みなさんは「あなたの不動産投資戦略を教えてください」と言われたら何と答えますか? 不動産投資はビジネスであり、ビジネスには戦略が必要です。この記事では、「3C分析」というビジネス戦略を考える際に最もよく使われるフレームワークを使って、不動産投資の戦略の立て方を解説していきたいと思います。
「不動産投資戦略」「3C分析」とは?
ビジネスで「戦略」という言葉が意味するものは「継続的に利益を上げ続けるために必要な準備・計画・運用」となります。したがって、不動産投資の戦略とは、不動産投資から大きい利益を上げ続けるために何が必要なのかを考えることで浮かび上がってきます。
ただ、いきなり「戦略が大事だから考えて下さい」と言われても何から手をつけていいのか困ってしまうかと思います。このとき、戦略を考えるのに役立つのが「3C分析」というフレームワークです。
3C分析の目的は、Customer(顧客)のニーズとCompetior(競合)の取り組みを分析した上で、Company(自社)の強みを活かしたビジネスを展開するためのツールです。これを不動産投資に応用することで、賃貸ニーズを的確につかみ、競合物件と差別化できるポイントを見つけて、自分の強みを最大限に活かした不動産投資を行うことができるようになるため、不動産投資から安定的に収益を上げ続けていくことが可能となります。
以下では、それぞれの分析について詳しく見ていきましょう。
Customer分析(賃貸ニーズを分析して空室リスクを回避する)
まず、Customer分析では「賃貸ニーズに関する分析」「入居者(ターゲット)に関する分析」を行います。具体的には、不動産投資を検討しているエリアに安定的な賃貸ニーズが期待できるか、ニーズが期待できそうな場合はどのような物件や部屋が好まれるのかを考えていきます。
エリアの賃貸ニーズを考える場合、一番大切なのは「そのエリアの人口が増えるかどうか」です。たとえば、以下は東京都政策企画局が出している全国と東京都人口の推移となります。
これを見ると、東京都全体は2025年まで、23区で2030年まで人口が増え続けるものの、多摩などでは2020年に人口のピークを迎えることが分かります。人口が減少すれば、その分だけ賃貸ニーズも少なくなることが予想されるので、こういった人口動態は注視する必要があります。
東京都以外にも、各都道府県や各市区町村が独自に出している資料(たとえば、「○○市人口ビジョン」など)がありますので、検討しているエリアのデータには目を通しておきましょう。
他にも、都市計画や商業ビルの開発、大学・オフィスの移転などがあれば、人口が大きく変動する可能性がありますので、これらのリサーチやヒアリングができるとよいでしょう。
また、人口の動きと併せて見ておきたいのが、エリアの年齢割合です。20代から30代の若年層の独身労働者の人口が多いのであれば、アパートやワンルームの需要が高いことが予想されますし、30代~40代の子どもがいる世帯が多そうであれば、ファミリータイプの部屋や戸建ての需要があると考えられます。こちらも、「○○市人口ビジョン」などの資料で確認することが可能です。
このように、人口の動きを見て、人口が増えていくエリアか減少していくエリアなのかを見極め、減少していくエリアで不動産投資を展開するのであれば、それでも勝ち続けることができる要素を揃える必要があります。また、誰向けにどのような部屋の需要があるかを考え、購入する物件タイプや部屋を検討していくことが大切です。
Competior分析(競合物件を分析して差別化を検討する)
Cutomer分析で不動産投資を展開するエリアが決まったら、次はエリア周辺の競合を分析しましょう。
競合分析の仕方は、全部で3つあります。まず1つ目は、不動産投資会社の営業マンに調べてもらうことです。購入を検討している物件と賃料が同水準の他の物件や、設備レベルが同じ物件の賃料水準を見せてもらうことで、物件のグレードや賃料水準を知ることができます。
2つ目は、ウェブでマンションの口コミサイトなどを確認することです。たとえば「マンションノート」というサイトでは、自分が住んだことのあるマンションを投稿すると他のマンションの口コミを閲覧することができます。購入を検討しているマンションはもちろん、周辺のマンションの口コミを調べることで、入居者が実際に感じているマンションへの満足度、治安のよさ、周辺の利便性、賃料のコストパフォーマンスなどが分かります。
3つ目の方法は、実際に現地に行ってみることです。もしビジネスマンの入居者をメインターゲットにするのであれば、入居者の立場になって、朝の通勤時間帯や夜の帰宅時間帯に周辺物件を視察しに行くのがベストです。
利便性は良いか、治安は良さそうか、夜はうるさくないか、購入検討物件よりも近い場所にある競合物件と差別化できるポイントは何か、といった点などを中心に確認するとよいでしょう。
また、購入を検討しているエリアの周辺に、現在建設中の物件がないかも確認しておきたい点です。もし建設中の物件がいくつもあるようであれば、よほどの開発地区でない限り、賃貸需給が逼迫する恐れがありますので避けるほうが無難でしょう。周辺にハイグレードなマンションの建築計画がある場合も、賃料を引き下げないと入居者がつかなくなるリスクがあるため、注意をしなければいけません。
Company分析(自分の強みを最大限に活かす)
3C分析の最後は、Company分析です。ここでは、自分の強みを整理して、それを最大限に活かせる方策を考えます。
たとえば、高年収・高属性の方であれば、融資を引きやすいので融資額が大きく安定性の高いマンション一棟投資を検討したり、より金利が低い金融期間を選択したりすることで有利にスタートを切ることができます。
また、職種が営業の方であれば、営業力を活かした物件条件の交渉、物件周辺の方へのヒアリング、成功オーナーとのコネクションづくりなどで強みを発揮することができるでしょう。
【参考記事】不動産収益を数百万円改善!不動産購入の7つのコツ
また、現在住んでいる、あるいは過去に住んだことがあるといった土地勘のあるエリアを持っていることも強みの一つです。実際に住んだことのある実感から、エリアの特徴や需給、賃貸の相場を肌感覚として持っているはずですので、ハズレの物件を引くことは少なくなります。
他にも、女性の方であれば、女性目線で物件選定をすることは強みになります。不動産投資オーナーの9割弱が男性と言われていますので、女性の繊細な視点で厳選された物件は、入居者からも支持される物件となります。
【参考記事】これで安心!働く女性にこそ不動産投資がおすすめの5つの理由
このように、属性や職業、経験、性別など自分が持っている強みを整理して、どこで一番自分らしさを発揮した戦い方ができるかを検討することが大切です。
まとめ:3C分析はビジネスの定石
不動産投資は、他の投資と比べると少し特殊な投資です。たとえば、新築マンションを購入した場合、「新築プレミアム」というものがあるので、最初の数年間は賃料が高く設定できる上に空室となるリスクも少なくなります。しかし、そこでうまくいっていると勘違いしてしまうと、数年経ったあとに他の「新築プレミアム」に入居者を奪われてしまい、賃料の引き下げが必要になったり、空室になってしまったりということが起こります。
冒頭でも触れたとおり、不動産投資は「投資」というよりも「ビジネス」に近い感覚となります。不動産投資の市場には、すでに多くのプレイヤー(オーナー)が存在していますので、そのビジネス領域に新規参入をして他のプレイヤーに勝って利益を上げ続けていくためには、彼らよりも良質な情報を入手することや練り上げられた戦略を実行することが必要となります。3C分析を行って、賃貸ニーズを捉え、競合と差別化をして、負けない戦略を作り上げていきましょう。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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