少額から始められる新しい不動産投資の形として、不動産クラウドファンディングが注目されています。不動産クラウドファンディングでは1万円などの少額資金から実物不動産への投資が可能であり、住宅だけでなく、これまで機関投資家などの多額の資本が無いと投資ができなかった大規模な開発プロジェクトや商業施設など、様々なアセットタイプへの投資が可能となっています。
多くの不動産クラウドファンディングサービスが提供されていますが、中でもCOZUCHI(コヅチ)は累計投資額822億円を突破し、2024年11月時点で業界トップクラスの実績を上げています。業界2位の累計投資額(647億円、2024年11月21日時点)であるCREALは2022年4月に東京証券取引所グロース市場に上場していることからも、COZUCHIは今後上場に向かうのか、そのポリシーや新しい取り組みについて注目されている方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、同社代表取締役の「武藤 弥(むとう わたる)氏)」にインタビューを実施し、これまでCOZUCHIが上場していなかった理由、目指す未来、これから新たに挑戦したいプロジェクトアイディアなど、様々な観点から深くお話いただきました。
LAETOLI代表取締役CEO 武藤 弥
2001年早稲田大学理工学部建築学科修士課程了。同年リクルート創業者江副浩正氏が経営する不動産ディベロッパーにて開発業務等に従事。その後独立し、2003年家具ブランドIDEEとともに、アールプロジェクト株式会社を設立し、取締役就任。リノベーション事業や商業施設の開発事業等を行う。2009年株式会社シェアカンパニー設立、代表取締役に就任。シェアハウスやシェアオフィス、ホテルの開発運営を行う。同時期2011年株式会社TRIAD設立、取締役副社長に就任。機動的な投資資金を運用し、様々な不動産投資案件を手掛ける。不動産投資分野に豊富な経験とネットワークを有する。
COZUCHI(コヅチ)
COZUCHI(コヅチ)はLAETOLI株式会社が運営する不動産投資型クラウドファンディングサービスです。LAETOLI株式会社は、リノベーション事業や不動産買取事業を展開する不動産会社で、投資用不動産のノウハウを生かしてCOZUCHIを運営しています。
2019年にサービスを開始した前身サイト「WARASHIBE」の運用開始から約2年が経過し、サービスをリニューアルしたのが「COZUCHI」です。COZUCHIでは賃貸用のマンションの案件に加えて数億円規模の事業性の大型のファンドを組成することもあり、2024年10月末時点で累計822億円超のトップクラスの募集実績があります。投資対象となる不動産の豊富なバリュエーションが特徴的です。
※COZUCHI(コヅチ)では、はじめての不動産投資クラファン応援特典として2024年11月5日〜2024年12月31日まで、HEDGE GUIDE経由で新規に投資家登録を完了すると、Amazonギフト券2000円分がプレゼントされるタイアップキャンペーンを実施中。また、登録完了後の投資額に応じて最大50,500円分のAmazonギフトカードがもらえます。キャンペーンの詳細はCOZUCHIにお問い合わせください。
※投資家登録時の登録メールアドレス宛に2024年12月以降に送付されます。※本キャンペーンはCOZUCHIによる提供です。本キャンペーンについてのお問い合わせはAmazonでは受け付けていません。COZUCHIキャンペーン事務局までお願いいたします。※Amazon、http://Amazon.co.jpおよびそれらのロゴはhttp://Amazon.com,Inc.またはその関連会社の商標です。
目次
- 今後COZUCHIが上場する予定、可能性
- 累計投資額が業界トップになるまで
- COZUCHIが目指す今後の具体的な成長目標、顧客満足度を高める取り組み
- 今後挑戦したいプロジェクトや事業展開のアイデア
- 不動産クラウドファンディング市場全体の今後の展望について
- まとめ
今後COZUCHIが上場する予定、可能性
COZUCHIの累計募集額は不動産クラウドファンディング業界トップとなっています。今後、COZUCHIが上場する予定や可能性はあるのか教えてください
「上場に向けて準備はしています。太陽監査法人(太陽有限責任監査法人)さんに監査を依頼しており、該社は基本的に上場を前提としている企業しか監査を実施していません。そのような意味では、上場準備をさせていただいていると言ってよいと思います。
しかし、上場というのは一つの手段でしかないと思っていますので、どのような時期に上場を行う、目指しているなどの明確な目標はありません。上場するのであれば、上場マーケットでしっかりと評価される企業になる必要があるとも思っています。
また、COZUCHIが上場する一つ課題として『株式会社TRIAD』との協業関係を取っているという事情もあります。通常、1号・2号を同じ事業者でファンド組成をするとファンドごとに口座を分ける必要が出てきますが、COZUCHIの運用スキームは、一括のデポジット口座を使うためにTRIAD社が1号事業者、LAETOLI社が2号事業者のスキームとなっています。
このようなスキームはファンドごとに口座を分けずに済み、ユーザービリティを向上させるメリットはあるものの、一方で上場を目指すのであればLAETOLI社としての独立性、単独しての事業をどう構築するのかが課題となってきます。
現段階では、ユーザービリティを落とさないようにスキーム上の課題についても解決する道筋は見えており、準備も進めておりますが、より具体的に解決されるタイミングが積極的にIPOを目指す段階になるかと考えています。
なお、他社の不動産投資事業における上場のメリットが何かと言えば、『資金調達』が大きな目的となります。一方でCOZUCHIでは自社のサービスで資金調達ができるため、上場による資金調達の必要性はほとんどないと考えています。上場は社会的なクレジット(透明性)を獲得するには有用な手段だととらえていますが、不動産事業のために資金調達ができる我々のビジネスモデル上、最速で上場を目指していくインセンティブもあまりありません。このような理由から、しかるべきタイミングの上場に向けてじっくりと準備を進めているような形になっています。
COZUCHIでは自社のサービスで資金調達ができるため上場のインセンティブが低いとのことですが、不動産取得以外に、例えば広告費に活用することも検討できます。現段階では大規模な認知拡大の優先度は低いということでしょうか?
「現状では、幸いにもPL上の利益の中で広告宣伝費は賄えています。COZUCHIではこれまでネットメディアやインフルエンサーの皆様を中心としたマーケティングを実施してきましたが、資金を潤沢に使えば会員獲得につながるとは限りません。
また、大規模なTVCMを実行するなどであれば多額の資金が必要となりますが、それを早急に実行したとて、アクティブな会員様が急に増えるということはなかなかありません。広告については、徐々にPL上の利益の中で回していこうと考えています。場合によってアクセルを踏む必要が出てきたタイミングで、例えば増資をするといった対応をする可能性は無いとは言い切れませんが、直近数年間の経過を見ていると、PLの範囲の中で回していけると考えています。」
累計投資額が業界トップになるまで
累計投資額が業界トップになるまでに、どのような点が課題として感じられていましたか?
「一つ目に、COZUCHIのスケールが大きくなるまでの成長曲線は一定ではなく、大規模な募集による成長を数回繰り返してきたような経緯があります。大きな募集を行うタイミングでは、それに伴ったストレスがかかっていました。
例えば2022年6月3日に募集開始した「代々木公園 事業用地ファンド」で36億円を調達した際は、当時の我々の感覚としては本当に資金が集まるのかナーバスになっていました。また、大規模な募集を行う瞬間はPL上も重くなります。
一定サイズの商品を安定的に供給できれば良いのですが、実物資産である不動産は価格もまばらであり、安定して同一サイズの商品を供給し続けることは簡単ではありません。COZUCHIのオポチュニティ系の案件では、いつでも多くの投資チャンスがあるわけではないためです。COZUCHIが過去に30億、70億、100億とスケールアップするタイミングで、事業としては大きなストレスがかかりました。一方でそれをやり切ったからこそ、累計調達額でいうと業界ナンバーワンになれたのだと考えています。
二つ目には、広告費をかけて多くの会員様の獲得ができたとしても、ファンド組成ができないなどのリスクがあります。例えば、『12月に大きな案件が入りそうだ』と考えて事前に広告費を増やし、投資家獲得に向けてアクセルを踏んだとしても、物件の取得に失敗して案件が流れてしまう可能性があります。とはいえ、徐々に成長をしていく前提で獲得に向けて動いていく必要があり、不動産とクラウドファンディングの両輪であるからこその、バランス調整の難しさがあります。」
『投資案件の安定した供給が難しい』という観点でいうと、競合他社も同じ課題を抱えていると思います。その中でCOZUCHIがしかるべきタイミングでアクセルを踏み、業界トップになるに至った、他社との大きな違いはどこにあると思いますか?
「COZUCHIで取り扱っている案件の特性が大きく影響していると思います。権利調整が必要であるなど金融機関が融資をしづらい案件、プレイヤーが少ない領域で資金付けができるというポジションにCOZUCHIがあります。
不動産会社は数多くありますが、このような特殊な物件を扱う領域は意外にもあまりプレイヤーがいないブルーオーシャンであり、他社との差別化になっています。特殊であるがゆえに数多くの案件が出てくる領域ではないのですが、案件が出てきた時には、優先的・独占的に案件を取り扱えるという強みがあります。このような案件は安く買い入れが出来ているため、上手く行った時のアップサイドも大きく、投資家の方にも還元できる良いスパイラルが出来ています。」
COZUCHIが目指す今後の具体的な成長目標、顧客満足度を高める取り組み
現在、業界トップの累計募集額を達成しています。今後はどのような成長目標を描いているのでしょうか?
「現在(2024年10月取材時点)、8万人弱の会員数となっていますが、今期(2025年6月期)の目標としては、10万人の累計会員登録数、300億円の案件組成を目標にしています。
しかし、長期的な目標を据えるにあたり、登録者数を10万人から20万人、将来は100万人と増やしていくべきなのか、適正サイズがどこにあるのか未知の部分があります。おそらく20万人までのサイズまでは目指せると考えていますが、仮に100万人の規模となると調達可能額は増えますが、同時に投資案件の規模拡大が必要となります。オポチュニティ系の案件だけだと案件数も少ないため、どの程度が適正サイズであるのか今後も議論が必要です。
このような背景も踏まえて、現段階で目指している具体的な目標としては、2年後(2027年6月期)までに年間500億円の案件組成ができる状態に持っていきたいと考えています。会員数は純粋で毎年2万5,000人の増加を想定しているので、2-3年後には1,000億円の投資余力となります。その中で年間500億円程度のファンドを回転させていくことが無理のない数値かと想定しています。」
顧客満足度を向上させるためにどのような施策が行われていますか?また、実行予定のものはありますか?
「細かなポイントまで取り挙げると様々な部分があります。例えば、「サイトが使いづらい」「ページが見づらい」などのユーザービリティについては、内製化しているITチームが日々対応し、バージョンもどんどんアップグレードしています。
COZUCHIが今一番取り組んでいる施策としては、『いつでも換金可能』という部分をもう少し仕組み化しようと考えています。現在のスキームでは、仮に投資家の方が『100万円を現金化したい』となった場合、COZUCHIが一度買い取り、買い取り額が一定のボリュームになった段階でリセール募集を行うような流れになっています。この仕組みだと一度買い取った持ち分を保有している期間が長く、COZUCHIの資金力が前提になるため、モデルとして弱いと思っています。
改善案としては、先ほどの100万円の例では一定額が溜まるまで出来なかったリセール募集を、翌日には別の投資家の方へ売却できるような仕組みづくりに取り組んでいます。このような仕組みを構築できれば、『事業者に資金が無いと換金できない』というリスクが低く抑えられ、『いつでも換金可能』の仕組みが強固になります。株式のセカンダリーマーケットのようなイメージで、買いオファーがあればいつでも売却できるという状態を目指して、今一番システム改修に力を入れて取り組んでいます。」
COZUCHIが解決する社会課題
COZUCHIが解決したいと考えている社会課題について教えてください
「まず投資家様の観点から見た社会課題として、投資の機会が偏在しているということがあります。例えば、お金持ちの資本家の方には良い投資情報が集まり、そうでない方には投資情報が回ってこないことがあります。
特に不動産は高額商品であり、そもそも参加できる方が限られてきます。金融機関から借入をする際にも、物件評価以外にその方のクレジット(与信)が重視され、所得の低い方であれば参加が難しいという実態がありました。
このような課題に対し、みんながフラットに投資情報を得て、投資に参加できるという環境を作っていくことがCOZUCHIの社会的な役割だと思っています。ビジネスとしての効率で見れば、お金持ちの資本家の方を10人集めて1,000億のファンドを運用する、という方法もあると思うのですが、COZUCHIの社会的な役割としては、1万人、2万人の投資家の方に向けてフラットに開示し、不動産投資の裾野を広げていきたいと創業当初から思っています。
不動産業界の観点から見た社会課題の解決としては、COZUCHIでは『まちづくり』をテーマに掲げています。素敵な建築を作り、そこに人々が集まりにぎわうことで良い街になる、という流れが一つのまちづくりです。しかし、この段階はフェーズとしては最後の方で、その前段階として多くの課題が残されています。
例えば、古くて有効活用されていない物件がなぜか好立地に存在していることがあります。このような物件をよくよく調べると共有持ち分者同士が揉めているなどで権利関係が複雑であることが実は多々あります。
現在は戦後に増えた資産が相続される段階になってきており、不動産が共有持ち分で相続されていってしまうことで、資金の出し手がいない流動性の低い資産の状態になっていきます。このような事情により有効活用されていない資産に対して、権利関係をクリアにし、きれいな建物を作り街に還元する、非常に重要なCOZUCHIの社会的役割であると思っています。」
不動産投資の裾野を広げるという部分について、これまで不動産投資になじみの無かった方にCOZUCHIを届けるために努力されていることはありますか?
「努力が十分かは置いておいて、例えばCOZUCHIのページについてもかなりポップなUIのイメージで作成しています。TVCMも打ち始めていますが、難しい話ではなく、馴染みやすいコミュニケーションを大事にしていきたいと考えています。とはいえ、投資である以上は理解が難しい部分もあります。この部分については、ウェブセミナーを実施したり、今回のようにメディアの方にCOZUCHIの考え方をお伝えしたりなど、コミュニケーションをしていくしかないと思っています。」
※COZUCHI TVCM
今後挑戦したいプロジェクトや事業展開のアイデア
COZUCHIが挑戦したいと考えている、新たなプロジェクトや事業展開のアイデアはありますか?
「COZUCHIの強みとしては、金融機関の融資が付きづらく購入することができる方が限られている物件の課題をクリアにして、多くの人が購入できるような状態にできるという点です。今まではクリアにした物件を不動産業者やデベロッパーに売却するような流れになっていたのですが、いずれは自社で開発まで行い、エンドユーザーに直接売却できるようなビジネスモデルに展開していきたいと考えています。
出口までCOZUCHIが取り扱えるようになればアービトラージを最大化することができます。また、売却のタイミングでは仲介会社など別のプレイヤーが存在していますが、COZUCHIがエンドユーザーの方と直接につながることが出来れば、非常に強いビジネスモデルになると思っています。出口に強いプラットフォームになることを実現していきたいと考えています。」
COZUCHIで開発・売却まで内製化すると付随してリスクも増大すると考えられますが、リスクについてはどのようにとらえていますか?
「当然、土地の状態で利確せず、開発まで行うと様々なリスクは想定されます。例えば、開発に成功しても、開発期間中に不動産の値崩れが起きるなど時間軸のリスクもあるでしょう。これらのリスクについては、物件ごとに個別で精査していくしかありません。また、例えば、積み上げた歴史のあるデベロッパーのブランドマンションが存在しているような領域に対して、COZUCHIプロデュースの物件を売却することは難しいと思っています。
一方で、中小規模のオフィスビルや商業施設、ホテルなどであれば、マーケットリスクを取りながらも取り組めると考えています。また、開発リスクは存在していますが、最終的にエンドユーザーに売却できる売却力は強力なリスクヘッジになります。他社に任せず自社でしっかりと売り切れるような状態にできるよう、計画しているような段階です。」
『売却力』とは、具体的にどのような要素が必要になってくるのでしょうか
「不動産売却については大小様々な仲介会社がありますが、このような会社と競合する必要はありません。実際に投資家の方が『何を求めているか?』という観点が重要であり、つまりマーケティングの世界です。
例えば、COZUCHI に登録いただいている8万人弱の投資家様の中に、資金が潤沢にあり、現物不動産を購入したいと考えている方もいると想定できます。会員数が今後増えていく中でこのような方へ提案することができれば、他社の仲介会社とバッティングせず、場をセッティングすることが可能であり、そのような場で投資家の方が『何を求めているか』という情報を知っていきたいと思っています。その中で、COZUCHIが得意な領域で案件をご紹介できれば、強いビジネスになる可能性があると思います。」
不動産クラウドファンディング市場全体の今後の展望について
不動産クラウドファンディングを取り巻く環境は今後どのように変化していくと思われますか?
「大きな流れで言うと成長していくと考えています。不動産業界全体でみると不動産クラウドファンディング市場はまだまだ小さく、参入しようと試みている不動産会社や、実際に参集して、COZUCHIからすると競合に見えるようなサービスも増えてきています。このような状態は健全であり、良いことだと捉えています。
一方で不動産クラウドファンディングは産業として黎明期であり、事故やトラブルが起きると業界全体にネガティブなイメージが付きやすい時期です。レピュテーション(評判)という問題に加えて、大きなトラブルが起きると当局のレギュレーションも厳格化される可能性もあり、危惧しているポイントです。
このような中、一般社団法人クラウドファンディング協会*において、参加企業に新たな基準を設けたり、月1回のレポート提出など、自主規制団体のような動きもあります。この動きは業界内だけでなく、国交省の方や政治家の方々ともコミュニケーションを取りながら進めており、今後も事故が起きないように整備していき、業界全体として価値を上げていくことが重要です。
そのようなポイントが整っていけば本質的にはマーケットとしては広がっていき、小口で不動産投資ができるサービスとして、数兆円規模の市場になってもおかしくないと思っています。」
*LAETOLI社の代表取締役CEO である武藤氏が共同代表を務めた日本不動産クラウドファンディング協会は、2024年9月に一般社団法人クラウドファンディング協会と統合
黎明期の不動産クラウドファンディング業界が投資家の信頼を獲得するにあたり、どのようなポイントが重要だととらえていますか?
「各社によって基準はありますが、物件評価をどのような形でしているかがポイントになると思います。サービスによって鑑定評価を基準にしているのか、社内評価で決めているなど様々です。さらに言うと、鑑定評価ひとつにしても不動産鑑定士の方によって判断が異なるため、鑑定評価だけでファンド簿価の根拠となり得るのか、物件評価の際には重要視したいポイントです。
COZUCHIでは、『簡易鑑定』または『物件の取得金額』の低い方をファンド簿価に設定しています。なぜこのような対策を取っているかと言うと、仮に評価額と乖離した募集を行ってしまうと危険な状態になるためです。
例えば、10億円で取得した物件に20億円の鑑定評価が出てしまった事例があったとして、ここで20億円を調達してしまうとオーバーローンのような*状態になってしまいます。集めた資金は分別管理されるため、いずれにせよ基本的にはファンド以外に利用することはできませんが、レギュレーション上に問題がなければこのような運用もできてしまうため、各社のモラルを含めて抑制していくかが問題になってくると思います。」
*オーバーローン:物件価格よりもローン残高の方が高い状態。不動産クラウドファンディングの事業参加者からの出資金はローン(一定期間金利を固定する商品)ではないため、厳密にはオーバーローンではない。
新興の不動産会社がクラウドファンディング事業に参入して、すぐに撤退してしまうような事例もいくつかあります。新規参入のハードルの高さについて、どのような要因があるのでしょうか?
「おそらく、これまで金融環境が良かったというのが主な要因と考えています。不動産クラウドファンディングに参入される会社というのは不特法の事業者*ですので、基本的には資本金1億円以上の不動産会社であるということになります。本業の不動産業で一定以上の規模があるのであれば、おそらく非常に低い金利で銀行から融資を受けることができています。このような環境では、不動産会社があえて不動産クラウドファンディングの高い調達コストで資金調達をするインセンティブが低くなります。不動産クラウドファンディングから撤退してしまうのは、融資環境が良いというのが一番の要因となっているのでしょう。
その他、他社の事例を見ているとマーケティングに長けていないと感じることがあります。力を入れてマーケティングを実施している会社でも、アクティブではない会員数を増やしてしまって募集額が伸びないという事例もあります。本気で獲得を目指さないとアクティブな投資家の方に登録してもらうことは難しく、調達額が伸びないのであれば事業がうまくワークしません。不動産とマーケティングのうまくかみ合っている会社というのが少ないというのが事情としてあると思います。
一方で参入障壁がものすごく高いというわけではないため、例えばIPOを目指している会社が企業価値を高めるために不動産テックを始める、不動産クラウドファンディング事業を本業として新しく開始するといった事例も増えると思います。」
不特法の事業者の資本金要件
不動産特定共同事業は投資家の財産を長期間預かる業であり、その十分な財産的基礎が求められることから、許可を受けようとする者の資本金又は出資の額が不動産特定共同事業の種別ごとに次に定める金額を満たすものであることが必要です(法第7条第1号)。
第一号事業者…1億円
第二号事業者…1,000万円
第三号事業者…5,000万円
第四号事業者…1,000万円※引用:国土交通省「不動産特定共同事業の許可の要件」
現在は不動産会社の参入インセンティブが低いというお話がありました。金融環境の良い状況でCOZUCHI があえて不動産クラウドファンディングに参入されたのは、どのような意志があるのでしょうか?
「私自身のキャリアも背景としてあるのですが、不動産会社ではなく、ファンド運用会社としての発想が前提となっているということがあります。ファンド運用会社では、投資家さんと利益をシェアしようというのが前提としてあり、不動産クラウドファンディングの概念は馴染みがあります。
ファンド運用会社では、機関投資家から預かったエクイティとデットを組み合わせて物件を購入し、AUM報酬や成功報酬を受け取るというビジネスモデルです。COZUCHIは機関投資家の方ではなく、デジタル・インターネットを使って皆様から資金を集めるような仕組みを取っていますが、考え方としては不動産会社よりもファンド運用会社に近くなっています。
調達コストは金融機関と比べて高くなってしまいますが、高配当をしてもその利益は投資家の方に還元されることになります。投資家の皆様と利益をシェアし、投資家の方の笑顔によって私達の利益がでるという発想であることが、理由の一つとしてあります。
もう一点、私は2008年頃に不動産会社を経営していたのですが、当時リーマンショックの影響によって銀行から大規模な貸しはがしが起きました。大手の財閥系の不動産会社や外資系企業しか物件を購入する余力がなくなり、安くなった物件を買い占めたこれらの企業は大きな利益を出しています。リーマンショックのようなリセッションが起きた時、銀行の融資に頼っていることには貸しはがしのリスクがあることを目の当たりにした経験があります。
また、コロナショックの時にもホテル業の売上が低下しました。あのタイミングではホテル業に参入する企業も無く、金融機関も融資を行わないため、物件価格も大きく値下がりしています。一方、現在ではホテルの価格も戻っており、耐えて保有し続けていれば適正価格で売却ができるタイミングが来ていました。
不動産クラウドファンディングではこのリセッションにおける銀行の貸しはがしのトリガーがありません。投資家の皆様とのコミュニケーションにより信頼関係が築けていれば、『今、あせって売却すると大きな損失が出ます。長い目で見たらマーケットは戻ります。家賃収入の配当があるので今は待ちましょう。』などといった相談が可能です。
ここがもう一つ重要な理由です。今からCOZUCHIが成長していれば、リセッションによって銀行の融資環境が崩れた時に大きなチャンスがきます。そのような場面に備えて、投資家の皆様と密にコミュニケーションを取り、信頼関係を築き上げていきたいと考えています。」
まとめ
不動産クラウドファンディングは少額資金から不動産投資ができるサービスとして人気が高く、年々市場全体の規模も大きく成長しています。CREALのような上場会社も生まれており、認知拡大が進むことでさらに注目されていく可能性のある投資サービスとなっています。
今回、業界トップの実績を持つCOZUCHI代表の武藤氏にお話をうかがいました。COZUCHIも上場準備を進めているとし、今後新たに計画しているプロジェクトや事業展開についても示唆されています。また、不動産クラウドファンディングが持つリセッションに対する強みや、COZUCHIが競合他社と比較して高い実績を上げる理由についても詳しくお話をいただきました。
武藤氏は、COZUCHIとして取り組むマーケットの課題として「お金持ちの資本家の方には良い投資情報が集まり、そうでない方には投資情報が回ってこないこと」を挙げています。過去のCOZUCHIのファンド組成方針や分配の仕組みを見てみても、不動産運用の利益が個人投資家にしっかりと還元されるスキームになっており、同社の掲げる「投資家ファースト」のポリシーが浸透していることが感じられます。
また、武藤氏のインタビューの中で印象的であったのが、投資家の方とのコミュニケーションを重視されているという点です。COZUCHIは2025年6月期の目標として10万人の累計会員登録数を目指すとしており、不動産クラウドファンディングに興味のある方、同社の理念に共感された方は、利用を検討されてみると良いでしょう。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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