将来への備えとして投資や資産運用を検討する方が増えています。特に投資商品の中でも初心者の方が取り組みやすいのが「投資信託」「ETF」「株式投資」です。ただし、投資商品を選ぶ際は、勧められるままに購入するのではなく、各商品の特徴やデメリット・リスク等をよく確認してから決めることが大切です。
そこでこの記事では、投資初心者の方向けに投資信託、ETF、現物株式のそれぞれの違いや、メリット・デメリットについて紹介します。興味のある方は自分に合う商品選びの参考にしてみてください。
目次
- 投資信託の特徴・メリット
1-1.初心者にも始めやすい
1-2.少額で始められる
1-3.種類が豊富でNISAにも対応している - 投資信託のデメリット
2-1.取引コストが高め
2-2.元本の保証はない - ETFの特徴・メリット
3-1.取引コストが安め
3-2.リアルタイムで値動きが確認できる
3-3.流動性が高い - ETFのデメリット
4-1.最低投資金額が高い
4-2.NISA対応商品が少ない - 現物株式の特徴・メリット
5-1.大きなリターンが見込める
5-2.流動性が高く現金化しやすい
5-3.株式投資は一般NISAに対応している - 現物株式のデメリット
6-1.価格変動が大きく、元本割れもしやすい
6-2.分散投資をするにもお金がかかる
6-2.株式投資はつみたてNISAには対応していない - まとめ
1 投資信託の特徴・メリット
投資信託(投信)とは、組成されたファンドのために投資家から資金を集め、専門家がファンドを運用してその利益を投資家に還元する投資商品です。
投資信託のファンドは、商品のコンセプトに基づいて複数の株式や債券などの銘柄で構成され、目標利益であるベンチマーク指標を達成できるように運用されます。各ファンドの投資方針は、商品内容を詳しく説明した目論見書という書類で確認することができます。
それでは投資信託のメリットを確認してみましょう。
1-1 初心者にも始めやすい
投資信託は、投資初心者から経験者まで幅広く人気の高い商品です。初心者でも始めやすい理由は、投資において重要なポートフォリオ(投資する銘柄の構成)をプロが決定してくれるからです。
ポートフォリオは、商品のコンセプトや目標とする利益水準、リスクの許容度を考慮して銘柄の種類や各銘柄の構成比率等を投資家自身で決定する必要があります。しかし、投資信託では適切なポートフォリオをプロが代行して作ってくれるので、投資先に関する情報やポートフォリオ作成のノウハウがない初心者でも運用することができます。
プロによる運用では適時売買やポートフォリオの修正が行われます。出資した後の運用をお任せできるので、運用する時間を確保できない忙しい方にも向いています。
1-2 少額で始められる
少額から投資ができるのは投資信託の代表的なメリットです。最低では数百円からでも始められる投資信託商品も数多くあります。株式や債券の購入では最低購入単位で購入しても数十万以上が必要になることが多いのですが、投資信託では少額資金で分散投資も自動的にできるため、あまりお金をかけずにリスクを抑えた投資が可能になります。
また、一度に投資せず、少しずつ積み立てて投資をすることもできるため、毎月少しずつ運用額を増やしていく長期投資にも向いています。子どもの教育資金や老後の生活資金をゆっくり貯めるのに向いた運用方法です。
1-3 一般NISA、つみたてNISAどちらでも投資できる
投資信託の商品は、ファンドマネージャーが設計して証券会社や金融機関で販売されます。顧客のニーズに合わせ、リターンの大きい株式を中心とした商品から安全性の高い債券、外貨、金など様々なコンセプトの商品が展開されており、自分の投資への考えに合った商品を選べるのも投資信託のメリットです。
また、NISA(少額投資非課税制度)に対応した投資信託商品もあるので、投資した金額から発生した利益のうち一定額(120万円まで)は非課税扱いとなります。通常、運用益や売却益に対しては20.315%の税金が発生するため、投資資金の少ないうちは積極的に利用するのがおすすめです。
2 投資信託のデメリット
少額で始めやすい投資信託は、手数料(取引コスト)等がデメリットになります。しっかり確認しておきましょう。
2-1 取引コストが高め
投資信託では、信託商品そのものは安く購入することができますが、購入額のうち取引にかかるコストの割合がやや高くなります。
例えば購入時には「購入時手数料」「信託報酬」の2種類の費用がかかります。購入時手数料は商品購入額の0%~3.2%前後がかかります。購入手数料が無料の商品は「ノーロード」商品と呼ばれます。
なお2019年末頃から、ネット証券各社が投資信託を「ノーロード」で販売するようになってきています。たとえば、SBI証券では、取り扱っている約2,680本(2020年10月7日時点)の投資信託ほぼすべてが1銘柄100円から購入できるようになっており、投資信託の購入手数料はすべて無料(※インターネットコースのみ)となっています。
信託報酬は、投資信託の保有期間中はずっと発生する費用であり、購入している金額の0.1~2.5%(年率)程度が目安です。これらの費用は商品によって異なります。また、投資信託を売却処分する際の費用として「信託財産留保額」が必要となり、運用資産の0~0.5%ほどかかります。
投資信託は、リスクとリターンのバランスをとるために分散投資が行われるので、短期的に大きなリターンを望む方には向きません。むしろ取引コスト+税金が発生するので、購入時手数料がかかるケースなどでは短期的な運用の場合に手数料のほうが大きくなる可能性もあります。
そのため、投資信託商品を選ぶ際は、このような手数料が安い販売会社を選ぶことも大切になります。
2-2 元本の保証はない
投資信託はプロがリスクとリターンを検討して投資商品を作っていますが、それでも元本割れする可能性はゼロではありません。
投資信託商品では、短期・中期・長期と期間を定め、その期間中に利益を発生させることを目的としているため、途中経過で基準価額がマイナスになり、元本割れを起こすこともあります。一方、購入時よりも運用期間(償還期限)の終了時にプラスになっていれば、戻ってくるお金もプラスになります。
3 ETFの特徴・メリット
「ETF」とは「Exchange Traded Funds」の略で、日本では「上場投資信託」とも呼ばれます。ETFは日経平均株価やTOPIXといった指数(インデックス)や金価格などの特定対象に連動した値動きが起こるようにファンドの設計が行われている投資信託商品です。投資信託の種類の一つですが、ETFは投資信託商品が株式などのように上場しているのが特徴です。
投資信託と株式のいいとこ取りをしたような投資商品で、ETFで慣れてから株式投資にチャレンジするという投資家も少なくありません。ETFは投資信託の進化版と呼ばれることもあり、その安定性や商品の種類の多さなどから人気があります。
3-1 取引コストが安い
ETFは一般的な投資信託と比較して取引コストが安いのが特徴です。投資信託の購入には販売手数料がかかりますが、ETFの場合は上場しているため、国内株式の購入時と同等の手数料で購入できます。
信託報酬は純資産額の0.1~1.0%程度が多く、投資信託の0.1~2.5%と比較すると低いのが特徴です。取引コストが安い分、リターンを狙いやすいということで投資家に人気があります。
3-2 リアルタイムで値動きが確認できる
ETFは株式や指数と同様に市場で常に値動きがあります。リアルタイムで値動きを確認することも可能なので、市場環境の変化などがあれば、すぐに売買を検討することが可能になります。また、知識のある人なら毎日の値動きを分析して投資のタイミングを図ることもできます。
3-3 流動性が高い
ETFは、取引コストが安い上、上場しているために市場ですぐに売買することができます。お金が急に必要になっても現金化しやすいなど、流動性の高さも特徴です。また、株式のように信用取引を行うことも可能です。
4 ETFのデメリット
ETFのデメリットについてもしっかり確認しておきましょう。
4-1 最低投資金額が高い
ETFでは商品の購入にかかるコストは低いのですが、最低投資金額は高めです。ETFは株式と同様に銘柄ごとに売買単位が定められており、購入にあたっては最低数千円~数万円が必要となる商品が多くなります。さらに一般的な投信のように積み立て投資ができず、ある程度まとまった資金を準備して投入する必要があります。
4-2 つみたてNISA対応商品が少ない
ETFは少しずつ商品が増えてきていますが、まだまだ多くの商品はつみたてNISAに対応していません。つみたてNISAの非課税を受けられる商品は中長期の資産運用を意識したものであり、手数料の水準や分配金の支払い条件など積み立てや分散投資に適した商品と定められています。
ETFはこのような条件に不向きな商品が多いため、非課税枠の恩恵を受けることができないケースも多くなります。ETFでNISAを利用したい方は、個別のETF商品ごとに必ず確認しましょう。
5 現物株式の特徴・メリット
企業が発行する株式を買ったり売ったりして利益を狙うのが株式投資です。株式投資には「現物株を購入するパターン」と「信用取引を行うパターン」がありますが、ここでは初心者の方でも始めやすい現物株式のメリット・デメリットをご紹介します。
現物株式は投資先企業によって投資の性格も変わりますが、一般的にはハイリスク・ハイリターンの投資です。株式購入によって企業の経営に参画できたり、企業を応援できたりと、企業との関わりを深めることができることも特徴です。
5-1 大きなリターンが見込める
株式によるリターンは大きく分けて保有することで得られる「配当金」と株式売却時の「キャピタルゲイン」の2種類があります。「配当金」は企業の利益から一部を株主に分配するもので、平均利回りは2%前後(東証一部、2020年3月時点)です。また、株式購入時と売却時の価格差による利益である「キャピタルゲイン」は、ときには出資した金額の何倍もの金額になることもあります。
さらに、株式を保有していることでさまざまな株主優待をもらえたり、株主限定のイベントなどに参加できたりするなど、お金以外のメリットがあることも多いのが特徴です。
5-2 流動性が高く現金化しやすい
一般的に株式投資では上場している上場株に対して投資するので、株式市場を通してすぐに取引を行うことができます。現金が必要になればすぐに株式を売却して現金化できるため、思ったような値動きにならなかった場合でも株を売り、別の株を買い戻すことも可能です。取引手数料も安いため、取引におけるコスト負担が軽いのも特徴です。
5-3 株式投資は一般NISAに対応している
株式投資は基本的にNISAの投資対象となっており、配当金やキャピタルゲインの合計120万円までの年間利益が非課税扱いとなります。また、外国株もNISAの対象となるので、米国株や中国株などに投資をしたいと考えている方はぜひ利用を検討されてみると良いでしょう。
株式投資は投資信託やETFと比べて価格変動幅が大きい傾向にあるため、NISAで最も恩恵を受けやすい投資商品と言えるでしょう。
6 現物株式のデメリット
現物株式はリターンの大きい投資ですが、それに比例してリスクも大きいのが特徴です。デメリット・リスクをしっかりと確認しておきましょう。
6-1 価格変動が大きく、元本割れもしやすい
株式投資ではリアルタイムに株価が大きく変動します。株価は元本割れに対する保証がなく、企業が倒産するなど最悪の場合には株式の価値がゼロになることもあります。
また、投資家は企業の業績や経営状態、市場環境などを入念に調べ、チャート(株価の値動き)を見ながら投資判断を下す必要があります。そのため、株式投資で安定的に利益を狙うには、ある程度の知識と経験を要します。
6-2 分散投資をするにもお金がかかる
現物株式は、企業の業績や市場の動向によって価格が大きく動きます。一時的に業績が好調でも、世界的な景気動向や為替の動きの影響で株価が急に下がることもあり、その逆もあります。こうしたリスクがあることから、プロの投資家はさまざまな手段でリスクを軽減しており、そのために行われるのが分散投資です。
分散投資では、業界や業種の異なる複数の企業の株式に投資を行うことで、どのような市場環境になってもなるべく一定の範囲内で資産額が上下するようにコントロールします。しかし、複数銘柄に投資する場合はそれだけの資金が必要になる上、運用する難易度も高くなります。
6-3 株式投資はつみたてNISAには対応していない
つみたてNISAの投資対象は一定条件を満たした投資信託のみとなっているため、株式投資は対象外となります。積立投資を非課税で取り組みたいという場合は、株式ではなく投資信託かETFへの投資となります。
5-3 一般NISAに対応している
株式投資は基本的にNISAの投資対象となっており、配当金やキャピタルゲインの合計120万円までの年間利益が非課税扱いとなります。非課税枠を十分に使い切れるだけのリターンも見込めるため、NISAで最も恩恵を受けやすい投資商品と言えるでしょう。
まとめ
人気の高い投資の方法として、投資信託、ETF、現物株式の3種類をご紹介しました。それぞれメリット・デメリットは大きく異なるので、優劣をつけるものではありません。ただ、初めて投資を行うという場合は、まずは少額投資・リスク分散が簡単な投資信託から検討を始めてみると良いでしょう。投資信託で知識や経験を積んでから株式投資を始めたという投資家の方も少なくありません。
この記事を参考に投資信託や株式投資等を始める場合は、運用資金や投資目的を明確にしてから、ご自身に合った投資方法を検討してみてください。
HEDGE GUIDE 編集部 投資信託チーム
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