CDP(Carbon Disclosure Project)とは・意味

目次

  1. CDP(Carbon Disclosure Project)とは
  2. CDPを通じた情報開示
  3. CDPのスコアリング概要
  4. CDPでAスコアを取得した企業の例
    3-1.積水ハウス
    3-2.花王
  5. CDPの課題
  6. まとめ

1 CDP(Carbon Disclosure Project)とは

CDP(Carbon Disclosure Project)とは、企業や自治体による環境関連情報の開示プラットフォームを運営する非営利団体です。2000年に英国で設立されて以来、活動地域を世界に広げてきました。2021年度には、世界で13,000社を超える企業(世界の時価総額64%相当)と1,100以上の都市・州・地域が、CDPに対して情報を開示しました。

CDPは、投資家やCDPメンバー企業の要請を受けて企業に開示要請を行います。そして、開示内容や環境リスクへの対応状況などをふまえて、企業や自治体に対して評価を行います。

企業や自治体の開示情報とCDPによる評価は、機関投資家やCDPメンバー企業らが投資や購買の意思決定をする際の参考情報として活用されています。

(※参照:CDP「CDPキャピタルマーケッツ紹介資料」)

2 CDPを通じた情報開示

CDPのプログラムは、「CDPキャピタルマーケッツ」(投資家向け)、「CDPサプライチェーン」(一般企業向け)、「CDPシティ」(自治体向け)の3種類あります。

機関投資家やCDPメンバー企業らの要請を受けて、CDPは質問書を通じて企業に回答要請を行います。回答要請を受けた企業は、CDPの質問書に公開または非公開の形式で回答をします。回答内容をもとに、CDPがスコアリング評価、分析を行います。

CDPが要求する開示のカテゴリーは、徐々に拡充されています。2024年時点では、次の3つのカテゴリーでの情報開示が求められています。

  • 気候変動|脱炭素化を中心とした気候変動へのインパクトに関する情報開示
  • フォレスト|森林減少へのインパクトに関する情報開示
  • 水セキュリティ|水の保全に関する情報開示

また、環境問題の影響が大きいセクターに該当する企業は、セクター別の質問が設定されています。石油ガスや石炭のように、カテゴリーごとにセクター別の質問書が用意されている業種もあります。

  • 気候変動|金融サービス、農産物、食料品、石油ガス、石炭、電気事業、不動産など
  • フォレスト|石炭、金属・鉱業、製紙・林業など
  • 水セキュリティ|石炭、石油ガス、電力事業者、化学物質など

(※参照:CDP「CDPサプライチェーンレポート 2020ダイジェスト版【日本語】」、「CDPキャピタルマーケッツ紹介資料」)

3 CDPのスコアリング概要

CDPによるスコアリングは、以下の4つのレベルに評価が分かれています。情報開示に留まらず、環境リスクを把握・管理し、リーダーシップを持って環境リスクの解決に取り組む団体ほど、環境に対するエンゲージメントが高いと評価されます。

  • リーダーシップ(環境リスクをどのように解決するか)|A-~A
  • マネジメント(環境リスクや影響の管理品質)|B-~B
  • 認識(環境リスクが自社に及ぼす影響の把握)|C-~C
  • 情報開示(現状の把握)|D-~D
  • (無回答の企業のスコアはF)

CDPが評価を実施した後、開示主体のスコアや業界平均・地域平均スコアがまとめられたレポートが作成されます。レポートには、より高いスコアを獲得するために重視すべきポイントなどもまとめられており、今後の情報開示や環境リスクへの対応に役立てることが期待されています。

(※参照:CDP「スコアレポート解説資料」)

4 CDPでAスコアを取得した企業の例

CDP評価でAスコアを得た企業は、「Aリスト企業」とも呼ばれます。日本企業では、2023年に「気候変動」で110社が、「フォレスト」で7社が、「水セキュリティ」で36社がAリスト企業として選ばれました。

全カテゴリーでAスコアを獲得した企業の例として、積水ハウスや花王が挙げられます。両社の評価の背景を紹介します。

4-1 積水ハウス

積水ハウスは、日本を中心にグローバルに住宅・建築を手がける企業です。2023年度、「気候変動」「フォレスト」「水セキュリティ」全てにおいてAスコアを獲得しました。

積水ハウスは、評価されたポイントは多岐にわたるとの見解を示しています。一部を例示すると次のとおりです。

気候変動

  • Science Based Targets(SBT)など脱炭素に取り組む国際イニシアチブへの参画
  • 気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の枠組みに沿った気候変動リスク・機会に関する情報開示
  • 建築・建設分野における脱炭素化に向かうグローバルアライアンスGlobal ABCへの参加

フォレスト

  • 独自の「木材調達ガイドライン」を制定し、森林環境や地域社会に配慮した木材「フェアウッド」の調達に取り組む
  • 生態系に配慮した造園緑化事業「5本の樹」計画の実施
  • 自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)の指針に沿った情報公開

水セキュリティ

  • 水リスクに対して中長期的な視点をもち、水資源のサステナビリティ確保を重視
  • 生産拠点では、工場内の循環水の利用等により、効率的な水の使用に取り組む

以上のように各カテゴリーにおける多面的な取り組みが評価されて、それぞれの分野でAスコアを獲得しました。

(※参照:積水ハウス株式会社「CDP「気候変動」「フォレスト」「水セキュリティ」全分野最高の「Aリスト」国内住宅・建設業界初のトリプルAに選定、先駆的な取り組みと情報開示が評価」)

4-2 花王

花王は、2023年度に3カテゴリーでAスコアを獲得しています。同社がAを獲得するのは、「気候変動」分野では5回目、「フォレスト」分野では4回目、「水セキュリティ」分野では7回目、そして全カテゴリーでのA評価は4年連続です。

同社は、自社およびバリューチェーン全体の継続的な取り組みと積極的な情報開示が結実して今回の評価獲得に至ったと考えています。例えば以下の取り組みが評価されたと考えています。

気候変動

  • 2040年カーボンゼロ、2050年カーボンネガティブ達成の目標を策定
  • 花王として初めてとなるバイオマスを熱利用するプラントをスペインの工場内に建設
  • 特定の食器用洗剤の容器におけるプラスチック使用量を従来と比べて約40%削減

フォレスト

  • 同社にとって重要な自然資本であるパーム油の調達に関する活動を紹介する「パームダッシュボード」を同社ウェブサイト上に作成
  • パーム油の持続可能な調達に向けた方針や、課題の本質解決のための中長期計画、トレーサビリティの確認体制の構築
  • インドネシアの独立小規模パーム農園支援プログラムの実施や、持続可能なパーム油の生産と利用を促進するための円卓会議(RSPO)認証品調達の進捗状況などの公開

水セキュリティ

  • すすぎ1回を可能にした粉末スティック衣料用洗剤の開発
  • 気候や森林、水に関わるシナリオ分析を実施し活用

自社の製品製造が環境に与えるインパクトを評価し、各取り組みの進捗状況を管理、公開することで、サプライチェーン全体での環境負荷軽減に取り組んでいる点が評価されています。

(※参照:花王「花王、4年連続でCDPから「気候変動」「フォレスト」「水セキュリティ」の分野で最高評価を獲得」)

5 CDPの課題

2023年時点で日本のCDPを通じた開示企業数は1,985社、グローバルでは約23,000社に及びます。グローバル全体の開示企業数は前年比+24%となるなど、環境分野の情報開示が積極化する動きは進んでいます。

一方で、CDP質問書に回答するためには、温室効果ガス排出量などのインパクト算定や、自社だけでなくサプライチェーンを含めた気候・森林・水関連のデータの収集が求められます。複雑なデータを扱うための社内リソースやノウハウが十分でなかったり、社内の体制構築が必要となったりなど、開示企業側の実務負担の増加が課題として懸念されます。

企業の情報開示業務を支援するため、CDPはコンサルティング企業やIT企業らとパートナーシップを組んでいます。また、CDP質問書回答を支援するコンサルティング業務や、炭素会計システム等のプラットフォームやソフトウェアを提供する企業も増え始めています。

CDP質問書への回答を通じて、企業や自治体が環境リスクや自社の取り組みに対する透明性を高め、ひいてはリーダーシップを持って脱炭素や森林・水の保全に取り組む動きが広がることが期待されます。

(※参照:CDP「CDP 2023 企業の情報開示」)

6 まとめ

CDPは、投資家や企業らの投資判断・購買判断に資するよう、企業や自治体による環境関連情報の開示を促し、評価をする非営利団体です。日本でも約2,000社がCDPを通じて情報開示を行っており、花王や積水ハウスのように全カテゴリーでA評価を獲得した企業も存在します。

ただ一方で、開示業務には、複雑なデータを収集、管理するためのリソースやノウハウが欠かせません。またCDPの枠組みでは、情報開示に留まらず、環境リスクの管理、ひいては環境課題を解決するリーダーシップに発展させていくことが、企業や自治体に対して期待されています。

企業や自治体は、情報開示に必要な体制を整えること、そしてCDPによる評価を踏まえ、環境リスクを抑えるような取り組みにつなげていくことが今後求められてくるでしょう。CDPを通じた開示が多くの企業、業種に広まり、また組織内に浸透していくことで、サステナブルな社会の実現に向けた具体的なアクションに活かされることが望まれます。

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伊藤 圭佑

資産運用会社に勤める金融ライター。証券アナリスト保有。 新卒から一貫して証券業界・運用業界に身を置き、自身も個人投資家としてさまざまな証券投資を継続。キャリアにおける専門性と個人投資家としての経験を生かし、経済環境の変化を踏まえた投資手法、投資に関する諸制度の紹介などの記事・コラムを多数執筆。