ラップ口座とは、投資家がお金を金融機関に預けて運用を一任する専用口座のことです。投資商品を選ぶ必要がなく、購入・売却など運用にかかる手続きの一切をお任せできるので手間がかからない一方、手数料は高めで最低必要金額も数百万円以上に設定されているのが特徴です。
この記事では、ラップ口座取引のメリット・デメリット、主要なラップ口座について詳しくご紹介します。ラップ口座の仕組みや特徴を知りたい方や、主要証券会社のラップ口座を比較・検討したい方は参考にしてみてください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※この記事は2021年9月14日時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。
目次
- ラップ口座とは
- ラップ口座のメリット
2-1.投資の専門家におまかせすることができる
2-2.分散投資できる
2-3.運用報告が定期的にある - ラップ口座のデメリット
3-1.元本割れリスク
3-2.手数料が高い
3-3.最低投資金額が高い - 主要なラップ口座サービス5選
4-1.野村ファンドラップ
4-2.ダイワファンドラップオンライン
4-3.日興ファンドラップ
4-4.東海東京ファンドラップ
4-5.楽ラップ - まとめ
1 ラップ口座とは
ラップ口座とは、投資家が証券会社や運用会社に資産の運用を委託するため開設される専用口座のことです。
ラップ口座を開設する場合、金融機関と「投資一任契約」を結びます。投資一任契約とは、投資家が金融機関に対し、運用に関する投資判断や権限を包括的に委任するものです。この投資一任契約を結ぶと、金融機関は投資一任契約に基づき、投資家に代わって運用してくれます。
ラップ口座開設後は、ラップ口座を開設する際に行われる意向調査やヒアリングによって定められた運用方針に基づいて行われます。実際の運用は委託を受けた金融機関の判断によって実施されるので、銘柄の売買について投資家の意向をその都度伺うことなどは基本的にありません。
ラップ口座が誕生したのは1970年代のアメリカと言われており、その後、日本においても法改正や規制緩和を経て2000年代中頃には一般化し、2010年代中盤から口座数や資産残高が大きく増加しました。
特に、投資信託を対象としたファンドラップが代表例として認知されており、一般社団法人日本投資顧問業協会が公表する統計によると、2021年6月末時点における日本国内のラップ口座残高は11兆9,287億円 と同年3月比で7,202億円増加するなど、注目度は高まっています。
2 ラップ口座のメリット
ラップ口座を取引するメリットを確認していきましょう。
2-1 投資の専門家におまかせすることができる
投資を始めようとする場合、通常は自身で投資計画を立て、銘柄を選別し、売買のタイミングを見極める必要があります。
一方、金融機関と投資一任契約を結んでラップ口座を開設する場合、投資するお金の運用をプロに全て任せることができるので、取引を行う手間がかかりません。
ラップ口座では、口座開設時の意向調査やヒアリングに基づいて運用してくれるので、自身の希望が運営に反映されます。投資家の納得できる方針で投資のプロが運用してくれるという点がラップ口座の強みです。
2-2 分散投資できる
ラップ口座は分散投資にも適しています。分散投資とは、1つの銘柄や分野ではなく、様々な金融商品に投資をすることで価格変動のリスクを抑えようとする運用手法です。
例えば、日本における株式市場の主要指数である日経平均株価やTOPIXが暴落した場合、これらの株価指数や日本株のみに依存した運用をしていると、損失が想定以上に大きくなる可能性もあります。
しかし、アメリカやヨーロッパなど海外企業の株式あるいは株式以外の資産にも投資していれば、日本株暴落による損失をある程度抑えることができます。特に、金融機関で取り扱われているラップ口座は、日本株式に加え、海外先進国株式や海外新興国株式なども運用資産に含まれているため、このようなリスク分散を比較的簡単に行うことができます。
このほか、ファンドラップの投資先は、国内外の債券、不動産やデリバティブ商品など複数に分かれているので、様々な資産に分散しながら運用することができます。
2-3 運用報告が定期的にある
投資一任契約に基づくラップ口座を開設すると、4半期ごとに1回の目安で、資産状況に関する運用報告書を受け取ることができます。契約内容によっては頻繁に報告を受け取れるラップ口座もあるほか、疑問や不明点があれば直接問い合わせ可能な場合もあります。
ラップ口座は基本的に運用をお任せするスタイルですが、運用状況が気になる場合でもプロによる詳細な報告結果を受け取れる点もメリットの一つです。
3 ラップ口座のデメリット
ラップ口座を利用する際は以下の注意点を確認しておくことも大切です。
3-1 元本割れのリスク
ラップ口座は、金融機関に自身の資産を預け、実際の運用も一任する契約に基づいた専用口座です。しかし、運用結果は投資先ファンドの基準価額の変動に左右されるので、運用状況が良くない場合、元本を割り込み損失が発生する可能性もあります。
過去の実績が良好なファンドラップであっても、将来の成果を約束するものではないため、運用次第で成績の悪い期間が発生する場合もあります。
また、ラップ口座は利用者のヒアリングに基づいて運用方針が決定されるため、その診断結果が運用成績に影響する可能性もあります。
3-2 手数料が高い
ラップ口座では、手数料が発生する点にも注意が必要です。大きく分けると2種類の手数料があり、1つ目はラップ口座の利用にかかるコストです。金融機関などによりその名称や手数料は異なりますが、おおむね運用資産の1.5%前後(年率)がラップ口座利用料として必要になります。
2つ目は投資信託の取引に伴う手数料です。投資信託で運用されるファンドラップでは、信託報酬や信託財産留保額など投資信託の保有に伴う各種手数料が発生します。これは通常の投資信託を運用する際にも発生する手数料であり、投資家側の負担となっています。
このようにラップ口座では、証券会社に支払う手数料とファンド自体で発生する手数料の2種類があるため、通常の証券口座で投資信託を運用する際に支払うコストよりも高くなります。
3-3 最低投資金額が高い
ある程度まとまった投資資金が必要となる点もラップ口座の特徴です。比較的少額から始められる投資信託や株取引と比べ、金融機関に一定の運用を任せるラップ口座では、口座の開設に先立って金融機関が定める金額以上の投資資金を用意しなければなりません。金額はそれぞれ異なりますが、300〜500万円など数百万円単位での資金が必要です。
ただし、楽天証券の楽ラップなど、一部の金融機関では1万円からラップ口座を利用できるサービスを提供しているところもあります。
4 主要なラップ口座サービス5選
ラップ口座を開設するには取り扱っている金融機関を選ぶ必要があります。ラップ口座を取り扱っている主要証券会社は以下の通りです。
※2021年9月14日に調査した情報となります。また実際のラップ口座開設に際しては、ご自身で情報を確認した上、ご自身の責任において最終的にご判断ください。
※手数料率は全て年率・税込表記です。
4-1 野村ファンドラップ
ラップ口座名 | 野村ファンドラップ |
取扱金融機関名 | 野村證券 |
最低投資金額 | 500万円(バリュー・プログラム) |
手数料 | 0.583〜1.738% (固定報酬制・実績報酬併用制から選択) |
特徴・強み | ①証券会社大手としての運用実績 ②選べる2つのプログラム |
野村ファンドラップは、国内証券大手の野村證券が取扱うファンドラップです。野村ファンドラップは、アクティブ運用の「プレミア・プログラム」とインデックス運用の「バリュー・プログラム」から選択して運用できるのが特徴です。
プレミア・プログラムは国内外の株式・債券に加えて、REIT(不動産投資信託)やオルタナティブ(伝統的な資産以外の投資資産)を投資対象として、ベンチマークを上回る運用成績を目指すプログラムです。
最低投資金額は1,000万円で、為替ヘッジの有無を選べるほか、REITやオルタナティブを投資対象とする・しないなども選択可能です。
一方、バリュー・プログラムは国内外の株式・債券に加えて、REITを投資対象とし、インデックス運用を目指すプログラムです。最低投資金額は500万円となっており、為替ヘッジの有無を選べるほか、REITや新興国を投資対象に入れるかどうかも選択可能です。
手数料は保有残高や許容リスクに応じて変わり、固定報酬の場合はおおむね0.583〜1.738%となります。
4-2 ダイワファンドラップオンライン
ラップ口座名 | ダイワファンドラップオンライン |
取扱金融機関名 | 大和証券 |
最低投資金額 | 1万円 |
手数料 | 年率1.1% |
特徴・強み | ①国内証券トップクラスの預り残高 ②オンラインで簡単に始められる |
大和証券の投資一任契約に基づくラップ口座サービスは、預り残高2.4兆円、ラップ口座の資産残高では国内シェアの23.0%(2020年12月末時点、一般社団法人日本投資顧問業協会)という実績があります。
ダイワファンドラップオンラインの投資対象は、日本株式・海外株式・日本債券・海外債券などの主要資産に加え、国内外のREITなども含まれています。また、ダイワファンドラップオンラインでは、無料のオンライン診断結果を元に7段階のリスク許容度に応じた運用スタイルを提供しており、リスク許容度に応じた投資に簡単に取り組むことが可能です。
月1万円から積立投資ができるため、コツコツと資産を形成していきたいという方にはメリットがあります。
4-3 日興ファンドラップ
ラップ口座名 | 日興ファンドラップ |
取扱金融機関名 | SMBC日興証券 |
最低投資金額 | 300万円 |
手数料 | 0.22%〜1.32% (資産額に応じて変化) |
特徴・強み | ①10資産への分散投資 ②300万円から利用可能 |
日興ファンドラップは、SMBC日興証券が手掛けるラップファンドです。日興ファンドラップは300万円から運用可能です。手数料は資産額に応じて決定される仕組みで、おおむね0.22%〜1.32%です。また、資産額が大きいほど手数料は安くなります。
日興ファンドラップの特徴は投資対象の豊富さです。日本株や海外株式、債券、高利回り債券・オルタナティブ・コモディティなど様々な資産クラスが用意されています。また、個人投資家には取引できない投資信託などを資産に組み入れられるなど、証券会社の強みを活かしているのが特徴です。
4-4 東海東京ファンドラップ
ラップ口座名 | 東海東京ファンドラップ |
取扱金融機関名 | 東海東京証券 |
最低投資金額 | 300万円 |
手数料 | 0.5775%〜1.650% (固定報酬型・成功報酬型から選択) |
特徴・強み | ①選べる運用コース ②300万円から利用可能 |
東海東京ファンドラップは、愛知県を地盤とする東海東京証券が取扱うファンドラップです。許容リスクを選べる運用コースや、300万円から運用できる点が特徴です。
運用コースは、安定型・積極型・中立型・エクステンシブ型の4種類に分類されており、投資戦略に応じて選択することができます。また、オプションとしてストップロス機能が用意されており、事前に決めておいた下落率に達した場合、速やかに資産を現金化する設定も利用できます。
手数料は資産評価額や運用期間によって変動し、固定報酬型の場合、おおむね0.5775%〜1.650%です。
4-5 楽ラップ
ラップ口座名 | 楽ラップ |
取扱金融機関名 | 楽天証券 |
最低投資金額 | 1万円 |
手数料 | 最大0.715%(固定報酬型) 固定報酬最大0.605%+成功報酬として運用益の5.5%(成功報酬併用型) |
特徴・強み | ①1万円から運用可能 ②ロボアドバイザーによる運用診断 ③楽天証券口座のみで運用可能 |
楽ラップはネット証券大手の楽天証券が提供する投資一任サービスです。他のラップ口座では最低投資金額が300万円以上など高額ですが、楽ラップでは1万円から運用をスタートでき、かつ初期費用も無料なので、開始のハードルが非常に低いことが強みです。
運用はロボアドバイザーの診断により、保守型~かなり積極型(下落ショック軽減機能有無も選択可)の9種類の運用コースを決定した後、資産運用会社からのアドバイスのもと、世界中を投資対象としたインデックスファンドに投資する形で行われます。
手数料コースは2種類あり、楽天証券によれば、年間収益が2%を超えた際には固定報酬型のほうが安くなります。どちらのコースでも、上記に加え信託報酬に基づくファンド費用として最大0.255%が加算されます。手数料は時価評価額1,000万円超を境に4段階で安くなります。
まとめ
ラップ口座は、プロに投資を任せることができる投資専用口座です。投資資金はあるものの投資に詳しくないという方や、忙しくて投資をする時間がとれない方などに適していますが、手数料は高めになる点に注意も必要です。
また、基準価額の変動によって運用次第では元本割れになる可能性もあります。ラップ口座を検討する際には、各サービスの運用や手数料などを把握してから自身にあった運用コースや初期投資額を決めることが大切です。
HEDGE GUIDE 編集部 ロボアドバイザーチーム
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