2022年4月に東証グロース市場に上場したクリアル株式会社は、不動産投資型クラウドファンディングサイト「CREAL」やプロ投資家向け不動産ファンド「CREALPro」を中心とした事業を展開している不動産会社です。
そのクリアル株式会社が、2022年5月に2022年3月期の決算短信を発表しました。本記事では、 クリアル株式会社の2022年3月期の決算内容について解説し、検証していきます。
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目次
- クリアル株式会社の2022年3月期決算概要
1-1.事業概要
1-2.売上や利益は続伸
1-3.募集実績
1-4.利益の内訳 - クリアル株式会社の2023年3月期の展望
2-1.業績予測
2-2.事業計画 - クリアル株式会社の上場後の決算内容からわかること
- まとめ
1.クリアル株式会社の2022年3月期決算概要
CREAL(クリアル)は、東証グロース上場企業のクリアル株式会社が運営している不動産投資型クラウドファンディングサービスです。1口1万円から小口不動産投資を始めることができ、運用資産評価額の下落が一定割合までであればクリアルが損失を負担する仕組みになっており、少額・短期で始めてみたい初心者の方にも利用しやすいサービスです。
運営会社のクリアル株式会社について、「2022年3月期決算説明資料」「2022年3月期 決算短信」の内容を基に検証していきましょう。
1-1.事業概要
クリアル株式会社は、2011年5月に創業し、子会社のクリアルパートナーズ株式会社(2013年10月設立)とともに、以下の事業を手掛けています。
- CREAL
- CREAL Pro
- CREAL Partners
CREALは、個人投資家向けの不動産クラウドファンディングで、1万円からオフィスやホテル、レジデンスなどに投資できるのが特徴です。一方、CREAL Proは1億円から投資できる機関投資家などプロ向けの不動産ファンド事業となっています。
CREAL Partnersは、個人投資家向けの不動産投資運用サービスとなり、1,000万円から区分レジデンスなどに投資できます。クリアルでは、これら3つの事業を展開し、不動産投資の機会を広く開放しています。
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1-2.売上や利益は続伸
クリアルの連結売上高は、105億8,100万円で前期比+48.2%(前期71億4,100万円)です。事業別では、CREALが前期比+173.4%、CREAL Partnersが前期比+21.2%、CREAL Proが前期比-20.6%となっています。当期純利益は1億7,200万円で前期比+243.2%です。会員数は2万8,649人で前期比+39.8%になります。
シェア拡大余地が高く、成長事業と掲げるCREALとCREAL Partnersに、特に注力したことで各利益は前期比で大幅増となっています。
これらの事業については、成長チャンスを的確に補足するため、今後も採用を推進し、積極的な広告宣伝、マーケティングを実施する計画です。2023年3月期は、売上高160億円、当期純利益2億円を計画しています。
1-3.募集実績
クリアルが、2022年3月期にCREAL、CREAL Partners、CREAL Proで募集した主要プロジェクトは、次のとおりです。
- 医療サービス付き猫専用ペット共生マンション:6.3億円
- 三菱地所グループのコリビングレジデンスの共同プロジェクト:12.6億円
- クリアル自社ブランドのレジデンス:3.9億円
- Rakuten Liful Stayの運用するホテル:3.8億円
- グローバルキッズが運営する保育園:4.7億円
上記5つのプロジェクトで31.3億円となります。三菱地所グループのHamlet社、楽天ライフルステイ社、グローバルキッズ社など、さまざまな会社とコラボしており、保育園やレジデンス、ホテルなどの多彩なファンドを組成しています。
なお、2023年3月期に入って間もなくいくつかのファンドは組成完了しています。例えば、アースゴルフアカデミー社とのコラボであるシミュレーションゴルフ練習場のファンド(EGA武蔵小山)なども満額達成しています。
1-4.利益の内訳
CREALやCREAL Partnersは成長市場であり、認知度向上やユーザー獲得、組織拡大などのために、今後も先行投資を継続する予定となっています。
クリアルの2022年3月期の売上総利益は15億5,400万円で、営業利益は3億1,300万円です。販売費及び一般管理費の主な内訳は次のとおりです。
- 広告宣伝費:1億9,700万円
- 支払手数料:1億3,500万円
- 支払報酬:8,900万円
- 人件費:4億5,700万円
- その他:3億1,500万円
広告宣伝費は認知度向上や会員獲得、支払手数料はITツール導入などによる費用、人件費は事業拡大を見据えて人員拡大を図り4億5,700万円計上されています。
2.クリアル株式会社の2023年3月期の展望
ここからは、クリアルの2023年3月期の業績予測や事業計画、重点施策や成長戦略などについて見ていきましょう。
2-1.業績予測
クリアルの2023年3月期の計画は、以下のとおりです。
- 売上高:160億円(前期比+51.2%)
- 売上総利益:18億8,000万円(前期比+21.0%)
- 営業利益:3億3,000万円(前期比+5.2%)
- 経常利益:3億1,000万円(前期比+20.6%)
- 当期純利益:2億円(前期比+16.0%)
売上高は、CREALの新機能リリース、CREAL PartnersのDX推進・商品拡充、CREAL Proの成長などから前期比51.2%増となっています。売上高総利益は、CREALとCREAL Partnersの事業拡大により前期比+21.0%の計画です。
売上高や売上総利益に比べて営業利益の伸び率が低いのは、継続して先行投資を行うため、広告費や人件費などの経費が織り込まれていることによります。
2-2.事業計画
クリアルの今後の事業拡大の方針をまとめると、下記のような戦略が立てられています。
マーケティング
- 大手ポイント会社や金融機関との連携促進
- テレビや新聞などの広告で認知拡大
IT投資、新規プロダクト開発
- UI/UXの強化
- 不動産特定共同事業法3号4号免許取得
- スマホアプリのローンチ
これらの成長投資の継続により、以下の中期展望を掲げています。
- GMV(流通取引総額):300億円(2022年3月期は71.2億円)
- 投資家数:8万人(2022年3月期は2万8,649人)
- AIPU(投資家1人あたりの投資金額):37万5,000円(2022年3月期は24万9,014円)
3.クリアル株式会社の上場後の決算内容からわかること
クリアル株式会社の2022年3月期決算短信の内容を見てみると、これまで堅調な事業運営による利益や募集実績を積み上げてきており、積極的に今後の事業拡大に向けた広告・マーケティングへの投資を行うなど、具体的な成長戦略を掲げていることが伺えます。
クリアル株式会社の業績に大きな問題点が無いということは、株主の方だけでなく、既存のユーザーの方のメリットともなります。不動産投資型クラウドファンディングにおいては、事業者の業績が悪化すると、新規のファンド組成が難しくなったり、破綻による元本回収のリスクが高まったりするためです。
一方、注意点としては投資型クラウドファンディングの事業形態自体がまだ新しく、法改正が頻繁に行われていること、融資型クラウドファンディングにおいては金融庁から指摘を受けているケースもあるなど、慎重に検証していきたいポイントと言えます。(*クリアルは不動産投資型クラウドファンディング)
2022年3月期決算短信では、特筆して注意しておきたいポイントは見られません。しかし、一時点の決算情報だけで判断するのではなく、定期的に決算情報を確認し、事業計画が達成されているか、業績が改善されているか、中長期的な目線で検証することも大切なポイントと言えるでしょう。
まとめ
クリアルは、2022年3月期の業績が増収増益となっており、会員数も大幅に伸びています。特に売上高は105億8,100万円で前期比+48.2%という高い水準です。売上総利益も前期比33.4%増の15億5,400万円と、売上、利益面の両方で好調な結果を見せています。
上場を果たした2023年3月期も、アプリ開発など成長市場や事業に継続的に先行投資をしていく計画であり、さまざまな重点施策や成長戦略を準備しています。
一方、決算情報は一時点の会社の業績を示したものであり、必ずしも将来の利益が保証されているものではありません。定期的に決算情報を確認し、投資の是非を検証されてみると良いでしょう。
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