コロナショックが海外不動産に与えた影響は?不動産価格や金利の変化を検証

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2019年末〜2020年にかけて、コロナウイルスは世界的な広がりを見せています。また、世界中の都市で都市封鎖が行われるなど、コロナウイルスは産業にも大きな影響を与えています。

世界的に景気が後退すると予測されている中で、「コロナショック」は世界の不動産マーケットにどのような影響を与えているのでしょうか。

この記事では、海外各国の不動産マーケットの動きを追っていきます。

※本記事でご紹介している住宅価格指数、金利の数値は全て2020年7月時点のデータを参照しています。

目次

  1. 世界各国の不動産市場
    1-1.日本の住宅価格と金利の推移
    1-2.アメリカの住宅価格と金利の推移
    1-3.ハワイの住宅価格推移
    1-4.タイの住宅価格と金利の推移
    1-5.マレーシアの住宅価格と金利の推移
    1-6.フィリピンの住宅価格と金利の推移
  2. 海外不動産投資に対する直接的な影響とは
  3. まとめ

1.世界各国の不動産市場

日本を含む東南アジアとアメリカの不動産マーケット・金利について、コロナショックがどのような影響を与えたのか、その動きを解説します。

1-1.日本の住宅価格と金利の推移

東日本不動産流通機構が発表している「月例速報 2020(令和2)年05月度」のレポートによると、首都圏の中古マンション㎡単価は、2019年11月以降、3万円程度下がっています。

2020年5月の中古マンション㎡単価は52.03万円です。2020年2月から4月までは下落を続けていましたが、5月は前月比で2.3%上がっています。

また、2019年5月期と比較すると0.4%の価格上昇となっており、コロナショックによる大幅な変化は見受けられません。

一方、成約件数は2020年3月から4月の間にほぼ半減しています。値動きには大きな動きがない一方で、成約件数は大幅な減少となりました。

一方、長期金利の目安とされる10年国債の金利は、2019年12月以降 -0.039% 〜 0.018%とほぼ横ばいです。日銀がマイナス金利政策を継続すると表明していることもあり、大きな動きは2020年7月時点では見られていません。(財務省「国債金利情報」を参照)

1-2.アメリカの住宅価格と金利の推移

アメリカの不動産ポータルサイトRedfinが発表しているマーケットレポートによると、アメリカ全体の住宅価格は、コロナショックの前後でそれほど変化がありませんでした。

2019年11月時点の住宅販売価格中央値は$294,205で、2020年6月時点では$311,254となっています。2020年6月の販売価格は、前年比で2.8%増加しています。(Redfin「Housing Market Overview」を参照)

また、同じくRedfinが発表したレポートによると、7月初頭の消費者による住宅の購買意欲は、コロナショック以前の水準を上回りました。同レポートでは、住宅ローン金利が記録的な低さになっていることが原因と分析しています。

アメリカの長期金利は、時間の経過とともに引き下げられています。アメリカ財務省「U.S. Department of the treasury」のデータを確認すると、2019年12月初頭の時点では、日次長期金利は2.21%でした。

2020年1月中旬までは横ばいで推移していましたが、1月後半から下落しています2020年7月1日時点の長期金利は1.27%で、約半年の間に1%下がりました。

1-3.ハワイの住宅価格推移

ホノルルの不動産協会(Honolulu Board of REALTORS)が発表しているデータを参照すると、ハワイの住宅価格もコロナショックの前後で横ばいとなっています。

※Honolulu Board of REALTORS「Hi Central.com」を参照して筆者作成

細かな上下動はあるものの、戸建住宅は$770,000〜$820,000、コンドミニアムは$399,000〜$450,000の間で推移しています。こちらもコロナショックの影響によって大きく価格が下がっているという動きは見受けられません。

1-4.タイの住宅価格と金利の推移

タイの大手新聞バンコクポストによると、タイの住宅価格は、2020年末までに前年比で2.4%下がると予測されています。

特に、タイの首都バンコクでは4.9%減と、予測減少幅は国内でも最大です。一方で、南のリゾート地プーケットでは1.7%増進すると予測しています。

なお、同紙は2021年の不動産価格についても予測をしており、2021年末には、全国的に不動産価格が回復するとみています。しかしながら、住宅の賃料については、多くのエリアで下落を続けると予測しています。

また、金利については、今年初頭時点で約0.845%でしたが、7月1日時点で約0.493%まで下がりました。なお、6月時点で約0.491%まで下がっているので、1ヶ月程度は同じ水準で推移していることがわかります。(Bank of Thailand「Thai Overnight Repurchase Rate」を参照)

1-5.マレーシアの住宅価格と金利の推移

アジアを中心としてネットワークを展開している不動産業者PropertyGuruが発表しているレポートによると、マレーシアの不動産価格指数は、年々緩やかに減少しています。

2016年第4四半期を100とした2020年第1四半期の不動産価格指数は、89.46です。2019年第4四半期は88.9でした。

マレーシアの不動産価格指数は、年々細かな上下動を繰り返しながら緩やかな減少を続けており、2020年第1四半期もその流れに乗っているものとみられます。(PropertyGuru「Malaysia Property Market Index Q2 2020」を参照)

長期金利は2019年11月時点で3.00%でしたが、2020年1月以降段階的に引き下げられています。直近では、2020年7月7日に2.00%から1.75%へ引き下げられることが決定されました。

マレーシアの長期金利は2011年以降2019年末までの間において3.00%〜3.25%の間で推移していました。2020年に入ってから大幅に下がっていることが分かります。(Bank Negara Malaysia「OPR DECISION & STATEMENT」を参照)

1-6.フィリピンの住宅価格と金利の推移

国際的に不動産事業を展開している不動産業者のCushman & Wakefieldが発表した「PHILIPPINE PROPERTY MARKET NEWS (JUNE 2020)」によると、フィリピンの2020年第1四半期住宅価格指数は、2019年後半と比較して横ばいの状態です。

デュープレックス(二世帯住宅)は価格指数を下げていますが、日本からの投資でメインとなるコンドミニアムについては、2019年第4四半期から価格指数を上げています。

一方で、フィリピンの不動産業界でコロナショックの影響を受けているのは、工場・倉庫・店舗などで、これらは空室率が大幅に上がっています。フィリピンの不動産業界では、主に法人向けの分野でコロナショックの影響が表出しているといえるでしょう。

また、フィリピンの中央銀行が設定している預金金利は、2019年は3%台後半〜4%台で推移していましたが、2020年3月以降は2%〜3%台まで下がっています。(BANGKO SENTRAL NG PILIPINAS「Monetary Policy Decisions」を参照)

2.海外不動産投資に対する直接的な影響とは

ここまで、各国の不動産マーケットや金利の動きについて解説してきました。

一方で、コロナショックは海外不動産投資に対し物件の現地確認ができないという影響を与えています。

2020年7月現在、多くの国ではビジネス上の必要な目的がある場合を除き、日本人の入国を認められていないケースが多くなっています。このような状況下で個人の投資家が投資物件の現地確認という目的で海外渡航できるかは不透明な状況と言えます。

自分自身で現地に行くことが難しい状況であるため、購入希望の物件を見つけても現地調査ができず、購入までのハードルが上がっている状況であると考えられます。

一方、海外渡航の難しい状況であるからこそ、信頼できる現地の不動産エージェントから協力を得ることの重要性は上がっているとも言えるでしょう。

まとめ

今回紹介した海外の各国では、コロナショックによって住宅価格が大幅に下がっている様子はあまり見受けられません。

その一方で、金利はどの国も下がっています。長期金利の引き下げは、住宅ローン金利の引き下げにもつながるため、アメリカでは消費者による住宅購買意欲は増している分析結果も見受けられます。

世界的な傾向として長期金利は引き下げられており、現状、金利の引き下げは住宅市場を下支えする一助を担っているともいえるでしょう。

2020年7月現在、多くの国で、第1波に対する対策は一段落した状態となっています。ただ、感染症対策のやり方や進み具合などは国によって様々です。

また、トランプ政権下のアメリカがWHO脱退を表明したり、南米では特に感染が大きく広がったりなど、今後の不確定要素は多いと言えます。

今後、第2波・第3波と感染者数の増加が起きたとき、不動産価格がこれまで通りの水準を維持できるかはまだ不透明と考えられるでしょう。

海外不動産投資を検討するためには、各国の情報収集を続け、今後も状況に合わせて投資判断をしていくことが大切です。

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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム

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