ドルコスト平均法は、毎月一定額の金融商品を買い続けることで相場変動のリスクを最小化する投資法であり、積立投資などに用いられています。大きなリターンは期待しにくいものの、リスクの減少や手間を省けることから投資初心者に向いた手法です。
この記事では、資産運用を行う際に知っておきたいドルコスト平均法のメリットやデメリットのほか、ドルコスト平均法による積立投資が向いている方の性格・傾向についても詳しくご紹介しますので、参考にしてみてください。
目次
- ドルコスト平均法とは
1-1.他の投資法との比較 - ドルコスト平均法のメリット
2-1.平均購入単価を下げることができる
2-2.損失リスクを軽減できる
2-3.少額から投資できる
2-4.毎月自動的に購入できる
2-5.相場を気にせず購入できる - ドルコスト平均法のデメリット
3-1.長期的な下降相場に弱い
3-2.ハイリターンが期待できない - ドルコスト平均法が向いている人
4-1.忙しくて投資を行う時間がない人
4-2.投資に詳しくない初心者の人
4-3.まとまった資金を持っていない人
4-4.長期的に資産形成を行いたい人 - まとめ
1 ドルコスト平均法とは
ドルコスト平均法は、特定の投資対象(銘柄)について一定の購入タイミングで一定の金額分を購入していく投資法です。例えば、ある投資信託(手数料を払ってプロに運用を任せる商品)を毎月1万円ぶん継続して購入するといったものです。
投資信託の相場変動は気にせず、常に一定額で買い続けていきます。少額で投資を始めつつ、損失リスクを抑えられることから投資初心者に向いた投資法とも言われています。
1-1 他の投資法との比較
ドルコスト平均法の具体的な購入方法について、他の投資法と比較してみます。例えば、A・B・Cの3人が手持ち資金5万円を用い、それぞれ以下の買い方で投資信託を購入したとします。下表は、月別の投資信託基準価格および3人の購入口数を表したものです。
購入資金:50,000円
購入対象:投資信託
購入回数:5回(月に1回)
基準価額(当初):14,000円Aさん:当初一括購入(50,000÷1.4=35,714口ぶんを購入)
Bさん:毎月1万口購入
Cさん:毎月1万円購入
項目 | 投資信託の基準価額(1万口あたり) | Aさん | Bさん | Cさん |
---|---|---|---|---|
1月目 | 14,000円 | 35,714口 | 10,000口 | 7,142口 |
2月目 | 10,000円 | 0口 | 10,000口 | 10,000口 |
3月目 | 6,000円 | 0口 | 10,000口 | 16,666口 |
4月目 | 8,000円 | 0口 | 10,000口 | 12,500口 |
5月目 | 12,000円 | 0口 | 10,000口 | 8,333口 |
合計保有口数 | – | 35,714口 | 50,000口 | 54,641口 |
購入金額合計 | – | 50,000円 | 50,000円 | 50,000円 |
平均購入単価 | – | 14,000円 | 10,000円 | 9,150円 |
3人それぞれで購入方法は異なりますが、全員手持ち資金の5万円を使い切ったとします。
- Aさんは、初回に全資金5万円を使って一括購入したところ、35,714口購入できました。
- Bさんは、5回に分けて毎月1万口ずつ購入した結果、合計で50,000口購入できました。
- Cさんは、5回に分けて毎月1万円ずつ購入した結果、合計で54,641口購入できました。
Aさんの保有口数が最も少なかったのは、購入時点の基準価格が14,000円と高かったためです。結果的に高値掴み(高値で購入した銘柄が値下がりすること)となり、一括購入にはある程度リスクを伴うことがわかります。
Bさんは、毎月定量(1万口)の購入のため、基準価格が高い時も安い時も同じ口数を買うことになりました。平均購入単価は10,000円ですが、定量購入法は最低投資金額が高くなることもあるため、少額で投資を始めたい方にはあまり向いていません。
Cさんは、毎月定額(1万円)の購入のため、基準価格が高い時は少ししか買えませんが、基準価格が安い時はたくさん買うことになりました。そのため、平均購入単価は9,150円に抑えることができ、3人の中では最終的に保有口数が最も多い結果となりました。
このケースはあくまで一例に過ぎませんが、このようにドルコスト平均法は平均購入単価を下げる効果があります。多くの投資信託では自動的に定額購入ができるので、資産運用は毎月コツコツと積み立てる形でしたいという堅実派の方に特に向いています。
2 ドルコスト平均法のメリット
前述したものも含めて、ドルコスト平均法には次のようなメリットがあります。
2-1 平均購入単価を下げることができる
ドルコスト平均法は、あらかじめ決めた金額で定期的に金融商品を購入していく投資法です。相場の変動にかかわらず常に一定の金額で購入するため、相場が高い時は少量、逆に相場が安い時は大量に購入することになります。投資のトータルでみると平均購入単価を下げる効果が期待できます。
2-2 損失リスクを軽減できる
例えば株を購入する場合、一度に全資金をつぎ込んで買った後で株価が下落すれば、前述のAさんのように損失になることがあります。一方、ドルコスト平均法では一度に全資金をつぎ込むのではなく、定期的に分けて金融商品を購入するため、投資行為を時間的に分散して高値掴みを回避することが期待できます。
2-3 少額で投資できる
ドルコスト平均法は、おもに10~20年など長期の積立で大きな資産を形成することを目的としています。一回あたりの積立額は家計を圧迫しない程度の少額でも、それを長い期間継続することで大きく増やしていくことができます。まとまった資金が手元にない方は、毎月の給与の中から少額でも積み立てていくなど、ドルコスト平均法による投資がおすすめです。
2-4 毎月自動的に購入できる
各金融機関はドルコスト平均法を用いた投資信託の積立投資サービスを用意しています。事前に購入銘柄・購入タイミング・購入金額・引き落とし銀行口座などの情報を設定しておけば、後は自動で買い付けを行ってくれます。金融商品をその都度購入するという手間や時間を省けるのも大きなメリットです。
2-5 相場を気にせず購入できる
株式などのトレードでは株価や為替相場を常に監視し、タイミングに応じて適切に購入する必要があるため、ある程度の専門知識や精神力が問われます。
しかし、ドルコスト平均法を用いた投資では、相場の変動に関係なく、あらかじめ決めた購入タイミングで金融商品を買っていきます。トレードのようにチャートを常に監視する必要がなく、また、相場の上げ下げに振り回されることもないため、精神的負担はあまりかかりません。
3 ドルコスト平均法のデメリット
次は、ドルコスト平均法の主なデメリットを見ていきます。
3-1 長期的な下降相場に弱い
相場が高い時には買い控え、安い時に大量に仕込む「ドルコスト平均法」は、一本調子の相場よりも、上がったり下がったりを繰り返し、最終的に上昇する相場のときに最大限効果を発揮する投資法です。長期的な上昇相場の場合には、投下資金以上の資産を形成することができます。
一方、長期的な下降相場の場合は、購入時期を分散しても、購入時の価格より相場が下がっていく可能性が高く、一定の期間内に相場が回復しなければ元本割れを起こす可能性もあります。長期的な下降相場はやがて回復に向かいますが、それまで我慢できずに積立投資を止めれば損失を被ることもあります。
ドルコスト平均法は損失するリスクを抑えた方法ではありますが、元本を保証するものではないことを念頭に置いておく必要があります。
3-2 ハイリターンが期待できない
投資で大きなリターンを得るには、金融商品の価格が下がった時に多く購入しておき、相場が上昇したタイミングで売却する方法などが一般的です。
しかし、ドルコスト平均法を用いた投資では、相場の変動に関係なく事前に決めたタイミングと一定の金額で購入するため、金融商品の価格が下がった時に大量に仕込むことは原則できません。そのためドルコスト平均法は、短期間で大きく稼ぐよりも、長期的にコツコツと増やすのに向いた手法といえます。
4 ドルコスト平均法が向いている人
株式投資などをする場合、一定の手間や時間が必要になります。投資についての勉強が必要な上、政治・経済・金融情勢の監視や相場変動について分析しなければなりません。仕事や家事で忙しく時間のない方にとっては大きな負担となります。
4-1 忙しくて投資を行う時間がない人
しかし、投資信託でドルコスト平均法を用いた場合、事前に購入銘柄・購入タイミング・購入金額を設定してさえおけば、後は自動的に購入・積立を行ってくれます。仕事や勉強、家事や介護に忙しく投資を行う時間がない方でも、無理なく続けていくことができます。
4-2 投資に詳しくない初心者の人
株式投資などでは、投資銘柄の購入タイミングが投資の成否を分けることになりますが、タイミングを上手に見極めるには、投資に対する一定の見識や経験が必要となります。
一方、ドルコスト平均法を用いた投資信託では、あらかじめ決めた時期に機械的に金融商品を購入していく投資法であるため、他の投資法のように購入タイミングや購入数量を気にする必要がなく、特別な見識や経験も必要としません。投資に詳しくない初心者の人でも始めやすいのがドルコスト平均法の大きな特徴です。
4-3 まとまった資金を持っていない人
株式投資を行う場合、単位株(購入するためのまとまった単位)を購入するための比較的大きな資金が必要です。また、不動産投資を行う場合でも土地や建物を購入できるまとまった資金を調達しなければいけません。
その点、ドルコスト平均法はあらかじめ決めた額を少しずつ定期的に積み立てていく投資法です。例えば、給与から毎月1万円分を投資に回して無理なく積み立てていくことが可能です。他の一般的な投資法のように、初めにまとまった資金が必要にならないので始めやすく、長期的に続けやすい投資法です。
4-4 長期的に資産形成を行いたい人
ドルコスト平均法は、少額の資金であってもそれを継続して積み立て、結果的に大きな資産に育てていく投資法です。積立期間は10~20年など長期に及ぶこともあり、その間、景気変動により購入・積み立てている金融商品の価格が下落する時もあります。
しかし、相場の変動に一喜一憂せず、コツコツと継続して積み立てを行う結果、やがて相場が回復して最終的に大きな資産が形成できるわけです。このようにドルコスト平均法は、投資につきもののリスクを時間的に分散できる手法のため、安全に資産形成を行いたい人に向いています。
5 まとめ
ドルコスト平均法は、平均購入単価を下げる効果がある上、「リスクを軽減する」「少額投資を可能にする」「手間がかからない」「相場変動が気にならない」など多くのメリットがある投資法です。
その反面、「長期的な下降相場に弱い」「短期間で大きく稼ぐことが難しい」などのデメリットもあります。ドルコスト平均法による積立投資を行う際は、このようなメリットとデメリットを十分認識した上で、上手に活用することが大切です。
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