インド株式市場に世界中の投資家が注目しています。経済成長に伴い株式市場の拡大が期待されるためです。インドの成長は著しく、IMF(国際通貨基金)によると、2027年には日本とドイツを抜いて世界第3位の経済規模になる見通しです。
参照:IMF「世界経済の成長率予測」
今回は、インドに投資するメリットとデメリットについて解説します。
※2024年5月27日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定のサービス・金融商品への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- インドの現状と見通し
1-1.経済成長率
1-2.人口構造
1-3.中間層の拡大 - インドに投資するメリット5選
2-1.株価上昇期待
2-2.通貨高期待
2-3.資産分散効果
2-4.インドへの理解が深まる
2-5.少額から投資可能 - インド投資する際のデメリット
3-1.市場が閉鎖的
3-2.株価下落のリスク
3-3.通貨下落のリスク - インドに投資できる投資信託3選
4-1.大和-iFreeNEXT インド株インデックス
4-2.SBI-SBI・iシェアーズ・インド株式インデックス・ファンド(愛称:サクっとインド株式)
4-3.ピクテ-iTrustインド株式 - まとめ
1.インドの現状と見通し
インドの経済成長に世界中が注目しています。経済成長に伴い、製造業おいても海外企業がインドに拠点を持つ動きが活発化しています。
1-1.経済成長率
国際通貨基金(IMF)によると、2023年10月時点での、2024年のインドの経済成長率見通しは6.3%であり、世界経済の成長率予想2.9%を大きく上回っています。
2022年のインドの名目GDPは、英国を追い越し、米国、中国、日本、ドイツに次いで世界5位になりました。IMFによると、インドの名目GDPが2027年には、日本を抜いて世界3位になると予想しています。
PwCの調査によると、インドのGDPが2050年までには米国を抜いて世界第2位の経済大国となる見通しです。
参照:PwC「The World in 2050」
1-2.人口構造
インドの経済成長を支えている要因の一つに、人口構造が挙げられます。インドの人口は2023年4月に14億2577万人に達し、中国を追い越し世界一となりました。人口は増加傾向にあり、2050年には17億人近くに増加し、中国の13.1億人を大きく上回るとみられています。
平均寿命は、医療整備の遅れから70.8歳(WHO調査)と、中国(77.4歳)や日本(84.3歳)と比べ短いという特徴がある一方、平均年齢はインドが26.4歳と若く、若年人口が多いという特徴があります。
参照:MEMORVA「平均寿命 世界ランキング・国別順位(2023年版)」
1-3.中間層の拡大
経済が発展するうえで、中間層は可処分所得(5千ドル以上3.5万ドル未満)の多くを消費するため、中間層の拡大が重要な要素です。市場調査会社グローバルインフォメーションによると、インドの中間層の世帯数は2018年の2.93億世帯から2030年までに3.86億世帯に増加すると予想しています。
インドでは、白物家電の普及率はまだ低く、中間層の拡大により、白物家電の普及が進むことが期待できそうです。Mordor Intelligenceによると普及率は、冷蔵庫は約33.0%、エアコンは4.5%、洗濯機が13.0%と低い水準にとどまっています。
参照:Mordor Intelligence「インドの主要家電市場規模と市場規模株式分析 – 成長傾向と成長傾向予測 (2024 ~ 2029 年)」
2.インドに投資するメリット5選
インドは経済発展にともない、株式市場の規模拡大が予想されるため、機関投資家は分散投資の一環としてインドのアセットを積み上げる可能性が高いと考えられます。インドに投資するメリットを見ていきましょう。
2-1.株価上昇期待
インドの経済成長とともに、インド株式市場の拡大し、株式時価総額が増加すると、世界の年金基金がリスク分散の観点からインド市場に投資せざるを得なくなるためです。
シンキング・アヘッド・インスティテュートと国際的な資産運用専門誌である米国のPension & Investments が共同で実施した調査によると、世界上位300社の年金基金の運用資産総額は合計23.6兆米ドル(2022年)でした。インド経済の成長に伴い、年金基金の一部がインド株式市場に向かう可能性が高いと思われます。
参照:WTW「世界最大級の年金基金群の資産が23.6兆米ドルの新記録達成」
2-2.通貨高期待
インドは、貿易赤字と財政赤字という双子の赤字の状態にあります。赤字解消に前向きなモディ現政権は、2014年の政権発足時にメーク・イン・インディアを掲げ、製造業の成長率を年率12~14%とし、GDP比率を15%から25%に高める目標を設定しました。
また、2025年5月には自立したインドを目指し、20兆ルピー規模の特別経済パッケージを発表しました。注力する製造業分野の誘致、全土のインフラ整備やエネルギーの自立等を目指しています。
モディ政権は外資誘致にも積極的で、テスラのほか、アドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)、アプライド・マテリアルズ、マイクロン、フォックスコンなど半導体関連企業がインド進出を計画しています。
インドの双子の赤字が解消に向かえば、ルピーの需要が高くなるため通貨高が期待されます。
2-3.資産分散効果
新たにインド投資を始められる方は、資産分散効果を享受できます。複数の資産を保有することでポートフォリオ全体のリスクが低減します。
2-4.インドへの理解が深まる
インド投資を始められた方は、インド経済のニュースや政治動向が身近に感じられるようになるでしょう。自身でインドについて調べたりすることで、インドへの理解が深まり、さらに投資への興味が高まることもメリット一つです。
2-5.少額から投資可能
少額から投資できることもメリットです。東京証券取引所には、インド株式指数上場投信というETFが上場しています。これは、インド国立証券取引所上場の50銘柄から構成されているNifty50指数に連動するように設計されています。
2024年4月1日時点の価格は354.4円で、投資単位が100株なので、このケースでは最低投資金額が35,440円+手数料と手軽に始められます。またSBI証券や楽天証券などでは、インド関連の投資信託に100円から投資できます。
3.インド投資する際のデメリット
ここではインド投資する際のデメリットをみていきましょう。
3-1.市場が閉鎖的
インドの株式市場は外国人が直接投資できず、閉鎖的です。インド株に投資をする場合には、投資信託かADR銘柄に限られます。インドの証券取引所には5,000銘柄以上が上場している一方、ADRには一部の銘柄のみです。
そのため、日本の個人投資家がインド市場に投資をする場合、投資信託やETFがメインになります。
3-2.新興国リスク
インド経済は順調に拡大していますが、今後も順調に成長する保証はありません。新興国では、政治・経済・社会情勢の変動によるリスクが、先進国と比較し大きくなる傾向にあります。
政治不安や経済不安、社会不安が起きると、資本市場に大きな影響を与える可能性があります。
3-3.株価が下落する可能性がある
成長期待が高いインド市場ですが、他の国同様、株価が下落する可能性があることがリスクです。インド株式市場は、成長期待が高いマーケットですが、リスクを伴うため分散投資を心掛けるようにしましょう。
3-4.通貨が下落する可能性がある
通貨は新興国通貨の中では安定しています。インドは貿易赤字国なので、赤字の拡大は輸入物価の上昇に繋がります。
インド中央銀行がインフレをコントロールできなくなってしまった場合には、ルピーが下落する可能性があります。
4.インドに投資できる投資信託3選
インドに投資できる投資信託のうち、インデックスファンドやつみたてNISAに対応しているファンドを紹介します。是非参考にしてみてください。
※データは全て2024年5月27日時点です。
4-1.大和-iFreeNEXT インド株インデックス
Nifty50インデックス(配当込み、円ベース)に連動することを目指すインデックスファンドです。Nifty50指数は、インドのナショナル証券取引所に上場している代表的な50社の株式で構成される株価指数です。半年ごとに採用銘柄の入替えが行われます。
石油開発や石油化学製品の製造を手掛けるリライアンス・インダストリーズや、HDFC銀⾏、ICICI銀⾏が組み入れ上位銘柄です。
2000年1月末時点を100として指数化すると、2023年1月末時点では、米国S&P500指数が355に対して、Nifty50は740とおよそ2倍上昇しています。
参照:SBI証券「大和-iFreeNEXT インド株インデックス」
つみたてNISAの採用銘柄ではないため、成長投資枠での買い付けとなります。基準価額は15,169円、信託報酬は年0.473%、純資産は約1283億円です。1年間のトータルリターンは41.91%であり、カテゴリ平均の51.85%をやや下回っています。
参照:SBI証券「大和-iFreeNEXT インド株インデックス」
4-2.SBI-SBI・iシェアーズ・インド株式インデックス・ファンド(愛称:サクっとインド株式)
S&P BSE SENSEXインデックス(配当込み、円換算ベース)に連動することを目指すインデックスファンドです。S&P BSE SENSEXインデックスは、ムンバイにある証券取引所に上場する30銘柄で構成されています。
石油開発や石油化学製品の製造を手掛けるリライアンス・インダストリーズや、HDFC銀⾏、ICICI銀⾏が組み入れ上位銘柄です。
つみたてNISAの採用銘柄ではないため、成長投資枠での買い付けとなります。基準価額は11,620円、信託報酬は年0.4638%、純資産は約575億円です。1年間のトータルリターンは18.61%であり、カテゴリ平均の24.98%をやや下回っています。
参照:SBI証券「SBI-SBI・iシェアーズ・インド株式インデックス・ファンド」
4-3.ピクテ-iTrustインド株式
中長期的に成長が期待できるインド企業の株式に投資する投資信託です。構成比率は金融業界が31.5%と最も高く、ついで一般消費財・サービスが16.0%、情報技術が13.5%となります。ICICI銀行、HDFC銀行、コンピューターサービス会社のインフォシスが組み入れ上位銘柄です。
インデックスファンドではないものの、つみたてNISAに対応しています。基準価額は22,821円、信託報酬は年0.9828%、純資産は約360億円です。1年間のトータルリターンは52.01%であり、カテゴリ平均の51.85%を上回っています。
参照:SBI証券「ピクテ-iTrustインド株式」
5.まとめ
インド株式に投資する最大のメリットは、株価の上昇する可能性が高いことです。インド経済は成長過程にあり、IMFは2027年には日本を抜いて世界第3位の経済大国になると予想しています。また、平均年齢が26.4歳と若いこと、人口が増加傾向あることも経済発展の推進力となっています。
一方、デメリットとしては、政治不安や経済不安、社会不安が大きくなると、資本市場に大きな影響を与える可能性が挙げられます。
藤井 理
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。
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