日本の投資家にとって主な投資対象国となるのは日本とアメリカでしょう。それ以外の先進国を挙げるとすれば、欧州の国が選択肢になるものの、欧州株は米国株のように話題に上がることは滅多にありません。
米国のGAFAに代表される巨大IT企業のような、相場を牽引する欧州企業をすぐには思いつく人は少ないでしょう。しかし、フォルクスワーゲンやBMW・ベンツなどの自動車会社や、ネスレなどの食品メーカーが欧州株にはあります。
欧州では昔から「ヒト、モノ、カネ、サービス」の自由化によって他国との貿易が発達するなかで国際競争力の高い企業や、伝統に培われた信頼性の高いブランド企業、独自性の高い製品・サービスを提供する企業が多数あります。今回は、欧州株へ投資する方法と各国の特徴やポイントについて解説していきます。
目次
1.欧州株式市場
欧州株は、主にロンドン証券取引所(LSE)、フランクフルト証券取引所、ユーロネクスト・パリ証券取引所など欧州の証券取引所に上場している株式のことを指します。
日本における海外投資と言えば、米国やアジア、アジアの中でも特に中国に投資するものが多く、欧州への投資は馴染みが薄い人もいるでしょう。しかし、欧州にはドイツやフランス、イギリスといった強い経済力の国があり、ユーロやポンドといった主要通貨も存在するように国際分散投資という観点では外すことができない重要な地域です。
2.各国の特徴
2-1.イギリス
FTSE100がイギリスを代表する株価指数です。イギリスのロンドン証券取引所に上場している銘柄の中から、時価総額が高い100社を対象に算出されています。1983年12月31日の株価を基準値1,000として、指数が算出されています。
FTSE100に採用されている銘柄だけでロンドン証券取引所に上場する企業の時価総額の内、約80%を占めており、イギリスの経済の状況をみる代表的な指数として活用されていることから、多くの投資家が参考にしている指標です。
FTSE100の採用銘柄には、世界最大の鉱業会社「BHPビリトン」や石油会社大手「BP」といった資源・鉱業から衣料ブランドの「バーバリー」、通信会社大手「ボーダフォン」といった英国を代表する伝統的な企業が組み入れられています。
なお、首都ロンドンには欧州全体の金融センターとなる「シティ」があり、BREXIT後、金融の拠点が欧州大陸に移ることでシティの地位の低下が懸念されています。
2-2.ドイツ
DAX指数はドイツを代表する株価指数です。ドイツのフランクフルト証券取引所に上場する銘柄の内、時価総額上位30銘柄で構成されています。1987年12月31日の株価を基準値1,000として、指数が算出されています。
ドイツはGDPの規模は欧州最大の国で世界的な企業と人口が多く、DAX指数は世界中の投資家が注目しています。科学技術に優れ、主要産業は工業(自動車、化学、金属)などで、先進工業国であるのと同時に貿易大国でもあるため、経済も安定しています。
採用企業としては、ダイムラー、フォルクスワーゲン、ドイチェ・バンク、アディダス等、日本でも馴染みの深い企業が多く組み入れられています。
2-3.フランス
CAC40指数はフランスを代表する株価指数です。ユーロネクスト・パリ(旧フランス証券取引所)に上場する企業の中から時価総額や出来高から選定された40銘柄で構成された株価指数で、1987年12月31日を基準値1,000として指数が算出されています。
フランスはEU最大の農業国で、工業においては自動車産業、宇宙・航空産業、原子力産業などの先端産業が発達しています。観光客入国数も世界最大規模となっています。また、フランス株式市場の時価総額上位には、ルイ・ヴィトン、ロレアルといったブランド消費財の有名企業が並んでいることもフランスらしい特徴と言えます。
3.欧州株への投資方法と注目点
米国株は、ほぼどこの証券会社でも購入できます。海外株式の取扱をしている証券会社でも中国株の取扱は多いものの、欧州株を取扱しているところは意外にも少ないです。
実店舗を持つ証券会社では欧州株の取り扱いを行っている証券会社はあるものの、ネット証券については、国内で知名度が高いSBI証券や楽天証券、マネックス証券では2022年2月14日時点で欧州株の取り扱いはありません。
インターネットで欧州株が売買可能なネット証券は、デンマーク投資銀行傘下のサクソバンク証券があります。ただし、売買手数料が通常の日本株取引と比較して割高になる傾向がありますので注意が必要です。
3-1.為替リスク
日本円で行う海外投資のパフォーマンスは、連動する株価指数の動向と日本円と投資対象先の為替動向の両方の影響を受けることになります。円資産中心の国内投資家にとって、円安と現地株式市場上昇の組み合わせが最も高い投資パフォーマンスとなり、円高は海外投資にとってネガティブな要因となります。
ただし、為替ヘッジを行っている場合は、株価指数の変動リスクだけを負うことになります。その際、為替ヘッジを維持するためのヘッジコストは、通常両国の金利差に連動します。現在のような低金利の日本の状況では、基本的にどこの国に投資してもヘッジコストはそれなりに支払わなければなりません。
しかし、通貨EURを使っている国への欧州株投資の場合、日本よりも金利の低いEURを使います。仮にEURJPYの為替リスクをヘッジするためにEURJPYを売ったとしても、ヘッジコストはむしろ受け取りになるという利点があります。欧州株投資が機関投資家の中でも近年注目されています。
3-2.ESG投資
2020年の世界のESG投資総額は全体で35兆3千億ドルに達しました。2018年の総額からは15%、2016年の総額からは55%の増加となり、今後も拡大することが予想されます。2020年の調査対象となった機関投資家の全運用資産が98兆4千億ドルのうち30%以上がESG関連投資です。ESG投資は世界の株式市場の中心のテーマとなっています。
【参照記事】*1 ナティクシス「Latest edition of the Global Sustainable Investment Review confirms strong growth of ESG assets all over the world」
欧州は世界の中でも早い段階からESG投資が行われてきました。2000年以降、欧州の投資家と欧州の上場企業は、世界の中でも先行して「ESG」に対する取り組みを進め、低炭素社会への移行を念頭に、持続的成長のためのルール作りを実践してきています。その結果として、2020年は定義変更で米国に抜かれましたが、2018年統計までは世界最大のシェアを誇っていました。
4.まとめ
外国株は日本株と異なり、証券会社によって扱っている国や銘柄数が大きく異なっています。特に米国や最近台頭してきている中国と比べて、欧州株へのアクセスは容易ではありません。アクセスが出来たとしても、相対的に高い手数料が必要となってしまいます。
しかし、ここ数年続くECBのマイナス金利の影響による為替ヘッジコストの関係や、ESG投資を通じて、機関投資家の中では欧州株投資は相当盛り上がってきているため、将来的に個人投資家にも門戸が開放される日は近いでしょう。なお、個別の欧州株へ投資は取り扱いがまだ少ないものの、投資信託やETFであれば多くの証券会社で取り扱っています。興味がある方は利用の開始を検討してみてください。
HEDGE GUIDE 編集部 投資信託チーム
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