアパート開発するための用地を自分で取得しています。用地取得では、原則として駅から徒歩15分以内の土地から取得する方針です。そのなかから、利便性や資産価値などの観点から魅力的な土地を厳選して、アパート開発をしています。
アイケンジャパンでは、建物のデザインや機能性の両立を追求してアパート開発を進めています。女性でも安心して入居できるよう、セキュリティ性にもこだわっているのが特徴です。オートロック完備、防犯カメラを設置し、屋内階段の構造を基本としています。
多数の金融機関と強固なリレーションを築く
アイケンジャパンは、高品質な物件の販売と高稼働率を実現してきた実績があるため、多数の金融機関と強固なリレーションを築いています。
アイケンジャパンもまた、アパート経営初心者が利用しやすいアパート会社のひとつといえるでしょう。金融機関探しや融資交渉なども、提携している金融機関を活用すれば手間なく進められることが期待できます。
5 まとめ
日本第二の都市圏である大阪周辺は、大都市でありながら首都圏対比で物件価格が低く、利回りは高いのが特徴です。首都圏でのアパート経営と比べて、相対的に収益性を高める余地があるでしょう。
一方で、東京・名古屋と比較して人口減少が顕著であることから、立地選びがとりわけ重要です。アパート経営の初心者の方であれば、不動産会社のセミナーや個別相談などを活用して、少しずつ情報収集を行っていくと良いでしょう。
今回は、大阪のアパート経営の実績が豊富な不動産会社として、シノケンプロデュースとアイケンジャパン2社をご紹介しました。どちらもセミナーや個別相談に対応しているため、活用を検討されてみると良いでしょう。
【関連記事】東京と大阪でのアパート経営の違いは?空室率や成約賃料の推移から検証
伊藤 圭佑
最新記事 by 伊藤 圭佑 (全て見る)
- 不動産デジタル証券に投資するメリット・デメリットは?個人で投資できるサービスも - 2024年11月7日
- 三井物産「ALTERNA(オルタナ)」のメリット・デメリットは?仕組みやREITとの比較も - 2024年11月6日
- 2024年に募集したCOZUCHI(コヅチ)の注目ファンドは?応募実績や傾向も - 2024年10月31日
- 下北沢の開発PJに、箱根の温泉付き別荘PJも。1万円から色々な不動産に投資できる新しいサービス - 2024年10月31日
- アパート経営の初心者がアパートローンを組む方法は?金利・年数交渉のポイントも - 2024年10月31日