国際資本市場協会(International Capital Market Association、ICMA)とは・意味

目次

  1. 国際資本市場協会(International Capital Market Association、ICMA)とは
  2. ICMAが注目される背景
  3. ICMAのサステナビリティに関する取り組み
  4. ICMAの課題
  5. まとめ

1 国際資本市場協会(International Capital Market Association、ICMA)とは

国際資本市場協会(International Capital Market Association、ICMA)は、国際資本および証券市場の健全性と透明性を高めるため、規則・原則の策定、ガイダンスの発行や教育・トレーニング支援などを行う国際団体です。1969年に設立され、スイスのチューリヒに本部を置いています。世界60以上の法域における発行体や取引仲介者、資産運用会社、投資家を中心に620以上の会員で構成されています。

活動の対象領域として、以下が挙げられます(2024年3月時点)。

  • プライマリー(発行市場)
  • セカンダリー(流通市場)
  • レポ取引・担保
  • サステナブル ファイナンス
  • アセットマネジメント
  • フィンテック・デジタル化

プライマリー、セカンダリーおよびレポ取引・担保は、いずれも債券にかかわる市場や取引制度です。ICMAは、証券市場の中でもとくに債券市場の発展や秩序維持に取り組んでいるといえます。

(※参照:ICMA「About ICMA」)
(※参照:日本経済新聞「ESGファイナンスの頻出語「ICMA」って何?

2 ICMAが注目される背景

サステナビリティに資する金融商品の透明性と開示が促進されることを目的に、ICMAはサステナブルファイナンスについて以下の原則・ハンドブックを策定しました。

  • グリーンボンド原則
  • ソーシャルボンド原則
  • サステナビリティボンド原則
  • サステナビリティ・リンク・ボンド原則
  • クライメート・トランジション・ファイナンス・ハンドブック

これらの原則により、投資した資金が目的に沿って使われているか、成果が出ているかなどを投資家が確認しやすくなること。また各原則のフレームワークを参考にすることで、発行体が資金使途の開示方法を整理しやすくなることが期待されています。

サステナブルファイナンス市場の透明性を向上させ、投資家・発行体の双方にとってアクセスしやすい市場となるよう努めているのです。

(※参照:日本経済新聞「ESGファイナンスの頻出語「ICMA」って何?

3 ICMAのサステナビリティに関する取り組み

ICMAは、資本市場の発展や秩序維持のために多様な活動を行っています。今回はそのなかでも、グリーンボンド原則について紹介します。

グリーンボンド原則は2014年に策定された原則です。定期的に改訂が加えられており、最新は2021年版で、2022年に部分的な改訂が行われています。グリーンボンド原則では、グリーンボンドが次の4つの要素を核とすることを求めています。

調達資金の使途

調達資金が適格なグリーンプロジェクトのために使われており、証券にかかわる法的書類に資金使途を適切に記載すること。グリーンプロジェクトは環境での便益を有し、発行体によって評価されること。

プロジェクトの評価と選定のプロセス

グリーンボンドの発行体は、プロジェクトの目的や、グリーンプロジェクトと判断するプロセス、社会的・環境的リスクを特定し管理するプロセスを明確にすること。

また、タクソノミーや適格基準が存在する場合は、適合性や適格基準の充足状況を開示することも推奨されます。

調達資金の管理

グリーンボンドによって調達される資金に係る手取金は、他の資金と分けて管理し、資金の使用状況を正確に追跡できるように管理すること。また、資金の使用状況について開示すること。

レポーティング

発行体は、資金使途に関する最新の情報を、投資家が容易に入手できる状態で開示すること。また開示した情報は少なくとも年に1度は更新し、さらに重要な事象が発生したときには随時開示すること。

フレームワークと外部評価

さらに2021年の改訂では、透明性を高めるための重要な推奨項目として、「フレームワーク」と「外部評価」が設定されました。発行体は、自社のグリーンボンドプログラムが上記の4つの要素に適合していることを示し、証券に関する法定書類を投資家が参照しやすい形式にすること。そして4つの要素に適合していることを外部機関によって評価されることを推奨したのです。

ICMAが策定するソーシャルボンド原則も、グリーンボンドとおなじく調達資金の使途、プロジェクトの評価と選定のプロセス、調達資金の管理、レポーティングの4つを核としています。ソーシャルボンドは、これらの4つの要素に適合し、調達資金が適格なソーシャルプロジェクトに充当されるものと定義づけられています。

(※参照:ICMA「グリーンボンド原則 2021グリーンボンド発行に関する自主的ガイドライン2021 年6 月(2022年6月付録Ⅰ改訂)
(※参照:JSDA「ソーシャルボンド原則 2021ソーシャルボンド発行に関する自主的ガイドライン2021 年6 月

4 ICMAの課題

ICMAは、債券市場を主な対象とする団体です。サステナブルファイナンスについても、主に債券での資金調達に焦点を当てて取り組みを進めています。

その一方で、環境や社会に資する資金調達が全て債券で調達されるわけではありません。株式発行やクラウドファンディング、仮想通貨での調達など、資金調達には複数の方法があります。しかし債券以外の市場については、ICMA原則のようなグローバルなサステナブルファイナンス原則が整備されているとは言い難い状況です。

債券以外のサステナブルファイナンス領域においても、ICMAの取り組みのように枠組み作りが進むことで、様々な金融商品の透明性向上と開示が進み、市場が活性化されることが期待されます。

5 まとめ

ICMAは、世界の債券市場を中心に市場の拡大や秩序の維持に取り組む団体です。サステナブルファイナンスにおいては、グリーンボンドやソーシャルボンドなど、原則の策定を通じて透明性の向上に努めています。

ICMAの原則が今後さらに定着し、サステナブルファイナンス市場の拡大がより一層進むことが期待されます。

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伊藤 圭佑

資産運用会社に勤める金融ライター。証券アナリスト保有。 新卒から一貫して証券業界・運用業界に身を置き、自身も個人投資家としてさまざまな証券投資を継続。キャリアにおける専門性と個人投資家としての経験を生かし、経済環境の変化を踏まえた投資手法、投資に関する諸制度の紹介などの記事・コラムを多数執筆。