スイスの金融大手クレディスイス(ティッカーシンボル:CSGN)は6月8日、利益の下振れ見通しを意味する「プロフィット・ウォーニング(利益警告)」を発表した(*1)。ウクライナ侵攻や金融引き締めにより、2022年第2四半期に投資銀行部門およびグループ全体で損失を計上する可能性がある。
地政学的状況にくわえ、インフレ抑制を図る主要中央銀行による急速な金融引き締め、新型コロナ禍における景気刺激策の終了により、市場のボラティリティ(#1)が高まった。とくにアジアパシフィック(APAC)地域において顧客取引が低迷し、デレバレッジ(#2)が進んだという。
ボラティリティの大幅上昇はトレーディング収益の拡大につながる。一方、ボラティリティが高まる市場環境下において、資本市場での証券発行が低水準で推移したほか、クレジット・スプレッド(#3)が大きくなったことが、4月と5月の投資銀行部門の業績を圧迫した。
市場動向によっては、クレディスイスが8.6%保有するスペインのフィンテック企業オールファンズ・グループ(ALLFG)株の評価減に伴う損失を計上する可能性もある。オールファンズの株価は年初来で約58%下落している(*2)。
近年、クレディスイスは立て続けに不祥事が発生している。19年には私立探偵を雇い、ライバル行であるUBS(UBSG)に移る社員を尾行させるスパイ事件が発生。最終的に当時のティーンジャン・ティアム最高経営責任者(CEO)の辞任につながり、後任を引き継いだトーマス・ゴットシュタインCEOが経営の立て直しを図っている状況だ。
ただし業績の低迷がつづく。4月に発表した22年第1四半期決算は赤字が拡大。米投資会社アルケゴス・キャピタル・マネジメントの運用失敗に伴う訴訟費用がかさむ。最高財務責任者(CFO)を含む経営陣の刷新を行い、業績回復の糸口を模索する。
クレディスイスは22年も「移行」の1年と位置づけ、グループ全体でコスト削減を進める方針だ。
(#1)ボラティリティ…価格の変動性。
(#2)デレバレッジ…レバレッジをきかせた取引を反対売買してポジションを解消すること。
(#3)クレジット・スプレッド…債券のデフォルトリスクに応じて上乗せされる金利。
【参照記事】*1 クレディスイス「Credit Suisse provides trading update」
【参照記事】*2 ユーロネクスト「ALLFUNDS GROUP PLC € 7.36」
HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム
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