海外不動産投資を検討している方の中には、投資先の国としてベトナムに注目している方も少なくないのではないでしょうか。
ベトナム不動産投資の魅力には、経済成長と人口増加に伴う将来性が挙げられます。一方、外国人投資家に対する規制などが気をつけるべき点としてあげられるでしょう。
この記事では、ベトナム不動産投資のメリット・デメリットや投資を始める手順について解説します。
目次
- ベトナム不動産投資のメリット
1-1.高い経済成長率
1-2.人口増加率と平均年齢の低さ
1-3.ベトナムは不動産価格が安い
1-4.運用コストが比較的低い
1-5.通貨よりも現物資産が評価される傾向にある
1-6.建物の所有権と土地の使用権とをセットで購入できる - ベトナム不動産投資のデメリット
2-1.外国人に対する規制が厳しい
2-2.規制が突然変わる可能性もある
2-3.通貨の持ち出しに制限がある
2-4.原則として中古物件を購入できない - ベトナム不動産投資の手順
3-1.投資目的を決める
3-2.物件を選ぶ
3-3.契約手続き
3-4.賃貸運用を開始 - まとめ
1.ベトナム不動産投資のメリット
ベトナム不動産投資の最大のメリットは、上向きな経済と人口増加による不動産需要の高まりにあります。また、物価が安いために賃貸運用のコストが低く、実質利回りを得やすい環境であると言えます。
1-1.高い経済成長率
外務省のベトナムの基礎データによると、2018年時点の経済成長率は7.08%です。なお、同じ東南アジアの各国では以下のようになっています。
ベトナム | フィリピン | タイ | マレーシア | 日本 |
---|---|---|---|---|
7.08% | 6.2% | 4.1% | 5.9% | 0.8% |
※参考:外務省
周辺の国と比較してもベトナムの経済成長率は高いことがわかります。経済成長率はその国の全体的な景気に関係があり、経済成長率が高い国では不動産の値上がりに期待できます。
なお、経済の発展によってベトナムの平均所得が上がれば、家賃の値上がりも期待できるでしょう。
1-2.人口増加率と平均年齢の低さ
ベトナムでは経済の成長とともに人口も増加しています。2018年時点の人口増加率は1.0%で、東南アジアの中でも高めの数値となっています。人口の増加は不動産需要の増加に影響するため、ベトナム不動産は賃貸収入と不動産の値上がり益が得られる可能性があると言えます。
東南アジア各国の人口増加率
ベトナム | フィリピン | タイ | マレーシア | 日本 |
---|---|---|---|---|
1.0% | 1.4% | 0.3% | 1.4% | -0.2% |
※参考:世界銀行
また、2015年時点でベトナムの平均年齢は30.5歳です。日本では同時期の平均年齢が46.4歳であるのと比較して、ベトナムの平均年齢は15歳ほどの差があるということになります。なお、周辺の国との比較は以下の通りです。
東南アジア各国における2018年時点の平均年齢
ベトナム | フィリピン | タイ | マレーシア | 日本 |
---|---|---|---|---|
30.5歳 | 24.1歳 | 37.9歳 | 28.2歳 | 46.4歳 |
※参考:statista
平均年齢が低いと総人口に対する労働人口の割合が多くなり、また労働人口の多さは賃貸需要の高さにつながります。エリアや物件選びを間違えなければ、ベトナムでは将来的な賃貸収入を狙える可能性があると言えます。
1-3.ベトナムは不動産価格が安い
一般社団法人 日本不動産研究所が発行している「国際不動産価格賃料指数(2019年10月現在)」によると、ベトナム・ホーチミンの不動産価格指数は、東京の約10%です。なお、マレーシアの首都クアラルンプールが東京の20%強で、タイの首都バンコクは東京の30%弱となっています。
すでに多くの日本人投資家が投資しているクアラルンプールやバンコクよりもまだ不動産価格が安いことが分かります。
1-4.運用コストが比較的低い
ベトナムでは日本と比較して物価が低く、不動産投資の運用コストも低くなる傾向があります。また、日本やアメリカでは発生する不動産の固定資産税が現状では課税されません。
そのほか、火災保険についても加入義務の有無が物件により異なり、物件によっては未加入でも購入できる場合もあります。ただし、災害リスクを考えると火災保険には加入しておくのが良いでしょう。
1-5.通貨よりも現物資産が評価される傾向にある
不動産投資における出口戦略(物件の売却戦略)は、海外不動産では重要なポイントの一つです。そのためベトナム不動産の高い流動性は大きなメリットの一つと言えます。
日本からベトナムに不動産投資するとなると、不動産価格の安さから現地では高級とされる物件に投資することも多いでしょう。高額な物件は購入者が限られてしまうため、出口で売れにくいことも多くなります。しかし、ベトナムは通貨の信用力が日本円と比較して高くなく、現地の富裕層が現金よりも現物資産を好む傾向にあります。
現物資産である不動産は現地富裕層の投資対象となるため、投資の出口で物件売却する相手の間口が広がりやすくなります。このように、物件売却できる見込みが高いことは大きなメリットの1つとなるでしょう。
1-6.建物の所有権と土地の使用権とをセットで購入できる
海外の中には、外国人による土地の保有を認めていない国も多くありますが、ベトナムでは期限付きであるものの土地も含めた外国人の不動産所有を認めています。
外国人は土地を含めた不動産を50年間所有でき、1回までなら所有権を更新可能です。つまり、外国人も合計で100年間不動産を保有することが可能になっています。
2.ベトナム不動産投資のデメリット
一方、ベトナム不動産投資のデメリットについて見て行きましょう。主なデメリットは外国人に対する規制に関係するものです。
2-1.外国人に対する規制が厳しい
社会主義国家であるベトナムでは、日本と比較して公権力が強く、外国人への規制が厳しい傾向があります。後述する通貨の持ち出しを含め、ベトナムの外国人に対する規制は少なくありません。
2-2.規制が突然変わる可能性もある
ベトナムなどの発展途上国では、外国人の不動産所有に関する規制が突然変わる可能性があります。
例えばマレーシアでは、外国人は100万RM(=約2,700万円)以下の不動産を買えなくするという規制が突然設けられました。
これは、中国をはじめとした海外からの投資マネーが大量に流れ込み、海外からの投資マネーを当て込んだ不動産の乱開発が進んだ結果、不動産の売れ残りが社会問題となったため、規制が変更されたと考えられています。
不動産投資先として海外からの注目を集めた結果、ベトナムでも急な規制変更が起こる可能性はあります。ベトナムで投資するのならば、可能な限り現地の事情に詳しい不動産業者から情報を収集しましょう。
2-3.通貨の持ち出しに制限がある
ベトナムでは通貨の海外持ち出しに関する規制が厳格です。賃貸運用や物件の転売で利益が出たとしても、利益の全額を日本に送金できない可能性がある点に注意しましょう。
投資して得た利益はベトナム国内での再投資に充てるか、もしくは移住したときの生活費として使うようにするなどの対策が必要です。
2-4.原則として中古物件を購入できない
ベトナムでは、原則として外国人は中古物件を購入できません。ただし、すでに外国人が所有している物件を、別の外国人が中古物件として購入することは可能です。
この場合、不動産の所有権に関する期間の制限については、前所有者からの引き継ぎという形になります。つまり、中古物件を購入した場合は、新たに50年がスタートするわけではないので注意しましょう。
3.ベトナム不動産投資の手順
次に、ベトナムで不動産投資するための手順について解説します。
3-1.不動産投資の目的を決める
ベトナム不動産投資に限らず、まずは投資目的を定めることが大切です。不動産投資の主なメリットは、家賃収入(インカムゲイン)と、不動産の値上がりによる転売益(キャピタルゲイン)の2つの収益を得られる点にあります。
ベトナム不動産投資は、上述した人口増加率と経済成長率からインカムゲインとキャピタルゲインのどちらも狙える可能性があります。しかし、都市の中でどのエリアに投資するか、どの物件を購入するのか、慎重にシミュレーションをして検討していくことが重要です。
3-2.不動産投資をする物件を選ぶ
継続的な家賃収入を狙うのであれば、日本人駐在員が多いエリアなどを選ぶとよいでしょう。現地のベトナム人よりも日本人駐在員が入居するほうが、日本法人が支払い主になり家賃の滞納リスクが低くなるためです。
また、転売益を優先したいのであれば、今後都市開発が進む予定のエリアを選ぶことも重要です。ベトナムの開発事情に詳しい不動産のエージェントへ話を聞いてみましょう。
3-3.不動産売買契約手続き
物件が決まったら契約手続きに進みます。外国人はベトナム人がオーナーの物件を中古で購入することができないため、多くの場合は新規供給されたコンドミニアムなどに投資することになるでしょう。
売買契約を締結したら、手付金を支払います。海外送金が必要になるので、送金期日を確認したら、早めに送金元となる銀行に電話するとよいでしょう。海外送金は銀行窓口で手続きしますが、海外送金には慣れていない担当者も多く、窓口で断られる可能性もあります。念のため、余裕を持った送金スケジュールを立てておくのが重要です。
3-4.賃貸運用を開始
物件の購入手続きが済んだら賃貸運用を開始します。まずは入居者の募集について、どのように進めていくのか賃貸管理会社とよくコミュニケーションを取るようにしましょう。
日本とベトナムとの時差は2時間のため、時差の大きいアメリカ不動産投資と比較すると、現地とコミュニケーションを取りやすいこともベトナム不動産のメリットと言えるでしょう。
まとめ
ベトナムは人口増加や経済成長が堅調であるため、ベトナム不動産は賃貸需要の高さや物件の値上がりの可能性があることがわかります。利回りや値上がり期待など、収益に関係するメリットの大きい国と言えるでしょう。
一方、社会主義国家であるがゆえの制度の壁や、急な規制の変更リスクなどはデメリットとなります。実際にベトナム不動産投資を開始する際は、リスクを軽減するために、現地のエージェントと密なコミュニケーションをとりながら慎重に検討するようにしましょう。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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