S&P500の価格上昇と人気過熱はなぜ?背景と今後の見通し【2022年3月】

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S&P500種株価指数は、米国の格付け会社「S&P」が算出している米国の株価指数です。ニューヨーク証券取引所やNASDAQに上場している大型株500銘柄で構成されており、米国市場全体の時価総額の約80%を占めています。ですから、市場全体の動きを表す指標として機関投資家のベンチマーク(運用指標)として、広く利用されています。

この記事では2021年にS&P500種株価指数が大きく上昇した背景と、今後の見通しについて解説します。

目次

  1. S&P500種株価指数は2021年に大きく上昇
  2. 米国株は上位5銘柄に資金が集中
  3. 2022年になってS&P500種株価指数は売りが優勢に
  4. 3月のFOMCで利上げ決定
  5. ロシアのウクライナ侵攻
  6. まとめ

1.S&P500種株価指数は2021年に大きく上昇

2020年3月のコロナショックで、S&P500種株価指数は2,191.86ポイントまで下落しましたが、その後はFRB(米連邦準備制度理事会)による大規模な金融緩和によって上昇。昨年(2021年)は4,766.18ポイントで取引を終了し、年間で約27%の上昇となりました。

2021年のS&P500種株価指数で最も上昇率が高かったのは、エネルギー関連株でした。ただ、S&P500種株価指数の上昇は、時価総額の大きいアップルやマイクロソフト、アマゾン・ドット・コムなど大型ハイテク株がけん引しました。

そして、2021年の世界の株式市場は米国の「一人勝ち」が鮮明になりました。世界の株式市場の動向を表すMSCIの「オール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)」は、2021年に約18%上昇しましたが、米国株が24%上昇したのに対し、米国株を除く世界株は9%高にすぎません。

また、「オール・カントリー・ワールド・インデックス(ACWI)」の中に占める米国株の時価総額シェアは11月末に過去最高の61.5%に達しました。

2.米国株は上位5銘柄に資金が集中

米国株のシェアが高くなりすぎたので、世界の株式に投資しても分散効果は限られるようになったのです。そして昨年の米国株の上昇を引っ張ったのは、限られた超大型株です。とくに時価総額が3兆ドルに迫ったアップルなど、巨大IT企業に投資家の資金が偏る一極集中の構図が強まりました。

S&P500種株価指数に占める上位5銘柄の時価総額シェアは、2021年12月に23.9%と全体の4分の1に迫りました。2000年のITバブル時が18.4%なので、1970年台以来の高い水準になっているのです。

米国の大型株に資金が集中する一方、小型株で構成するラッセル2000株価指数は2021年末にかけて安くなりました。「破壊的なイノベーション」を見込める銘柄に集中投資する「アーク・イノベーションETF(ARKK)」も大きく下落。2020年には昨年比2.5倍と、好調な運用結果を残しましたが、中小型株の成長株中心の運用が裏目にでたのです。

3.2022年になってS&P500種株価指数は売りが優勢に

2020年3月のコロナショック時から順調に上昇してきたS&P500種株価指数ですが、2022年に入って売りが優勢になっています。1月のS&P500種株価指数は5.3%安となり、10月中旬以降の上昇分を帳消しにしました。

また、ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数は、さらに大幅な下落。1月は9%安となり、2020年3月以来の大幅値下げを記録しました。

これはFRB(米連邦準備制度理事会)が年内に利上げをするとの観測が高まったからです。さらに、2月10日に発表されたCPI(消費者物価指数)は、前年同月比7.5%上昇し、1982年2月以来約40年ぶりの高水準となりました。

インフレ懸念が加速しているので、FRBはインフレを抑制するために利上げを行うことにしたのです。

4.3月のFOMCで利上げ決定

FRBは今年3月15、16日にFOMC(連邦公開市場委員会)を開催し、政策金利であるFF(フェデラル・ファンド)金利の誘導目標0.00~0.25%を0.25ポイント引き上げ、0.25~0.50%とすることを決定しました。

2020年3月から続けてきたゼロ金利政策を解除し、量的緩和も終了することになりました。今後は金利の引き上げペースと、量的引き締めの実施時期に市場の関心が移っています。

2022年の利上げ回数は7回となる見通しで、金利上昇懸念からハイテク株中心に上値の重い展開が続いているのです。

5.ロシアのウクライナ侵攻

FRBによる急速な金融引き締めは、S&P500種株価指数の大きな重しとなっています。さらに2月にロシアのウクライナ侵攻が加わり、株式市場の不透明感は一気に高まりました。

S&P500種株価指数はロシアがウクライナに侵攻した2月第4週に4,114.65ポイントまで下落。1月につけた史上最高値4,818.62ポイントから約15%下落し、調整局面入りとなりました。

1998年のロシア通貨危機の時には、米国の大手ヘッジファンドLTCM(ロングターム・キャピタル・マネジメント)が巨額の損失をだして破綻。世界の金融市場に大きな影響を与えました。

ロシアのデフォルト懸念が再び高まっており、米国の株式市場も上値の重い展開になっています。3月下旬からS&P500種株価指数は戻り歩調にありますが、しばらく値動きの荒い展開が続きそうです。

まとめ

S&P500種株価指数は米国の代表的な株価指数で、世界中の投資家が注目しています。その動向は日本株にも大きな影響を与えるので、国内株しか取引しない投資家も、S&P500種株価指数の値動きは確認するようにしてみてください。

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山下耕太郎

一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は金融ライターをしながら、現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。ツイッター@yanta2011