米国株ETFのおすすめは?成績、手数料、組入銘柄などから人気銘柄を分析

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米国株に興味があるものの、個別株は下落リスクが怖いため銘柄が分散された投資信託に投資したいという話をよく耳にします。そういう方には米国株ETF(上場投資信託)に投資するという方法があります。

米国市場のETFは、約1,850銘柄が取引されており、これは日本の243銘柄を大きく上回る数です。株価指数に加え社債やコモディティーなど幅広い種類の指数に連動する銘柄が上場しているため、自身のニーズにあった銘柄に投資することができます。

ETFは少額から購入可能で、経費率が低く、リアルタイム取引もできるというメリットもあります。そこで今回、年初来(2021年)を基準とし、運用成績、経費率、資金流入額、組入銘柄などからETFを分析し解説します。

※この記事は2021年7月8日時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. 運用成績(レバレッジ型を除く)
  2. 資産流入からみたETF
  3. 資金流出からみたETF
  4. 経費率からみたETF
  5. 総資産額からみたETF
  6. 様々な指数に連動するETF
    6-1.ESG(環境・社債・ガバナンス)関連ETF
    6-2.社債ETF
    6-3.金ETF
  7. まとめ

1 運用成績(レバレッジ型を除く)

運用成績でみると、資源関連のETFが好調です。背景には、原油や天然ガスなどの資源価格上昇を受けた関連銘柄の株価上昇があります。原油価格は、年初(2021年)の1バレル=47.6ドルから2021年7月上旬には75ドルまで上昇しました。

ETF上昇率(2021年年初来)をみると、1位はファーストトラスト天然ガスETF(ティッカー:FCG)のプラス82.59%です。この銘柄は、天然ガス会社のDCPミッドストリーム・パートナーズ(DCP)やエネルギー・パイプライン会社のウエスタン・ミッドストリーム・パートナーズ(WES)、総合石油エネルギー企業のコノコフィリップス(COP)などに投資をしています。

経費率はETFとしては高い水準ですが運用成績は好調です。シャープレシオ(超過リターン÷標準偏差)は1を上回っているため、資金が効率良く運用されています。

ETFの価格上昇率(上位5銘柄)

コード 銘柄 資産総額(百万ドル) 価格(ドル) 上昇率(%) 経費率(%) シャープレシオ(1年)
FCG ファーストトラスト天然ガスETF 295 16.02 82.59 0.6 2.01
PXE インベスコ・ダイナミック・エナジー・EXP&PRO ETF 91 18.07 78.92 0.65 1.7
PSCE インベスコS&P小型株エネルギーETF 200 7.81 78.06 0.29 2.26
FRAK ヴァンエック・ベクトル非在来型石油&ガスETF 18 129.45 69.24 0.54 1.79
PXI インベスコDWAエネルギー・モメンタムETF 197 29.54 68.14 0.6 1.82

2 資金流入からみたETF

資金流入は銘柄の人気度合いを示す尺度といえます。資金流入が最も多い銘柄がバンガードS&P500ETF(VOO)で、今年に入ってからの流入額は284億ドルです。その次が、バンガード・トータル・ストック・マーケットETF(VTI)の213億ドルです。いずれの銘柄も経費率が0.03%と低く設定です。

運用成績はS&P500(16.33%)と同水準です。ETFの保有銘柄はアップル(AAPL)、マイクロソフト(MSFT)、アマゾン(AMZN)、フェイスブック(FB)、アルファベット(GOOGL)です。資金流入額の上位3銘柄における共通点は、経費率が0.03%と低水準にあることです。

ETFの資金流入額(上位5銘柄)

コード 銘柄 資産総額(百万ドル) 価格(ドル) 資金流入額(百万ドル) 経費率(%) 上昇率(%)
VOO バンガードS&P500ETF 235,727 400.37 28,419.31 0.03 17.29
VTI バンガード・トータル・ストック・マーケットETF 254,046 225.88 21,387.40 0.03 16.79
IVV iシェアーズS&P500 ETF 288,721 437.41 12,582.33 0.03 17.25
VTV バンガード・バリューETF 81,140 138.51 10,262.79 0.04 17.7
IEMG iシェアーズ・コアMSCIエマージング・マーケットETF 80,331 65.30 9,226.19 0.11 5.99

3 資金流出からみたETF

資金流出は売却の増加を示します。そのため、資金の流出が続いているETFは要注意です。

年初比(2021年)で資金が流出しているETFをみると、iシェアーズMSCI米国ミニマム・ボラティリティETF(USMV)が81.25億ドルと、第1位となっています。この金額は現在の同ETF総資産の約30%に相当します。

ボラティリティの低い銘柄で構成される指数に連動しており、ファンド保有銘柄数は186銘柄です。このうち最大保有銘柄は、製薬会社イーライ・リリー(LLY)で組入れ比率は1.66%、次がマイクロソフト(MSFT)の1.64%です。年初来の上昇率は11.24%で、S&P500指数の約16%、ダウ工業平均の約13%をともに下回っています。

資金が流出している銘柄の共通点としては、経費率が高いことが挙げられます。

ETFの資金流出額(上位5銘柄)

コード 銘柄 資産総額(百万ドル) 価格(ドル) 資産流出額(百万ドル) 経費率(%) 上昇率(%)
USMV iシェアーズMSCI米国ミニマム・ボラティリティファクターETF 27,809 74.99 8,127.57 0.15 11.24
SPY SPDR S&P500 ETF 378,329 435.52 2,961.18 0.0945 17.26
IWF iシェアーズ・ラッセル1000 グロースETF 70,381 278.08 2,950.96 0.19 15.62
EFAV iシェアーズMSCI EAFE ミニマム・ボラティリティファクターETF 8,630 76.51 2,287.90 0.2 5.95
IHI iシェアーズ米国メディカル デバイセズETF 7,909 369.62 2,276.55 0.43 13.04

※上記のほか資金流出額の高い銘柄への投資は注意が必要です。

4 経費率からみたETF

資産総額は大きくありませんが経費が不要(0%)のETFもあります。BNY Mellon US Large Cap CoreとSofi Select 500 ETFです。組み入れ比率が高い銘柄はともに、アップル、アマゾン、マイクロソフト、フェイスブックなどですが、保有銘柄数はBNY Mellon US Large Cap Coreの233銘柄に対し、Sofi Select500は503銘柄に投資をしています。

経費が必要ないことに加えて、運用成績はS&P500と同水準です。また、シャープレシオが高く、効率的な運用ができています。

経費率が低いETF5銘柄

コード 銘柄 資産総額 (百万ドル) 価格(ドル) 上昇率(%) 経費率(%) シャープレシオ(1年)
BKLC BNY Mellon US Large Cap Core 318 82.48 16.55 0 2.19
SFY Sofi Select 500 ETF 267 16.11 17.30 0 2.48
BBUS JPMorgan BetaBuilders US Equity ETF 621 80.02 16.93 0.02 2.43
VOO バンガードS&P500ETF 235,727 400.37 17.29 0.03 2.45
ILCB iShares Morningstar US Equity 905 61.65 14.37 0.03 2.29

5 総資産額からみたETF

総資産額は、ETFの規模を示す金額で、人気の度合いをはかることができます。総資産額の最大銘柄は3,783億ドル(約4.25兆円)のSPDR S&P500ETF(SPY)です。しかし、現在、この銘柄は資金流出が続いています。一方で、総資産額2位から4位の銘柄には資金流入が続いています。

運用成績は4銘柄とも同水準ですが、資金が流出しているSPDR S&P500ETFの経費率(0.0945%)が他3銘柄(0.03%)を大きく上回っているため、経費率の高い銘柄から低い銘柄に資金シフトが起きている可能性があります。

米国株ETFの総資産額上位5銘柄

コード 銘柄 総資産額 (百万ドル) 価格(ドル) 上昇率(%) 経費率(%) シャープレシオ(1年)
SPY SPDR S&P500 ETF 378,329 435.52 17.26 0.0945 2.46
IVV iシェアーズS&P500 ETF 288,721 437.41 17.25 0.03 2.46
VTI バンガード・トータル・ストック・マーケットETF 254,046 225.88 16.79 0.03 2.62
VOO バンガードS&P500ETF 235,727 400.37 17.29 0.03 2.45
QQQ インベスコQQQトラスト・シリーズ1 180,077 361.01 15.34 0.2 2.06

6 様々な指数に連動するETF

主要な株価指数以外に連動するETFについても挙げていきます。

6-1 ESG(環境・社会・ガバナンス)関連ETF

最近話題のESGですが、ETFにはESG指数に連動する銘柄も複数取引されています。

関連銘柄で資産額が最大なのは、iShares ESG Aware MSCI USA ETF(188億ドル)です。ファンドの保有銘柄は354で、組み入れ比率の高い銘柄はアップル(5.8%)、マイクロソフト(5.1%)、アマゾン(3.7%)、FB(2.0%)、アルファベットA株(1.9%)、C株(1.8%)などです。

ESG関連の米国株ETF銘柄

コード 銘柄 資産総額 (百万ドル) 価格(ドル) 上昇率(%) 経費率(%) シャープレシオ (1年)
ESGU iShares ESG Aware MSCI USA ETF 18,762 100.07 16.97 0.15 2.46
ESGE iShares ESG Aware MSCI EM ETF 7,660 43.87 5.02 0.25 3.01
ESGV Vanguard ESG US Stock ETF 4,669 81.29 16.36 0.12 2.52
SUSA iシェアーズMSCI米国ESGセレクト・ソーシャル・インデックスファンド 3,358 96.92 18.29 0.25 2.74

水関連銘柄に投資するETFも複数銘柄が取引されています。経費率が高めの設定ですが、シャープレシオは下表に掲載した3銘柄ともに3を超えています。

資産額が16.8億ドルのインベスコ・ウォーターリソーシズETFの保有銘柄数は37銘柄で、保有銘柄はウォーターズ(WAT)8.6%、ダナハー(DHR)8.3%、ローパーテクノロジーズ(ROP)8.2%、アメリカン・ウォーター・ワークス(AWK)7.6%、エコラボ(ECL)7.6%と保有比率の高い5銘柄がファンド全体の41%を占めています。

米国株ETFの水関連銘柄

コード 銘柄 資産総額 (百万ドル) 価格(ドル) 上昇率(%) 経費率(%) シャープレシオ(1年)
PHO インベスコ・ウォーターリソーシズETF 1,685 54.62 17.75 0.6 3.87
CGW Invesco S&P Global Water Ind 985 54.74 16.97 0.59 3.86
FIW ファースト・トラストISEウォーター・インデックス・ファンド 1,041 84.66 17.62 0.54 3.84

6-2 社債ETF

債券指数に連動するETFも取引されています。社債を直接投資するためにはある程度の金額が必要ですが、ETFは格付けがBB以下のハイイールド債、投資適格債(BBB以上)、新興国の債券に少額から投資できます。

市場がリスクオンの時にはハイイールド債に資金が流れやすく、リスクオフ時には資金が流出する傾向があります。2021年はリスクオンの状況が続いているため、運用成績はハイイールド指数が投資適格や新興国債を上回っています。

債券関連の米国ETF銘柄

コード 銘柄 資産総額 (百万ドル) 価格(ドル) 上昇率(%) 経費率(%) シャープレシオ (1年)
HYG iシェアーズiBoxxハイイールド社債ETF 20,648 88.00 2.89 0.49 2.06
LQD iシェアーズiBoxx米ドル建て 投資適債ETF 40,005 134.82 -1.25 0.14 0.36
EMB iシェアーズJPモルガン・米ドル建て エマーシング債券ETF 20,283 112.15 -1.39 0.39 0.88

6-3 金ETF

金鉱株や金そのものに投資するETFも取引されています。ヴァンエック・ベクトル金鉱株ETFは、ニューモント(NEM)に15.38%、バリック・ゴールド(ABX)に11.38%、フランコ・ネバダ(FNV)に8.5%投資しています。一方、SPDR・ゴールド・シャアは、金そのものに投資をしています。

2021年現在、金相場が不調なため3銘柄すべてで運用成績はマイナスです。

米国株ETFの金関連銘柄

コード 銘柄 資産総額(百万ドル) 価格(ドル) 上昇率(%) 経費率(%) シャープレシオ(1年)
GDX ヴァンエック・ベクトル 金鉱株ETF 14,546 34.37 -4.58 0.52 -0.07
GLD SPDR・ゴールド・シェア 60,450 169.21 -5.13 0.4 0.04
GDXJ ヴァンエック・ベクトル中小型 金鉱株ETF 5,127 46.62 -14.05 0.53 0.05

まとめ

米国ETFは銘柄数が多いため、銘柄探しに苦労します。例えばSBI証券では、海外ETFを国・地域や業種から絞ることができるツールを提供しています。銘柄探しにはこのようなツールを使うと便利です。

米国市場ではS&P500指数に連動したETFの需要が高まっています。日本においても同様の傾向があります。日本ではS&P500(円換算)に連動するETFは、上場インデッスファンド米国株式(1547)やSPDR S&P500ETF(1557)です。信託報酬は1547が0.16%、1557が0.0945%と、米国のバンガードS&P500ETF(VOO)等の0.03%よりも高めに設定されています。

米国ETFは、ネット証券では1株から投資することができます。この機会に米国ETFへの投資についても検討してみてはいかがでしょうか。

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藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。