投資家が注目する「テーパリング」、経済・株価への影響や今後の動きは?

※ このページには広告・PRが含まれています

米国の中央銀行である米連邦準備制度理事会(FRB)は、新型コロナウイルス感染拡大の影響から、金融市場や経済を支えるために大規模な金融緩和をおこなっています。しかし、大型の経済対策と新型コロナワクチン普及により経済が正常化すれば、金融政策は量的緩和の縮小(テーパリング)がおこなわれる見込みです。

この記事ではテーパリングとはどのような仕組みなのか、今後どのように実施されていくのかについて解説します。

目次

  1. テーパリングとは
  2. 現在の米国の金融政策
  3. 前回のテーパリングでのマーケットの反応
    3-1.テーパー・タントラムの悪夢
  4. 今後のテーパリング実施はいつか
  5. まとめ

1.テーパリングとは

テーパリング(Tapering)とは、「先細り」「次第に先が細くなっていくこと」という意味で、金融では量的緩和(QE)の縮小を意味します。米連邦準備制度理事会(FRB)などの中央銀行は、景気後退期に政策金利を引き下げて物価や景気の下支えをおこないます。

しかし、政策金利がほぼゼロ水準にあり、これ以上の金利引き下げ余地がない状況では「量的緩和」をおこなうのです。量的緩和は国債や住宅ローン担保証券などの金融資産を大量に買い入れることで資金を供給し、景気回復や長期金利の低下を促します。

そして景気が上向くと、金融政策を正常に戻すための出口戦略として量的緩和の縮小(テーパリング)をおこなうのです。テーパリングでは、金融資産の買い入れ額を徐々に減らしていきます。

そして、その後に利上げをして緩和政策は終了するのです。

2.現在の米国の金融政策

新型コロナウイルスの感染拡大により、世界的なマーケットの混乱と経済環境の急激な悪化が生じました。そこでFRBは2020年3月にゼロ金利の復活と米国債などを大量に買う量的緩和を開始。2021年2月時点では、米国債を月800億ドル(約8.5兆円)、住宅ローン担保証券(MBS)を月400億ドル(約4.2兆円)ペースで購入しています。

3.前回のテーパリングでのマーケットの反応

FRBは2008年のリーマン・ショック以降、3度にわたって量的緩和(QE1~3)を実施。3度目は2012年9月に住宅ローン担保証券(MBS)、12月に長期国債を合計で月850億ドル購入することを決定しました。

その後の米国景気の回復により、2013年12月からFRBはテーパリングを開始。FOMC(米連邦公開市場委員会)の開催のたびにMBSと長期国債の月額購入額を50億ドルずつ減額し、2014年10月にQE3を終了しました。

3-1.テーパー・タントラムの悪夢

テーパリングを始める前の2013年5月、バーナンキFRB議長がテーパリングを示唆し、長期金利が上昇。マーケットは大きく混乱しました。バーナンキFRB議長の発言前に1.9%台だった長期金利は9月に一時3%台となり、1%もの急騰劇(テーパー・タントラム)となったのです。

「バーナンキ・ショック」とも呼ばれる長期金利の急騰を受け、株式市場も下落。代表的な米株価指数であるS&P500種株価指数は、5月から6月にかけて5.8%の下落。FRBはマーケットとの対話に苦慮し、実際の利上げは2015年12月となりました。

テーパリングを示唆すると金融緩和の終了が近いとマーケットは考え、株式市場は下落する傾向にあるのです。ただ、米国株式市場はテーパー・タントラムによって短期的な調整局面があったものの、実際にテーパリングが始まると長期的な上昇局面となりました。

4.今後のテーパリング実施はいつか

バイデン政権による追加経済対策や新型コロナワクチン普及による経済正常化期待から、米長期金利が上昇しています。2021年2月には米10年債利回りが1.6%台まで急伸。2月の月間上昇幅は0.33%と2016年11月の0.56%以来の大きさとなったのです。

経済が回復に向かえば、テーパリングの議論をしていく必要があります。ただ金融政策の正常化は、テーパリングと政策金利の引き上げの両方でみる必要があります。

FRBのフォワードガイダンス(将来の指針)によると、現在の量的緩和は雇用最大化や物価安定に顕著な進展があるまで続けるとしています。さらに利上げに関しては、最大雇用の達成や2%超のインフレ率の定着に向けた動きなど厳しい条件をつけているのです。

政策金利に関しては、2023年までゼロ金利を維持するとしています。しかし、景気回復が早まれば利上げが前倒しになる可能性もあります。一方のテーパリングは具体的な時期を示していません。コロナ禍で経済情勢は不安定だからです。

ただ、マーケットでは年内にテーパリングについて議論するのではないかと考え始めている側面もあります。2021年になり、地区連銀総裁の一部からテーパリングを議論する可能性を示唆する発言がでてきているからです。

新型コロナウイルスの感染拡大が収束して景気が回復すれば、資産購入額を見直す可能性があります。ただ、2013年のテーパー・タントラムのような市場混乱を警戒し、パウエルFRB議長は発言に気をつけています。「テーパリングの議論は時期尚早」、「資産購入の変更を議論する場合は前もって説明する」とパウエルFRB議長は繰り返し述べています。

コロナ禍がいつ収束するのか判断が難しいなか、景気が過熱してインフレが進んだ場合にどう判断するのか、FRBは難しい舵取りを迫われているのです。

まとめ

今回は、テーパリングについて解説しました。米国でのテーパリングがいつになるのかにマーケット関係者は注目しています。金融政策は株式市場にも大きな影響を与えるので、FRBの今後の政策をきちんと確認するようにしてください。

The following two tabs change content below.

山下耕太郎

一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は金融ライターをしながら、現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。ツイッター@yanta2011