ドイツの産業システム大手シーメンス(ティッカーシンボル:SIE)は5月28日、傘下のシーメンス・モビリティがエジプトのトンネル公社と総延長2,000kmの高速鉄道網を整備する契約を締結したと発表した(*1)。完成すれば世界第6位の規模になる。鉄道ネットワークを電化することで、二酸化炭素(CO2)の排出量は車やバスと比較して70%削減できるとのことだ。
エジプトの新たな高速鉄道プロジェクトは、最高速度230キロ/時に対応した3路線をいずれも電化し、紅海から地中海沿岸の60都市を結びつけるネットワークを整備する計画だ。同国の建設会社であるアラブ・コントラクターズとオラスコムがコンソーシアムのパートナー企業となる。シーメンス担当分の契約金額は81億ユーロ(1兆1,500億円)。これには21年9月に受注した同プロジェクト1路線目の27億ユーロを含む。
第1路線は、紅海に面したアインソフナと地中海沿岸のアレクサンドリアおよびマルサマトルーフを結ぶ660キロとなる。2番目がカイロとスーダンとの国境近くにあるアブ・シンベルを結ぶ約1,100キロ、3番目はルクソールと紅海に面するハルガダを結ぶ225キロの路線となる。
シーメンス・モビリティのマイケル・ピーター最高経営責任者(CEO)は「パートナー企業とともに最先端の輸送ネットワークの構築をゼロから行う」と述べた(*1)。
国際エネルギー機関(IEA)は鉄道が「最もエネルギー効率の高い輸送方法」と指摘する。鉄道は世界の旅客輸送量の8%、貨物輸送量の約9%を占めているが、輸送に伴うエネルギー消費量はわずか3%である(*2)。
ただし、鉄道業界は石油に大きく依存しており、20年のエネルギー消費の55%を占める。IEAの50年までにネットゼロを実現するシナリオにおいては、電化や水素の活用などを通じて、鉄道で利用される石油を50年までに「ほぼゼロ」にする必要がある。
モビリティ分野では脱炭素社会の形成に向けた取り組みが積極化している。なかでも「次世代エネルギー」とされる水素の活用を巡っては、スペインの電力大手イベルドローラ(IBE)がバルセロナの公共交通機関向けにグリーン水素の供給を開始すると発表した(*3)。英石油大手シェル(SHEL)は中国で世界最大級の水素電解槽を活用したグリーン水素の製造を開始している(*4)。
【参照記事】*1 シーメンス「Siemens Mobility finalizes contract for 2,000 km high-speed rail system in Egypt」
【参照記事】*2 IEA(国際エネルギー機関)「Rail」
【関連記事】*3 スペイン電力大手イベルドローラ、バルセロナで公共交通機関向けグリーン水素供給開始へ
【関連記事】*4 英石油大手シェル 中国で世界最大級の水素電解槽を活用したグリーン水素製造を開始
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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