かつては子どもの教育資金準備の定番は学資保険でした。しかし、超低金利が続き、学資保険ではお金がほとんど増えなくなっています。そこで、つみたてNISAなどでの投資の活用が注目されています。
この記事では、学資保険の基本とメリット・デメリット、教育資金を投資で準備する方法との比較について解説します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定サービスの利用を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※この記事は2022年11月6日時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。
目次
- 学資保険の使い方
1-1.学資保険は何に使う?
1-2.学資保険はいつ使う? - 学資保険のメリット
2-1.契約者(親や祖父母)が死亡しても教育費が準備できる
2-2.自動的に教育費が準備できる - 学資保険のデメリット
3-1.貯蓄性が低い
3-2.インフレリスクに対応できない - 準備すべき教育費はいくら?
- 教育費の準備、学資保険と投資はどちらが有利?
5-1.投資で教育費を準備するメリット
5-2.投資で教育費を準備するデメリット
5-3.学資保険での準備が適している人
5-4.投資での準備が適している人 - 学資保険に代わる教育資金準備に適した投資
6-1.一般NISA
6-2.つみたてNISA
6-3.投資信託積立
6-4.ロボアドバイザー - まとめ
1.学資保険の使い方
学資保険は教育費の準備のための貯蓄型保険です。
1-1.学資保険は何に使う?
学資保険は子どもの入学などに合わせて、満期保険金などの資金が受け取れます。また、契約者(親や祖父母)が死亡した場合、以降の保険料の支払いが免除される保険機能が大きな特色です。商品によっては子どもの死亡や入院などの場合に保険金が支払われるタイプもあります。
1-2.学資保険はいつ使う?
学資保険の満期は「17歳満期」「18歳満期」など大学進学の時期に合わせた商品が一般的です。その他に、「21歳満期」「22歳満期」などが選べる商品もあります。また、小学校・中学校・高校などの進学の節目に「祝い金」を支払うタイプもあります。
2.学資保険のメリット
教育資金を学資保険で準備するメリットについて解説します。
2-1.契約者(親や祖父母)が死亡しても教育費が準備できる
学資保険では契約者である親や祖父母が死亡または高度障害になった場合、以降の保険料の払い込みが免除されます。そのため、万が一の場合でも満期保険金の受け取りが可能で、想定した教育費を準備できるのです。学資保険の保険としての機能は投資にはないものです。
しかし、投資をしながら必要な死亡保障を定期保険などで準備する方法もあります。
2-2.自動的に教育費が準備できる
学資保険は一時払いもできますが、一般的に月払いや年払いで自動的に保険料が引落とされる仕組みです。そのため、貯蓄が苦手な人でも無理なく教育資金を貯められます。計画的な資金準備が苦手な人は、投資でもつみたてNISAのような自動引落しがされる制度を利用するとよいでしょう。
3.学資保険のデメリット
教育費準備といえば学資保険をイメージしますが、注意すべきデメリットもあります。
3-1.貯蓄性が低い
現在は超低金利が続き、学資保険のような貯蓄タイプの保険ではお金がほとんど増えません。貯蓄タイプの保険は支払った保険料に対する戻り金の割合(返戻率)が商品選びのポイントになります。
商品によっては満期まで続けても返戻率が100%に満たない(元本割れ)ものもあり、注意が必要です。途中で解約する場合はタイミングによっては、ほとんど戻りがない可能性もあります。
ある程度長期間保険料を支払ってもほとんどお金が増えないため、学資保険以外の選択肢も検討したほうがよいでしょう。
3-2.インフレリスクに対応できない
学資保険は契約時に将来の受取金額が決まるタイプがほとんどです。以下の表は2000年以降の国立大学の授業料の推移で、長期的に値上がりしていることがわかります。
2000年 | 47万8,800円 |
2001年 | 49万6,800円 |
2003年 | 52万800円 |
2005年 | 53万5,800円 |
2022年 | 53万5,800円 |
出典:文部科学省「国公私立大学の授業料等の推移」
子どもが生まれたときから大学進学時の間に学費が上昇すると、お金の増えない学資保険では資金が不足する可能性があります。長期で進学費用を準備するには、インフレに対応できる投資を利用するほうが合理的です。
4.準備すべき教育費はいくら?
子どもの教育費を準備する場合、高校までの授業料や塾代は毎月の生活費からまかなうのが基本です。高校卒業までの教育費を負担しながら、高校卒業後の進学資金を準備していきます。
進学先別の子ども1人あたりの学費(入学金と授業料)の目安を日本政策金融公庫のデータから紹介しますので、参考にしてください。
高専・専修・各種学校(2年) | 284万円 |
私立短大 | 366万5,000円 |
国公立大学 | 481万2,000円 |
私立大学文系 | 689万8,000円 |
私立大学理系 | 821万6,000円 |
出典:日本政策金融公庫「令和3年度「教育費負担の実態調査結果」」
教育費は子どもの進路によって大きく異なります。場合によっては奨学金や教育ローンの利用も選択肢となるでしょう。
5.教育費の準備、学資保険と投資はどちらが有利?
教育費の準備方法は学資保険だけでなく、投資も選択肢の1つです。それぞれを比較してみましょう。
5-1.投資で教育費を準備するメリット
投資で教育費を準備するメリットを解説します。
高い利回りが期待できる
預貯金や学資保険ではお金をほとんど増やせませんが、投資はリスクに応じたリターンが見込めます。子どもの誕生から時間をかけて準備すればリスクを軽減でき、学資保険より高い利回りが期待できるでしょう。
インフレリスクに対応できる
預貯金や学資保険は将来の受取額が確定する反面、物価上昇に対応できません。投資を適切に活用すると必ず増えるとは限りませんが、物価上昇以上のリターンが期待できます。
5-2.投資で教育費を準備するデメリット
投資で教育費を準備する場合のデメリットや注意点も知っておきましょう。
将来の受取額が確定しない
子どもの教育費を投資で準備する場合、利回りを想定して運用商品を選びます。投資では想定した利回りを上回ることもあれば下回ることもあり、将来の受取額はわかりません。
しかし、投資は長期になるほど値動きの振れ幅が小さくなる傾向があります。想定利回りはあくまで目安と考え、短期的な値動きにとらわれないことが大切です。
最低限の知識が必要
投資にはリスクがあり、損をする可能性があります。学資保険より高い利回りが期待できるからといって、投資の知識ゼロで取り組むのは危険です。
多くの知識は必要ありませんが、最低限知っておくべきことはあります。自分が購入する商品の内容やどのようなリスクがあるかなどを確認するようにしましょう。
5-3.学資保険の準備が適している人
投資にどうしても抵抗があり、お金が増えなくても着実に教育資金を準備したい人は学資保険を選んでもよいでしょう。
ただし先述したとおり、学資保険には満期まで続けても元本割れする商品もあります。加入するなら、必ず支払った保険料に対してどの程度の戻りがあるか(返戻率)を確認しましょう。
5-4.投資での準備が適している人
効率的に教育資金を準備したい人は、リスク軽減をしながら投資を活用するとよいでしょう。
たとえば、18年間で500万円を準備する場合、運用利回り0.1%では毎月2万3,000円の積立が必要ですが、3%で運用できれば1万7,500円で済みます。トータルの元本も運用利回り0.1%では約497万円、3%なら378万円と100万円以上の差があります。
必ず目標資金が準備できるとは限りませんが、学資保険より少ない元手で目標金額の準備が期待できます。
6.学資保険に代わる教育資金準備に適した投資
最後に、教育費の準備に適した投資を紹介します。
6-1.一般NISA
一般NISAはNISA(少額投資非課税制度)の一種で、投資で得た運用益に税金がかからない制度です。通常、株式や投資信託で得た運用益には20.315%の税金がかかります。しかし、NISA口座で発生した運用益は非課税となります。
一般NISAは1年間に120万円まで非課税で投資でき、非課税の期間は5年です。投資対象は上場株式や投資信託などで、通常の買付も積立設定も可能です。
教育費の準備であれば投資信託などの積立を基本に、ボーナス時にスポット購入をするのも1つの方法です。
2024年からは新NISAに
現行の一般NISAは2023年で廃止となり、2024年からは新NISAとなります。新NISAは現行の一般NISAにつみたてNISAが追加されたような仕組みです。新NISAはやや複雑ですが、つみたてNISAより投資の自由度が高いので、積立と一括購入を併用したい人には適しています。
6-2.つみたてNISA
つみたてNISAはNISAの中でも積立に特化した制度で、非課税で投資できる金額が年間40万円まで、非課税期間は20年です。投資対象は、金融庁が選定した長期・分散・積立向きの投資信託またはETFです。
つみたてNISAは100円程度の少額から始められて投資対象も絞られており、積立の設定をすれば買付は自動で行われます。そのため、初心者でも取り組みやすい方法です。児童手当などを財源に毎月一定額をつみたてNISAでコツコツ積み立てると、まとまった教育資金の準備が期待できます。
6-3.投資信託積立
投資信託は、ファンドを組成して投資家から集めた資金で株式や債券に投資し、成果を還元する運用商品です。株式や債券に直接投資するには多くの資金が必要ですが、投資信託なら少ない資金で分散投資が可能です。投資信託は通常の買付だけでなく、積立も可能です。
通常の投資信託の積立は特定口座などの課税口座で行うため、運用益に課税されます。まずは一般NISAやつみたてNISAを活用し、非課税枠以上の資金がある場合に投資信託の積立を活用するとよいでしょう。
6-4.ロボアドバイザー
ロボアドバイザーはAIを利用し、投資アドバイスや運用代行を行う金融サービスの一種です。ロボアドバイザーには投資のアドバイスや提案のみを行う「アドバイス型」と、実際に運用を代行する「投資一任型」があります。ほとんどの投資一任型のロボアドバイザーで、積立にも対応しています。
ロボアドバイザーの投資一任型を活用すれば、投資初心者でも教育資金準備が可能です。代表的なサービスであるWealthNavi(ウェルスナビ)ではNISAにも対応しており、非課税でロボアドバイザーを活用できます。
ロボアドバイザーは運用を「お任せ」できるため初心者でも取り組みやすい投資ですが、投資のリスクを負うのはユーザーです。損をする可能性があることも知っておきましょう。ロボアドバイザーは長期投資に適しており、WealthNaviは運用実績を公表しているので参考にするとよいでしょう。
まとめ
学資保険は親が死亡しても満期保険金が受け取れるため、教育資金準備の王道でした。しかし、今では元本割れする商品もあり、貯蓄性の面で魅力が乏しくなりました。代わってつみたてNISAなどによる投資の活用が注目されています。
投資は損をする可能性もありますが、教育資金のように長期の場合は比較的低リスクに成果が期待できます。初心者で値動きが不安な人は、少額から初めてみてはいかがでしょうか。
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