資産運用大手のアクサ・インベストメント・マネージャーズ株式会社(アクサIM)は9月28日、「革新的なアルツハイマー治療薬がバイオテック全体に投資の波を引き起こす可能性」と題したレポートの日本語版を公開した。
アクサIM資産運用研究所が作成した世界のメガトレンドが仕事、生活、投資のあり方にどのように影響していくかを考察した「未来レポート」で、「アルツハイマー治療薬の相次ぐ開発は、この病気に苦しむ人々やバイオテック業界の状況を一変させる可能性があり、患者に新たな希望を提供すると同時に、新たな投資機会への扉を開いている」として、アルツハイマー病の治療薬が持つ商業上の可能性と投資家にとっての新たな機会を解説している。
2022年11月、バイオテック企業のエーザイとバイオジェンがアルツハイマー治療薬レカネマブの臨床試験で良好な結果を得たと発表した。翌23年7月、米国食品医薬品局(FDA)は、同年1月に迅速承認していたレカネマブ(商品名レケンビ)を「アルツハイマー病患者にとって安全で有効な治療薬」と承認、販売先として最大の市場になると見込まれる米国での販売を許可した。ある分析によれば、この治療薬は23年~28年に合計129億ドルの売上が期待できる。レカネマブ承認の動きは海外にも広がり、バイオジェンとエーザイは欧州、中国、カナダ、英国で承認申請を提出。日本と中国では、この申請は優先審査の対象として指定されている。
現在、187の臨床試験で141のアルツハイマー病治療薬の評価が行われており、その中にはプロシーナやアキュメンなどの小規模なバイオテック企業による初期の治験も含まれている。レカネマブ自体は、スウェーデンの小さなバイオテック企業であるバイオアークティックと、規模ではそれをはるかに上回るエーザイとの研究提携から生まれた。
レポートは、こうした治療薬は「短期的に患者を助けるとともに、有効な治療が存在し得ることを示し、この病気の進行プロセスに関する知見を提供する。これを受け、規制当局の間でより幅広い議論が行われるようになり、規制環境がより支援的になることで、小規模な会社が初期段階の革新的研究開発を継続するための新たな道筋が整えられる可能性がある」と指摘する。
アルツハイマー病を含む認知症の世界的コストは現在、約1.3兆ドルと推定されており、この約半分は無報酬の私的介護の経済的価値によるものだ。このコストは、世界人口の高齢化に伴い増える可能性がある。現在、世界で約5500万人といわれる認知症患者数は、50年には1億3900万人に達する見込みで、コストも倍増することを示唆する。
開発の最終段階にある治療薬でも、高額な費用、さらに皮下注射ではなく点滴で投与される必要があるなど課題はある。レポートは、克服すべき課題を挙げながら「薬の開発はバイオテックや医療の分野で待ち望まれた非常に喜ばしい大きな進展。患者やその家族、将来この病気を発症する可能がある人々に治療と希望を提供する。商業上の機会も大きい」と見込む。
その上で、「アルツハイマー治療薬の市場はかなりの規模とみられ、世界人口の老齢化などの長期的な基本構造によって下支えされている。この破滅的病気の治療における新展開は患者治療の新時代の到来を示唆しており、投資機会が次々に生じる可能性がある」と展望している。
【関連サイト】アクサ・インベストメント・マネージャーズ株式会社
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HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム
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