スペインの電力大手イベルドローラ(ティッカーシンボル:IBE)は2021年12月23日、同国のバルセロナで公共交通の脱炭素化および汚染物質排出ゼロのアーバン・モビリティ(都市交通)への移行を目指すグリーン水素(#1)供給プロジェクトを開始することを発表した(*1)。同社によれば、商業ベースでのグリーン水素の供給はスペイン初の取り組み。
同プロジェクトでは、ポルトガルのバス製造・販売大手であるカエタノ・バスが、水素を活用した燃料電池バス「H2シティゴールド」8台をバルセロナ交通局(TMB)に納車した。これらの水素燃料電池バスは、発着駅近くに位置するZona Franca(産業エリア)のイベルドローラのグリーン水素供給ステーションで即座に燃料(1日約20キロ)を補給できる。
まずは無乗客で水素燃料電池バスの走行テストを行ったのち、2022年から通常路線でモビリティサービスを提供する予定だ。イベルドローラにとっては、Zona Francaでのグリーン水素供給ステーションの始動により、同エリアでグリーン水素ハブを形成できるようになるという。また、「欧州水素戦略」や「欧州水素ロードマップ」に則し、他の車両や産業プレーヤーへのグリーン水素の供給も可能になるとのことだ。
カエタノ・バスが製造したゼロエミッションの水素燃料電池バスは水蒸気のみ排出する。また、より多くの水素を充填できるタイプ4の水素タンク(合計容量37.5kg)を5つ搭載している。カエタノ・バスにはトヨタ自動車(銘柄コード:7203)の欧州部門が出資しており、同バスの水素システムにトヨタの定格出力60キロワットの燃料電池モジュールが利用されているという。
TMBは欧州の水素燃料電池バスの商業的実現可能性を促進する「JIVE2(*2)」プロジェクトより支援を受け、グリーン水素を活用した燃料電池バスを導入した。同プロジェクトは2018年1月より2023年末までに、欧州7か国14都市で152台のゼロエミッション型燃料電池バスの展開を目指している。
脱炭素社会の実現に向けて欧州で水素の活用が推し進められるなか、他の欧州都市でも水素燃料電池バスと水素供給ステーションの利用拡大が期待できそうだ。
(#1)グリーン水素…太陽光や風力といった再生可能エネルギーを活用することで、製造過程で二酸化炭素(CO2)を排出させることなく生成される水素。
【参照記事】*1 イベルドローラ「Barcelona receives the first Caetano hydrogen bus that will soon be refuelled at Iberdrola’s green H2 plant」
【参照記事】*2 CORDIS(EUの研究開発に関するデータベース)「Joint Initiative for hydrogen Vehicles across Europe 2」

HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム

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