コロナの長期化によって先行き不透明感が強まる中では、投資用不動産の値動きは今後どうなるのか、投資用不動産を購入するのは見送った方が良いのか、悩む人も多いのではないでしょうか。
この記事では、リーマンショックが起きたときの値動きとコロナ禍の値動きを比較し、今後は投資用不動産がどのように値動きするか考察します。
目次
1.不動産投資はリーマンショック後にどうなった?
リーマンショックの発端となったリーマンブラザーズの破綻は、2008年9月15日に発生しました。リーマンショック後に日本の投資用不動産はどのような値動きを見せたのか、「不動産投資と収益物件の情報サイト健美家(けんびや)」が発表しているレポートから分析します。
リーマンショックが発生した2008年から翌年の2009年における首都圏の投資用区分マンションの値動きを見てみると、リーマンショックが発生した2008年9月の時点では、前月と比較して1割以上価格が落ちています。翌月である2008年10月には、8月~9月の動きに反発する形で値上がりが起きており、年末には再び値下がりしました。(※参照:不動産投資の収益物件検索サイト 健美家「首都圏 不動産投資用物件 市場動向レポート 2009」)
2009年1月には700万円台を回復しますが、その後は700万円台まで下がると反発する形で値上がりし、値上がりした状態が2~3ヶ月続くと再び700万円台まで値下がりする動きを繰り返しています。(※参照:不動産投資の収益物件検索サイト 健美家「首都圏 不動産投資用物件 市場動向レポート 2010」)
リーマンショックが発生した直後は600万円台が底だったものの、2009年以降は700万円台が底となっている点が2008年と2009年の違いです。しかし、一定以上の値下がりと値上がりを繰り返している様子は、リーマンショックによる景気の低迷とそれほど相関性が無いようにも見えます。リーマンショックの影響により値動きが起きているというより、値下がりによる反発と値上がりによる反発を繰り返しているようにも判断できるでしょう。
2009年9月以降は反発値上がりの動きが小さく、これは日本で民主党による政権交代が起きた時期と重なっています。リーマンショックの影響がないとは言い切れないものの、政権交代による経済の先行き不透明感などが投資用不動産の値動きにも表れた可能性もあるでしょう。
2.コロナ禍における投資用不動産の値動き
2-1.2019年12月以降の値動きについて
続いて、コロナ禍において投資用不動産はどのように値動きしたのか、こちらも「不動産投資と収益物件の情報サイト健美家」が発表しているレポートから分析します。なお、日本で最初のコロナ感染者が確認されたのは2020年1月15日です。
2019年12月以降の首都圏における投資用区分マンションの値動きは以下グラフの通りです。なお、こちらは四半期ごと発行のレポートを参照しています。
リーマンショック後の値動きグラフと合わせるために、こちらのグラフも問い合せ価格の推移としています。
まず、リーマンショック後は投資用マンションの価格が600万円台から1,000万円前後だったところ、コロナ後の価格は1,100万円を超えている点が特徴的です。
続いて値動きについてですが、2020年4月に全国で緊急事態宣言が発令され、人々の外出が制限されたことから様々な産業が影響を受けました。2020年4月~6月期は3月までと比較してほとんど値動きが無かったものの、7月~9月期は値下がりが起きています。
そして、2020年10月~12月期は7月~9月期の値下がりに反発する形で値上がりしました。その後は再び値下がりと値上がりを繰り返しています。
1度値下がりが起こるとその後値上がりに転じるという動き方は、コロナ禍においてもリーマンショック後においても変わりがありません。
リーマンショックの時は、リーマンブラザーズが経営破綻した2008年9月こそ値下がりが起きたものの、その後は政権交代が起こるまで政治経済の動きと連動した値下がりはなかった、という見方もできるでしょう。
コロナ禍においても、緊急事態宣言に伴う外出制限があった2020年春以降、夏には値下がりが起きました。しかし、その後の値動きには、経済の動きよりも市場原理の方が強く働いていると言えるでしょう。
2-2.今後も値上がりすると考えている投資家は多い
健美家は2022年10月から11月にかけて投資家向けに行ったアンケート結果を発表しています。アンケート結果によると、1年前と比較して投資用不動産は値上がりしていると感じている人が多数を占めていました。(※参照:不動産投資と収益物件の情報サイト健美家「第18回不動産投資に関する意識調査」)
投資用区分マンション価格の推移を見ると、2021年10月~12月期の価格は1,229万円であったのに対し、2022年7月~9月期の価格は1,382万円です。アンケートに回答した方の感覚は実態に即していると言えます。2021年の底値は4月から6月の1,114万円であったのに対し、2021年の最高値は10月から12月の1,338万円です。
なお、アンケートでは物件価格が上昇する理由として「建築費や資材価格の高騰」を挙げる人が多数を占めました。景気の悪化やコロナが現在でも投資用不動産の値動きに影響を与えていると考える人は少ないことが伺えます。
また、「投資用不動産の価格は1年後、どうなると思いますか?」という問いに対しても、今後価格は上昇すると考えている投資家が半数以上を占める結果となっています。
価格は上昇すると答えた人と変動しないと答えた人を合わせると回答者の80%以上にのぼっており、今後値下がりが起こると考えている人は少数派です。今後値上がりすると答えた人にその理由を問う設問に対しては、こちらも建設費や資材費の高騰を挙げる人が多数を占めました。
実際に不動産投資をしている投資家の肌感覚として、投資用不動産の値動きに影響を与えているのはコロナ禍による経済停滞や将来不安という観点よりも、建設費・資材費の動向であると考える人が多くいることが分かります。
まとめ
投資用不動産についてリーマンショック後とコロナ禍の値動きを比較すると、リーマンブラザーズの破綻や政権交代に加えて緊急事態宣言などのインパクトが大きい出来事が起きたときには、投資用不動産の価格は影響を受けることがわかります。
しかし、インパクトの大きな出来事がないときには、値上がりと値下がりを繰り返すという市場原理に基づいて値動きする傾向が強いと言えるでしょう。
また、コロナ禍の不動産投資においては、投資用不動産の価格に影響を与えているのはコロナよりも建築費や資材費の動向であると考えている投資家が多くなっています。建築費と資材費は投資用不動産を供給する不動産会社の原価に影響します。
不動産価格は様々な要因によって価格変動が起きているため、リーマンショックやコロナ禍などの一つの事象が決まって同様の影響を与えるというケースは非常に稀であると言えます。ただし、金融機関の貸出金利や建築・資材費など、不動産価格に直接的に関係の深い指標への影響がでることもあるため、このような指標にも注意して、投資判断を行っていくと良いでしょう。
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HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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