2023年12月末の日経平均株価は33,464円で終え、騰落率は22年末比で28.24%高(7,369円高)と好調でした。
株価上昇の要因としては、2023年は東京証券取引所がPBR(純資産倍率)1倍割れの上場企業に対し、改善策を開示・実行するように要請したことや、米国の著名投資家ウォーレン・バフェット氏が日本の5大商社株の保有比率を高めたこと、日本のデフレかの脱却、などがあげられます。
本稿では2023年を振り返り、日経平均構成銘柄の上昇率TOP10と2024年注目銘柄を解説します。
※株価は2024年1月16日時点です。
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目次
- 2023年日経平均株価構成銘柄の上昇率TOP10と特長
- 上昇率TOP10の上昇要因
2-1.神戸製鋼所
2-2.SCREENホールディングス
2-3.川崎汽船
2-4.アドバンテスト
2-5.ルネサスエレクトロニクス
2-6.TOPPANホールディングス
2-7.東京エレクトロン
2-8.サッポロホールディングス
2-9.信越化学工業
2-10.日本電気 - 2024年の注目3銘柄
3-1.日本製鉄
3-2.日本取引所グループ
3-3.コマツ - まとめ
1.2023年日経平均株価構成銘柄の上昇率TOP10と特長
2023年年間の日経平均株価の上昇率は28.24%でした。上昇率上位10銘柄のうち、半導体関連銘柄が6銘柄を占め、なかでも日経平均株価の動きに大きな影響を与える東京エレクトロンやアドバンテスト、信越化学工業の上昇が指数を押し上げました。
上昇率順位 | 銘柄 | 騰落率 |
---|---|---|
1 | 神戸製鋼所 | 197.86% |
2 | SCREENホールディングス | 194.51% |
3 | 川崎汽船 | 142.88% |
4 | アドバンテスト | 128.52% |
5 | ルネサスエレクトロニクス | 115.38% |
6 | TOPPAN ホールディングス | 104.60% |
7 | 東京エレクトロン | 99.82% |
8 | サッポロホールディングス | 90.97% |
9 | 信越化学工業 | 86.85% |
10 | 日本電気 | 83.46% |
※表は筆者作成
2.上昇率TOP10の上昇要因と株価
2-1.神戸製鋼所
神戸製鋼所の株価上昇率は197.86%でした。同業他社である日本製鉄の48.26%、JFEホールディングスの48.29%を大きく上回りました。
株価上昇の要因は、好業績に加え、配当性向が従来の15~25%程度から30%程度に上昇したことが挙げられます。加えて、PBRが同業他社と比較し低かったことも株価上昇に貢献したと考えられます。
株価は2,179円で、PBRは0.77倍と1倍を下回っていること、予想PERが6.58倍と低いこと、配当利回りが4.54%と魅力的であることから、今後も株価の上昇余地があるでしょう。
2-2.SCREENホールディングス
半導体製造装置メーカーであるSCREENホールディングスの株価上昇率は、194.51%でした。株価上昇の要因は好業績です。2024年3月期第2四半期決算では、通期予想を上方修正し、3期連続で過去最高を更新、配当金額は通期で増配、過去最高(分割前換算で381円を予想)しています。
株価は12,725円、予想PERが19.34倍、PBRは3.82倍、配当利回りは1.50%という水準で、割高感はないと言えるでしょう。
2-3.川崎汽船
川崎汽船の株価上昇率は142.88%でした。これは、同業他社である日本郵船の50.49%や商船三井の51.94%を大きく上回る上昇率です。
株価上昇要因としては、PBRが1倍を下回っていたことや、自己株式取得を含めた株主還元策の強化が挙げられます。
株価は7,321円、予想PERが14.85倍、PBRは1.10倍、配当利回りは2.73%なので、株価には割高感はないと言えそうです。
2-4.アドバンテスト
アドバンテストの株価上昇率は、128.52%でした。同社は、半導体検査装置大手メーカーで、米国のテラダインと2社でシェアを争っています。
生成AIブームによりAI向けGPU(画像処理半導体)が注目されるなか、GPU向けテスタをほぼ独占している同社に注目が集まったことが株価上昇の背景です。
2022年6月には、パワー半導体用試験装置の大手サプライヤーであるイタリアのCREAを買収しました。今後パワー半導体市場の成長が期待されるなか、先手を打った格好です。
株価は、成長期待が高い銘柄なため割高感があります。株価は5,110円、予想PERが59.05倍、配当利回りは0.66%という水準です。
2-5.ルネサスエレクトロニクス
ルネサスエレクトロニクスの上昇率は115.38%です。同社は三菱電機、日立製作所、NECの半導体部門の統合により設立された半導体メーカーです。先進的な製品や半導体ソリューションを、自動車、産業、インフラ、IoTの4つの成長分野へ提供しています。
2022年の半導体メーカー売上は国内1位、自動車の制御に用いられる車載向けマイコンは世界シェア1位を誇っています。
株価は、半導体関連銘柄としては出遅れ感があり、株価は2,457円、予想PERが10.46倍です。
2-6.TOPPANホールディングス
2023年10月に凸版印刷株式会社からTOPPANホールディングスに社名を変更しました。半導体関連銘柄である同社の株価上昇率は104.60%です。
事業セグメントは、情報コミュニケーション事業分野、生活・産業事業分野、エレクトロニクス事業分野の3部門です。同社は、データセンターのサーバー向けや生成AI向けの需要増が見込まれるため、2027年をめどに、次世代半導体パッケージの技術開発および生産ラインの構築を進めています。
株価は4,118円、予想PER20.82倍、配当利回りは1.17%、PBRが0.95倍と、株価に割高感はないと言えそうです。
2-7.東京エレクトロン
東京エレクトロンは、半導体製造装置の売上高世界第4位のメーカーです。塗布現像、ガスケミカルエッチング、拡散炉、バッチ成膜では世界1位のシェアを誇っています。
参照:東京エレクトロン「コーポレートアップデート」
同社の株価上昇率は99.82%でした。半導体市場の回復傾向を背景として2024年業績予想を上方修正したことや、自社株買いが実施されたことが上昇に寄与したと考えられます。
株価は25,920円、予想PERは38.17倍、配当利回りが1.31%という水準です。株価の水準に割高感はあるものの、日本が半導体立国を目指すなか、日本国内で半導体工場の建設が続いています。同社は半導体関連のコア企業の1社と言え、今後も成長期待が高い銘柄と言えそうです。
2-8.サッポロホールディングス
サッポロホールディングスはアルコール飲料等を製造・販売を行っています。同社の株価上昇率は90.97%でした。物言う株主として知られるシンガポールの3Dインベストメントが筆頭株主となったことが要因です。収益力強化に向けた期待が株価を押し上げたようです。
株価は7,130円、予想PERは71.58倍、配当利回りが0.63%という水準なので、株価に割高感がありそうです。
2-9.信越化学工業
信越化学工業は、合成樹脂や化学肥料、半導体シリコンなどの製造・販売を行っている総合化学メーカーです。同社の株価上昇率は86.85%でした。同社は、グロ―バル拠点を23カ国に展開し、海外売上高比率が80%超です。半導体素材のシリコンウエハーや住宅資材に使われる塩ビ樹脂で世界1のシェアを誇っています。
参照:信越化学工業「企業情報」
株価上昇要因には半導体需要回復期待が高いことや、米国で住宅市場が回復基調に転じたことなどが挙げられます。
株価は5,895円、予想PERが19.27倍、配当利回りは1.70%です。過熱感はない株価水準と言えるでしょう。
2-10.日本電気
日本電気は、ITサービス事業や社会インフラ事業を主とする情報技術サービス会社です。同社の株価上昇率は83.46%でした。
株価上昇の材料は好業績です。ITサービス部門の好調を受け2023年3月期決算発表(4月)後に株価が5,000円前後から6,000円台に急伸し、9月には8,427円の高値を付けました。
株価は8,993円、予想PERが19.39倍、配当利回りは1.33%です。株価に過熱感はない水準でしょう。
3.2024年の注目3銘柄
3-1.日本製鉄
日本製鉄は、2024年10月償還と2026年10月償還のユーロ円CBを各1,500億円発行しています。CBは株式に転換できるため、CBの発行は株価の上値を抑える傾向があります。
株価はすでに転換価格を上回る水準で推移しているものの、いずれのCBも転換が進んでいないため発行額3,000億円が流通しています。しかし、2024年10月には1500億円が償還を迎えるため株価が転換価格を上回る水準で推移すると1,500億円が株式に転換されることになります。CBの転換が進めば、株価にとって上値を抑える悪材料がなくなり、株価が上昇しやすくなります。
株価は3,444円、予想RERが7.51倍、PBRは0.69倍、配当利回りが4.36%と割安な水準と言えるでしょう。
3-2.日本取引所グループ
日本取引所グループは、東京証券取引所グループと大阪証券取引所が2013年に経営統合して生まれ、日本市場での株式や先物を取りまとめています。
2024年1月から日本では新NISAが始まりました。従来のNISAよりも非課税枠の拡大や非課税期間が無期限化されたため、証券会社では口座数が増加傾向にあります。楽天証券では、新NISAをきっかけに年初の口座開設は約3倍になったと伝えられました。
参照:ブルームバーグ「楽天証社長、年初の口座開設は約3倍「すごい勢い」-新NISA効果」
日経平均株価は、2024年年初より上昇基調で、1月15日には36,000円台に乗せる場面もありました。今年は、新NISAがスタートしたこと、日本株が割安なこと、東京証券取引所がPBR1倍割れ企業に対し、改善策の開示及び要請をしたため日本株が上昇する可能性が高まっています。日本株やデリバティブの取引高が増加すれば、同社の収益増加に繋がります。
株価は3,290円、予想PERは29.91倍、配当利回りは1.91%です。
3-3.コマツ
コマツは、ブルドーザーや油圧ショベルなどの建設機械・車両のメーカーです。売上規模は、世界第2位(1位は米国キャタピラー)で、海外売上高が約90%(米国約25%、中南米約20%)と、日本国内が約10%と海外依存度が高いという特長があります。
2024年3月期の第2四半期累計期間(2023年4月1日から同9月30日)においての営業成績は、北米、中南米の売上増や価格改善策や円安の影響から売上高が前年同期比12.6%増の1兆8229億円、純利益(株主に帰属する)は26.4%増の2,055億円と好調でした。
北米・中南米での鉱山機械の需要が引き続き堅調に推移すること、復興関連銘柄であることから投資家は注目しています。
参照:コマツ「2024年3月期 第2四半期決算短信〔米国基準〕(連結)」
株価は3,862円、予想PERが9.73倍、配当利回りは3.73%と、株価に割安感があります。
4.まとめ
2023年日経平均構成銘柄の上昇率TOP10は、半導体関連銘柄が10銘柄中6銘柄と大半を占めました。生成AIに代表される先端分野での半導体需要が高まったこと、各国が半導体工場への投資を後押ししていることなどが要因と考えられます。2024年においても半導体需要の高まりから関連銘柄は注目されています。
2024年1月から始まった新NISAは日本で株式ブームを起こす可能性があるため、日本取引所グループが恩恵を受ける可能性が高いでしょう。
藤井 理
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。
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