定年退職まで10年を切り、そろそろ老後の準備を本格的に始めようと思っている50代の方もいらっしゃるのではないでしょうか。資産運用の手段として最もポピュラーなのは銀行預金ですが、超低金利なため利息でお金を増やすことは難しいのが現実です。
そこで注目したいのが、投資信託やiDeCo(イデコ)など低リスクでも計画的にお金を増やすことのできる金融商品です。
この記事では、50代の投資デビューに適した投資方法、メリット・リスクについて詳しく解説しています。老後の資産形成に向けて投資を始めたい50代の方は、参考にしてみてください。
目次
- 50代で始めたい投資とは
- 50代が行う投資のメリット・リスク
2-1.インフレに備えられる
2-2.お金を増やせる
2-3.様々なリスクも伴う - 50代の投資デビューに適した金融商品
3-1.投資信託
3-2.iDeCo(イデコ) - まとめ
1 50代で始めたい投資とは
50代になると子供が独立するタイミングでもあり、教育費や住宅ローンの支払いが一巡することでお金が貯めやすくなる時期です。そのため、老後に向けた資産形成が進みやすく、投資を始めるのに向いています。
ただし、老後資金の運用ではお金を減らさないことが大切です。例えば、株式投資やFXは短期で大きな利益を狙える一方、取引方法によっては投資元本以上の損失を出すリスクも高くなります。
50代から低リスクで計画的にお金を増やせる方法として積立投資が挙げられます。積立投資とは、投資信託のような価格が変動する金融商品をある一定の期間ごとに、同じ金額ずつ買い付ける投資スタイルです。
毎月5万円などあらかじめ決めた金額で定期的に買い付けることから、金融商品の値段が高いときには少なく、値段が安いときには多く投資できます。そのため、金融商品の高値掴みによって損失を被るリスクを抑えられるのが特徴です。
また、積立投資は、投資する期間が長いほど複利効果を得られます。例えば、50歳〜70歳までの20年間、毎月5万円ずつ積み立てる場合、年率3.0%で運用できたと仮定すると、投資資金1,200万円は約1,660万円に拡大します。
このように50代から積立投資を始めても老後に必要なお金を貯めることが可能です。
2 50代が行う投資のメリット・リスク
50代が投資を行う際のメリットおよびリスクは以下の通りです。
2-1 インフレに備えられる
インフレとは、モノやサービスの値段が継続して上がることを指します。物価が上がることでお金の価値は相対的に下がるため、貯金している現金の価値も目減りすることになります。
一方、株式や投資信託などの有価証券に投資していた場合、モノやサービスの値段の上昇が企業の収益を押し上げることから、資産の価値は相対的に下がりません。そのため、投資を行うことでインフレによる資産価値の目減りを防ぐことが可能です。
2-2 お金を増やせる
日本は長年超低金利の状態が続いており、銀行にお金を預けていてもお金をほとんど増やせません。一方、投資は銀行の預貯金よりも高い利回りが期待できるため、将来必要なお金を効率的に作ることができます。
例えば、65歳から90歳までの25年間で毎月4万円の生活費が不足するとして、老後に1,200万円必要となるケースを想定します。この金額を銀行預金で毎月5万円貯めていく場合、約20年かかりますが、投資商品で毎月5万円積み立て、年率3%で運用できたとすると約16年で1,200万円に到達できます。
投資元本が大きいほど、運用結果が良好なほど、将来的に資産は大きく増えることになります。実際には損失が出ることもあり、常に右肩上がりに資産が増加していくわけではありませんが、経済成長は上下動を繰り返しながら今も続いているため、長期的な目線で投資をすればその恩恵を期待できます。
2-3 様々なリスクを伴う
投資におけるリスクとは、変動幅のことを指します。値動きの変動幅が大きければリスクが高く、反対に変動幅が小さければリスクが低くなります。リスクとリターンは比例する関係にあるため、リターンが大きいほど投資元本を割り込む可能性も高まります。
代表的な投資リスクは以下の通りです。
価格変動リスク | 有価証券の価格は相場や経済環境など様々な要因によって変動します。価格変動リスクは高いほど得られるリターンは大きくなりますが、同時に元本を割り込む可能性も高まります。売却する時の価格が購入した時の価格に比べて、高くなるのか安くなるのか分からないリスクです。 |
信用リスク | 国や企業などの財務状況に関わるリスクです。信用リスクが高いほど、投資する国や企業が破綻する可能性があります。例えば、投資先の企業が倒産したときには株式価値は大きく毀損するため、投資元本のほとんどを失うことにもなりかねません。 |
為替変動リスク | 為替レートの影響を受けて投資商品の価値が変動するリスクです。外貨建てで取引される金融商品は、常に為替変動リスクにさらされており、為替が円高に振れることで投資商品の価値が目減りする原因となります。 |
金利変動リスク | 金利が変動することで価格に影響を与えるリスクです。金利は債券価格に影響を与えるため、債券に投資している場合には注意が必要です。なお、基本的に金利が上がると債券の価格は下落します。 |
カントリーリスク | 投資している国や地域の情勢が変わることによって市場全体が混乱するリスクです。カントリーリスクは新興国ほど高いといわれており、取引や法制度に新たな規制が設けられることで、投資商品の価格が大きく変動する可能性があります。 |
なお、これらのリスクは全ての投資商品に当てはまるわけではありません。投資するときには商品ごとのリスクの高さについても考える必要があります。各商品の一般的なリスクの高さは次のようになります。
金融商品 | リスク | リターン |
---|---|---|
預貯金 | 小 | 小 |
債券 | 小 | 小 |
投資信託 | 中 | 中 |
株式 | 大 | 大 |
特に、50代で投資を始める際は、これまでの現金資産を減らさないことが大切です。そのため、値上がり益を狙ったリスクの高い商品はあまり向かず、比較的リスクの低い債券や投資信託のような商品に投資するのが適しています。
3 50代の投資デビューに適した金融商品
50代の方が投資を始めるのに向いた投資方法は、「投資信託」「iDeCo」などです。以下、各特徴を詳しく見ていきましょう。
3-1 投資信託
投資信託とは、運用のプロであるファンドマネージャーが投資家たちから集めたお金を株式や債券などに投資し運用することで、得られた利益を還元する金融商品です。毎日算出される基準価額を元に取引され、購入した価格よりも高い値段で売却することで、キャピタルゲイン(売却益)を得ることも可能です。
投資信託の種類
投資信託の運用タイプには、大きく分けて「インデックスファンド」「アクティブファンド」の2種類があります。
インデックスファンドとは、日経平均株価やNYダウなどの指数に連動した運用成果を目指す投資信託です。指数は市場全体の値動きを表しているため、インデックスファンドに投資することで投資リスクを下げる分散効果も得られます。また、投資にかかる運用コストが安く、堅実なパフォーマンスを期待することができます。
一方、アクティブファンドは指数以上の運用成果を積極的に狙いに行く投資信託です。運用を担当するファンドマネージャーの力量に左右されるため、購入する際は商品の目利き力も求められます。手数料も高めに設定されている一方、運用が好調な時は大きなリターンを得られます。
投資信託のメリット・デメリット
投資信託は、最低購入価格が低く設定されています。そのため、株式投資と比べてまとまった資金を用意する必要はなく、金融機関によっては最低100円から購入可能です。
また、投資信託は運用のプロが自身に代わって運用することから、日々のマーケットを見る時間や企業を調査する手間が省けます。投資信託は株式や債券などの資産が複数組み込まれており、投資の分散効果が期待できることもメリットです。
一方、投資信託に投資する際には、購入時手数料、信託報酬手数料、信託財産留保額などのコストが発生します。
信託報酬とは、投資信託を保有している間にかかるコストであり、銘柄によっても異なりますが年率0.1%〜2%程度の費用が日割りで運用資産から差し引かれます。信託財産留保額とは、投資信託を解約したときにかかるコストであり、売却代金から0.1%〜1%程度差し引かれますが、無い場合もあります。
購入する投資信託によってコストは大きく異なるため、始めたばかりの時は運用コストの低い商品を選ぶことも大切です。
また、投資信託はタイムリーな取引に向いていないこともデメリットになります。投資信託の値段を表す基準価額は1日1回の公表であるため、たとえ市場が大きく変動したとしても取引価格に反映されるのは翌営業日です。
さらに、利益に税金がかかる点もデメリットです。投資信託の税金は売却益と分配金それぞれに対して所得税等20.315%が課税されます。
なお、つみたてNISAやNISAなどの税制優遇制度を利用すると、毎年一定額の投資から得られた利益が非課税になるので、より低コストで資産形成を狙うことができます。
項目 | NISA | つみたてNISA |
---|---|---|
投資期間 | 5年 | 20年 |
非課税枠(年間) | 120万円 | 40万円 |
非課税枠(合計) | 600万円 | 800万円 |
投資対象 | 株式等、投資信託 | 金融庁指定の投資信託・ETF |
投資方法 | 制限なし | 継続的な積立投資 |
3-2 iDeCo(イデコ)
iDeCo(イデコ)とは、個人型確定拠出年金のことです。毎月一定の金額を掛け金として拠出し、運用商品を購入することで、60歳以降に積立金を自身の年金または一時金として受け取れる仕組みです。
iDeCo(イデコ)では、拠出した掛け金の全額をその年の所得から控除できるほか、60歳以降に一時金として受け取る場合、加入年数に応じて金額が大きくなる退職所得控除が適用されるため、長期間運用するほどその恩恵を受けられます。
また、運用益についても非課税になるため、通常かかる20.315%の税金を払う必要がありません。
一方、デメリットには60歳まで拠出した積立金を引き出せないことや、個人の属性によって掛け金に上限があること、加入期間として10年以上必要であることなどが挙げられます。
50代から始める投資としてiDeCo(イデコ)を利用した場合、加入期間は限られるものの所得控除の恩恵を期待できます。
まとめ
50代からの投資デビューには、iDeCoやNISAなどの税制優遇制度を活用した投資信託の積立投資が向いています。投資にはリスクが付きものですが、リスクをきちんと管理することで、老後に必要な資金を効率良く用意することができます。
これから初めて投資をする方は、各金融商品の特徴やメリット・デメリットをしっかりと確認した上で、ご自分に合った投資方法を検討してみてください。
HEDGE GUIDE 編集部 投資信託チーム
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