海外不動産投資では大きなキャピタルゲイン(売却益)や安定したインカムゲイン(家賃収入)などが狙える一方で、物件の買い方や税制の違い、為替差損など様々なリスクがあります。せっかく良い物件を見つけても注意するべきポイントを見落とすと、失敗する可能性も高まります。
そこで、この記事では海外不動産投資を検討している方のために、よくある失敗事例とそれを回避するための対策・方法について詳しくご紹介しますので、ご参考ください。
目次
- 海外不動産投資でよくある失敗例
1-1.物件が完成しない
1-2.入居者が付かない
1-3.融資を受けられない
1-4.転売できない
1-5.為替レートの変動で利益が減る - 海外不動産投資で失敗しないためのポイント
2-1.デベロッパーの企業規模や信頼性をチェックする
2-2.賃貸需要を確認する
2-3.海外不動産で融資を受けられる金融機関を確認する
2-4.物件購入前に周辺の開発状況を調べる
2-5.現地銀行に預けておく - まとめ
1 海外不動産投資でよくある失敗例
まずは海外不動産の購入時や売却時によく見られる失敗事例から見ていきます。
1-1 物件が完成しない
海外不動産投資で人気が高いのは東南アジアのコンドミニアムです。コンドミニアムとは日本の分譲マンションを指します。最近はプールやフィットネス施設といった豪華な施設を併設している富裕層向けの物件も人気です。
東南アジアの不動産が注目されるのは、これからの値上がりが期待できるエリアで安く購入できる物件があるからです。キャピタルゲイン狙いでコンドミニアムを購入する場合、主に建設前に購入するプレビルド販売の物件を選ぶことになります。プレビルド販売はコンドミニアムを開発するデベロッパー(開発業者)が、完成後に売り出す価格よりも値引きをして建設前に販売するという形式です。
日本のマンションも建設前に販売されますが、代金の支払いは完成後になります。一方、プレビルド販売の場合には、売買契約を結んだ後は完成前でも支払いが始まります。頭金を分割して支払い、最後に残金をすべて支払うという形です。
ただし、プレビルド物件の購入には注意も必要です。デベロッパーはプレビルド物件の販売で得たお金を建設費用に回すという事情があるため、プレビルド販売が不調となれば、予定していた建設資金を確保できず、建物の完成が遅れる可能性も生じます。最悪の場合、物件は完成せず、支払ったお金も戻ってこないという場合もあります。
1-2 入居者が付かない
海外不動産投資の目的は、キャピタルゲイン狙いの転売か節税が中心になりますが、キャピタルゲインが狙える物件は投資家需要も多く、長期的な家賃収入を見込むこともできます。
なお、東南アジアでは海外の投資家を見込んで数多くのコンドミニアムが建設されていますが、実際の需要と必ずしも一致しているわけではありません。物件が多く建設されるエリアだからといって付近の賃貸需要をよく調べずに購入すると、入居者探しに苦労する場合もあります。
特に海外投資家向けのコンドミニアムは高級物件となるため、賃料も高く設定されます。高額家賃を支払える入居者は、現地の富裕層や海外からの駐在員などに限定されてくるので、現地人は入居者の対象から外れることになります。それに対して物件数が増えれば、入居者を見つけるのはさらに難しくなります。
1-3 融資を受けられない
海外不動産を購入する際にハードルになるのが資金調達です。日本国内の金融機関は、基本的に海外不動産を担保に融資するところはありません。融資を受けられるとしても、国内不動産を担保にしたフリーローンという形になります。そのため、担保になる国内不動産がなければ、ローンを借りるのは難しいのが現状です。
一方、現地銀行から融資を受けようとする場合も様々な条件や制約が課されます。例えば東南アジアでは徐々に外国人に対して住宅ローンを貸し出すところも増えていますが、多くの場合、現地に居住して現地で収入を得ていることなどが条件になります。さらにアメリカのように、現地でのクレジットカードの信用スコアが必要となるケースもあります。
またプレビルドのコンドミニアムは担保価値を評価できないため、建設前に融資をする現地銀行もありません。このように頭金を支払った後に残金をローンで借りることができず、支払えなくなるといったケースもあります。
1-4 転売できない
不動産価格を決める要素には、地価の変動以外に「需要」と「供給」があります。特に海外不動産投資の場合には、投資家の需給に大きな影響を受けます。
特に東南アジアのコンドミニアムは、値上がり益を見込んだ不動産投資が中心になるため、外国人投資家にどれほどの需要があるのかが重要になります。東南アジアで地価の高い主要都市では、このような海外投資家の投資マネーを見込んで数多くのコンドミニアムが建設されています。
しかし、デベロッパーの見込みとは違って思いのほか投資家需要が低ければ、このようなコンドミニアムは値崩れする可能性が高くなります。
さらに東南アジアのコンドミニアムは、ほとんどの場合、土地の所有権がありません。そのため地価が上昇しても、あくまでも投資家の需要がない限り、価格上昇は見込めないことになります。
また、前述した通り、海外投資家向けに販売されるコンドミニアムは家賃設定が高く、ほとんどが現地の富裕層や海外からの駐在員、あるいは旅行者に向けて貸し出されるため、対象となる賃借人は限定されてきます。
このように賃借人が限定される中で、物件が多く建設されるエリアで購入したコンドミニアムは、転売するのも難しくなります。
1-5 為替レートの変動で利益が減る
海外不動産投資のための情報収集が十分に行えても、先行きの見通しが難しいリスクがあります。為替変動リスクはその中の一つです。
家賃収入は現地通貨で受け取りますが、外貨で受け取った家賃を日本円に両替する際、海外不動産投資の「運用計画を立てた時の為替レート」と「両替する時の為替のレート」は同じではありません。そのため運用計画を立てた時よりも、外貨を日本円に両替する時のほうが円高になっていれば、想定した収入を日本円では受け取れないことになります。
例えばアメリカのコンドミニアムを購入した時の為替レートが、1ドル=110円だった場合、このレートで年間12,000ドルの家賃を両替すると、12,000ドル×110円=1,320,000円を受け取ることになります。
しかし日本円に両替する時に為替レートがドル=100円になると、日本円で受け取る年間収入は、12,000ドル×100円=1,200,000円と、当初の計画よりも12万円少なくなります。
物件を転売した時に大きく円高に動くことになればさらに大きな損失を生むこともあります。家賃収入が確保できて、資産価値も落ちにくい場所で海外不動産を購入できたとしても、為替レートによって受け取る利益が少なくなる可能性があることに留意しておきましょう。
2 海外不動産投資で失敗しないためのポイント
海外不動産投資には失敗に繋がる様々なリスクがあるため、事前に対策を講じておくことが大切です。
2-1 デベロッパーの企業規模や信頼性をチェックする
コンドミニアムの完成しないリスクを回避するためには、開発するデベロッパーの情報をチェックすることが大切です。不動産会社からの情報のみを参考にするのではなく、自分でも複数の情報源からデータを集めましょう。
例えばフィリピンでコンドミニアムを購入する場合は、フィリピン不動産の専門サイト「ZipMatch」などでデベロッパーの評判をランキング形式で調べることができます。
デベロッパーにはそれぞれ得意とする物件の種類やエリア、価格帯などそれぞれに異なる特徴があります。自分の海外不動産投資のスタイルに合うデベロッパーはどのようなタイプなのかを念頭に、会社概要や資金力、過去に建設が中止になった例はないかなど、評判も含めて確認することが大切です。
2-2 賃貸需要を確認する
海外不動産投資で重要なのは、賃貸需要が多いエリアで物件を購入することです。これは日本国内での不動産投資でも同じです。キャピタルゲインや節税を狙う場合でも賃貸需要は検討する必要があります。
賃貸需要に関する情報は、基本的に不動産を販売する業者から得られますが、できる限り自分でも現地のリアルタイムのデータを入手するようにしましょう。
例えば、「海外企業が多く参入するエリア」などもポイントの一つです。企業が移転してくる付近は駐在員やその家族が居住するエリアとなります。その中でも買い物や交通の便が良いところ、治安が良いところなどを調べると良いでしょう。
2-3 海外不動産でも融資を受けられる金融機関を確認する
海外不動産の購入では現金を多めに用意することが大切と言われますが、限度というものもあります。現金で購入できないときは、まず海外銀行を検討してみると良いでしょう。
例えば、HSBC(香港上海銀行)は、現地に居住していない人向けにもアメリカや東南アジア諸国を対象にローンを提供しています。ただし、日本人向けにも対応しているかどうかは個別に問い合わせて確認したほうが良いでしょう。
また国内でも日本政策金融公庫は、海外の不動産事業に対して融資をしています。ただし、すでに国内で不動産業を営んでいたり、海外展開の一環とする場合に限られたりするなど、条件は厳し目ですので、事前にその内容をよく確認しておくと良いでしょう。
このほかマレーシアの場合、非居住者の外国人に対しても現地銀行がローンを貸し出しています。長期滞在ビザのMM2Hを取得していると優遇される傾向もあるので、詳細は事前に確認しておくことが大切です。
2-4 物件購入前に周辺の開発状況を調べる
どれほど腕の良いブローカーであっても、投資家需要のない物件を売却するのは簡単ではありません。転売で失敗しないためには、事後処理ではなく購入前の事前調査で対処するのが適切です。
例えば、購入を検討している国とエリア付近の開発状況に関する情報を調べます。海外企業の移転や大型ショッピングモールの開発、鉄道の開通といった噂があれば、該当エリアの人口も増え、賃貸需要を期待することもできます。
このような現地に関する情報は、海外メディアなどから仕入れることもできます。例えばタイの不動産に関する情報は、不動産情報が豊富な「Thailand Business News」や、アメリカでコンドミニアムや戸建て住宅を投資用に購入する場合は、zillowといったポータルサイトが参考になります。
zillowではエリアごとの賃貸利回りや物件ごとの細かなデータが記載されています。購入を検討する物件や周辺エリアに関する情報を入手することで、ある程度の収益も見通せます。
また、英語が苦手という場合は、海外不動産を取り扱う国内の不動産会社を頼るのも一つの方法です。特に現地に拠点を設けている企業は、海外不動産投資に関する情報を豊富に持っており、セミナーなどを通じて情報発信を積極的に行っています。
例えば、アメリカ不動産投資に強みを持つオープンハウスでは、アメリカ不動産投資の具体的なノウハウを交えて物件紹介をしてくれるだけでなく、グループ会社によるアメリカ不動産購入時の融資制度の紹介も行っています。
投資したい国や気になる海外物件があれば、海外不動産を取り扱っている不動産会社やセミナーの主催企業に問い合わせてみるのも良いでしょう。
2-5 現地銀行に預けておく
海外不動産投資には為替変動リスクが伴います。しかし為替レートの変動を予測するのはプロでも困難です。
そこで、受け取った外貨は円安になるまで両替しないで現地銀行に預けておくというのも対策の一つです。日本は超低金利政策を継続しているので、海外の銀行に預けたほうが高い利子を得られます。そして為替が円安に進んだ時に両替すれば、為替差損を回避することも期待できます。
3 まとめ
「海外不動産投資は難しそうで手が出せない」と感じている方もいますが、リスクの内容と適切な対処方法を知るだけでも印象は変わります。基本的には国内不動産投資と同じで、「賃貸需要が多いエリアを選ぶ」ことが失敗しないためのポイントです。
その上で「信頼できるデベロッパーの物件を選ぶ」「物件購入に必要な資金を確保する」「海外銀行を検討する」といったポイントを順番に押さえることが大切です。
また海外不動産投資ではビジネスパートナーとなる不動産会社や管理会社選びも重要となります。情報収集はインターネットや各書籍からでもできますが、セミナーに参加するなど足を使うことも重要ですので、検討してみてください。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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