コーポレートガバナンス・コードとは・意味

目次

  1. コーポレートガバナンス・コードとは
  2. コーポレートガバナンス・コードが注目される背景
  3. コーポレートガバナンス・コードの現状
    3-1.コーポレートガバナンス・コードの適用状況
    3-2.コーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コード
  4. コーポレートガバナンス・コードの課題と今後の展望
  5. まとめ

1 コーポレートガバナンス・コードとは

コーポレートガバナンス・コードとは、企業が適切で公正なコーポレートガバナンスを実践するための原則をまとめたものです。企業がコーポレートガバナンス・コードを実践することで、企業の持続的な成長と企業価値の向上、そして社会・投資家・経済全体の発展に寄与することを目的として設けられました。

コーポレートガバナンスは日本語で「企業統治」と訳されます。企業がすべてのステークホルダーの立場をふまえて適切な意思決定や透明度の高い情報公開などを行う仕組みを意味します。

日本取引所グループが公表しているコーポレートガバナンス・コードは、以下の5項目の基本原則により構成されています。

  1. 株主の権利・平等性の確保
  2. 株主以外のステークホルダーとの適切な協働
  3. 適切な情報開示と透明性の確保
  4. 取締役会等の責務
  5. 株主との対話

また、コーポレートガバナンス・コードは「プリンシプルベース・アプローチ(原則主義)」と「コンプライ・オア・エクスプレイン(comply or explain)」という運用手法を前提としています。

「原則主義」とは、コードでは原則のみを定め、細部の運用については各企業に任せるという方針です。また、「コンプライ・オア・エクスプレイン」は、すべての原則を遵守する義務を負うのではなく、もし遵守しない場合は理由を説明することを求めています。各企業がコーポレートガバナンス・コードの趣旨を理解した上で、自社の状況を判断し、自律的な運用をすることが求められているのです。

(※参照:日本取引所グループ「コーポレートガバナンス・コード~会社の持続的な成長と中長期的な企業価値の向上のために~」)

2 コーポレートガバナンス・コードが注目される背景

2014年に閣議決定された「日本再興戦略」において、コーポレートガバナンスの強化が方針の一つとして定義されました。

少子高齢化の環境下で日本経済を持続的に成長させるためには、企業価値の向上が急務です。そして、企業の持続的な成長を実現するうえで、ステークホルダーの利害を重視し、企業を適切に運営するための仕組みとして、コーポレートガバナンスの強化が重要な施策のひとつとして位置づけられたのです。

政府方針を踏まえて、東京証券取引所はコーポレートガバナンスを高度化すべく、2015年にコーポレートガバナンス・コード原案を公表しました。その後、2018年に一度改訂された後、2021年6月には、取締役会の機能発揮や、人材の多様性の確保、サステナビリティの観点などを踏まえ、二度目の改訂がされています。

ガバナンス向上が持続的な日本企業の成長と社会の発展を後押しするとの考え方のもと、東京証券取引所は上場企業によるコーポレートガバナンス・コードの採用を推進しています。

(※参照:日本取引所グループ「改訂コーポレートガバナンス・コードの公表」)
(※参照:野村総合研究所「コーポレートガバナンス・コード」)

3-1 コーポレートガバナンス・コードの現状

東京証券取引所の統計によると、2022年時点で上場企業の90%超がコーポレートガバナンス・コードへの対応状況を公開しており、着実にコードを順守する動きが広がっています。

また、事業会社向けのコーポレートガバナンス・コードに加え、金融機関向けにはスチュワードシップ・コードが設けられ、この2軸が経済と社会の持続的な成長の要になると期待されています。

3-1 コーポレードガバナンス・コードの適用状況

東京証券取引所が公表した2022年の調査によると、上場企業のうち3,770社がコーポレートガバナンス・コードを踏まえた報告書を提出しています。2023年1月末時点のプライム、スタンダード、グロース市場の上場企業数は3,801社のため、ほとんどの上場企業がコードの順守への取り組みを進めている状況です。

同調査では、社外取締役を1/3以上とする企業、法定および任意の指名委員会を設置する企業が共に90%以上にのぼるなど、公平で透明度の高い企業統治に取り組む企業が増えています。

一方で、中核人材の多様性の確保という点では、女性・外国人・中途採用者の中核人材登用に関する目標や状況を公表している企業は、プライム市場に絞っても70%強、スタンダード市場では40%台にとどまるなど、改善の余地がある項目も見られます。

(※参照:日本取引所グループ「コーポレートガバナンス・コードへの対応状況(2022年7月14日時点)」)

3-2 コーポレートガバナンス・コードとスチュワードシップ・コード

金融機関に対しては、「スチュワードシップ・コード」というルールが整備されており、日本におけるコードは「日本版スチュワードシップ・コード」と呼ばれています。

金融機関が投融資を通じて企業との対話を深め、顧客・受益者へ健全なリターンを還元することで、企業および経済全体の持続的な成長に寄与するための行動原則がまとめられています。

金融庁や東京証券取引所含む日本取引所グループは、企業に対してコーポレートガバナンス・コード、金融機関にはスチュワードシップ・コードの遵守を求めているのです。

金融と事業会社がともにガバナンスの高度化や情報開示の透明性を向上させることで、経済と社会の健全で持続的な成長が期待されています。

なお、スチュワードシップ・コードの用語集はこちらをご参考ください。
スチュワードシップ・コードとは・意味

4 コーポレートガバナンス・コードの課題と今後の展望

コーポレートガバナンス・コードの原則の順守状況は、項目によって差があります。

2022年の東京証券取引所の調査に基づくと、人材のダイバーシティの拡大や気候変動・サステナビリティに関する取り組みおよび情報開示などの項目は、更なる改善の余地があるでしょう。

また、東京証券取引所がコーポレートガバナンス・コードの順守を促す対象は、上場企業に限定されます。一方で、日本経済と社会全体の持続的な成長という観点からは、法人数の面で日本企業の大部分を占める非上場企業にも浸透するのが望ましいと言えます。

コーポレートガバナンスの更なる浸透と高度化に向けて、各項目における対応状況の改善や情報開示を進める企業が浸透することが期待されます。

まとめ

コーポレートガバナンス・コードは、企業のガバナンスの高度化を推進する目的でまとめられたものです。

金融機関向けのスチュワードシップ・コードと対になる存在とされていて、二つのコードが両輪となって機能することで、日本経済と社会の持続的な発展が期待されています。

すでに、上場企業におけるコードの遵守状況には一定の成果が見られます。更なる企業統治の高度化や遵守企業の拡大に向けて、東京証券取引所および各企業の取り組みが期待されます。

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伊藤 圭佑

資産運用会社に勤める金融ライター。証券アナリスト保有。 新卒から一貫して証券業界・運用業界に身を置き、自身も個人投資家としてさまざまな証券投資を継続。キャリアにおける専門性と個人投資家としての経験を生かし、経済環境の変化を踏まえた投資手法、投資に関する諸制度の紹介などの記事・コラムを多数執筆。