コロナショックがタイの不動産価格に与えた影響は?データで検証

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2020年、世界経済に大きな影響を与えたコロナウイルスは、拡大の勢いが夏に弱まりましたが、秋以降再び拡大しています。コロナは世界各国の不動産価格にどう影響しているのか、気になる人もいるのではないでしょうか。

この記事では、コロナがタイの不動産価格に与えた影響について、データを用いて解説します。

目次

  1. タイの不動産価格推移
  2. プーケットの不動産マーケットについて
    2-1.プーケットの不動産価格
    2-2.プーケットの不動産販売状況
    2-3.2020年下半期の見通し
  3. タイの物件供給状況について
    3-1.バンコクのコンドミニアム供給状況
    3-2.建築許可数の推移
  4. まとめ

1.タイの不動産価格推移

タイの不動産価格はコロナの前後でどう変化しているのか、統計に基づいて解説します。以下のグラフは、Bank of Thailandが発表している、物件種別に見た不動産価格指数の推移です。

タイの不動産価格推移※参照:Bank of Thailand「Commercial Bank Mortgage Loan

上記は、タイの戸建・コンドミニアム・土地について、2019年11月以降における価格指数の変化をグラフにしたものです。各不動産とも、コロナの前後で暴落や高騰と言えるほどの値動きは出ていません。

しかし、数値変動を細かく確認していくと、戸建と土地は値上がりしている一方で、コンドミニアムは値下がり傾向にある様子がうかがえます。

戸建 コンドミニアム 土地
2019年11月 145.7 182.1 173.1
2019年12月 146.3 191.6 180.6
2020年1月 148.4 197.3 180.9
2020年2月 149.2 196 183
2020年3月 149.1 190 181.6
2020年4月 149.3 191 181.5
2020年5月 150.6 191.7 182.1
2020年6月 151.3 190.2 185.1
2020年7月 151.8 185.8 191.3
2020年8月 149.8 182.5 192.1
2020年9月 151.2 180.8 191.6

戸建は、2019年末〜2020年9月の間に、5.5ポイント価格指数が上昇しました。また、土地については同じ期間で18.5ポイント価格指数が上昇しています。特に土地は大きく値上がりしている状況です。

しかし、コンドミニアムに関しては、2020年1月をピークとして値下がりが続いています。2020年1月〜9月の間に、コンドミニアムの価格指数は16.5ポイント下がりました。2020年9月の価格指数は、コロナが拡大する前の2019年11月よりも低い状況です。

タイでは、コンドミニアムの価格は、これまで上下動を繰り返しながら長期的に上昇してきました。2019年4月〜10月の間は、価格指数が170台で推移していましたが、11月〜2020年1月の間に大幅上昇しています。

コロナの影響で長期的な値下がりに入るのか、2021年は再び価格が回復するのか、今後の価格動向に注意しましょう。

2.プーケットの不動産マーケットについて

プーケットについて、Colliers Internationalが2020年上半期のレポート「1H 2020 Phuket Condominium Market」を発表しています。こちらのレポートをもとに、プーケットの不動産マーケットについて詳しく見て行きましょう。

2-1.プーケットの不動産価格

同レポートによると、2020年上半期にプーケットで最も売れたコンドミニアムは、THB100万〜THB300万の価格帯でした。㎡単価で見ると、THB80,000〜THB130,000のコンドミニアムが購入されています。

THB1=3.5円で換算すると、㎡単価は280,000円〜455,000円となります。なお、日本の不動産価格と比較すると、プーケットのコンドミニアム価格は、千葉県・埼玉県の中古マンション平均価格と同程度の水準であると言えます。(2020年12月時点)

2-2.プーケットの不動産販売状況

プーケットでは2020年上半期に販売されていた約19,000戸のうち約13,800戸が売れたため、約72%のユニットが売れた計算になります。また、マーケットには、約5,200戸のユニットが残っている状況です。

2-3.2020年下半期の見通し

プーケットの不動産市場は、中国人投資家に支えられている側面があります。しかし、2020年上半期はコロナウイルスの感染拡大によって中国人がタイに入国できず、中国人訪問者数の減少に伴って、プーケットでは物件供給数が鈍っています。

結果的に、2020年上半期のプーケットにおける供給戸数は833戸に留まりました。Colliers Internationalは、プーケットでは2020年下半期に新たなコンドミニアムが供給されないと予測しています。

3.タイの物件供給状況について

プーケットでは物件供給にコロナの影響が出ていますが、他の都市では物件供給状況にコロナの影響が出ているのか、データで確認していきます。

3-1.バンコクのコンドミニアム供給状況

以下の表は、バンコクにおける2019年以降のコンドミニアム・アパートメント供給数推移です。

バンコクのコンドミニアム供給状況※参照:Bank of Thailand「Property Indicators

2020年は、特に3月〜4月の間に供給戸数が減っています。2020年の春は、世界中でコロナの感染が拡大したため、その影響が出たものと考えられます。

2019年の供給戸数を見ると、8月〜10月に多数の住宅が供給されており、2020年も夏の時期に供給戸数が増えました。ただし、2020年6月に供給戸数が増えたのは、それまでの間に供給が抑制されていた反動とも考えられます。

また、2020年7月〜8月の供給戸数は、2019年の同時期と比較すると少ないことが分かります。

3-2.建築許可数の推移

コロナを経て、タイでは今後物件供給が減るのかどうかを確認するため、建築許可数の推移を見てみます。

建築許可数の推移※参照:Bank of Thailand「Property Indicators

住宅建築許可数の推移については、2019年と2020年とで大きな差がついていません。2019年の月間平均が7,364件であったのに対し、2020年の月間平均は7,471件です。建築許可数に大きな変化がないため、住宅の供給戸数は今後も維持されると予想されます。

建築許可数に変化がない状況を見ると、タイ不動産の物件価格は今後上がっていくことも考えられるでしょう。土地が値上がりしており、金利が引き下げられているためです。

タイの土地は2019年末から値上がり傾向にあり、土地の値上がりは不動産業者の開発コスト上昇につながります。今後、上昇した開発コストが不動産価格に転嫁される可能性もあるでしょう。

また、住宅供給数は変わらないことが予測される一方で、長期金利の引き下げに伴い、住宅ローン金利も引き下げられていることが住宅需要を下支えしていると考えられます。

まとめ

タイ全体では、コロナの前後で不動産価格が暴落するなどのことは起きていません。しかし、不動産種別に見ると、土地が値上がりしている一方で、コンドミニアムは値下がりしています。

また、プーケットなど外国人が不動産需要を支えているエリアでは、供給戸数が減少している状況です。物件の供給状況は都市によって異なり、バンコクでは供給戸数が減っているものの、物件供給は継続されると予想されます。

そのほか、住宅の建築許可数を見ると、2019年と2020年とで大きな変化は見られません。しかし、土地の値上がりと金利引き下げに伴う住宅需要の増加をみると、今後タイ不動産の値上がりや、金利引き上げによる不動産価格の下落の可能性があります。引き続きタイの動向に注意していくことが重要と言えるでしょう。

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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム

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