建ぺい率・容積率オーバーの物件は売却できる?手順や注意点を解説

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物件の売却を不動産会社に依頼する際、「建ぺい率や容積率がオーバーしているから買い手を見つけるのが難しい」と言われることがあります。このように適正な基準から外れている物件は、そのままでは売却できない場合もあるので、違反内容や売却手順について確認しておくことが大切です。

そこでこの記事では、建ぺい率・容積率オーバーの物件を売却する方法や手順、注意点について詳しく解説していきます。建ぺい率や容積率について詳しく知りたい方、このような物件の売却で悩んでいる方は、ご参考ください。

目次

  1. 建ぺい率・容積率とは
  2. 建ぺい率・容積率オーバーの物件は売却できる?
    2-1.既存不適格物件の場合
    2-2.違反建築物の場合
    2-2.売却可能なのはどっち?
  3. 建ぺい率・容積率オーバーの物件を売却する方法
    3-1.建ぺい率・容積率を現行法の制限割合の範囲内にしてから売却する
    3-2.物件の売却方法を工夫する
    3-3.買取業者を利用する
  4. 建ぺい・容積率オーバーの物件を売却する際の注意点
    4-1.建物の建ぺい率・容積率を確認する
    4-2.買主側に告知する
  5. まとめ

1.建ぺい率・容積率とは

建ぺい率とは、都市計画法によって定めにしたがって地域ごとに定められている敷地面積に対する建物を建てられる面積の割合のことです。例えば、敷地面積が100㎡で建ぺい率の設定割合が50%の場合、敷地上に建物を建てられる面積は50㎡以内になります。

建ぺい率の範囲内で敷地上に建物を建てられる面積のことを「建築面積」と言います。建築面積とは、建築基準法上、「外壁または柱の中心線で囲まれた部分の水平投影面積」と定義されています。具体的には、建物を真上から見たときに敷地が隠れる部分のことです。

建ぺい率は、建築可能な部分を制限して、敷地の空間を最低限確保する目的で設けられています。人々が居住する住宅の多い住居専用地域では、敷地の空間を確保する必要性が高いことから、建ぺい率の割合も低く設定されています。地域によって建ぺい率の割合は異なりますが、通常30~60%の範囲内で設けられています。

これに対して、駅前などの商業地域では、敷地の空間よりも建物内のスペースの広さが重視されるため、建ぺい率の割合も80%と高くなっています。

一方、容積率とは、建物の総床面積の敷地面積に対する割合のことです。例えば、敷地面積が100㎡で容積率の設定割合が300%の場合、敷地上に建てられる建物の総床面積は300㎡以内になります。

容積率の規制は、建物の上部の空間を確保する目的で設けられています。容積率によって建てられる建物の総床面積が制限されると、高い建物を建てるのが難しくなります。仮に容積率の割合の範囲内で高い建物を建てる場合でも、各階の床面積が小さくなるため、そのぶん上部の空間が確保されます。

容積率も建ぺい率と同様、住居専用地域のほうが商業地域よりもその割合が低く設定されています。住居専用地域の場合は、最大400%であるのに対し、商業地域では最大1000%となっています。また、低層の住居専用地域においては、最大200%です。

2.建ぺい率・容積率オーバーの物件は売却できる?

建ぺい率・容積率オーバーの物件を売却できるか否かは、物件の種類によって異なります。主に「既存不適格物件」と「違反建築物」の2種類があるので、それぞれ具体的に見ていきましょう。

2-1.既存不適格物件の場合

既存不適格物件とは、建築された当時は適法でも、法改正の影響で現行法の基準を満たさなくなった建物のことです。建築後、法改正によって建ぺい率・容積率の制限が厳しくなった場合、その基準の範囲外となって既存不適格物件となることがあります。

例えば、建物所在地の用途地域の変更により、建ぺい率・容積率の制限割合も変更になり、その影響で既存不適格物件になることがあります。また、都市計画事業による収容で敷地面積が少なくなった結果、建ぺい率・容積率オーバーが生じて既存不適合物件になるケースもあります。

既存不適格物件は適法な建築物と扱われるため、そのまま使用を続けることが可能です。現行法の建ぺい率・容積率の制限割合に反していることを理由として、行政側から指導を受けることもありません。

ただし、再築や増改築をする際には、現行法の建ぺい率・容積率の制限割合に適合させる必要があります。

2-2.違反建築物の場合

違反建築物とは、建築された当時の建ぺい・容積率の制限割合に反して建てられた建物のことです。建築時の法令に反して建てられた違反建築物は、既存不適格物件と異なり、違法な建築物と扱われます。

そのため、違反建築物はそのままの状態で使用することができません。仮に、そのままの状態で使用すると行政側から指導を受けることになります。

2-3.売却可能なのはどっち?

既存不適格物件は、現行法での建ぺい率・容積率の制限割合には反しているものの、法律上では適法な建築物として扱われます。適法な建築物であれば、他の方へ売却すること自体に法律上支障はありません。そのため、既存不適格物件であれば基本的に売却可能です。

ただし、既存不適格物件でも、建築違反の無い物件と比較して売却しにくい面もあります。例えば、不適格物件の購入目的で不動産ローン利用の申込みをしても、通常より金融機関の審査通過が難しくなります。

また、購入後に建物の建て替えをする場合、現行法の建ぺい率・容積率の制限割合の範囲内で建物を建てなければなりません。

このほか、適法な建築物であっても、現行法上の建ぺい率・容積率をオーバーしていること自体に買主が不安を感じる場合もあります。

また、違反建築物は、法令に反して建てられた建物であるため、既存不適格物件以上に売却するのは難しくなります。違反建築物の所有者に対して、行政側から是正の指導がなされるため、その対象は違反建築物を購入した新所有者に対しても及びます。

違反建築物を購入すること自体にリスクが伴うため、購入検討する買主は少なく、違反建築物の売却は難しいのが現状です。

3.建ぺい率・容積率オーバーの物件を売却する方法

建ぺい率・容積率オーバーの物件の売却は、手順に沿って手続きを進めていきます。建ぺい・容積率オーバーの物件の具体的な売却手順は、以下の通りです。

3-1.建ぺい率・容積率を現行法の制限割合の範囲内にしてから売却する

建ぺい率や容積率をオーバーした物件は、現行法の基準を満たしていないためにの売却が難しくなります。そのため、物件の建ぺい率・容積率を現行法の制限割合の範囲内にしておけば、売却できる可能性が高まります。

具体的な方法を見ていきましょう。

リフォームによる減築

リフォームによる減築を行うと、物件の建ぺい率・容積率を現行法の制限割合の範囲内にできる場合もあります。

建物の一部を撤去することで建築面積を減らせるため、それによって建ぺい率の割合も下がり、現行法の制限割合の範囲内に収まります。また、建物内の床の一部を撤去することで総床面積を減らせるため、容積率の制限割合オーバーも解消することが可能です。

隣地の買取

建築面積や総床面積を減らすのではなく、敷地面積を増やすことで、物件の建ぺい率・容積率を現行法の制限割合の範囲内にすることも可能です。

物件所在地の隣人の土地を買い取ることができれば、敷地面積を増やせます。敷地面積が増えると物件の建ぺい率・容積率の割合が下がります。その結果、物件の建ぺい率・容積率を現行法の制限割合の範囲内にできるケースもあります。

3-2.物件の売却方法を工夫する

リフォームによる減築や隣地の買取ができない場合、方法を工夫しながら物件の売却手続きを進めることも可能です。

古家付土地として売却

建ぺい率・容積率オーバーの物件を古家付土地として売却すると、処分できる場合があります。古家付土地とは、経済的な価値がほぼ皆無である建物が建っている土地のことを指しています。

買主は更地を取得する目的で古家付土地を購入することがあります。買主が古家付土地を購入後、敷地上に建っている建物は通常解体されます。古家付土地を購入する買主側にとって、敷地上に建っている建物が建ぺい・容積率オーバーの物件であるか否かは、特に影響がありません。

そのようなことから、建ぺい率・容積率オーバーの物件を古家付土地として売却に出すと、通常の方法で売却に出すよりも買い手が見つかりやすくなります。

物件のメリットをアピールする

建ぺい率・容積率オーバーの物件は、その状況が現行法の制限割合を満たしていないことから、買主側にネガティブな印象を持たれるケースもあります。

そこで、物件のメリットを的確にアピールすることで売却につながるケースもあります。建ぺい率・容積率の割合が現行法の制限を超えていれば、その分建築面積や総床面積が大きいため、他の物件より部屋が広い場合もあります。

部屋の広さを強調することで、物件の魅力が購入希望者に対して伝わりやすくなります。その結果、部屋の広い物件の購入希望者に対して売却できる可能性も出てきます。

物件価格を周辺相場よりも引き下げる

金融機関の融資審査に通過できないことが問題となるのであれば、現金購入が検討できる価格帯まで物件価格を下げたり、投資用物件であれば周辺相場よりも高い利回り設定をすることで売却に至るケースがあります。

このように、買主側の購入目的や物件の特徴によっては、価格交渉次第で売却につながる可能性があります。

3-3.買取業者を利用する

建ぺい率・容積率を現行法の制限割合の範囲内にしたり、売却方法を工夫したりしても、物件の状況や住宅ローンの問題で個人への売却が困難なケースもあります。このような場合は、買取業者への売却を検討します。

買取業者は、仕入れた土地上の建物を解体後、新築した物件を販売する事業を行なっています。そのため、買取業者であれば、建ぺい率・容積率オーバーの物件の売却にも応じてくれることがあります。

買取業者は物件を仕入れる場合、現金一括で買取することも少なくありません。また、買取業者へ売却する場合、売主の契約不適合責任は免責になる点もメリットと言えます。

ただし、買取は不動産業者の利益確保のため仲介による売却相場から2~3割程度安くなる傾向にあります。時間をかけてもできるだけ高く売却したい場合は不向きな手段となる点に注意しましょう。

【関連記事】不動産売却、買取相場を知る方法は?売却価格の調べ方や仲介との比較も

4.建ぺい率・容積率オーバーの物件を売却する際の注意点

建ぺい率・容積率オーバーの物件を売却する際、どのような点に注意すればいいのかを具体的に見ていきましょう。

4-1.建物の建ぺい率・容積率を確認する

物件を売却する際、現時点で建ぺい率や容積率がオーバーとなっていないかを確認しておくことが大切です。建ぺい・容積率の再調査をしてみると、現行法の制限割合の範囲内に収まっているケースもあるためです。

過去の測量技術の問題

過去の測量技術の問題で、現時点ほど精密な測量がなされていない場合があります。そのため、建ぺい・容積率が現行法の制限割合より若干オーバーしている場合、再調査をしてみるとその範囲内に収まる可能性もあります。

建ぺい・容積率の算出基準の誤認識

建ぺい・容積率の算出基準となる建築面積や総床面積に対する認識の誤りが生じている場合もあります。

出窓やバルコニーは、一定の条件を満たした場合、建築面積から外すことが可能です。しかし、建築面積から外せる出窓やバルコニーも含めた形で算出した結果、建ぺい率がオーバーとなる場合もあります。このような時は再調査をすることで建ぺい率オーバーの状態が解消されることもあります。

また、容積率を算出する際の総床面積から除外可能な部分まで含めて計算されているケースでは、再調査をして、総床面積を計算しなおすと、容積率が現行法の制限割合の範囲内になることもあります。

用途地域ごとの上限などの見直し

用途地域ごとに建ぺい・容積率の上限が定められており、定期的に見直しが行なわれています。見直しにより上限緩和されたことが原因で、建ぺい・容積率オーバーの状態が解消される可能性もあります。

4-2.買主側に告知する

建ぺい率・容積率オーバーの物件を売却する際、その旨を買主側に告知する義務があります。

建ぺい・容積率オーバーの物件であることを知られると、買主に購入してもらえないという理由で告知義務に反して売却すると、買主から契約を解除されるだけでなく、買主から損害賠償を請求される可能性もあるため注意が必要です。

まとめ

建ぺい率や容積率オーバーの物件のうち、違反建築物は法律に違反している状態の物件であるため、基本的に売却不可となります。

一方、適法建築物である既存不適格物件は売却できますが、通常の物件より売却しにくい場合もあります。そのため、建ぺい率や容積率オーバーをオーバーした物件を売却する際は、現行法の範囲内に収めるか、買取業者に依頼するなどの様々な工夫が必要になります。また、買主にその旨をしっかりと告知することも大切なポイントです。

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