高利回り米国株ETF「VYM」の今後の見通しは?概要と特徴、価格推移、主な取扱証券会社も

VYMは手数料の一つである経費率が低いことや、高配当銘柄で構成されているため、配当利回りが高いことが人気の米国株ETFのひとつです。

米国では年内にテーパリング(量的緩和政策による資産買入額を徐々に減らすこと)が開始される可能性が高まっています。量的緩和政策を背景に市場に供給された大量の資金の一部が株式市場に流れ、株価押し上げに貢献してきました。そのため、テーパリングは株式市場にとってはネガティブ材料といえます。

こうした市況も踏まえ、今回は投資家に人気の高い高利回りETF「VYM」の今後の見通しなどについて解説します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※この記事は2021年9月18日時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。

目次

  1. VYM ETFの概要と特徴
  2. VYM ETFの価格推移と組入れ銘柄
    2-1.年初来上昇率
    2-2.組入れ比率上位10位銘柄の価格と予想PER
  3. VYM ETFの今後の見通し
  4. VYM ETFの主な取扱い証券会社
  5. まとめ

1 VYM ETFの概要と特徴

VYM ETFは、米国高配当銘柄で構成されている上場投資信託で、FTSEハイディビデンド・イールド指数に連動するように設計されています。

2021年7月末時点の保有銘柄数は413銘柄です。銘柄の属性は銀行、医薬品、小売、電力の4業種で全体の40%を占めています。成熟し比較的事業リスクが低い業種の割安株が主流と言えそうです。

VYM ETFの組み入れ比率上位10銘柄は、JPモルガン・チェース、ジョンソン・エンド・ジョンソン、ホーム・デポ、P&G、バンク・オグ・アメリカ(BOA)、コムキャスト、エクソンモービル、ファイザー、シスコシステムズ、ベライゾン・コミュニケーションズです。BOAとコムキャスト以外はダウ採用銘柄です。

そのため、ダウ工業平均株式指数や*バリュー指数との*相関係数が高く、それらの指数と同じような動きをするという特徴があります。

*相関係数:2つの指数の関連性を求める方法で、プラス1~マイナス1の範囲で表示され、プラス1に近いほど2つの指数が同様の動きをし、マイナス1に近いほど2つの指数は正反対の動きをします。
*バリュー指数:相対的にPER(株価が一株あたり純利益の何倍かを示す指標)が低い銘柄で構成されている指数です。

経費率は0.06%と低く抑えられ、配当金は3月、6月、9月、12月の年4回受け取れます。

2 VYM ETFの価格推移と組入れ銘柄

VYM ETFの価格推移と組入れ銘柄を見ていきます。

2-1 年初来上昇率

新型コロナが世界中に広がるなか、各国の中央銀行や政府は経済を支えるために金融緩和や経済対策を打ち出してきました。日米欧の中央銀行は量的緩和を実施し、市場に資金を潤沢に供給しました。その結果、米国のダウ工業平均、S&P500、ナスダック指数などの主要指数は史上最高値を更新し、現在も高水準で推移しています。

新型コロナ感染が拡がり始めた2020年1月から現在(2021年9月7日)までのVYM ETFと米国主要株式指数の動きを検証してみました(下表参照)。その結果、VYM ETFの上昇率は約20%と、ダウ工業平均を約2.5%、ナスダック指数を約50%下回っていました。VYM ETFがバリュー株で構成されているためです。

株価の上昇率と予想PER(2020年1月から2021年9月7日)

項目 上昇率(%) 予想PER(倍)
ダウ工業平均 22.57 19.02
S&P500 39.72 22.24
ナスダック指数 70.43 33.22
VYM ETF 20.04

2-2 組入れ比率上位10位銘柄の価格と予想PER

次に、VYM ETFが組み入れている上位10銘柄の2020年1月以降の株価の上昇率と予想PERを見てみましょう(下記表参照。2020年1月3日=100)。

株価の上昇率と予想PER(2020年1月から2021年9月7日)

銘柄 上昇率(%) 予想PER(倍)
ジョンソン・エンド・ジョンソン 24.95 17.82
ホーム・デポ 56.36 22.56
P&G 22.22 24.22
バンク・オブ・アメリカ 23.31 12.9
コムキャスト 38.82 19.66
エクソン -12.28 12.6
ファイザー 35.82 11.32
シスコ 29.78 17.16
JPモルガン 20.75 11.39
ベライゾン -2.15 10.38
ダウ工業平均 22.57 19.02
S&P500 39.72 22.24
ナスダック指数 70.43 33.22

個別銘柄のなかでは、ホーム・デポの上昇率が56.36%と最も高かったものの、予想PERは22.56倍とダウ工業平均の19.02倍と比べ若干割高感があるものの、10銘柄の平均予想PERは16倍とダウ工業平均を下回っています。

比較のために、FAANG(フェイスブック、アップル、アマゾン、ネットフリックス、アルファベット)とテスラの上昇率と予想PERを別表にしました。

*予想PER:株価が予想EPS(一株当たり予想利益)の何倍かを示す指数で小さいほど割安とされます。同業他社や指数と比較し相対的に判断します。

株価の上昇率と予想PER(2020年1月から2021年9月7日)

銘柄 上昇率(%) 予想PER(倍)
フェイスブック 83.1 23.86
アップル 110.7 27.66
アマゾン 87.2 48.97
ネットフリックス 86.2 57.18
アルファベット 113.8 29.41
テスラ 734.3 139.2

FAANGの上昇率は、どの銘柄もナスダック指数の70.43%を上回っています。予想PERではアマゾン、ネットフリックスやテスラが指数を大きく上回っていることがわかります。予想PERが高いということは、何らかの要因で株式市場が下落に転じた場合には、下落率が大きくなる傾向にあります。

3 VYM ETFの今後の見通し

VYM ETF構成銘柄は低PERのもので構成されているため、株式市場が下落局面にあってもETFの下落率はダウ工業平均やS&P500の下落率を下回る可能性は低いでしょう。VYM ETFの構成銘柄は配当利回りが高いため、株価が下落すると配当利回りが一層高くなり、投資家の買いが入りやすいからです。

今後の株価動向をみるうえで重要なポイントとしては、FRBによるテーパリングの開始時期と政策金利の上昇時期が挙げられます。

テーパリングについては2021年12月以降に開始されるという見方が市場のコンセンサス(主な見方)となっています。テーパリングにより市場に潤沢に流れていた資金が徐々に減額されるため、株式市場にとってはネガティブな材料と考えられます。

前回の利上げが実施された2015年12月以降の株式市場を振り返ってみましょう。FF金利は0.25%から0.5%に引き上げられ、利上げは2018年12月までに9回行われ、FF金利が2.5%まで引き上げられました。

株式指数は、1回目の利上げが実施された翌年の2016年2月に、利上げ後の安値をつけました。利上げが実施された2015年12月16日を基準とした場合の指数下落率は、ナスダックが約16%、S&P500指数やダウ工業平均が約12%でした。

新型コロナが感染拡大した2020年1月から現在にかけてのナスダック指数の上昇率は、ダウ工業平均の3倍を超える70%以上です。ナスダック指数の予想PERは、ダウ工業平均やS&P500よりも10倍以上高いため、下落リスクが高いと考えられます。

4 VYM ETFの主な取扱い証券会社

VYM ETFの主な取扱い証券会社は、SBI証券マネックス証券楽天証券などです。買付手数料は、SBI証券、楽天証券は必要ですが、マネックス証券については、2021年9月末まで定期買付の場合に買付手数料が無料になるキャンペーンを実施しています。

まとめ

米国では年内テーパリングが開始される可能性が高いとみられますが、テーパリングが開始されると株式市場はネガティブな反応をする可能性が高いと言えそうです。特に成長株には下値不安があるため、高配当銘柄が投資対象のVYM ETFは下値不安が比較的小さな銘柄であると考えられます。

今後の市況に注視しながら、ETFを購入する際は複数のファンドを比較検討しつつ投資を決定したり、複数のファンドに分散投資したりすることを考えながら進めましょう。

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藤井 理

藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。